理学療法士の年収は低い?年代別の平均年収と年収が伸びにくい理由
「理学療法士の年収は低い」という言葉は、どの数字とどの数字を比べたかで結論が変わります。
公的統計から算出した平均年収は約443万円ですが、これは理学療法士だけを集計した数値ではなく、平均年齢36.2歳という若い母集団の平均です。全産業の一般労働者の平均年齢は44.4歳ですから、年齢構成をそろえずに平均どうしを並べれば、若い職種は低く出ます。
この記事では、令和7年賃金構造基本統計調査をもとに年齢階級別の賃金カーブをたどり、理学療法士の年収が伸びにくい構造を分解します。
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理学療法士の年収は本当に低い?

年収の話は、比べる相手と比べ方を決めないまま数字を出すと結論がぶれます。まず、公的統計に載っている数値と、その数値が何を表しているのかを確認します。
公的統計での平均年収
厚生労働省の令和7年賃金構造基本統計調査によると、きまって支給する現金給与額は月額309,900円、年間賞与その他特別給与額は717,200円です。ここから算出した推計年収は約443万6,000円になります。対象は産業計・企業規模10人以上の一般労働者で、集計対象者は279,650人です。
ただし、この数値には注意点があります。賃金構造基本統計調査の職種区分は「理学療法士,作業療法士,言語聴覚士,視能訓練士」の4職種をまとめたもので、理学療法士だけを取り出した平均年収は公的統計に存在しません。世の中に流通している「理学療法士の平均年収は約443万円」という数字は、この合算値を指しています。
推計年収443万6,000円の内訳
- 公的統計(賃金構造基本統計調査)実際に支払われた給与の集計。経験者を含む在職者全体が対象
- 求人サイトの集計値募集時点の提示額。経験の浅い層の条件が中心になりやすい
- 母集団が違うため、この2つを並べて優劣を比べることはできません
比較する相手によって結論が変わる
同じ調査のなかで所定内給与額(残業代や通勤手当などを除いた基本的な給与)を比べると、次のようになります。
理学療法士を含む区分は298,200円、医療・福祉全体は315,700円、全産業の一般労働者は340,600円です。全産業と比べると月額で42,400円低く、率にすると約12%の差になります。
一方で、比較の相手を変えれば見え方も変わります。医療・福祉全体との差は17,500円で、全産業と比べたときの半分以下です。「低い」という結論は、全産業平均を相手に選んだときに最も大きく出ます。
年齢構成をそろえずに比較すると誤る
全産業の一般労働者は平均年齢44.4歳・平均勤続12.7年です。これに対し、理学療法士を含む区分は平均年齢36.2歳・平均勤続8.4年と、8歳以上若く、勤続年数も4年以上短くなっています。
日本理学療法士協会の統計でも、この偏りは確認できます。2026年3月末時点の会員144,943人のうち、40歳以下が100,112人と全体の約7割を占め、51歳以上は14,279人で約1割にとどまります。国家試験の合格者が本格的に増えたのが2000年代半ば以降のため、年齢構成が若い層に寄っています。
日本理学療法士協会 会員の年代構成
賃金は年齢とともに上がるのが一般的ですから、平均年齢の低い集団の平均賃金は低く出ます。年齢をそろえずに平均どうしを比べた差には、この年齢構成の違いが混ざっています。実態を知るには、年齢階級別に並べて比べる必要があります。
参考:e-Stat「賃金構造基本統計調査 1 職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)」 / 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況」 / 日本理学療法士協会「統計情報」
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年齢階級別に見た平均年収

年齢階級別に並べると、平均値ひとつでは見えなかった特徴が出てきます。以下は令和7年賃金構造基本統計調査をもとにした、理学療法士を含む区分の年齢階級別の賃金です。
年齢階級別 所定内給与額の推移
- 理学療法士を含む区分
- 医療・福祉
- 全産業
20代
20〜24歳の推計年収は337万5,000円、25〜29歳は397万8,000円です。所定内給与額でみると20〜24歳は246,100円で、全産業の同年代242,800円をわずかに上回っています。
つまり、スタート地点では低くありません。20代前半に限れば、全産業平均と比べて不利な水準ではないというのが統計上の姿です。25〜29歳になると全産業279,400円に対し268,900円となり、ここで初めて下回ります。
30代
30〜34歳の推計年収は431万5,000円、35〜39歳は457万1,000円です。所定内給与額では30〜34歳が288,200円、35〜39歳が305,800円となります。
同年代の全産業は312,300円と340,600円ですから、差は30代前半で24,100円、後半で34,800円と広がっていきます。20代前半では同水準だったものが、10年ほどかけて開いていく形です。この時期に「思ったより上がらない」と感じる人が多いのは、金額そのものより差の広がり方によるものと考えられます。
40代
40〜44歳の推計年収は482万1,000円、45〜49歳は519万7,000円です。所定内給与額は319,500円と338,000円で、全産業との差は40代前半で44,800円まで広がります。
一方、医療・福祉全体と比べると様子が変わります。45〜49歳の医療・福祉平均は330,000円で、理学療法士を含む区分338,000円のほうが上回ります。医療・福祉のなかで見れば、40代後半以降はむしろ高い部類に入ります。
50代以降
50〜54歳の推計年収は548万8,000円で、ここが賃金カーブのピークです。55〜59歳は525万2,000円と下がります。
注目したいのはカーブの形です。20〜24歳の所定内給与額を100とすると、55〜59歳は全産業が163.2まで伸びるのに対し、理学療法士を含む区分は142.5にとどまります。出発点は同じでも、30年以上かけた伸び幅に20ポイント以上の開きが生まれます。
「理学療法士の年収は低い」という実感の中身は、初任給の水準ではなくその後の伸びの小ささにあるといえます。
参考:e-Stat「賃金構造基本統計調査 5 職種(小分類)、年齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)」 / 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況」
理学療法士の求人を探す年収が伸びにくい理由

賃金カーブの伸びが小さい背景には、理学療法士という仕事の収益構造があります。個人の努力とは別のところで、上限が決まっている部分が大きいためです。
報酬の単価が制度で決まっている
理学療法士の業務の多くは、診療報酬の疾患別リハビリテーション料として点数が定められています。診療報酬の算定方法(厚生労働省告示第59号)では、20分を1単位として、次の点数が設定されています。
- 脳血管疾患等リハビリテーション料(Ⅰ) 245点
- 運動器リハビリテーション料(Ⅰ) 185点
- 廃用症候群リハビリテーション料(Ⅰ) 180点
1点は10円ですから、20分の個別リハビリで生まれる収入は1,850円〜2,450円です。この単価は施設が独自に上げることができません。同じ内容の仕事をしても単価は全国どこでも同じという点が、一般的なサービス業との大きな違いです。
加えて、算定できる期間にも上限があります。脳血管疾患等は発症などから180日、運動器は150日、廃用症候群は120日が標準的な算定日数です。長く関わるほど収益が積み上がる仕組みにはなっていません。
疾患別リハビリテーション料の点数と標準的算定日数
| 区分 | 脳血管疾患等 | 運動器 | 廃用症候群 | 心大血管疾患 |
|---|---|---|---|---|
| (Ⅰ) | 245点 | 185点 | 180点 | 205点 |
| (Ⅱ) | 200点 | 170点 | 146点 | 125点 |
| (Ⅲ) | 100点 | 85点 | 77点 | - |
| 標準的算定日数 | 180日 | 150日 | 120日 | 150日 |
1人が担当できる量に上限がある
単価が固定されているなら量で補う、という発想は制度上とりにくくなっています。疾患別リハビリテーション料は、患者さん1人につき1日6単位(別に定める患者さんは1日9単位)までと決められているためです。
理学療法士側から見ても物理的な天井があります。1単位20分なので、8時間の勤務をすべて個別療法に充てたとしても24単位が計算上の上限です。脳血管疾患等リハビリテーション料(Ⅰ)で試算すると1日58,800円となりますが、実際には記録の作成、カンファレンス、他職種との連携などに時間を使うため、この数字に届くことはありません。
提供量を増やして収益を伸ばすことに、構造的な限界があるといえます。売上を伸ばした分が給与に跳ね返る、という関係が成立しにくい理由がここにあります。
役職の数が限られている
全産業のデータでは、役職に就くことで賃金が大きく変わります。所定内給与額は非役職者310,500円に対し、係長級399,200円、課長級529,200円、部長級635,800円です。非役職者を100とすると、係長級128.6、課長級170.4、部長級204.8という開きになります。
ただし、リハビリテーション部門の管理職ポストは主任・科長・部長といった数段階で、部門の人数に対してポスト数が限られます。
日本理学療法士協会の統計では、理学療法士が1人だけの施設が12,441施設あり、施設数全体の3割近くを占めています。役職による上積みを全員が得られる構造ではありません。
評価が給与に反映されにくい
リハビリテーションの成果は、担当した患者さんの状態や疾患の重症度に左右されます。技術の高さを収益や数値で示しにくく、評価の基準を給与に結びつける仕組みを持たない職場も少なくありません。
その結果、昇給が年数に連動した一律の運用になりやすく、スキルの差が給与に表れにくくなります。なお「開業権がないから給料が低い」という説明を見かけますが、開業権のある職種でも収入の幅は大きく、因果関係として断定できるものではありません。理由の一つとして押さえておく程度が妥当です。
参考:厚生労働省「・診療報酬の算定方法(◆平成20年03月05日厚生労働省告示第59号)」 / 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況」 / 日本理学療法士協会「統計情報」
自分の年収が低い原因を特定する

ここまでは職種全体の話です。ただ、統計を読んでも「自分の年収が低いのは職種のせいか、今の職場のせいか」は分かりません。給与明細を3つに分解すると、どこが平均から離れているかを確認できます。
基本給の水準を確認する
まず、給与明細の基本給だけを取り出します。比較する相手は所定内給与額です。残業代や通勤手当を含まない基本的な給与で、令和7年の全国平均は298,200円でした。
自分の基本給が平均から大きく離れていない場合、年収の差は賞与や手当のどちらかで生まれている可能性が高くなります。逆に基本給の時点で開きがあるなら、昇給テーブルそのものが低い設定になっている職場ということです。この場合は勤続を重ねても差が縮まりにくく、年数で解決するのは難しくなります。
- 求人票の「月給」には手当が含まれていることが多いので、そのまま平均と比べないようにしましょう
- 比べる相手は所定内給与額です。残業代を含む総支給額と比べると差が実際より小さく見えます
- 基本給が低くて手当が厚い職場は、賞与や退職金の算定で不利になることがあります
手当の有無を確認する
きまって支給する現金給与額309,900円と所定内給与額298,200円の差、月額11,700円が超過労働給与額(残業代など)にあたります。この部分は勤務実態によって変わるため、平均との比較にはあまり向きません。
きまって支給する現金給与額の内訳
確認したいのは、基本給とは別に固定で支給される手当です。住宅手当、扶養手当、資格手当、役職手当、訪問手当などが該当します。同じ基本給でも、住宅手当が月2万円あれば年間24万円の差になります。求人票の月給欄に手当が含まれているかどうかで見え方が変わるため、内訳まで確認しないと比較になりません。
賞与の算定基礎と月数を確認する
年間賞与その他特別給与額の全国平均は717,200円です。所定内給与額298,200円に対して約2.4か月分にあたります。
賞与で見るべき点は2つあります。1つは月数、もう1つは算定基礎です。「基本給の◯か月分」なのか「月の総支給額の◯か月分」なのかで、同じ月数でも金額が変わります。基本給が低く手当で調整している職場では、基本給を基礎にした賞与は小さくなります。
給与明細で確認する3点
- 基本給:所定内給与額298,200円と比べて、どのくらい離れているか
- 固定手当:住宅・扶養・資格・役職など、基本給以外に毎月つく金額
- 賞与:月数と算定基礎(基本給ベースか総支給ベースか)
参考:e-Stat「賃金構造基本統計調査 1 職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)」
転職活動するなら?
職場によって変わる部分

同じ理学療法士でも、勤務先の種別や法人の規模、地域によって水準は変わります。自分の状況を置く位置を知るための材料として整理します。
施設種別による違い
医療キャリアナビ掲載求人データ(2026年時点)で理学療法士の正社員求人の月給中央値を施設種別に見ると、訪問リハビリが300,000円で最も高く、クリニック285,000円、有料老人ホーム267,000円と続きます。介護老人保健施設は260,000円、デイケア・デイサービスは262,750円です。
一方、求人件数が819件と多い病院は251,425円で、訪問リハビリとの差は月額約4万9,000円になります。年間では約59万円の開きです。ただし、これは募集時点の提示額であり、経験年数や役職が反映された在職者の実支給額とは性質が異なります。
設置主体・法人規模による違い
企業規模別に見ると、単純な大小関係にはなりません。令和7年賃金構造基本統計調査から算出した推計年収は、1,000人以上の規模が461万円、100〜999人が436万2,000円、10〜99人が442万3,000円です。
月給だけを見ると10〜99人の319,400円が最も高く、1,000人以上の315,000円を上回ります。それでも年収で逆転するのは、年間賞与が829,600円と590,600円で約24万円離れているためです。
つまり、規模の大きい法人は月給ではなく賞与で差がつく傾向が読み取れます。月給の提示額だけで転職先を選ぶと、年収ベースで下がることがあり得ます。
地域による違い
都道府県別のデータからも推計年収を算出できます。上位は山口512万7,000円、三重501万8,000円、愛知491万円、栃木489万6,000円です。下位は福島375万円、岡山388万6,000円、佐賀390万円となり、最も高い県と低い県では137万7,000円の差があります。
都道府県別 推計年収と平均年齢・勤続年数
| 区分 | 都道府県 | 推計年収 | 平均年齢 | 勤続年数 |
|---|---|---|---|---|
| 年収 上位 | 山口 | 512.7万円 | 39.3歳 | 12.8年 |
| 三重 | 501.8万円 | 40.2歳 | 10.4年 | |
| 愛知 | 491.0万円 | 38.1歳 | 9.4年 | |
| 栃木 | 489.6万円 | 35.8歳 | 8.0年 | |
| 年収 下位 | 福島 | 375.0万円 | 32.7歳 | 7.7年 |
| 岡山 | 388.6万円 | 34.4歳 | 4.7年 | |
| 佐賀 | 390.0万円 | 35.2歳 | 6.1年 | |
| 参考 | 全国 | 443.6万円 | 36.2歳 | 8.4年 |
ただし、この順位をそのまま「その県は給与が高い・低い」と読むことはできません。上位の県は平均年齢・勤続年数が長く、下位の県は短い傾向があります。山口の平均年齢39.3歳・勤続12.8年に対し、福島は32.7歳・勤続7.7年です。ここでも年齢構成の差が順位を動かしています。東京が472万6,000円と全国上位に入らないのも、同じ理由と考えられます。
生活費の差も併せて見る必要があります。総務省の消費者物価地域差指数(2024年)では、総合指数が最も高い東京都で104.0、最も低い群馬県で96.2と、差は1.08倍にとどまります。
参考:e-Stat「賃金構造基本統計調査 1 職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)」 / e-Stat「賃金構造基本統計調査 3 都道府県、職種(特掲)、性別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計) 三重~山口」 / 総務省統計局「小売物価統計調査(構造編)調査結果」
理学療法士の求人を探す年収を増やすための選択肢

原因が特定できたら、そこに効く手段を選びます。ここでは、現在の勤務形態のなかで取り得る選択肢に絞って整理します。
給与水準の高い職場に転職する
基本給の水準そのものが低い職場だと判断できた場合、転職は効果が出やすい手段です。昇給テーブルが低い職場で年数を重ねても、差は縮まりにくいためです。
一方、基本給が平均並みで賞与や手当に差がある場合は、転職しても改善しないことがあります。求人票の月給が高くても、賞与月数が少なければ年収は下がります。比べるときは、月給ではなく年収見込みでそろえると判断を誤りません。
手当の対象になる役割を担う
資格手当や特定の業務に対する手当を設けている職場では、対象になる役割を引き受けることで固定的な上積みが得られます。認定・専門理学療法士、呼吸療法認定士、福祉住環境コーディネーターなどが対象になる例があります。
ただし、手当の有無と金額は職場ごとの規定によります。資格を取れば必ず収入が増えるわけではないため、就業規則や賃金規程で対象になっているかを先に確認しておくと無駄がありません。
管理職を目指す
役職手当は、固定的に月給を押し上げる数少ない要素です。全産業のデータでは、係長級で非役職者の1.29倍、課長級で1.70倍という水準になります。
リハビリテーション部門でも、主任・科長といったポストに就けば手当がつく職場が一般的です。ただしポスト数が限られるため、いつ空くかは職場の年齢構成に左右されます。管理職の割合が高い大規模施設ほど機会は多くなる傾向がありますが、確実に就ける前提で計画を立てるのは避けたほうが無難です。
勤務形態を変える
訪問リハビリのように、担当件数が収入に連動する働き方もあります。求人データでも訪問リハビリの月給中央値は300,000円と、病院の251,425円を上回ります。
ただし、収入が件数に連動するということは、件数が業務量と直結するということでもあります。移動時間や書類作成も含めた1日の流れを確認し、無理なく続けられる件数かどうかを見ておくと安心です。
年収を増やす4つの選択肢
参考:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況」
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収入以外の条件も含めて比べる

目先の月給だけで職場を選ぶと、数年後に総額が逆転することがあります。年収に効くのに求人票では見えにくい項目を挙げます。
昇給の実績と賞与
昇給額は「年◯円」と規定されていても、実際の運用は職場によって差があります。規定額と直近数年の実績が一致しているかを確認しておくと、入職後のずれを防げます。
賞与は月数だけでなく、支給実績が規定どおりに出ているかが重要です。「業績により変動」とだけ書かれている場合、直近の実績を確認できるかどうかで判断材料の質が変わります。前述のとおり算定基礎の違いでも金額は動くため、月数と基礎の両方をそろえて比べます。
退職金制度
退職金は在職中の給与に現れないため見落とされがちですが、勤続が長くなるほど総額への影響は大きくなります。制度の有無に加えて、支給要件となる最低勤続年数と算定方法を確認しておくと安心です。
法人によっては、独立行政法人福祉医療機構の退職手当共済や、都道府県ごとの共済制度に加入している場合があります。自前の規程ではなく共済制度で運用されているケースもあるため、加入先まで聞いておくと実像がつかめます。
時間外労働と担当量
賃金構造基本統計調査では、理学療法士を含む区分の超過実労働時間数は月5時間、所定内実労働時間数は157時間です。企業規模別に見ると1,000人以上で月8時間、100〜999人と10〜99人で月4時間となっています。
年収が高く見える職場でも、その一部が残業代で構成されていれば、時間あたりの条件は変わります。月給に固定残業代が含まれていないか、含まれる場合は何時間分かを確認しておくと、比較の前提がそろいます。1日あたりの担当単位数の目安も、あわせて聞いておくと働き方の実感がつかみやすくなります。
参考:e-Stat「賃金構造基本統計調査 1 職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)」
まとめ
理学療法士の年収が「低い」と語られるとき、その根拠になっているのは全産業平均との単純な比較です。しかし公的統計の職種区分は4職種の合算であり、平均年齢は36.2歳と全産業より8歳以上若い集団です。年齢構成をそろえないまま平均を並べれば、差は実態より大きく見えます。
年齢階級別に追うと、20代前半の水準は全産業と同程度で、そこから徐々に差が開いていきます。20〜24歳を100としたときの55〜59歳の伸びは、全産業163.2に対して142.5です。実感の中心にあるのは初任給の低さではなく、その後の伸びの小ささだといえます。
背景には、診療報酬で単価が決まっていること、1人が担当できる単位数に上限があること、役職ポストが限られることといった構造があります。ただし、これは職種全体の話です。自分の年収が低い理由が職種の構造なのか今の職場なのかは、基本給・手当・賞与に分解して平均と照らし合わせれば切り分けられます。





