助産師の難易度はどれくらい?国家試験・入学・実習の3段階で解説
助産師を目指すか迷ったとき、まず気になるのが国家試験の合格率ではないでしょうか。直近の第109回では99.7%。数字だけを見ると、ハードルは高くなさそうに思えます。ただ、この数字の分母は「養成課程を修了できた人」だけです。本当の関門は、その手前にある養成課程への入学と、入学後の実習にあります。
この記事では、助産師になる難易度を「入学」「養成課程の修了」「国家試験」の3段階に分けて整理します。合格率の読み方、入学選抜で何が見られるか、指定規則で定められた分娩介助実習の要件、そして現役看護師が気になる「働きながら目指せるのか」まで、公的な制度の根拠とあわせて解説します。
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助産師になる難易度は3つの段階に分かれる

助産師の難易度を1つの数字で表すことはできません。通る順に、養成課程への入学、養成課程の修了、国家試験の合格という3つの段階があり、それぞれ問われる力が違うためです。
一般に語られる「合格率99%前後」は3段階目だけの数字です。1段階目と2段階目を通過した人しか受験できないため、最後の関門が最も緩く見える構造になっています。
3段階のどこでふるいにかけられるか
- 入学:定員が限られ、看護学生・現役看護師のなかから選抜される
- 修了:分娩介助実習など、時間と場所の制約が大きい実習を終える必要がある
- 国家試験:4科目・144点満点で、総得点87点以上が合格基準
養成課程に入学する難易度
助産師課程は、看護師養成課程のように毎年数万人規模で受け入れる仕組みにはなっていません。1校あたりの募集人数が十数名から数十名という規模で、大学の選択制課程では学内選抜で人数が絞られます。
競う相手も、看護を学んだ学生や現役の看護師に限られます。保健師助産師看護師法で助産師国家試験の受験資格が指定校・指定養成所の修了者に限定されているため、そもそも入口が狭く設計されています。
養成課程を修了する難易度
修業年限は1年以上と定められており、この短い期間に講義・演習・実習を収めます。なかでも助産学実習は、対象となる妊産婦さんの状態に合わせて動く必要があり、自分の都合で日程を組めません。
学力よりも、時間と体力を確保できるかが問われる段階です。3段階のうち最も負荷が高いのはここだといわれます。
国家試験に合格する難易度
出題は基礎助産学・助産診断技術学・地域母子保健・助産管理の4科目で、いずれも養成課程で学ぶ教育内容と対応しています。範囲外から出題される試験ではないため、課程を修了していれば対策は立てやすい部類に入ります。
なお、助産師免許を得るには助産師国家試験だけでなく看護師国家試験にも合格している必要があります。看護師免許を持たずに助産師として働くことはできません。
助産師免許の取得要件
保健師助産師看護師法 第7条第2項
参考:e-Gov法令検索「保健師助産師看護師法」 / e-Gov法令検索「保健師助産師看護師学校養成所指定規則」
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助産師国家試験の合格率と難易度

助産師国家試験は厚生労働省が年1回実施し、保健師・看護師の国家試験と同じ日程で行われます。合格率は毎年変動するため、回次と実施年をセットで確認するのが確実です。
直近の合格率
令和8年2月に実施された第109回助産師国家試験は、受験者数2,046人に対して合格者数2,040人、合格率99.7%でした。このうち新卒者は受験者2,018人・合格者2,014人で、合格率は99.8%です。
過去5回を並べると、95.6%から99.7%の幅で推移しています。第106回のように95%台まで下がった年もあり、「毎年必ず99%台」と考えるのは正確ではありません。
助産師国家試験 合格率の推移(第105回〜第109回)
合格基準と出題形式
第109回の出題は、一般問題が1問1点で74点満点、状況設定問題が1問2点で70点満点、あわせて144点満点でした。合格基準は総得点87点以上で、割合にすると約6割です。
試験科目は保健師助産師看護師法施行規則で定められており、基礎助産学・助産診断技術学・地域母子保健・助産管理の4科目です。この4科目は、養成課程の教育内容として指定規則に掲げられている区分とそのまま重なります。受験手数料は5,400円です。
配点や問題数は年度によって変わるため、受験する回の実施要項で確認しておくと安心です。
合格率が高い理由
合格率が高いのは、問題が易しいからではありません。養成課程を修了できた人だけが受験する構造になっているためです。実習を含む課程を終えられなければ、そもそも受験の場に立てません。
受験者数の規模を見るとその狭さが分かります。第109回の助産師国家試験の受験者は2,046人でしたが、同じ日程で行われた第115回看護師国家試験の受験者は59,614人でした。助産師の受験者数は看護師の3%台にとどまります。
また、受験者2,046人のうち2,018人が新卒者だった点も合格率を押し上げています。
既卒者の受験は毎年数十人規模で、母集団のほとんどが在学中に対策を進めてきた学生です。
参考:厚生労働省「第112回保健師国家試験、第109回助産師国家試験及び第115回看護師国家試験の合格発表」 / e-Gov法令検索「保健師助産師看護師法施行規則」
助産師の求人を探す助産師養成課程の入学試験の難易度

3段階のうち、多くの人が最初につまずくのが入学試験です。ただし全国を通じた倍率の統計は公表されていないため、数字ではなく選抜の仕組みから難易度を捉えることになります。
定員の少なさと倍率
助産師課程の入学倍率について、全国で統一された公的な統計は公表されていません。「倍率10倍」といった数字を見かけることがありますが、特定の学校・特定の年度の結果であり、全体の傾向として読むことはできません。
判断材料になるのは各養成校が公表している入試結果です。志願者数と合格者数を掲載している学校が多いため、志望校のサイトや募集要項で直近数年分を確認しておきましょう。国公立と私立、大学院と専攻科でも数字の性質が変わります。
養成規模の目安としては、国家試験の受験者数が参考になります。第105回から第109回まで受験者は2,046人から2,151人の範囲で推移しており、全国で年間およそ2,000人前後しか養成されていない計算です。
助産師国家試験 受験者数の推移
選抜の方法
学科試験だけで決まる選抜は多くありません。筆記に加えて面接や小論文が課される場合が多く、志望動機や母子保健への関心を言語化できるかが見られます。
課程によっては看護師としての実務経験が評価対象になります。臨床で母性看護に関わった経験は、面接で具体的に語れる材料になりやすいといえます。
出願前に課程ごとに確認しておきたい点
- 筆記の出題範囲(英語・小論文の有無、専門科目の範囲)
- 面接の形式(個人面接か集団討論か)
- 看護師免許または取得見込みが出願要件に含まれるか
ルートによる違い
同じ「助産師課程」でも、選抜の性質はルートごとに異なります。大学の助産師課程は在学生を対象にした学内選抜で、成績や実習評価をもとに人数が絞られる形が一般的です。
一方、大学院・専攻科・1年制の専門学校は外部からの受験になります。大学院は研究計画や英語が問われることがあり、専攻科や専門学校は専門科目と面接を軸にした選抜が中心です。同じ資格を目指す課程でも、準備すべき内容は大きく変わります。
参考:e-Gov法令検索「保健師助産師看護師学校養成所指定規則」 / 厚生労働省「第112回保健師国家試験、第109回助産師国家試験及び第115回看護師国家試験の合格発表」
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在学中の実習が最大の関門といわれる理由

助産師課程の難しさは、合格率の数字には表れません。保健師助産師看護師学校養成所指定規則が定める実習の要件を見ると、他の医療系資格の実習とは負荷の性質が違うことが分かります。
分娩介助実習の要件
指定規則の別表二には、実習中の分娩の取扱いについて、助産師または医師の監督の下に学生1人につき10回程度行わせることと定められています。
取り扱う分娩は原則として正期産・経腟分娩・頭位単胎とされ、分娩第1期から第3期終了より2時間までを受け持ちます。
条件が絞られている分、対象となるお産に立ち会えるかどうかは巡り合わせに左右されます。
出産は時間を選ばないため、待機と呼び出しが実習期間の生活の中心になります。
背景として、出産そのものが減っています。令和6年の出生数は686,173人で、前年から41,115人減少し、統計開始以来最少となりました。実習の受け入れ先を確保する難しさは年々増しています。
継続事例の受け持ち
助産学実習には、妊娠期から分娩期・産褥期まで同じ対象を継続して受け持つ実習が含まれます。妊婦健診から関わり、出産に立ち会い、産後の経過まで追う形です。
継続事例では、受け持った妊婦さんの分娩時期に合わせて学生側が動くことになります。予定日どおりに進むとは限らず、夜間や休日の呼び出しも起こります。自分の予定を先に固定できない実習だという点が、他の実習との大きな違いです。
実習と学業を並行する負荷
指定規則が定める助産師課程の教育内容は合計31単位で、うち臨地実習が11単位を占めます。
実習は30時間を1単位として計算するため、臨地実習だけで330時間相当になります。修業年限1年以上の課程では、これが短期間に集中します。
助産師課程 教育内容31単位の内訳
合計 31単位
さらに実習と並行して記録の作成が続き、後半には国家試験対策も重なります。睡眠時間の確保が難しい時期が生じやすく、体力面の負担も小さくありません。
負荷の中身をあらかじめ知っておけば、生活面の準備は立てられます。入学前に家族や職場と生活リズムの見通しを共有しておくと、実習期間を乗り切りやすくなります。
参考:e-Gov法令検索「保健師助産師看護師学校養成所指定規則」 / 厚生労働省「令和6年(2024)人口動態統計(確定数)の概況」
助産師の求人を探す助産師になるまでのルートと期間

助産師国家試験の受験資格は保健師助産師看護師法第20条に定められています。文部科学大臣が指定した学校で1年以上助産に関する学科を修めるか、都道府県知事が指定した助産師養成所を卒業することが要件です。
加えて同法第7条第2項により、助産師になるには助産師国家試験と看護師国家試験の両方に合格し、厚生労働大臣の免許を受ける必要があります。どのルートを選んでも、看護師資格が土台になる点は変わりません。
助産師課程のある大学で学ぶ
看護系大学のなかには、助産師課程を選択制で設けている学校があります。4年間で看護師国家試験と助産師国家試験の受験資格を同時に得られるため、最短で助産師になれるルートです。
ただし全員が履修できるわけではありません。3年次前後に学内選抜があり、人数が絞られます。入学時点では助産師課程に進めるかどうかが確定していない点に注意が必要です。
看護系の学校を卒業後に養成校へ進む
看護師養成課程を修了してから、大学専攻科・短大専攻科・1年制の専門学校・大学院に進むルートです。看護師国家試験の受験資格を得たうえで外部から受験するため、大学の学内選抜とは別の準備が要ります。
期間は課程によって変わります。専攻科や専門学校は1年、大学院修士課程は2年が目安です。大学院では研究にも取り組むため、教育・研究職を視野に入れる人に向いた選択肢といえます。
助産師になる3ルートと期間
| ルート | 助産師課程の期間 | 課程の内容 |
|---|---|---|
| 大学の助産師課程(選択制) | 4年で看護師・助産師の受験資格を同時取得 | 看護師課程と助産師課程を同じ大学のなかで修める |
| 大学専攻科・短大専攻科・1年制専門学校 | 看護師課程修了後、さらに1年 | 助産に特化した1年間の課程を修める |
| 大学院修士課程 | 看護師課程修了後、さらに2年 | 助産師課程に加えて研究にも取り組む |
看護師として働いてから目指す
臨床経験を積んでから進学する人も一定数います。母性看護や産科の経験があると、実習や面接で活きる場面が多くなります。
なお、助産師は保健師助産師看護師法第3条で「女子」と定義されており、現行法では男性は助産師免許を取得できません。
一方で、収入が途絶える期間が生じる点は事前に見ておきたいところです。退職して進学するのか、休職扱いにできるのかによって、準備すべき資金が変わります。
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働きながら目指すことはできるのか

現役看護師にとって最も気になるのが、仕事を続けたまま助産師課程に通えるかどうかです。結論からいえば、フルタイム勤務との両立は現実的ではありません。
養成課程の通学の実態
助産師課程の修業年限は1年以上と定められており、この期間に講義・演習・実習を収めます。夜間や通信だけで完結する助産師課程は基本的に存在しません。
実習は平日の日中を軸に組まれ、分娩介助実習では夜間や休日の呼び出しも発生します。シフト勤務と重ねると、どちらかに支障が出やすくなります。
現実的な選択肢は、退職して進学する、休職制度を使う、非常勤に切り替えるといった形です。勤務先に修学支援の制度がないか、進学を決める前に確認しておきましょう。
受験勉強を進める時期の確保
働きながら準備できるのは、進学前の受験対策までです。入試では専門科目の筆記に加えて小論文や面接が課される場合が多く、勤務と並行して進めるなら早めに着手しておくと余裕が生まれます。
出願時期は課程によって異なり、秋から冬にかけて実施する学校が中心です。夜勤の多い部署にいる場合は、出願前の数か月だけでもシフトを調整できないか相談してみるのも一つの方法です。
費用と収入の見通し
学費に加えて、在学中に収入が途絶える可能性を含めて資金計画を立てる必要があります。1年制の課程でも、学費と生活費の両方を1年分見込んでおくと安心です。
- 医療キャリアナビ掲載求人データ(2026年時点)の助産師求人44件のうち、月給を提示している31件の中央値は34.0万円
- 施設別ではクリニック31件が中央値35.0万円、病院7件が中央値35.9万円
- 1年分の学費と生活費を、取得後に見込める月給と並べて確認しておくと計画を立てやすい
資金面を支える仕組みとして、都道府県が実施する看護師等修学資金貸与制度があります。
厚生労働省の実施要綱では無利子で貸与すると定められていますが、貸与には保証人が必要で、保証人は借りた本人と連帯して債務を負います。大阪府など多くの都道府県で助産師学校養成所も対象です。
免除の条件は、卒業後の進路によって結論が変わります。制度の存在だけで判断せず、どの場合に免除され、どの場合に返還になるのかまで確認しておきましょう。
修学資金の返還はどうなるか
看護師課程で修学資金を借りた人が助産師課程に進む場合は、進学している期間の返還が猶予されます。借入が残っていることを理由に進学をあきらめる前に、貸与元の都道府県に確認してみると安心です。
参考:厚生労働省「看護師等修学資金の貸与について」 / 大阪府「大阪府看護師等修学資金」
まとめ
助産師の難易度は、入学・養成課程の修了・国家試験の3段階に分けて見ると実像がつかめます。第109回助産師国家試験の合格率は99.7%でしたが、これは養成課程を修了できた2,046人だけの数字です。
入学については全国統一の倍率統計がないため、志望校が公表している入試結果を確認するのが確実です。選抜は筆記だけでなく面接や小論文を含むことが多く、ルートによって準備の中身も変わります。
最も負荷が高いのは在学中の実習です。指定規則で分娩介助を学生1人につき10回程度と定められており、継続事例では受け持った妊婦さんの分娩時期に合わせて動くことになります。フルタイム勤務との両立は難しく、退職や休職を前提に計画を立てるのが現実的です。
まずは志望校の募集要項と、住んでいる都道府県の修学資金制度を並べて確認してみてください。いつ挑戦するかが決まれば、準備の順番も見えてきます。





