助産師に男性はなれない?法律の根拠・海外との違い・男性が関われる周産期の仕事を解説

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「助産師になりたいけれど、男性は資格を取れないの?」と疑問に思っている方は少なくありません。結論からいうと、日本では法律上、男性は助産師になることができません。

保健師助産師看護師法(保助看法)第3条で助産師は「女子」と明記されており、性別要件が設けられている数少ない国家資格の一つです。

この記事では、男性が助産師になれない法律上の根拠や歴史的な背景、海外との比較、そして男性が周産期医療に携わるための具体的な職種と働き方まで幅広く解説します。

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結論:日本では男性は助産師になれない

看護師免許証と白衣を着た女性

日本では、法律によって男性が助産師の資格を取得することはできません。

この制限は保健師助産師看護師法という法律に明確に定められています。ここでは、その法的根拠を詳しく確認していきます。

助産師の法的位置づけ

第3
保助看法の定義条文
女子限定
法律上の性別要件
1948年〜
制定以来変更なし

保健師助産師看護師法第3条の規定

保健師助産師看護師法(昭和23年法律第203号)第3条では、助産師を「厚生労働大臣の免許を受けて、助産又は妊婦、じよく婦若しくは新生児の保健指導を行うことを業とする女子」と定義しています。

この条文には明確に「女子」という文言が含まれており、男性は法律上、助産師の免許を取得することができません。保健師(第2条)や看護師(第5条)の定義には性別の限定がないため、助産師だけが女性限定の資格という点が大きな特徴です。

なお、助産師免許を取得するためには看護師免許を持ったうえで助産師養成課程を修了し、国家試験に合格する必要があります。しかし、男性はそもそも助産師養成課程への入学資格がなく、受験資格自体が認められていません。

参考:e-Gov法令検索「保健師助産師看護師法」

「女子」と明記されている根拠

保健師助産師看護師法が制定された1948年(昭和23年)当時から、助産師(当時は助産婦)は女性に限定されていました。この性別要件が設けられた背景には、主に次のような理由があります。

  • 歴史的経緯
    助産の担い手が伝統的に「産婆(お産を介助する女性)」という女性の職業であったこと
  • 身体的接触の配慮
    分娩介助では妊産婦の身体に直接触れる場面が多く、女性同士のほうが心理的負担が少ないと考えられていたこと
  • 制定時の社会的背景
    1948年当時は男女の職域が明確に区分されており、「男性の助産従事者」という概念自体が想定されていなかったこと

2001年(平成13年)に法律名が「保健婦助産婦看護婦法」から「保健師助産師看護師法」に改正された際も、助産師の定義における「女子」の文言は変更されませんでした。

なぜ男性は認められていないのか

開かれた本と電球マークのイメージ

男性が助産師になれない理由は、単に「法律で決まっているから」という一言では説明しきれません。

明治時代から続く歴史的な経緯と、現代でも根強く残る社会的配慮の両面を理解することが大切です。

1899年(明治32年)
産婆規則の制定
日本で初めて産婆を国家制度として位置づけ。資格者は女性のみに限定された。
1948年(昭和23年)
保健婦助産婦看護婦法の制定
GHQの指導のもと制定。助産婦は「女子」に限定され、看護婦・保健婦には性別要件なし。
2001年(平成13年)
法律名・資格名の改正
男女雇用機会均等の観点から「助産婦」→「助産師」に名称変更。ただし「女子」の定義は維持された。
現在
法改正の議論は停滞中
助産師の性別要件については目立った法改正の動きはなく、男性は依然として資格取得不可の状態が続いている。

明治の産婆制度から続く経緯

日本における助産の制度は、1899年(明治32年)に制定された「産婆規則」にまでさかのぼります。この規則は、それまで各地域で独自に活動していた産婆を国の制度として位置づけたものです。

産婆規則では、産婆の資格を持てるのは女性のみと定められていました。

当時の日本社会では、出産は女性が女性を助けるものという意識が強く、男性が分娩に立ち会うこと自体がまれでした。医師を除けば、出産に関わるのは女性という認識が社会全体に根付いていたのです。

産婆(1899年〜)→ 助産婦(1948年〜)→ 助産師(2002年〜)と名称は変わりましたが、「女性に限る」という要件は一貫して維持されています。

保助看法制定時の議論

1948年(昭和23年)、GHQの指導のもと、「保健婦助産婦看護婦法」が制定されました。

この法律はアメリカの看護制度を参考に作られましたが、助産師の性別要件については日本の伝統的な出産文化をそのまま反映する形で「女子」に限定されました。

制定当時の国会審議では、助産婦を女性に限定すること自体についてはほとんど異論が出ませんでした。当時のアメリカでも助産師に相当する職種は女性が担うケースが大半であり、男性を排除することが特別な問題とは認識されていなかったのです。

保助看法は看護師や保健師については性別要件を設けなかったものの、助産師に関しては「女子」の文言が維持されました。この違いは、助産業務が妊産婦の身体に直接的かつ長時間触れる性質を持つことが大きく影響しています。

プライバシー・羞恥への配慮という現代的根拠

現代において助産師が女性に限定されている主な根拠は、妊産婦のプライバシーと羞恥心への配慮です。

出産は極めてプライベートな行為であり、分娩介助では陰部の確認や会陰保護など、身体的に親密な接触が不可避です。

  • 分娩介助では妊産婦と長時間にわたり密接に関わる
  • 内診や会陰保護など、性的な部位への接触が業務の中心である
  • 陣痛中の妊産婦は精神的に不安定になりやすく、異性の存在が心理的負担になりうる
  • 妊婦健診での継続的な関係構築でも、同性のほうが相談しやすい場面がある

もちろん、男性産婦人科医は日常的にこれらの業務を行っています。

しかし、助産師は医師よりもさらに長い時間を妊産婦と密に過ごすため、心理的な障壁がより高いと考えられています。こうした理由から、現時点では法改正に至っていないのが実情です。

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法改正の議論はあったのか

男女と書かれたカードが並ぶ様子

「男女平等の観点から、助産師の性別要件は撤廃すべきではないか」という議論は、これまでに何度か持ち上がっています。しかし、結論としては法改正には至っていません。ここでは、過去の議論内容を整理します。

法改正の議論で挙がる主な論点

賛成派の主張

男女平等の観点から性別要件は撤廃すべき。男性看護師のキャリアの幅が広がり、助産師不足の解消にもつながる。

キーワード:男女共同参画・人材確保

反対派の主張

出産は極めてプライベートな場面。妊産婦の安心・安全を最優先すべきで、当事者である女性の声を尊重する必要がある。

キーワード:プライバシー・文化的配慮

2001年男女共同参画での議論

2001年に「保健婦助産婦看護婦法」から「保健師助産師看護師法」に名称が変更された際、男女共同参画の観点から助産師の性別要件についても議論が行われました。

名称変更のきっかけは男女雇用機会均等法の精神に基づくもので、「看護婦」「保健婦」のように性別を暗示する名称を「看護師」「保健師」に改めることが主な目的でした。この流れの中で、助産師についても「男性にも門戸を開くべきではないか」という意見が出されました。

しかし、最終的には「名称は変更するが、助産師の性別要件は維持する」という結論に落ち着きました。法律の名称は男女を問わない「師」に統一されましたが、助産師の定義における「女子」の文言は残されたのです。

日本助産師会の見解

日本助産師会は、男性助産師の導入について「条件付きで賛成」という立場を示しています。

しかし、現時点で日本助産師会が積極的に法改正を推進している状況ではありません。

その背景には、

  • 妊産婦が女性助産師を選べる環境
  • 医療現場での十分な配慮や制度整備

といった課題が、まだ十分に解決されていないことがあります。

そのため、日本助産師会は「男性助産師の導入そのものに全面反対」というよりも、「妊産婦の安心や選択権を守れる環境が整うまでは慎重に検討すべき」という立場を取っています。

参考:公益社団法人 日本助産師会|創立90周年記念誌

賛成・反対の主な論点

助産師への男性参入をめぐっては、賛成・反対それぞれの立場から多角的な論点が挙げられています。

男性助産師をめぐる主な意見の比較

主な論点 賛成派 反対派
男女平等 推進できる 慎重意見あり
人材確保 人手不足対策 効果は限定的
妊産婦の安心 配慮が必要 安心感を重視
文化的背景 課題あり 伝統を重視
キャリアの自由 選択肢が広がる 慎重な立場
現場の混乱回避 調整が必要 混乱回避を重視

賛成派は主に「男女平等」「人材確保」「キャリアの自由」を根拠としています。

特に、看護師として周産期医療に携わる男性が「助産師としてさらに専門性を高めたい」と考えた場合、法律がキャリアの壁になっている点が問題視されています。

一方、反対派は「妊産婦の安心」「文化的背景」「現場の混乱」を懸念しています。

実際に出産を経験する女性たちの声を重視すべきだという意見は根強く、法改正は簡単には進まない状況です。

海外では男性助産師は存在するのか

聴診器と地球儀とパスポートが並ぶ様子

日本では男性助産師が認められていませんが、海外ではどうなのでしょうか。実は、男性が助産師として活動している国はすでに複数存在します。ただし、その割合はどの国でも極めて少数です。

各国の男性助産師の受け入れ状況

法律上の可否 解禁年 男性の割合
日本 ✕ 不可 0%
イギリス ◯ 可 1983年 1%未満
オーストラリア ◯ 可 ごく少数
アメリカ ◯ 可 1%未満
フランス ◯ 可 1982年 約2%
ドイツ ◯ 可 2020年 ごく少数

イギリス・オーストラリアの状況

イギリスでは、1983年の看護・助産・保健師法の改正により、男性にも助産師(midwife)の資格取得が認められるようになりました。イギリスは世界で比較的早くから男性助産師を受け入れた国の一つです。

ただし、イギリスの助産師登録者のうち男性が占める割合は1%未満とされており、実際の現場で男性助産師に出会う機会はほとんどありません。妊産婦が男性の助産師を拒否する権利も認められており、配属先が限られるケースもあると報告されています。

オーストラリアでも男性の助産師資格取得は法律上認められています。オーストラリアでは助産師課程への男性入学者は徐々に増えてはいるものの、やはり全体のごくわずかにとどまっています。

イギリスの「midwife」は古英語で「女性と一緒にいる人」を意味する「mid wif」が語源です。職業名に性別は含まれておらず、男性でもmidwifeと呼ばれます。

北欧・アメリカの動向

北欧諸国は男女平等の先進国として知られていますが、助産師に関しては意外にも男性の参入はごくわずかです。スウェーデンやノルウェーでは法律上の制限はなく、男性も助産師の資格を取得できます。しかし、実際に助産師として活動する男性は極めて少数です。

アメリカでは、助産師(Certified Nurse-Midwife:CNM)の資格に性別要件はありません。男性でもCNMの資格取得は可能ですが、全米の助産師のうち男性の割合は1%未満とされています。

  • 北欧
    法的制限なし。ただし男性助産師の割合はごくわずか
  • アメリカ
    CNM資格に性別制限なし。男性取得者は全体の1%未満
  • ドイツ
    2020年から男性の助産師養成が認められた比較的新しい事例
  • フランス
    1982年に男性の助産師資格取得が認められたが、男性の割合は約2%程度

このように、男性助産師を法律上認めている国は多いものの、実際に男性が助産師として働くケースは世界的に見てもまれです。

これは法制度の問題だけでなく、出産という場面に対する社会的・文化的な意識が各国共通で影響していると考えられます。

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男性が周産期医療に関われる職種と実際の働き方

バインダーを持って病院内を歩く男性看護師

助産師の資格は取得できなくても、男性が周産期医療に携わる方法はいくつかあります。

ここでは、代表的な4つの職種とその具体的な働き方を紹介します。

男性が周産期医療で活躍できる職種
  • 産婦人科医:分娩管理から手術まで最も幅広く関われる
  • NICU看護師:新生児ケアで男性看護師のニーズあり
  • 産婦人科病棟看護師:合併症管理や術前後の看護で貢献
  • 胚培養士:不妊治療の専門技術職で性別制限なし
知っておこう!
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産婦人科医

男性が周産期医療に最も深く関われるのは、産婦人科の医師として働くルートです。医師免許には性別要件がなく、男性も産婦人科を専門にすることが可能です。

産婦人科医は分娩の管理から妊婦健診、帝王切開などの手術、ハイリスク妊娠への対応まで、周産期医療の中心的な役割を担います。男性産婦人科医は現在も多数活躍しており、日本産科婦人科学会の会員の中には男性が多く含まれています。

ただし、近年は女性医師の増加に伴い、妊産婦さんが女性医師を希望するケースも増えています。男性産婦人科医には、丁寧なコミュニケーションと配慮がより一層求められる時代になっているといえます。

転職活動するなら?

男性看護師として産婦人科病棟で働く

看護師免許には性別要件がないため、男性看護師が産婦人科病棟に配属されることは法律上可能です。

ただし、実際には配属先が限られるケースが多いのが現実です。

  • 助産師の独占業務である「正常分娩の介助」は男性看護師には行えない
  • 分娩室への立ち入りは施設の方針によって制限される場合がある
  • 妊産婦さんから男性看護師のケアを拒否されることもある
  • 産褥期(産後)のケアでは比較的受け入れられやすい傾向がある

男性看護師が産婦人科で活躍できる場面としては、妊娠高血圧症候群などの合併症管理や手術前後の看護、NICUとの連携業務などが挙げられます。

直接的な分娩介助はできなくても、チーム医療の一員として周産期医療に貢献するキャリアは十分に描けます。

NICUの看護師

NICU(新生児集中治療室)は、男性看護師が周産期医療に関わるうえで最も活躍しやすい領域の一つです。NICUでは早産児や低出生体重児、先天性疾患のある新生児の看護を行います。

NICUでは患者さんが新生児であるため、妊産婦への直接的なケアとは業務の性質が異なります。男性であることが業務上の障壁になりにくく、体力的にも長時間の集中が求められるため、男性看護師のニーズは一定程度あります。

NICUで男性看護師が担う業務例


  • 新生児のバイタルサイン管理・モニタリング
  • 人工呼吸器や保育器の管理
  • 経管栄養や点滴の管理
  • ご家族への説明やカンファレンスへの参加
  • 退院指導・在宅療養に向けた支援

NICU看護師としてのキャリアを積んだあとは、新生児集中ケア認定看護師の資格取得を目指すこともできます。

周産期医療の専門性を高めたい男性看護師にとって、NICUは有効な選択肢になります。

不妊治療クリニックの胚培養士

不妊治療の分野では、胚培養士(エンブリオロジスト)として周産期医療に関わる道もあります。胚培養士は体外受精や顕微授精における卵子・精子・胚(受精卵)の培養や管理を担当する専門職です。

胚培養士になるために看護師や助産師の資格は必須ではなく、生命科学系の大学を卒業していれば目指すことが可能です。性別による制限もありません。

  • 主な業務
    体外受精・顕微授精における卵子と精子の取り扱い、胚の培養・凍結保存
  • 必要な学歴
    生命科学系・農学系・医療系の大学卒業が一般的
  • 関連資格
    日本卵子学会認定の生殖補助医療胚培養士
  • 勤務先
    不妊治療専門クリニック、総合病院の生殖医療センター

胚培養士は妊産婦さんとの直接的な身体接触がないため、性別を理由に業務が制限されることはありません。

「命の始まりに関わりたい」という想いを持つ方にとっては、助産師とは異なる角度から周産期医療に貢献できる魅力的な職種です。

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よくある質問

男性が助産師の国家試験を受験することはできますか?

いいえ、受験できません。保健師助産師看護師法第3条で助産師は「女子」と定義されているため、男性は助産師養成課程への入学資格がなく、国家試験の受験資格も認められていません。

将来、法改正で男性も助産師になれるようになる可能性はありますか?

可能性はゼロではありませんが、現時点では法改正の具体的な動きはありません。2001年の名称変更時にも議論されましたが、妊産婦のプライバシーへの配慮を理由に見送られています。社会の価値観の変化次第で、将来的に再検討される可能性はあります。

男性看護師が産婦人科で分娩介助を行うことはできますか?

正常分娩の介助は助産師の独占業務であるため、男性看護師が行うことはできません。ただし、医師の指示のもとで異常分娩の看護補助や術前・術後の管理を担当することは可能です。

海外で助産師の資格を取得して日本で働くことはできますか?

海外で助産師資格を取得しても、日本で助産師として働くには日本の国家試験に合格する必要があります。しかし、日本の法律で助産師は「女子」に限定されているため、男性は日本国内で助産師として活動することはできません。

まとめ

日本では保健師助産師看護師法第3条により、男性は助産師の資格を取得できません。

「女子」に限定されている背景には、明治時代の産婆制度から続く歴史的な経緯と、妊産婦のプライバシーや心理的配慮という現代的な理由があります。

海外では男性助産師を認める国も増えてきていますが、実際に男性が助産師として活動するケースはどの国でもごく少数です。日本においても、2001年の法改正時に議論はありましたが、性別要件は維持されたまま現在に至っています。

しかし、男性が周産期医療に関わる道は決して閉ざされていません。産婦人科医やNICU看護師、胚培養士など、助産師以外にも妊娠・出産・新生児に関わる専門職は複数あります。法改正の動向を注視しつつ、現時点で自分が進めるキャリアの選択肢を広く検討してみてください。

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この記事を書いた人
医療キャリアナビ編集部

医療キャリアナビ編集部

記事の執筆・編集は、医療業界に精通した編集スタッフが担当しています。日々の転職支援業務で得た現場のリアルな情報と、厚生労働省をはじめとする公的機関のデータに基づき、信頼性の高いコンテンツをお届けしています。

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