訪問看護師で年収1000万は可能?必要な訪問件数と開業ルートを数字で検証
「訪問看護師なら年収1000万円も狙える」——求人サイトや口コミでそんな話を目にして、期待と半信半疑が入り混じっている方も多いのではないでしょうか。
結論からお伝えすると、雇われの立場のまま年収1000万円に届くのは、給与体系の構造上ほぼ不可能に近いのが実情です。ただし、まったくのゼロというわけでもありません。
この記事では、訪問看護師の平均年収から「高い」といわれる理由、歩合制で1000万円に必要な訪問件数、そして開業・業務委託という3つのルートまで、公的データと実際の求人データを使って数字で検証していきます。夢を諦めさせるためではなく、現実的にどこまで狙えるのかを一緒に見ていきましょう。
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訪問看護師が雇われのまま年収1000万円に届くのは難しい

最初に、いちばん大切な結論をお伝えします。訪問看護ステーションに雇用されている限り、給与体系の構造上、年収1000万円にはほぼ届きません。
これは能力や頑張りの問題ではなく、基本給・手当・賞与という給与の枠組み自体が1000万円を想定して作られていないためです。訪問看護師の平均年収は、各種調査でおおよそ400万〜500万円台とされています。看護師全体の平均でも約519万円です。
つまり1000万円は、平均のおよそ2倍という距離感になります。この「2倍」という数字を最初に押さえておくと、記事全体の話が理解しやすくなります。
平均年収の目安
平均年収
2倍の水準
とはいえ、可能性がまったく閉ざされているわけではありません。
年収1000万円に近づく道として、「ステーションの開業」「業務委託・フリーランス」「高歩合のステーションで件数を積む」という3つのルートがあります。
ここでは、まず「雇われのままでは難しい」という現実を正しく受け止めることが出発点になります。期待値を正しく整えたうえで、次の章から具体的な数字を見ていきましょう。
参考:厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査 結果の概況」
訪問看護師の平均年収

訪問看護師の年収を調べると、サイトによって数字がバラバラで戸惑った経験はないでしょうか。
これは、国の基幹統計(賃金構造基本統計調査)に「訪問看護師」という職種区分が存在せず、各社が求人データや独自アンケートなど異なる出典をもとに算出しているためです。出典が違えば数字が割れるのは当然なので、「どのデータに基づいているか」を確認する視点が大切です。
医療キャリアナビ掲載求人データ(2026年時点)では、訪問看護で働く正看護師の月給は中央値で32.0万円、求人票のなかで最も高いものは月額56.65万円でした。月額56.65万円を単純に12か月分に換算しても約680万円で、賞与を加えても1000万円には距離があることが分かります。
看護師全体の平均年収は約519万円(令和6年賃金構造基本統計調査)ですので、訪問看護はその水準と同等か、やや高めに位置づけられる働き方だといえます。
| データの種類 | 示す年収の目安 |
|---|---|
| 賃金構造基本統計調査(国の公的統計) | 約519万円 「訪問看護師」の独立区分なし。看護師全体の平均値として集計される |
| 医療キャリアナビ掲載求人データ(2026年時点・正看護師) | 月給中央値 32.0万円 最高 月額56.65万円(12か月換算で約680万円)※求人票ベース |
| 求人サイト投稿・独自調査(各社の一般的傾向) | 約400〜500万円台 出典・集計方法により差がある。数値を比べる際は調査元の確認が必要 |
参考:厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査 結果の概況」
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訪問看護師の給料が高いといわれる3つの理由

訪問看護の給料が「高い」といわれるとき、その正体は基本給の高さではなく、各種手当やインセンティブが積み上がった結果です。この構造を押さえておくと、後半の「歩合で1,000万円に必要な件数」の話もスムーズに理解できます。
ここでは、給料を押し上げる代表的な3つの要素を見ていきましょう。
オンコール手当がつく
訪問看護では、夜間や休日に利用者さんからの緊急連絡を受ける「オンコール(待機)」の体制をとっているステーションが多くあります。この待機を担当すると、1回あたりの待機手当が支給されるのが一般的です。
手当の金額はステーションによって幅があり、1回あたり1,000円〜2,000円程度を目安とする求人が多く見られます。
月に何回オンコールを担当するかによって、月収は数千円から数万円単位で変わってきます。夜勤のある病棟勤務とは異なる形で、時間外の対応が収入に反映されるのが訪問看護の特徴です。
オンコール手当の相場としてよく引用される調査には2014〜2015年頃の古いものもあり、現在の実額とは差がある場合があります。実際に応募を検討する際は、求人票に記載された最新の金額を確認することがおすすめです。
訪問件数に応じたインセンティブ制度
訪問看護では、担当した訪問件数に応じて追加報酬が支払われるインセンティブ(歩合)制度を導入しているステーションがあります。基本給に加えて、1件訪問するごとに一定額が上乗せされる仕組みです。
この制度がある職場では、件数を多くこなすほど月収が上がるため、「頑張り次第で高収入」という評判につながっています。ただし、後述するように件数には身体的な上限があり、無制限に稼げるわけではない点には注意が必要です。
緊急訪問時の出動手当
オンコールで待機しているだけでなく、実際に夜間や休日に緊急訪問へ出動した場合には、待機手当とは別に「出動手当」が支給されるステーションもあります。
利用者さんの急変や看取りの場面など、緊急訪問は精神的・体力的な負担が大きい業務です。その分が手当として収入に反映される形になります。ただし出動手当も1回あたり数千円程度が中心で、これ単独で年収を大きく押し上げるものではありません。
あくまで基本給・インセンティブ・各種手当の積み上げで年収が形づくられていると理解しておきましょう。
看護師の求人を探す参考:厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査 結果の概況」
訪問看護師が年収1000万円に近づく3つのルート

雇われのままでは難しいとお伝えしましたが、道がないわけではありません。現実的には「開業」「業務委託」「高歩合ステーションでの件数積み上げ」の3ルートがあり、それぞれ到達可能性と引き換えにするものが異なります。
まずは全体像をランク付けして把握しましょう。
| ルート | 1000万への 到達可能性 |
収入の 安定性 |
保障 (社保・有給・労災) |
|---|---|---|---|
|
開業
訪問看護ステーション を自ら立ち上げる |
○
もっとも高い 経営者の収入 |
✕
赤字リスクは 個人負担 |
△
自分で整備 次第 |
|
業務委託・フリーランス
高単価で独立 稼働する |
△
単価は高いが 件数に依存 |
△
稼働が途切れると 収入も止まる |
✕
社保・有給・労災 すべてなし |
|
高歩合ステーション で件数を積む 雇用のまま 収入を伸ばす |
✕
1日の件数に 物理的上限あり |
○
雇用の安定性 をそのまま維持 |
○
社保・有給・労災 すべて保持 |
訪問看護ステーションを開業する
もっとも1000万円に近づける可能性があるのが、自分で訪問看護ステーションを開業するルートです。経営が軌道に乗れば、代表者としての収入で1000万円台に届くケースもあります。
ただし注意したいのは、この収入は「看護師としての給与」ではなく「経営者としての収入」だという点です。
事業がうまくいけば大きなリターンがある一方、赤字になれば個人でその責任を負うことになります。開業に必要な条件は後の章で詳しく数字を使って検証します。
業務委託・フリーランスとして働く
近年増えているのが、特定のステーションと業務委託契約を結び、フリーランスの看護師として働くルートです。1件あたりの単価が雇用契約より高く設定されることが多く、件数を積めば高収入が期待できます。
一方で、業務委託には社会保険・有給休暇・労災がないという大きなデメリットがあります。健康保険は国民健康保険、年金は国民年金を自分で負担する必要があり、けがや病気で働けなくなっても補償はありません。
額面の単価が高くても、これらを差し引いた「手取りの実質」で比較することが大切です。
歩合制のステーションで訪問件数を積む
雇用されたまま収入を伸ばす現実的な方法が、歩合(インセンティブ)制度のあるステーションで訪問件数を積み上げるルートです。件数に応じて報酬が増えるため、体力と時間の許す範囲で月収を上げられます。
ただし、このルートには明確な「上限」が見えます。1日に訪問できる件数には物理的な限界があり、その上限がそのまま年収の上限になります。具体的な件数と年収の関係は、次の章で計算して確認します。
なお、管理者へ昇進して年収を上げる方法もありますが、管理者手当による上乗せは年収でおおよそ+50万〜100万円程度が目安で、これだけで1000万円に届くわけではない点は押さえておきましょう。
歩合制で年収1000万円に必要な訪問件数

ここがこの記事の核心です。歩合制のステーションで件数を積んだ場合、年収1000万円には一体何件の訪問が必要になるのか。実際に数字を置いて試算してみましょう。
歩合の単価は、1件あたり3,000円〜4,500円程度が一つの目安です。ここで、1日5件を月20日こなすモデルケースを考えます。この場合の訪問件数は月100件です。歩合単価を当てはめると、歩合部分は月30万〜45万円になります。
この歩合に基本給とオンコール手当を足しても、月収はおおむね50万円前後にとどまります。年収に換算すると、賞与を含めても600万〜700万円台が一つの上限ラインです。これでも十分に高い水準ですが、1000万円にはまだ距離があります。
(月60件)
(月100件)
(月160〜200件)
では1000万円に届かせるには何件必要でしょうか。
月収83万円前後を歩合中心で組み立てるには、1日あたり8〜10件の訪問が必要になる計算です。しかし訪問看護は、1件ごとに移動時間があり、訪問後には記録業務も発生します。
移動と記録を含めると、1日8〜10件を毎日こなし続けるのは身体的にほぼ成立しません。
つまり、歩合制で件数を積むルートには身体的な上限があり、そのままでは年収1000万円は現実的でないといえます。
どこまでなら現実的に狙えるのかは、記事後半の「現実的な着地点」で改めて整理します。
お探しの求人は?
参考:厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査 結果の概況」
開業して年収1000万円を得るために必要な条件

3ルートのうち、もっとも1,000万円に近いのが開業です。
ただし「開業すれば稼げる」という単純な話ではなく、相応の規模と条件が求められます。ここでは、必要な基準を公的データで確認していきましょう。
看護職員が常勤換算2.5人以上
訪問看護ステーションを開設するには、法律で定められた人員基準を満たす必要があります。指定居宅サービス等の基準では、保健師・看護師・准看護師などの看護職員を常勤換算で2.5人以上配置し、そのうち1人は常勤でなければならないと定められています。
看護職員の配置要件
常勤
1.0人常勤・非常勤
1.5人分常勤換算で
2.5人以上
合計2.5人以上のうち、少なくとも1人は常勤で配置
※保健師・看護師・准看護師などを組み合わせて配置できます。
「常勤換算2.5人」とは、常勤職員の勤務時間を基準に、全職員の勤務時間を割り戻して2.5人分以上になるという意味です。
つまり、自分ひとりでは開業できず、最低でも数名の看護職員を確保する必要があります。人件費は開業後の固定費として重くのしかかるため、採用計画は資金計画と一体で考えることが欠かせません。
法人格の取得と指定申請
訪問看護ステーションを運営するには、原則として法人であることが求められます。株式会社や合同会社、あるいはNPO法人などの法人格を取得したうえで、都道府県などから事業所としての「指定」を受ける必要があります。
法人設立には登記費用や定款作成の手間がかかり、指定申請には人員・設備・運営基準を満たしていることを示す書類の準備が必要です。開業準備には、これらの手続き期間も見込んでおきましょう。
損益分岐点を超える利用者数
開業して代表者が高収入を得るには、事業として利益を出し続ける必要があります。ここで参考になるのが、厚生労働省の介護事業経営実態調査です。令和5年の調査では、訪問看護の収支差率(売上に対する利益の割合)は5.8%でした。
つまり、仮に年間売上5,000万円のステーションでも、利益は約290万円にとどまります。事業の利益だけで代表者が1,000万円を得ようとすると、単純計算で年間売上1.7億円規模が必要です。
現実には、代表者自身も訪問に入り「自分の給与+事業の利益」で年収を組み立てるのが実態です。損益分岐点を超える安定した利用者数の確保が、すべての前提になります。
収支差率
利益はわずか5.8
ステーションの利益
約17分の1
1,000万円を得るには
必要(試算)
開業資金と半年分の運転資金
開業時には、事務所の賃料・敷金、電子カルテやタブレットなどの設備、車両、そして人件費といった初期費用がかかります。加えて重要なのが、売上が入金されるまでのタイムラグに備えた運転資金です。
介護報酬や医療保険の請求は、サービス提供から入金までに約2か月かかります。この間も家賃と給与の支払いは発生するため、最低でも半年分程度の運転資金を手元に確保しておくことがおすすめです。
日本政策金融公庫でも、介護・看護サービス業の創業では自己資金と運転資金の準備が重要だと案内されています。
参考:e-Gov法令検索「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」 / 厚生労働省「令和5年介護事業経営実態調査結果の概要」 / 日本政策金融公庫「介護・看護サービス業の創業ポイント」
年収1000万円を目指すときのリスク

収入の話だけで判断すると、思わぬ落とし穴にはまることがあります。年収1000万円を目指す過程には、収入と引き換えに失うものや、個人で背負うリスクが存在します。
特に医療職としては、収入だけでなくケアの質という視点を欠かさないことが大切です。ここでは代表的な4つのリスクを整理します。
オンコールで生活が拘束される
歩合や手当で収入を伸ばそうとすると、オンコールの担当回数が自然と増えていきます。オンコール中は、夜間でも休日でも緊急連絡に備えて待機する必要があり、遠出や飲酒ができないなど生活が拘束されます。
収入は増えても、プライベートの自由やまとまった休息が削られていきます。心身の健康を保てなければ長く続けられないため、収入と生活のバランスをどこで取るかを事前に考えておくことが大切です。
件数を追うとケアの質が落ちる
歩合制で件数を増やすほど収入は上がりますが、1件あたりにかけられる時間や心の余裕は減っていきます。訪問件数を追い求めるあまり、利用者さん一人ひとりへのケアが雑になってしまっては本末転倒です。
訪問看護は、利用者さんやご家族との信頼関係のうえに成り立つ仕事です。件数と収入だけを追うとケアの質が低下しかねないという点は、医療職として常に意識しておきたい視点だといえます。
開業は赤字リスクを個人で背負う
開業は1000万円にもっとも近いルートですが、その分リスクも大きくなります。利用者さんが計画どおりに集まらなければ、家賃・人件費・設備費といった固定費が重くのしかかり、赤字を個人で負うことになります。
雇われであれば、経営がうまくいかなくても給与は保証されます。しかし経営者になると、事業の浮き沈みがそのまま自分の収入と生活に直結します。開業を検討する際は、うまくいかなかった場合の資金的な余裕まで見込んでおくことが欠かせません。
業務委託は社会保険も有給もない
業務委託・フリーランスは単価が高い一方で、社会保険・有給休暇・労災の対象外になります。健康保険は国民健康保険、年金は国民年金を全額自己負担することになり、会社員のような労使折半の恩恵はありません。
さらに、業務中にけがをしても労災は適用されず、有給休暇もないため休めばそのまま収入が減ります。額面の単価だけで判断すると、こうした負担を見落としがちです。契約前に、保険や補償の面まで含めて総合的に比較することが大切です。
| 観点 | 雇用(常勤) | 業務委託・フリーランス | 開業(経営者) |
|---|---|---|---|
| 収入の安定性 |
安定
毎月固定給
経営が傾いても給与は保証
|
変動
単価は高いが案件次第で不安定
空き期間は無収入になるリスクあり
|
変動
上限は高いが経営状況に左右
利益が出なければ給与ゼロも
|
| 社会保険 |
あり
健康保険・厚生年金
保険料は会社と労使折半
|
自己負担
国民健康保険・国民年金
全額自己負担(折半なし)
|
自分で加入
国保・国民年金 or 法人なら社保
法人化しない限り全額自己負担
|
| 有給休暇 |
あり
法定どおり付与
休んでも賃金が支払われる
|
なし
休んだ分は収入ゼロ
体調不良でも補償されない
|
自分次第
法的義務はなし
休むほど売上に直結
|
| 労災 |
あり
業務上の怪我・疾病に適用
訪問中の事故も対象
|
対象外
労災保険は適用されない
特別加入で個別に備える必要あり
|
—
経営者は対象外
民間保険などで自衛が必要
|
| リスクの負い方 |
小
リスクは会社が負担
倒産リスクも組織が吸収
|
中
収入変動を自己負担
案件減・体調不良がそのまま損失に
|
大
赤字を個人で負う
経営責任はすべて自分に帰属
|
参考:e-Gov法令検索「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」
訪問看護師の現実的な着地点は年収600万〜700万円

ここまで1,000万円のハードルの高さを見てきましたが、大切なのは「諦めること」ではなく「達成可能なラインを知ること」です。訪問看護師が現実的に狙える着地点は、おおむね年収600万〜700万円台。基本給にオンコール手当・訪問件数に応じたインセンティブ・管理者手当を積み上げることで、この水準が見えてきます。
実際、医療キャリアナビ掲載求人データ(2026年時点)でも、訪問看護で働く正看護師の求人には月額50万円超のものがあり、最高では月額56.65万円の求人も確認できました。月給ベースでこの水準に届けば、賞与を含めた年収は600万〜700万円台に到達します。
さらに、訪問看護ステーションの数は年々増え続けており、令和7年度は全国で18,743か所が稼働しています。在宅医療のニーズ拡大を背景に、好条件の求人も生まれやすい環境が整いつつあるといえるでしょう。
- 基本給+オンコール+インセンティブ+管理者手当で年収600〜700万円台は現実的にねらえる
- 月給50万円超の正看護師求人も一定数あり、実在する水準です
- 「年収1000万円」の求人票は歩合込みの“上限提示”が多いので、基本保証額を必ず確認
なお、こうした好条件の求人は数が限られており、公開前に応募が決まってしまうことも少なくありません。
まずは今どれくらいの求人が出ているのかを、実際に見てみることから始めてみましょう。
転職活動するなら?
参考:一般社団法人全国訪問看護事業協会「訪問看護ステーション基本情報」
訪問看護師の年収についてよくある質問

ここまで読んで「結局、自分の場合はどうなの?」と気になった方へ。
訪問看護師の年収にまつわるよくある疑問を、データと事実ベースでまとめました。
Q.
年収1,000万円の訪問看護求人は実在する?
A.「年収1,000万円」と書かれた訪問看護の求人票は、確かに見かけることがあります。ただしその多くは、歩合やインセンティブを最大限にこなした場合の「上限提示」であることに注意が必要です。つまり、基本給として1,000万円が保証されているわけではなく、相当な件数とオンコールをこなして初めて到達し得る理論上の上限を示しているケースが多いのです。求人票の年収欄を見るときは、それが基本保証額なのか、歩合込みの最大値なのかを必ず確認しましょう。実際の求人でどのような条件が提示されているかは、求人データで確認するのが確実です。
Q.
訪問看護未経験でも開業できる?
A.法律上の指定基準を見る限り、開業に「訪問看護の実務経験」が必須要件として定められているわけではありません。人員・設備・運営の基準を満たせば、制度上は開業が可能です。ただし、これはあくまで制度上の話です。実務では、訪問看護特有のアセスメントや緊急時対応、多職種との連携、介護報酬の請求実務など、経験がものをいう場面が数多くあります。未経験での開業はリスクが高く、一定期間の実務経験を積んでからの開業が現実的だといえます。
Q.
オンコールなしでも年収は上げられる?
A.オンコールなしでも年収を上げることは可能ですが、その分は基本給や日中の訪問件数、管理者としての手当で補う形になります。オンコール手当がない分、同じ年収に届くには日中の稼働を高める必要があります。近年は、オンコールを専任スタッフに集約したり、ICTを活用して負担を分散したりするステーションも増えています。生活スタイルを優先しつつ収入も確保したい場合は、オンコール体制がどうなっているかを求人選びの段階で確認するのがおすすめです。
Q.
訪問看護は病棟より年収が下がる?
A.一概に下がるとはいえません。夜勤回数の多い病棟と比べると、訪問看護は夜勤がない分だけ手当が減り、年収が下がるように見えることもあります。一方で、オンコール手当やインセンティブがある訪問看護では、病棟と同等かそれ以上の年収になるケースも珍しくありません。医療キャリアナビ掲載求人データ(2026年時点)でも、訪問看護の正看護師の月給は中央値32.0万円と、決して低い水準ではありません。
まとめ
訪問看護師の年収1000万円について、数字で検証してきました。最後に要点を振り返ります。
まず、雇われの立場のまま年収1000万円に届くのは、給与体系の構造上ほぼ困難です。看護師全体の平均年収は約519万円で、1000万円は平均の約2倍という距離感でした。歩合制で件数を積んでも、1日5件・月100件で年収600万〜700万円台が上限となり、1000万円には1日8〜10件という身体的に成立しにくい件数が必要になります。
1000万円にもっとも近いのは開業ですが、常勤換算2.5人以上の人員確保や、収支差率5.8%という薄利のなかで損益分岐点を超える利用者数の確保が前提になります。業務委託は単価が高い反面、社会保険も有給もありません。
現実的な着地点は、年収600万〜700万円台です。無理に1000万円を追うよりも、この水準を安定して実現できる職場を選ぶことが、収入とケアの質、そして自分の生活を守ることにつながります。まずは今の自分の条件に合う求人を探すところから、一歩を踏み出してみましょう。





