あん摩マッサージ指圧師の面接対策|応募先別の質問の傾向と準備しておきたいこと
面接の準備を始めると、どうしても「よく聞かれる質問と回答例」を探しに行きたくなります。ただ、あん摩マッサージ指圧師の就職先は治療院、整骨院、介護保険施設、訪問マッサージ、企業内と幅が広く、応募先が変わると質問も評価の軸も変わります。回答例を暗記しても、応募先が違えば噛み合いません。
この記事では、あん摩マッサージ指圧師の面接対策を「採用側が何を確かめたいのか」から整理し、応募先別の質問の傾向、回答の組み立て方、実技試験への備え、逆質問で確認しておきたい条件までまとめました。
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あん摩マッサージ指圧師の面接で見られていること

採用選考の基本的な考え方は、応募者の適性と能力に基づいて行うことだと厚生労働省が示しています。つまり面接の質問は、ほぼすべて「この人がうちの現場で働けるか」を確かめるために組まれています。
あん摩マッサージ指圧師の面接では、次の4つが軸になります。
| 評価軸 | 実際に来る質問例 | 答える材料 |
|---|---|---|
| 施術以外の対応力 | 当院の一日の流れをどう想像していますか/前職ではカルテをどう書いていましたか | 予約管理・電話対応・施術録の記載・物品管理・後輩指導の経験 |
| 応募先の対象者に合うか | どんな患者さんを担当してきましたか/高齢の方への施術経験はありますか | 対象者の年齢層と主訴の傾向、応募先の患者層の下調べ |
| 長く働く見込みがあるか | 何年くらい働きたいですか/なぜ前の職場を辞めたのですか | 通勤時間、希望勤務日数、学びたい分野 |
| 国家資格者としての知識 | リラクゼーションとの違いを説明できますか/施術を控える場面はどんなときですか | あはき法の業務独占、禁忌の判断、医療機関へつなぐ基準 |
施術以外の対応力
施術が上手いかどうかだけでは採否は決まりません。あん摩マッサージ指圧師の一日には、施術以外の業務がかなりの割合で入ってきます。
- 予約の受付・調整と電話対応
- 施術録(カルテ)の記載と管理
- 患者さんへの説明、次回来院の案内
- 物品・リネンの管理、施術室の清掃
- 後輩や実習生への指導
このうちどれが重くなるかは応募先によって違います。治療院なら予約管理と説明、訪問マッサージなら移動と記録、介護保険施設なら他職種との情報共有の比重が上がります。面接で「一日の流れをどう想像していますか」と聞かれたら、施術以外の業務まで含めて答えられると印象が変わります。
応募先の対象者に合うか
同じ手技の資格でも、目の前にいる方の層はまったく違います。高齢で寝たきりに近い方が中心の訪問マッサージと、仕事帰りの肩こり・腰痛を診る駅前の治療院では、必要な力が別物です。
採用側は「自院の患者さんに、この人が合うか」を見ています。応募先のホームページで、どんな症状の方が来ているか、年齢層はどのあたりかを確認しておきましょう。「御院は〇〇の方が多いと拝見しました」と一言添えられるだけで、対象者を意識して選んだことが伝わります。
長く働く見込みがあるか
施術者を一人育てるには、手技の統一、患者さんとの関係づくり、レセプト業務の習得など時間がかかります。採用側が定着を気にするのは、教育にかけたコストを回収する前に抜けると現場が回らなくなるからです。
退職理由や「何年くらい働きたいですか」といった質問は、ここを確かめています。「長く働きます」と言葉だけ足すのではなく、通勤時間、勤務日数、学びたい分野など、続けられる根拠になる事実を添えると説得力が出ます。
お探しの求人は?
参考:厚生労働省「公正な採用選考の基本」 / e-Gov法令検索「あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律」
【応募先別】質問の傾向と評価軸

あん摩マッサージ指圧師の就業先は、大きく7タイプに分かれます。求人の数にはかなりの偏りがあり、医療キャリアナビ掲載求人データ(2026年時点)に載っているあん摩マッサージ指圧師の求人2,706件は、整骨院・接骨院と訪問マッサージ、介護分野の3つでほとんどを占めています。自分の応募先がどのタイプかで、聞かれることは変わります。
| 応募先タイプ | 面接で問われる中心 |
|---|---|
| 治療院・鍼灸マッサージ院 | 手技の幅とリピート。実技を課されやすい |
| 整骨院・接骨院 | 自分の担当が自費か保険か、業務範囲 |
| 病院・診療所 | 医師の指示下で動けるか、運動器リハビリテーションに係る研修の修了状況 |
| 介護保険施設・デイサービス | 機能訓練指導員としての配置、個別機能訓練計画書の作成 |
| 訪問マッサージ | 医師の同意書と施術報告書の理解 |
| 企業内(ヘルスキーパー) | 短時間の枠で主訴を絞れるか |
| リラクゼーション系の施設 | 有資格者としての業務範囲と広告表示 |
治療院・鍼灸マッサージ院
自費施術が中心になるため、質問は「手技の幅」と「患者さんが戻ってくるか」に向きます。どの手技が得意か、痛みの訴えにどう対応してきたか、施術方針が異なる場合に合わせられるかを聞かれます。
治療院の採用では実技を課されることが多く、面接だけで終わらないと想定しておきましょう。また、指名や歩合の仕組みがある院では、「患者さんに次回来院を案内できるか」を確認されることもあります。
営業が苦手でも、施術の必要性を根拠を持って説明できれば十分に答えられます。
整骨院・接骨院
求人数がもっとも多い就業先です。ただし、整骨院での業務範囲は面接で必ず確認しておきたい部分です。柔道整復師が保険で扱えるのは柔道整復の施術であり、あん摩マッサージ指圧師の施術は制度上まったく別の枠組みです。
整骨院に在籍するあん摩マッサージ指圧師が担うのは、自費のマッサージ・指圧のメニューや、施術補助にあたる業務が中心になります。
- 「柔道整復師の代わりに保険の施術をお願いします」という趣旨の説明があれば、その場で業務内容を具体的に確認する
- 自分が行うメニューが自費か保険かを、面接の段階ではっきりさせておく
「保険施術の経験はありますか」と聞かれた場合も、どの制度の話をしているのかを確かめてから答えると齟齬が起きません。
病院・診療所
求人はごく限られていますが、募集があった場合は、医師の指示のもとで動けるか、記録を残せるか、他職種と連携できるかが評価の中心になります。
意外と知られていないのが、診療報酬の施設基準にあん摩マッサージ指圧師が登場する点です。運動器リハビリテーション料(Ⅱ)の施設基準では、当分の間、適切な運動器リハビリテーションに係る研修を修了したあん摩マッサージ指圧師が専従の常勤職員として勤務し、運動器リハビリテーションの経験を有する医師の監督下に実施する体制が確保されている場合に限り、理学療法士が勤務しているものとして届け出ることができます。
そのため病院・診療所の面接では、研修の修了状況や、修了していない場合に受講する意思があるかを問われることがあります。施設基準は改定で変わる可能性があるため、応募先がどの区分で届け出ているかも合わせて確認しておくと安心です。
介護保険施設・デイサービス
介護分野はデイサービスと特別養護老人ホームを中心に、治療院以外では最も求人が多い領域です。ここで軸になるのが機能訓練指導員です。
指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号)で、通所介護には機能訓練指導員を1名以上配置することが義務づけられています。
一方で、介護老人保健施設の人員基準に機能訓練指導員という職種の定めはありません。老健で募集されている場合は、どの職種としての配置なのかを面接で確かめておきましょう。
質問は個別機能訓練計画書を書けるか、おおむね3か月ごとの見直しに対応できるか、レクリエーションや送迎に入れるかといった方向に来ます。
訪問マッサージ
ここは制度の理解を直接問われる就業先です。
療養費の支給対象になるのは、一律に診断名によるのではなく筋麻痺・関節拘縮等であって医療上マッサージを必要とする症例です。施術には医師の同意書が必要で、一つの同意書で支給できる期間は初療または再同意日から6か月です。細かくは、初療・再同意日が月の15日以前ならその月の5か月後の月末、16日以降なら6か月後の月末までとされています。
同意書の有効期間の数え方
施術報告書には、施術の内容、月平均の施術回数、患者さんの状態や経過を記入します。面接では「同意書の管理をしたことがあるか」「施術報告書を書いた経験があるか」を聞かれることがあります。
経験がない場合も、制度の流れを説明できれば覚える準備があると受け取られます。
企業内(ヘルスキーパー)
企業が従業員向けに設ける施術室で働く形です。健康管理の一環として置かれているため、施術の技術に加えて、予約枠の管理、利用記録の作成、産業保健スタッフとの連携といった業務が重くなります。
質問は「限られた時間で何ができるか」に寄ります。1人15〜20分程度の枠で回すことが多く、短時間で主訴を絞って施術する組み立てを説明できると評価につながります。募集自体が少なく、公表された統計もないため、待遇や業務範囲は個別に確認する前提で臨みましょう。
リラクゼーション系の施設
国家資格が必須ではない職場です。あはき法第12条であはき業と柔道整復を除く医業類似行為は禁止されているため、応募先が業務内容をどう位置づけているかを面接で確認しておく必要があります。
もう一つ確認したいのが広告表示です。あはき法第7条では、あん摩業・マッサージ業・指圧業やその施術所について広告できる事項が限定列挙されています。
広告できること・できないこと
有資格者として採用されるのか、無資格者と同じメニューを担当するのかで、できることも責任の範囲も変わります。「マッサージ」という表示を使っているか、免許の有無を店舗としてどう扱っているかは、聞いておいて損はありません。
あん摩マッサージ指圧師の求人を探す参考:厚生労働省「特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」 / 厚生労働省「はり師、きゅう師及びあん摩・マッサージ・指圧師の施術に係る療養費の改定等について」
頻出質問と回答の組み立て方

回答例をそのまま話すと、面接官が少し掘り下げただけで答えられなくなります。使えるのは自分の経験だけなので、素材を棚卸ししてから組み立てましょう。ここでは質問ごとに、何を材料にするかを示します。
志望動機
志望動機は「なぜこの資格か」ではなく「なぜこの応募先か」を聞かれています。材料は3つです。
- 応募先の情報(対象者の層、施術方針、保険と自費の比重、営業時間)
- 自分の経験や学んだこと(得意な手技、関わった対象者、実習で印象に残った場面)
- 1と2が重なる点(自分の強みが応募先で活きる箇所)
重なる点が見つからないときは、応募先の情報が足りていないことが多いです。ホームページの施術メニュー、料金表、スタッフ紹介まで目を通すと接点が見えてきます。
これまでの施術経験
「これまでの経験を教えてください」は答えの幅が広すぎて、話しているうちに要点がぼやけます。次の4項目で整理しておくと、どの応募先でも使い回せます。
施術経験の棚卸しシート
数字を1つでも入れると具体性が上がります。1日の施術人数、1人あたりの施術時間、担当した部位や手技の内訳などです。
施術者には守秘義務があります。あはき法第7条の2で、正当な理由なく業務上知り得た人の秘密を漏らしてはならないと定められており、施術者でなくなった後も同様です。実習先や勤務先の名称、患者さんの特定につながる情報は面接でも話さないようにしましょう
退職理由
不満をそのまま述べると、応募先でも同じことが起きると受け取られます。とはいえ、事実と違う説明をするのは別の問題です。表現を整えることと、嘘をつくことは分けて考えます。
やり方はシンプルで、不満を「実現したかったこと」に置き換えるだけです。
-
残業が多かった施術以外の業務が増え、一人あたりの施術に時間をかけられなくなった。じっくり向き合える環境で働きたい
-
給与が低かった評価の基準が示されておらず、何を伸ばせば待遇が上がるのか分からなかった。基準がある環境で成果を出したい
-
人間関係が合わなかった手技の方針が統一されておらず、患者さんへの説明が担当者ごとに変わっていた。方針を共有できる院で働きたい
置き換えた後も、事実として起きていたことから離れないのがポイントです。「残業が多かった」のを「スキルアップのため」にすり替えると、勤務時間の希望を伝える段階で矛盾します。
今後どうなりたいか
5年後、10年後の話を聞かれたときは、応募先で積める経験と結びつけます。あん摩マッサージ指圧師のキャリアの方向は、おおむね次のように分かれます。
- 施術の専門性を深める(特定の手技や対象者に絞る)
- 訪問マッサージの施術管理者として受領委任を扱う
- 機能訓練指導員として介護分野で働く
- 院長・分院長として運営に関わる
- 独立して施術所を開設する
開業志望を伝えて不利になることを心配する声もありますが、独立・開業支援ありの求人は392件(14%)あり、むしろ前提にしている応募先もあります。伝えるかどうかは応募先の方針を見て判断しましょう。
転職活動するなら?
実技試験・施術デモへの備え

治療院や訪問マッサージの採用では、面接と別に実技を見られることがあります。当日いきなり「では施術してみてください」と言われて慌てないよう、形式と評価点を先に把握しておきましょう。
どんな形で行われることがある?
形式には幅があります。応募先から事前に説明がない場合もあるため、想定を広めに持っておくと落ち着いて対応できます。
実技試験3つの形式
相手
院長や先輩施術者。主訴がはっきり示されないこともある
見られるポイント
問診で何を聞き出すか
準備の勘所
短時間で主訴を絞る問診の型を持っておく
相手
他の応募者や同席者。施術する側・受ける側の両方をやる可能性がある
見られるポイント
施術中の対応と受け手としての振る舞い
準備の勘所
脱ぎ着しやすい服装で臨む
相手
面接官。実際には触れずに説明のみで進む
見られるポイント
手技の名前と順番、狙い、禁忌の判断を言葉にできるか
準備の勘所
自分の得意な流れを言語化しておく
順番も決まっていません。書類選考のあとすぐ実技という院もあれば、面接を通ったあとに二次で実技という院もあります。応募の連絡をする段階で「実技はありますか」と聞いておくと準備しやすくなります。
見られているポイント
手技の巧拙だけを見られていると思うと、準備の方向がずれます。実際に採用側が確認しているのは、施術の前後を含めた一連の流れです。
とくに問診と声かけは、初めて会う人を相手にできるかが分かる部分です。「どこがつらいですか」で終わらせず、いつから、どんな動作で痛むか、これまで受けた治療はあるかまで聞ければ、限られた時間でも組み立てられていることが伝わります。
禁忌の判断も同じです。急性の炎症や熱感がある部位、皮膚の異常、痛みの訴え方が通常と異なる場合に、施術を控えて確認するという判断ができるかは見られています。
準備しておくこと
実技があると分かったら、当日の持ち物と服装を事前に確認しておきましょう。応募先によって用意されているものが違います。
- 持参するもの(施術着、タオル、ペン、上履き)の有無を応募先に確認する
- 動きやすく腕まわりが窮屈でない、かつ脱ぎ着しやすい服装で行く
- 爪を短く切り、手指を清潔にしておく
- 時計・指輪・ブレスレットは外せる状態にしておく
手技そのものは、得意な流れを一つ通しで再現できる状態にしておけば十分です。全部の手技を仕上げようとするより、問診から施術、終了時の説明までを時間内に収める練習のほうが効きます。
【立場別】準備すべきこと

同じ応募先でも、新卒か経験者かブランクがあるかで、準備する材料が変わります。
立場別・面接の準備材料
材料の中心
学内実習と臨床実習で何を考えどう動いたか
確かめたいこと
育てれば伸びるか、指摘を受け止められるか
用意する数字
実習で担当した人数、1施術の時間
材料の中心
実際の施術実績と担当範囲
確かめたいこと
応募先のやり方に合わせられるか、前職と何が違うと分かっているか
用意する数字
1日の施術人数、対象者の層の割合、勤続年数
材料の中心
ブランク中に続けていたことと、復帰後の計画
確かめたいこと
復帰後の勤務が続くか、学び直す姿勢があるか
用意する数字
ブランクの期間、希望する勤務日数・時間
新卒・実務未経験の場合
話せる材料は学内実習と臨床実習に限られます。ここで「経験が足りません」と前置きするより、実習で何を考えてどう動いたかを整理して出すほうが伝わります。
- 担当した対象者の状態(年齢層と主訴の傾向まで。個人が特定される情報は含めない)
- 自分が立てた施術の見立てと、実際に行った手技
- 指導者から受けた指摘と、その後に変えたこと
- 手技以外で意識したこと(声かけ、体位、時間配分)
養成施設の指定基準では、臨床実習4単位のうち3単位以上を学校または養成施設附属の実習施設か、あはき業を行う施術所で行うこととされています。つまり新卒でも、実際の施術所で人に触れた経験があることが前提になっています。その経験を言葉にできているかが、未経験者の面接の分かれ目です。
未経験可の求人はあん摩マッサージ指圧師の掲載求人2,706件のうち2,135件(79%)で、受け入れ側の体制はあります。研修の内容や独り立ちまでの期間を確認したうえで応募先を選びましょう。
経験者の転職の場合
経験者は「何ができるか」を数字と場面で示せると強いです。1日の施術人数、対象者の層、担当した手技、記録やレセプト業務の範囲、後輩指導の有無を棚卸ししておきます。
同時に、前職と応募先の違いを把握しておく必要があります。自費中心の治療院から訪問マッサージに移るなら、同意書や施術報告書といった制度対応が新しく増えます。整骨院から介護保険施設に移るなら、計画書の作成と見直しが業務に加わります。「今の経験のうち何がそのまま使えて、何を新しく覚えるのか」を自分の言葉で言えると、入職後のギャップも小さくなります。
ブランクがある場合
ブランクの理由そのものより、その間に何をしていたかと、復帰後どうするかを聞かれます。
-
ブランクの期間と理由育児、家族の介護、体調、他業種での就業など、事実を簡潔に
-
その間に続けていたこと研修会への参加、書籍での学び直し、家族への施術など、あれば
-
復帰後の計画勤務日数や時間の希望、覚え直したい手技、必要な研修
ブランクOKと明記された求人は87件(3%)と多くはありませんが、未経験可の求人が7割台を占めるため、実際の受け入れ幅はもう少し広いと考えられます。復帰時の勤務条件は面接で具体的に詰めておきましょう。
今のあなたの状況は?
参考:厚生労働省「あん摩マツサージ指圧師、はり師及びきゆう師に係る学校養成施設認定規則」
逆質問で確認しておきたいこと

「何か質問はありますか」は、熱意を見せる場ではなく、入職後のミスマッチを防ぐ確認の場として使えます。あん摩マッサージ指圧師の職場では業務委託契約や歩合制が用いられることがあり、条件を確認しないまま入ると、社会保険や労災保険の扱いが想定と違っていた、というずれが起きます。
条件面を聞くこと自体は問題ではありません。ただし聞く順番は工夫できます。業務内容や1日の流れに関する質問を先に置き、条件面は要点を絞って尋ねると、確認したいことを確認しつつ話も広がります。
雇用形態と契約の内容
最初に確かめたいのは雇用契約か業務委託契約かです。雇用契約なら労働基準法や社会保険、労災保険の対象になりますが、業務委託契約では扱いが変わります。
契約について聞いておきたいこと
- 雇用契約か業務委託契約か
- 契約書を書面で交付してもらえるか、内容を事前に確認できるか
- 就業場所と業務内容、それぞれの変更の範囲
- 試用期間の有無と、期間中の条件
- 社会保険・労災保険の加入の有無
2024年4月から、労働条件明示のルールに就業場所・業務の変更の範囲が追加されています。求人票や労働条件通知書で確認できる項目も増えたので、面接で聞く前にまず書面を読み込みましょう。
なお、契約書の名称が業務委託でも、働き方の実態によって労働者と扱われる場合があります。判断が必要な場面では自己判断せず、労働基準監督署や各都道府県労働局の総合労働相談コーナーに相談できます。
給与の仕組み
あん摩マッサージ指圧師の求人は歩合やインセンティブを含む形が珍しくありません。医療キャリアナビ掲載求人データ(2026年時点)では、賞与・ボーナスありが1,628件(60%)、インセンティブありが552件(20%)です。月給の水準も就業先によって差があります。
提示された金額が固定給だけなのか、歩合込みの見込み額なのかで、実際の手取りは変わります。次の項目を確認しておきましょう。
- 固定給と歩合の内訳(提示額のうち固定はいくらか)
- 歩合の算定基礎(売上か施術人数か、率は何%か)
- 指名料・手技料の扱い(誰に入るか)
- 歩合が発生する条件(最低ラインの有無)
- 昇給と賞与の基準、支給実績
担当する対象者と1日の施術数
1日に何人を担当するかは、続けられるかどうかを大きく左右します。施術時間、施術と施術の間の時間、記録を書く時間が確保されているかまで含めて聞きましょう。
訪問マッサージなら移動を含めた1日の訪問件数と担当エリアの広さ、介護保険施設なら機能訓練の対象人数と計画書業務の時間の取り方が該当します。「繁忙期は何人くらいになりますか」と幅で聞くと、実態に近い答えが返ってきます。
研修と勉強会の扱い
技術を伸ばせる環境かどうかは、研修の有無だけでは判断できません。同じ「研修あり」でも、勤務時間内か時間外か、費用を誰が負担するかで意味が変わります。
- 研修・勉強会は勤務時間内か、時間外か
- 時間外の場合、賃金は支払われるか
- 費用の負担(全額会社、一部補助、自己負担)
- 参加は任意か必須か
- 外部セミナーや学会への参加を認めているか
研修補助ありと明記された求人は59件(2%)にとどまります。制度として整っていない応募先も多いため、面接で実際の運用を聞く価値があります。聞き方は「研修は勤務時間内に行われることが多いですか」のように、事実を尋ねる形にすると角が立ちません。
あん摩マッサージ指圧師の求人を探す参考:厚生労働省「2024年4月から労働条件明示のルールが変わります」 / 厚生労働省「総合労働相談コーナーのご案内」
面接当日の準備と流れ

当日に迷いやすいのは服装、持ち物、入室時の振る舞いです。ここを型として持っておけば、頭を質問への回答に使えます。
服装と持ち物
施術系の職場でも、面接の服装は落ち着いた色のスーツまたはオフィスカジュアルが基本です。応募先から「私服で」と指定された場合も、清潔感が保てる範囲にまとめます。手元は面接官の目に入りやすいので、爪と手指の状態は整えておきましょう。
持ち物は、履歴書・職務経歴書のほか、免許証の写しを求められることがあります。筆記用具とメモも持っておくと、業務内容の説明を受けたときにそのまま書き留められます。実技の持参物については前述のとおりです。
入室から退室までの流れ
流れ自体は他業種の面接と大きく変わりません。一度通しで確認しておくと、当日の緊張が下がります。
もう一つ知っておきたいのが、面接官の側にも聞いてはいけないことがある点です。厚生労働省は、就職差別につながるおそれのある事項として、本人に責任のない事項(本籍・出生地、家族、住宅状況、生活環境)、本来自由であるべき事項(宗教、支持政党、人生観、尊敬する人物、思想、労働組合や学生運動の経験、購読新聞・愛読書)、採用選考の方法(身元調査、適性と能力に関係ない応募書類、合理的必要性のない健康診断)を挙げています。
これらを聞かれた場合、無理に答えなくて構いません。話題を業務に戻すか、「業務に関わる部分でお答えします」と伝えれば十分です。答えを準備しておく必要はないと分かっているだけで、当日の負担が減ります。
配慮が必要な場合の伝え方
視覚に障害のある施術者をはじめ、面接や実技で配慮が必要な場合は、事前に応募先へ相談できます。
改正障害者雇用促進法が2016年(平成28年)4月1日に施行され、雇用分野での障害者差別は禁止、合理的配慮の提供は事業主の義務とされています。対象となる事業主は事業所の規模・業種にかかわらずすべて、対象となる方も障害者手帳を持っている人に限定されません。
募集・採用時の手順は、障害のある方から事業主に対して、支障となっている事情や必要な配慮を申し出るところから始まります。申し出を受けた事業主は、どのような配慮を提供するかを本人とよく話し合って決めることになっています。
厚生労働省が示す募集・採用時の合理的配慮の例には、視覚障害がある方に点字や音声などで採用試験を行うこと、聴覚・言語障害がある方に筆談などで面接を行うことが挙げられています。
実技を課される場合の進め方や、施術室までの移動の案内なども、申し出て話し合う対象になります。
ただし、合理的配慮は事業主に過重な負担を及ぼす場合を除くとされています。希望した方法がそのまま通らないこともあるため、代わりにどうしたいかも一緒に伝えておくと話が進みます。話し合いで解決しない場合は、都道府県労働局職業安定部に紛争解決の援助を求められます。
参考:厚生労働省「雇用分野における障害者への差別禁止・合理的配慮」 / 厚生労働省「採用選考時に配慮すべき事項」
まとめ
あん摩マッサージ指圧師の面接対策は、質問集を暗記するところから始めなくて大丈夫です。採用側が確かめたいのは、施術以外の対応力、応募先の対象者に合うか、長く働く見込みがあるか、国家資格者としての線引きができるかの4点です。そこを押さえれば、想定外の質問にも自分で答えを組み立てられます。
準備の優先順位は、応募先のタイプで決まります。整骨院なら自費と保険の業務範囲、病院・診療所なら運動器リハビリテーションに係る研修、介護保険施設なら機能訓練指導員としての位置づけ、訪問マッサージなら同意書と施術報告書。どれも面接で直接聞かれる部分です。
治療院を受けるなら実技への備えも要ります。手技の仕上げより、問診から施術、終了時の説明までを時間内に収める練習に時間を使いましょう。そして逆質問は、雇用形態、給与の内訳、1日の施術数、研修の扱いを確認する場として使えます。条件を聞くことは遠慮する必要のないことです。
- 応募の連絡をする段階で「実技はありますか」と聞いておく
- 面接で提示された月給は、固定給か歩合込みかを必ず分けて確認する
- 契約書は面接の段階で内容を見せてもらえるか聞いておく
- 配慮が必要なことは、応募先に事前に相談して構わない
まずは応募先のホームページを開いて、対象者の層と施術メニューを確認するところから始めてみましょう。そこが志望動機の材料にもなり、逆質問の材料にもなります。


