鍼灸師がマッサージをするのは違法?免許ごとの業務範囲を解説
鍼灸師として働いていると、患者さんから「ついでに肩もほぐしてほしい」と頼まれる場面があります。断るべきなのか、それとも施術の一部として問題ないのか、判断に迷ったことがある方は少なくないはずです。
この記事では、鍼灸師がマッサージをするのは違法なのかという疑問について、条文と厚生労働省の通知をもとに整理します。免許ごとの業務範囲、施術に伴う手技の扱い、広告や療養費の違いまで、日々の実務に関わる部分を確認していきます。
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マッサージを業として行うには免許が必要

はり師・きゅう師の免許では、あん摩・マッサージ・指圧を業として行うことはできません。これは解釈の余地がある話ではなく、あはき法(あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律)の条文に書かれていることです。
法律が定めていること
あはき法第1条は、医師以外の者があん摩、マッサージ若しくは指圧、はり又はきゅうを業としようとする場合、それぞれあん摩マッサージ指圧師免許、はり師免許又はきゅう師免許を受けなければならないと定めています。
条文のなかで見落とされやすいのが「それぞれ」という言葉です。行為と免許が1対1で対応していて、はり師免許で行えるのははり、きゅう師免許で行えるのはきゅうに限られます。あん摩・マッサージ・指圧を業として行うには、別にあん摩マッサージ指圧師免許が必要です。
| 免許 | 行える業務 |
|---|---|
| あん摩マッサージ指圧師免許 | あん摩・マッサージ・指圧 |
| はり師免許 | はり |
| きゅう師免許 | きゅう |
「業として」とは何を指すか
条文が禁じているのは「業として」行うことです。この言葉は、反復継続の意思をもって行うことを指すと解されています。厚生労働省も、医師法第17条の「医業」について反復継続する意思をもって行うことと解釈を示しており(平成17年7月26日 医政発第0726005号)、医事法令全般で共通する考え方です。
ここで注意したいのは、無償かどうかだけで結論が決まるわけではない点です。お金を受け取っていなければ「業」に当たらない、という単純な線引きではありません。
- 「無料なら問題ない」「1回だけなら大丈夫」という整理は、法律の文言に沿ったものではありません
- 「業」に当たるかどうかは、報酬の有無だけでなく、反復継続の意思があったかどうかを含めて判断されます
罰則が定められていること
第1条に違反してあん摩・マッサージ・指圧、はり又はきゅうを業とした者は、50万円以下の罰金に処せられます(第13条の7第1号)。免許を持たない人だけの話ではなく、はり師・きゅう師がマッサージを業として行った場合も、条文上はこの規定に触れます。
一方、広告の制限(第7条)や施術所の届出(第9条の2)に違反した場合は、30万円以下の罰金です(第13条の8第1号・第5号)。無免許での業務と、手続や表示のルール違反とで、罰則の重さが分けられています。
あはき法違反の罰則
施術所の届出
施術所を開設した人は、開設後10日以内に、開設の場所や業務に従事する施術者の氏名などを施術所の所在地の都道府県知事に届け出ることになっています(第9条の2第1項)。届出事項に変更が生じたときも同じで、休止・廃止・再開は、その日から10日以内の届出です。
届出の内容に「業務に従事する施術者の氏名」が含まれている点が重要です。施術所で提供できる業務は、そこで働く施術者が持つ免許の範囲に対応します。はり師・きゅう師しかいない施術所が、あん摩マッサージ指圧の施術所として届け出ることはできません。
なお、施術所を持たず出張のみで業務を行う場合は、業務を開始したときに住所地の都道府県知事へ届け出ます(第9条の3)。開設届とは届出先も根拠条文も異なります。
届出が必要になる場面と期限
| 場面 | 期限 | 届出先 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 施術所の開設 | 開設後10日以内 | 施術所の所在地の都道府県知事 | 第9条の2第1項 |
| 届出事項の変更 | 変更後10日以内 | 施術所の所在地の都道府県知事 | 第9条の2第1項 |
| 施術所の休止・廃止 | その日から10日以内 | 施術所の所在地の都道府県知事 | 第9条の2第2項 |
| 休止した施術所の再開 | その日から10日以内 | 施術所の所在地の都道府県知事 | 第9条の2第2項 |
| 出張のみで業務を開始 | 業務を開始したとき | 住所地の都道府県知事 | 第9条の3 |
保健所を設置する市・特別区では市長・区長が届出先
参考:e-Gov法令検索「あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律」 / 厚生労働省「医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について(通知)」
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判断が分かれる領域があること

ここまでの話はあはき法第1条の世界です。ところが同じ法律には、まったく別の構造を持つ第12条という規定があり、こちらには最高裁判所の限定的な解釈がついています。
医業類似行為に関する規定
あはき法第12条は、何人も、第1条に掲げるものを除く外、医業類似行為を業としてはならないと定めています。ただし書きで、柔道整復を業とする場合は柔道整復師法の定めによるとされています。
つまりこの法律は二階建てです。1階が第1条で、あん摩・マッサージ・指圧、はり、きゅうを免許制にしています。2階が第12条で、それ以外の医業類似行為を業とすること自体を禁じています。第12条に違反した場合も、第13条の7第4号により50万円以下の罰金です。
条文だけを読むと、資格制度のない手技療法はすべて禁止されているように見えます。争いが生じたのは、この第12条の読み方でした。
あはき法における二層の規制構造
最高裁判所の判断
昭和35年1月27日、最高裁判所大法廷が医業類似行為の規制について判断を示しました。この判決を受けて厚生省医務局長が各都道府県知事あてに出した通知(昭和35年3月30日 医発第247号の1)に、当局の見解が整理されています。
通知は3点を挙げています。第一に、この判決は手技、温熱、電気、光線、刺戟等の療術行為業について判示したものであって、あん摩、はり、きゅう及び柔道整復の業に関しては判断していないこと。第二に、その医業類似行為業について、禁止処罰の対象となるのは人の健康に害を及ぼす恐れのある業務に限局されるとされ、処罰には業として施術した事実だけでなく、害を及ぼす恐れがあることの認定が必要とされたこと。第三に、届出をしている医業類似行為業者の扱いは従来どおりであることです。
同じ通知は、あん摩・はり・きゅう・柔道整復を無免許で業として行えば、その事実をもって処罰の対象になると明記しています。判決の射程は第12条側にとどまり、第1条の無免許施術には及びません。
整体・リラクゼーションと呼ばれる業態の位置づけ
平成3年6月28日の厚生省健康政策局医事課長通知(医事第58号)は、あん摩マッサージ指圧・はり・きゅう・柔道整復以外の医業類似行為について、届出をしていない者は施術が医学的観点から人体に危害を及ぼすおそれがあれば禁止処罰の対象となるという整理を示しています。カイロプラクティックや整体といった民間療法は、国の資格制度がない医業類似行為に位置づけられます。
同じ通知はカイロプラクティック療法の取扱いにも触れ、次の4点を挙げています。
- 椎間板ヘルニアや骨粗しょう症など明確な診断がある疾患を対象とすることは適当でない
- 頸椎に急激な回転伸展操作を加えるスラスト法のような危険性の高い行為は禁止する必要がある
- 症状が軽減・消失しない場合は施術を中止し、速やかに医療機関で精査を受ける
- がんの治癒など医学的有効性をうたう誇大広告は規制の対象となる
大切なのは、看板に何と書いてあるかではなく、実際に行われている行為の内容で評価が決まるという点です。「整体」を名乗っていても、行っている行為があん摩・マッサージ・指圧に当たると評価されれば第1条の問題になります。
逆に、店名だけを根拠に違法と断じることもできません。
断定できる部分とできない部分を分ける
法的な整理
- 条文上はっきりしていること:あん摩・マッサージ・指圧を無免許で業として行えば、あはき法第1条に違反し、第13条の7第1号の罰則の対象になる
- 事実関係によること:ある行為があん摩・マッサージ・指圧に当たるのか、資格制度のない医業類似行為に当たるのかという評価
- 判決が触れていないこと:無免許のあん摩・はり・きゅう・柔道整復の扱い
ルールそのものは明確でも、目の前の行為がそのルールのどちら側に入るかは別の問題です。この2つを分けずに議論すると、「すべて違法」か「すべて合法」のどちらかに振れてしまいます。個々の事案について最終的に判断するのは、所管する行政機関や司法の役割です。
参考:厚生労働省「いわゆる無届医業類似行為業に関する最高裁判所の判決について」 / 静岡県「あん摩マッサージ指圧、はり、きゅう、柔道整復業について」
鍼灸師の求人を探すはり・きゅうの施術に伴う手技の扱い

無資格者の話よりも、免許を持つ鍼灸師にとって切実なのは自分の施術です。はりを打つとき、押手を当て、刺入部位を触って確認し、施術後に体位を整えます。これらは第1条の「マッサージ」に当たるのか。現場で最も迷いやすい論点です。
施術に付随して行われる行為
はり・きゅうの施術には、手で身体に触れる工程が必然的に含まれます。押手は刺入の安全と精度を保つために欠かせませんし、経穴の位置確認や反応の把握には触診が伴います。灸では、施術部位の皮膚の状態を手で確かめる場面もあります。
これらは、あん摩・マッサージ・指圧というサービスを独立して提供しているのとは性質が異なります。はり・きゅうという施術を成立させるための工程だからです。
- 医療キャリアナビ掲載の鍼灸師求人2,814件のうち、整・接骨院が1,864件で最多
- 訪問マッサージ415件、デイケア・デイサービス282件と続き、鍼灸院は90件
- 手技を伴う職場で働く鍼灸師が多く、業務範囲の線引きは他人事になりにくい
線引きの考え方
参考になる行政解釈があります。昭和32年9月18日、厚生省医務局長が山形県知事あてに出した回答(医発第799号)です。柔道整復師について、柔道整復行為を行うに際し、社会通念上、当然に柔道整復行為に附随すると見なされる程度のあん摩(指圧及びマッサージを含む)行為をなすことは差し支えないという照会に、「貴見の通り」と回答しています。
同じ照会は続けて、柔道整復の治療を完了して単にあん摩のみの治療を必要とする患者さんに対し、その行為のみを行うことは第1条違反かと尋ねており、これにも「貴見の通り」と答えています。附随する範囲は差し支えないが、切り離して単独で提供すれば違反、という切り分けです。
ただし、この回答は柔道整復師について示されたもので、はり師・きゅう師について同じ内容の解釈が出ているわけではありません。それでも、施術に必要な範囲にとどまっているか、それとも独立して手技を提供しているかという観点は、自分の施術を点検するときの手がかりになります。
附随する範囲 と 独立して提供している形 の点検
個々の行為の評価は事実関係による
料金の設定や表示に注意する
判断の材料になるのは、施術の中身だけではありません。メニュー表や料金表は、外形的な事実として残ります。「マッサージ 30分 3,000円」のように単独メニューとして掲げていれば、はり・きゅうの施術とは別にマッサージを提供していると受け取られやすくなります。回数券や予約フォームの選択肢に「マッサージのみ」といった項目があるかどうかも同じです。
はり・きゅうの施術料に含まれる形で手技を行っているのか、別料金として切り出しているのか。この違いは、あとから説明するときの説得力にも関わってきます。表示の問題は広告規制とも重なるため、次の章でまとめて扱います。
迷った場合の確認先
自分の施術やメニューが範囲に収まっているか判断がつかないときは、記事や書籍の記述だけで結論を出さず、所管に確認するのが確実です。
- 施術所の所在地を所管する都道府県の担当課(保健所を設置する市・特別区では市長・区長の所管)
- 地域の保健所
- 所属している業界団体の相談窓口
施術所の開設届の提出先は所在地の都道府県知事です。同じ窓口が業務範囲や広告の相談先になっていることが多く、届出のときの担当者に尋ねるのが近道になります。具体的な施術内容とメニュー表を手元に用意して相談すると、話が早く進みます。
参考:厚生労働省「柔道整復師の業務範囲及び医業類似行為について」
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広告と表示に関する制限

令和7年2月18日、厚生労働省が「あはき・柔整広告ガイドライン」を策定しました(医政発0218第1号)。平成30年から続いていた検討会の結論がまとまったもので、施術所の名称やウェブサイトの扱いについて、それまで判断が分かれていた部分に具体例が示されています。
免許を持つ鍼灸師にとって、業務範囲と同じくらい実務に直結する内容です。
広告できる事項が限られていること
あはき法第7条第1項は、何人も、いかなる方法によるを問わず、掲げる事項以外の事項について広告をしてはならないと定めています。他の業種のように「これは書いてはいけない」という禁止列挙ではなく、書いてよいものだけを挙げる方式です。
条文が挙げるのは、施術者である旨と氏名・住所、業務の種類、施術所の名称・電話番号・所在の場所、施術日または施術時間、そして厚生労働大臣が指定する事項の5つです。さらに第7条第2項で、これらを広告する場合でも施術者の技能、施術方法又は経歴に関する事項にわたってはならないとされています。「国家資格保有」の表記は広告できますが、技術の高さや症例数をうたうことはできません。
広告できる事項
あはき法 第7条第1項が定める事項
厚生労働大臣が指定する事項(告示)
- もみりようじ
- やいと、えつ
- 小児鍼(はり)
- あはき法第9条の2第1項前段の規定による届出をした旨
- 医療保険療養費支給申請ができる旨(申請については医師の同意が必要な旨を明示する場合に限る)
- 予約に基づく施術の実施
- 休日又は夜間における施術の実施
- 出張による施術の実施
- 駐車設備に関する事項
「マッサージ」という表示
ガイドラインは、広告できる業務の種類の例として、あん摩マッサージ指圧師、はり師(鍼師)、きゅう師、柔道整復師を挙げ、これらと併せて「国家資格保有」と表記することを認めています。広告できるのは、自分が受けた免許に対応する業務の種類です。
逆に広告不可の例として、東洋医学療法、伝統鍼灸、漢方、整体、カイロ等といった、あはき・柔整以外の業務の種類や、これらの民間資格を保有している旨が明記されました。はり師・きゅう師の免許だけで「マッサージ」を業務の種類として掲げることは、第7条第1項第2号が認める範囲に収まりません。
ガイドラインは無資格者の広告についても、国家資格を必要とする業を行っていると利用者に誤認を与える表示は不適切であり、それは写真や画像を用いた場合も同じだとしています。文字を避けて画像で伝えても評価は変わらない、という整理です。
広告に表示できるかどうかの目安
| 表示の例 | はり師・きゅう師の免許のみ | あん摩マッサージ指圧師の免許もある |
|---|---|---|
| 「はり師(国家資格保有)」 | ◯ | ◯ |
| 「あん摩マッサージ指圧師(国家資格保有)」 | ✕ | ◯ |
| 業務の種類として「マッサージ」 | ✕ | ◯ |
| 「東洋医学療法」「伝統鍼灸」「漢方」 | ✕ | ✕ |
| 「整体」「カイロ」などの民間資格を保有している旨 | ✕ | ✕ |
| 施術者の技能・症例数・経歴のアピール | ✕ | ✕ |
技能・施術方法・経歴にわたる内容は、免許にかかわらず広告できない(第7条第2項)
施術所の名称に関する注意
ガイドラインは、施術所の名称について、国家資格保有者によるあはき・柔整の業態であること、法令に基づき都道府県に届け出られた適法なものであること、医療機関と紛らわしい名称を用いていないことを、利用者が認知できる必要があるとしました。あわせて、開設届の名称と同一であることも求めています。
注意したいのは適用範囲の広さです。ガイドラインは、広告不可とされる表現について英語にしたり、一般的に同じ意味と認識される別の用語・呼称を用いる等表現方法を変えても表示は不可であり、看板や掲示物、装飾など施術所外への表示も不可だと述べています。すでに開業している施術所の名称についても、検討会では移転や看板の掛け替えのタイミングで是正を求める方向が議論されていました。
広告できる名称の例
広告できない名称の例(理由つき)
ウェブサイトやSNSの扱い
長く議論されてきたのがインターネットの扱いです。ガイドラインは、原則としてウェブサイト等はあはき法・柔整師法の規制対象となる広告に該当しないという立場を示しました。利用者が自ら探して閲覧するものだからです。
ただし、誘引性・特定性・認知性の3要件を満たすものは広告として扱われます。バナー広告、検索サイトでスポンサーとして表示されるもの、費用を支払って検索結果の上位に表示させたもの、掲載料や広告料を払っている口コミサイト・ランキング、施術所紹介サイトの紹介ページ、リスティング広告、動画広告が例示されました。さらに、これらからリンクしている自院のサイトも、一体のものとして規制対象になります。
SNSの書き込みは、公開範囲が限られていない場合はもちろん、限られている場合でも、閲覧者の反応によって2次的・3次的に伝わる性質があることから、要件を満たせば広告として扱うとされています。
- 広告に当たらないサイトについても、自費施術の内容・通常必要とされる費用・主なリスクや副作用を掲載すべきこと、虚偽や誇大な内容を掲載すべきでないことが示されています
- 規制の対象外だから何を書いてもよい、という整理ではありません
広告規制の該当判定フロー
参考:厚生労働省「あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師」 / 厚生労働省「あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師及び柔道整復師等の広告に関する検討会」
鍼灸師の求人を探す療養費の取り扱いの違い

免許の違いは保険の扱いにも表れます。はり・きゅうとあん摩マッサージ指圧では、療養費の支給対象の決め方そのものが異なり、必要な同意書も別の様式です。ここを混同したまま説明すると、患者さんに誤った案内をしてしまいます。
はり・きゅうの療養費
厚生労働省の留意事項通知(平成16年10月1日 保医発第1001002号、最終改正は令和8年6月5日 保医発0605第3号)は、はり・きゅうの療養費の支給対象を慢性病であって医師による適当な治療手段のないものとしています。主として神経痛・リウマチであり、これと同一範ちゅうと認められる慢性的な疼痛を主症とする疾患が対象です。
具体的には次の6疾病について、保険医から同意書の交付を受けて施術を受けた場合、医師による適当な治療手段のないものとして支給対象として差し支えないとされています。
- 神経痛
- リウマチ
- 頸腕症候群
- 五十肩
- 腰痛症
- 頸椎捻挫後遺症
この6疾病以外の疾病による同意書や、慢性的な疼痛を主症とする6疾病以外の類症疾患について診断書が提出された場合は、記載内容から支給要件が個別に判断されます。
医師の同意は診察に基づくものでなければならず、診察なしに同意を行う無診察同意は認められません。オンライン診療による同意書の交付もできないとされています。一の同意書で支給できる期間は、初療または再同意日から6か月です。ただし起算の仕方に決まりがあり、初療または再同意日が月の15日以前なら5か月後の月末、16日以降なら6か月後の月末までとなります。
療養費を支給できる期間の数え方
あん摩マッサージ指圧の療養費
同じ通知の別添2が、マッサージの療養費を定めています。支給対象は一律にその診断名によることなく筋麻痺・関節拘縮等であって、医療上マッサージを必要とする症例です。疾患名で区切るはり・きゅうとは違い、患者さんの状態で判断される点が大きな違いになります。
脱臼または骨折に施術するマッサージは、医師の同意書によって取り扱います。関節可動域の拡大を促す変形徒手矯正術も同意書が必要で、対象は肩・肘・手首・股関節・膝・足首の6大関節、右上肢・左上肢・右下肢・左下肢の1肢ごとに支給されます。変形徒手矯正術の同意期間は、はり・きゅうやマッサージの6か月とは異なり初療または再同意日から1か月です。温罨法との併施も認められていません。
療養費の取り扱いの違い
免許によって扱える範囲が変わること
はり師・きゅう師の免許だけでは、あん摩マッサージ指圧の療養費を取り扱うことはできません。支給申請書もはり・きゅう用とマッサージ用で別に定められています。
両方を扱いたい場合はあん摩マッサージ指圧師免許が必要ですが、取得の入り口は限られています。あはき法附則第19条により、文部科学大臣・厚生労働大臣は、視覚障害のあるあん摩マッサージ指圧師の生計の維持が著しく困難とならないよう必要と認めるときは、視覚障害者以外の者を教育・養成する学校や養成施設の認定、定員増の承認をしないことができるとされています。視覚障害のある施術者の職域を守る趣旨の規定で、はり師・きゅう師にはこれに当たる規定がありません。
あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師の就業者数の推移
単位:人(各年末現在)
参考:厚生労働省「はり師、きゅう師及びあん摩・マッサージ・指圧師の施術に係る療養費の改定等について」 / 厚生労働省「令和6年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」
まとめ
鍼灸師がマッサージをするのは違法かという問いには、条文で答えが出る部分と、事実関係によって変わる部分が混ざっています。この2つを分けて考えると、記事ごとに結論が食い違って見える理由も整理できます。
あん摩・マッサージ・指圧を業として行うには、はり師・きゅう師とは別にあん摩マッサージ指圧師免許が必要で、無免許で業とすれば50万円以下の罰金の対象になります。ここは動きません。一方、最高裁判所が示した「人の健康に害を及ぼす恐れのある業務に限局される」という判断は、資格制度のない医業類似行為についてのもので、無免許のあん摩・はり・きゅうには及びません。
日々の実務では、施術に必要な範囲の手技なのか、独立して提供しているのかという観点が手がかりになります。料金表や施術所の名称、ウェブサイトの表現は令和7年2月の広告ガイドラインに具体例が示され、療養費は免許ごとに支給対象も同意の要件も異なります。迷う場面が出てきたら、都道府県の担当課や保健所、所属団体に、施術の内容とメニュー表を示して確認してみましょう。


