訪問看護師の訪問マナー完全ガイド|身だしなみ・挨拶・立ち振る舞いの基本
訪問看護は、利用者さんのご自宅という生活の場に一人でうかがう仕事です。病院とは違い、看護師一人ひとりの第一印象や立ち振る舞いが、そのまま訪問看護ステーションの評価につながります。
「マナーに自信がない」「他人の家に上がるときの作法が分からない」と不安に感じる方は、最低限のマナーを身につけておく必要があります。
この記事では、訪問看護師に求められるマナーを、身だしなみ・挨拶・言葉遣い・立ち振る舞い・時間の守り方まで具体的に整理します。やってはいけないNG例やよくある質問もまとめているので、訪問前の確認や、これから訪問看護で働く方の準備に役立ててください。
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訪問看護でマナーが特に大切な理由

訪問看護のマナーは、病院での看護以上に丁寧さが求められます。その背景には、訪問看護ならではの働き方があります。まずは、なぜマナーがそれほど重要なのかを整理しておきましょう。
第一に、訪問看護は利用者さんの自宅というプライベートな空間に入って看護を行うためです。生活の場にお邪魔する以上、病院の病室とは違った配慮が欠かせません。
第二に、看護師が一人で訪問するため、その場での第一印象や対応の丁寧さが、そのまま訪問看護ステーション全体の印象に直結します。病院なら「組織」で見られますが、訪問看護では看護師一人が事業所の“顔”になります。
第三に、利用者さんやご家族との信頼関係がケアの質を大きく左右するためです。訪問看護は長期にわたって同じ利用者さんを担当することが多く、「また来てほしい」と思ってもらえる立ち振る舞いが、継続的なケアの土台になります。
訪問看護の需要は年々高まっています。訪問看護ステーションが増え、利用者さんとの接点が広がるなかで、一人ひとりの看護師のマナーが果たす役割はますます大きくなっています。
(2024年調査時点)
訪問看護の仕事全体については、こちらの記事もあわせてご覧ください。
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参考:一般社団法人全国訪問看護事業協会「訪問看護ステーション数 調査結果(調査研究)」
訪問看護師の身だしなみのマナー

訪問看護師の身だしなみは、清潔感が基本です。利用者さんに安心してケアを受けてもらうため、また事業所の印象を守るためにも、訪問前の身だしなみチェックを習慣にしましょう。派手すぎる化粧やヘアスタイル、大きなアクセサリーは避け、落ち着いた印象を心がけます。
訪問看護ならではの注意点もあります。まず爪です。爪が長すぎると、ケアの際に利用者さんの肌を傷つける恐れがあります。手のひら側から見て爪の先が出ない程度に短く整えておくと安心です。
次に靴下です。訪問看護では利用者さん宅に上がるため、靴を脱ぐ場面が必ずあります。靴下の汚れやほころびは意外と目につくため、清潔なものを身につけ、予備を一足用意しておくと万一のときも慌てずにすみます。
名札は、利用者さんやご家族が名前を確認しやすいよう、胸元の見やすい位置につけます。訪問前には鏡で全身をチェックし、清潔感のある状態でうかがう習慣をつけましょう。
利用者さんに安心してケアを受けてもらうため、また事業所の印象を守るためにも、訪問前のチェックを習慣にしましょう。基本は清潔感です。
| 爪 | 手のひら側から見て先が出ない長さに整える。長いとケア中に利用者さんの肌を傷つける恐れがある。 |
|---|---|
| 靴下 | 宅内では靴を脱ぐため、汚れ・ほころびのない清潔なものを。予備を一足用意しておくと安心。 |
| 名札 | 利用者さん・ご家族が名前を確認しやすいよう、胸元の見やすい位置につける。 |
| 化粧・髪 | 派手すぎる化粧やヘアスタイルは避け、落ち着いた印象を心がける。 |
| アクセサリー | 大きなアクセサリーは避ける。ケアの妨げや利用者さんを傷つける原因になりやすい。 |
訪問前には鏡で全身をチェックし、清潔感のある状態でうかがう習慣をつけましょう。
身だしなみの整え方は、転職の面接時にも通じる部分があります。年代や職場に合わせた身だしなみのポイントは、こちらの記事も参考になります。
看護師の求人を探す訪問時のマナー

訪問看護の訪問時は、玄関先での挨拶から言葉遣いまで、細やかな配慮が信頼関係の入口になります。ここでは、特に大切な「挨拶」と「言葉遣い」の2つに分けて見ていきましょう。
挨拶
挨拶は、ハキハキと明るい表情で行うのが基本です。玄関でインターホンを鳴らしたあとは、名札を見せながら所属と名前をはっきり伝えると、利用者さんやご家族も安心できます。訪問看護では初対面から関係を築いていくため、最初の挨拶が第一印象を決めるといっても差し支えありません。
マスクを着用している場合は、表情が伝わりにくくなります。声のトーンや目もと、身ぶりといった言葉以外のコミュニケーションも意識し、明るく丁寧な印象を届けましょう。
言葉遣い
言葉遣いは、適切な敬語を基本にします。利用者さんとの距離が近い訪問看護では、つい親しみが出て馴れ馴れしくなりがちですが、丁寧さは崩さないよう気をつけます。一方で、敬語一辺倒で事務的になりすぎると、かえって距離を感じさせてしまいます。温かみのある対応を心がけるとよいでしょう。
高齢の利用者さんに対して、子ども扱いをするような言葉遣いは避けます。「〜できたね」「上手だね」といった幼児に話しかけるような表現は、相手の尊厳を損なうおそれがあります。人生の先輩として敬意を持って接することが、信頼関係の基礎になります。
| 場面 | 避けたい言い方 | 望ましい言い方 |
|---|---|---|
| 呼び方 | NG「◯◯ちゃん」「□□くん」など愛称・下の名前で呼ぶ親しみのつもりでも、自己決定権を損なう表現になる | OK「◯◯さん」と名字にさん付け。ご本人の希望がある場合はその呼び方に従う初回訪問時に「どのようにお呼びすればよいですか」と確認するのが理想 |
| できたとき | NG「上手にできたね」「えらかったね」など、上から評価する言葉幼児に使う表現で、成人患者の尊厳を傷つけやすい | OK「順調ですね」「しっかりできています」「前回より安定してきましたね」事実を客観的に伝えることで、対等な関係を保てる |
| 距離感 | NGタメ口・「〜だよ」「〜じゃん」など馴れ馴れしい口調慣れが生じると無意識に丁寧語が抜けやすいので注意 | OK敬語を基本としながら「今日は少し寒いですね」など温かみのある一言を添える礼節と親しみは両立できる。敬語の中に笑顔と傾聴で関係を築く |
| 説明 | NG「褥瘡の処置をします」「SpO₂が低下しています」など専門用語をそのまま使う患者・家族が内容を理解できず、不安や不信感につながる | OK「床ずれの手当てをします」「血液中の酸素が少し下がっています」と言い換える説明後に「分かりにくいところはありましたか?」と一言確認すると理解度が上がる |
| 断り・制限 | NG「それはダメです」「やめてください」と否定語で切り捨てる拒絶と受け取られ、信頼関係を崩す原因になる | OK「安全のために、今は〇〇の方法にしましょう」と理由を添えて代案を示す「なぜ」を丁寧に伝えることで、患者・家族の納得感が高まる |
| 訪問終了時 | NG「じゃあ、また来ます」「お大事に」だけで慌ただしく帰る次回への不安を残したまま退出すると、患者の孤立感が増す | OK「次回は◯日の〇時にお伺いします。それまでに何かあればご連絡ください」と具体的に伝える次訪問日と連絡先を口頭で確認することで、在宅療養の安心感につながる |
利用者宅での立ち振る舞いのマナー

利用者さん宅での立ち振る舞いは、「他人の家にお邪魔している」という意識が土台になります。荷物を置く場所や座る位置にも配慮し、指定がなければご家族に一声かけてから使わせてもらいましょう。
ケアの際に収納を開けたり、タオルなどの私物をお借りしたりする場面では、必ず「開けさせていただきますね」とひと言添えてから行います。黙って物に触れると、たとえケアのためでも不信感につながりかねません。訪問に慣れてくると気の緩みが出やすいものですが、勝手知ったる振る舞いをせず、いつでもわきまえた態度を忘れないことが大切です。
利用者さんやご家族が、お茶やお茶菓子を用意してくださることもあります。厚意はありがたいものの、訪問看護師として受け取るのは原則お断りします。初回訪問のときに「訪問看護師はお客さまではないので、どうかお気遣いなさらないでください」と伝えておくと、その後もお互いに気持ちよく過ごせます。
また、利用者さんの生活リズムや習慣を尊重し、必要以上に生活へ踏み込まないことも重要です。ケアに関係のない部屋や私物には目を向けず、生活の場を守る姿勢を保ちましょう。
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時間・約束を守るマナー

訪問看護は、決められた時間で利用するサービスです。そのため、予定された訪問時間を守ることが基本のマナーになります。時間にルーズな対応は、利用者さんの一日の予定にも影響してしまいます。
注意したいのは、遅刻はもちろんのこと、早く着きすぎるのもマナー違反になる点です。利用者さんには、訪問前に身支度や準備の時間があります。予定より早くインターホンを鳴らすと、そのペースを乱してしまいます。目安として、5分前には近くに到着しておき、予定時間ぴったりにインターホンを鳴らすのが望ましい対応です。
やむを得ず遅れる場合は、分かった時点で早めに連絡します。その際は「遅れる理由」と「あと何分ほどで訪問できそうか」を必ず伝えましょう。見通しを共有するだけで、利用者さんの不安は大きく和らぎます。
訪問看護でやってはいけないNGマナー

訪問看護には、利用者さんの信用を失い、ステーションの評判低下につながってしまうNG行動があります。悪気がなくても信頼を損なうことがあるため、あらかじめ押さえておきましょう。
- 無断で私物に触れたり、収納を勝手に開けたりする
- 利用者さんやご家族の会話に割り込む
- 馴れ馴れしい態度をとったり、利用者さんを子ども扱いしたりする
- 勧められたお茶やお茶菓子を受け取る
- ステーションの外で、利用者さんが特定される会話をする
特に注意したいのが、最後の守秘義務に関わる点です。看護師には、業務上知り得た利用者さんの秘密を守る法律上の義務があります。
同僚との何気ない会話や、移動中の電話であっても、外部で利用者さんが特定されるような話をすることは避けなければなりません。
訪問先での会話・記録・病状はすべて「業務上知り得た秘密」に該当します。
守秘義務は、退職後も続きます。違反した場合は、6か月以下の拘禁刑または10万円以下の罰金が科されることがあると法律で定められています。利用者さんの情報は、SNSへの投稿も含めて厳重に扱いましょう。
参考:e-Gov法令検索「保健師助産師看護師法」 / e-Gov法令検索「個人情報の保護に関する法律」
訪問看護のマナーに関するよくある質問

訪問看護のマナーについて、現場でよく寄せられる疑問をまとめました。判断に迷いやすい場面ほど、あらかじめ対応を知っておくと安心です。
利用者さんにお茶を出されたら断ってもいい?
お茶やお茶菓子は、丁寧にお断りするのが原則です。「お気持ちだけありがたくいただきます」と感謝を伝えたうえで辞退すれば、失礼にはあたりません。むしろ受け取ってしまうと、毎回用意させる負担をかけたり、公平性を欠いたりすることにつながります。
初回に「お気遣いは不要です」と伝えておくと、その後の訪問がスムーズです。
利用者宅の駐車・駐輪はどうすればいい?
駐車や駐輪は、近隣への配慮が欠かせません。利用者さん宅に駐車スペースがあるか、どこに停めてよいかを事前に確認しておきましょう。近隣の迷惑になる路上駐車や、無断で私有地に停めることはトラブルのもとになります。
地域とステーションの信頼を守るためにも、停める場所は必ず確認します。
靴下を履き替えたいときはどのタイミング?
汚れや雨などで靴下を替えたいときは、玄関先で上がる前に済ませておくのが自然です。清潔な靴下を予備として持っておくと、利用者さん宅を汚さずにすみます。室内であらためて履き替える場合も、ご家族に一声かけ、玄関など邪魔にならない場所で手早く行いましょう。
散らかっていて生活に支障があるときの伝え方は?
生活に支障があるほど散らかっている場合は、頭ごなしに指摘せず、利用者さんの気持ちに寄り添って伝えます。「安全にケアを行うために、この動線だけ一緒に片づけてもよいですか」と、目的と範囲を具体的に示すと受け入れられやすくなります。
生活のやり方を否定するのではなく、あくまで安全と健康のための提案という姿勢が大切です。
- 訪問マナーは、研修や先輩看護師の同行訪問を通じて少しずつ身につきます
- 迷ったら「他人の家にお邪魔している」と立ち返ると、判断の軸がぶれません
- 分からないことは一人で抱えず、先輩やステーションに早めに相談しましょう
マナーは、研修や先輩看護師の同行訪問を通じて身についていきます。今は自信がなくても、経験を重ねるうちに自然と身につくものなので、心配しすぎる必要はありません。まずは基本を押さえ、実際の訪問で少しずつ慣れていきましょう。
まとめ
訪問看護のマナーは、利用者さんの生活の場にお邪魔するという意識が出発点です。清潔感のある身だしなみ、明るい挨拶と丁寧な言葉遣い、他人の家をわきまえた立ち振る舞い、そして時間を守ること。これらはすべて、利用者さんとの信頼関係を築くための土台になります。
訪問マナーの要点
- 身だしなみは清潔感が基本。爪は短く、靴下は清潔なものと予備を用意
- 挨拶は明るくハキハキと、言葉遣いは温かみのある敬語で
- 収納や私物に触れるときは必ず一声かける
- お茶やお茶菓子は丁寧にお断りする
- 時間は守る。早すぎる訪問もNG。遅れるときは理由と時間を連絡
- 守秘義務は退職後も続く。外部で利用者さんの話をしない
はじめは戸惑うことも多いかもしれませんが、マナーは研修や同行訪問を重ねるうちに身についていきます。基本を押さえて、利用者さんに「また来てほしい」と思ってもらえる訪問看護師を目指しましょう。





