三次救急とは?該当する医療機関の種類・対象疾患と働く看護師の仕事内容
救急医療について調べていると、一次救急・二次救急・三次救急という区分に必ず行き当たります。なかでも三次救急は「最後の砦」と呼ばれ、命に関わる重篤な患者さんを引き受ける役割を担っています。
ただ、三次救急という言葉の説明だけを読んでも、実際にどんな医療機関が該当するのか、どんな疾患を扱うのか、そこで働く看護師がどんな仕事をしているのかまでは見えてきません。就職先・転職先として三次救急の病院を考えている方であればなおさらです。
この記事では、三次救急の定義と対象疾患、該当する医療機関の種類を公的資料をもとに整理したうえで、求人票からは読み取りにくい現場の実態と、三次救急で働く看護師の仕事内容・やりがい・大変さまでを解説します。
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三次救急とは重篤な救急患者に対応する救急医療

三次救急とは、一次救急・二次救急では対応できない重篤な救急患者さんを受け入れる、救急医療体制の最上位に位置づけられた区分です。日本の救急医療は重症度に応じて三段階に機能分化しており、その最終的な受け皿が三次救急にあたります。
三次救急を担うのは、厚生労働省の要綱に基づいて都道府県が整備する救命救急センターです。厚生労働省「救急医療対策事業実施要綱」では、救命救急センターの運営方針として「原則として、重症及び複数の診療科領域にわたるすべての重篤な救急患者を24時間体制で受け入れる」と定められています。
つまり三次救急の特徴は、単に重症であることだけではありません。複数の診療科にまたがる状態であっても、診療科の垣根を越えて一施設で受け止める点にこそ、二次救急までとの決定的な違いがあります。
三次救急の対象となる患者
三次救急の対象は、生命の危険が切迫している、あるいはその可能性が高い患者さんです。具体的には次のような状態が想定されます。
- 心肺停止、またはそれに近い状態にある
- 意識障害・呼吸不全・循環不全など生命維持機能が破綻している
- 複数の臓器や部位に重い損傷があり、単一の診療科では対応できない
- 二次救急医療機関で受け入れたものの、より高度な治療が必要と判断された
数のうえで見ると、三次救急の対象になる患者さんは救急搬送全体のごく一部です。総務省消防庁「令和7年版 救急救助の現況」によると、令和6年中に救急自動車で搬送された6,769,172人のうち、傷病程度が重症だったのは7.3%でした。
救急搬送の大半は、一次救急・二次救急が受け止めていることが分かります。
三次救急は、この限られた重症例に対して人員と設備を集中させる仕組みだといえます。
三次救急で扱う主な疾患
三次救急で扱う疾患は、救命処置と集中治療をただちに始めなければ命に関わるものが中心です。
代表的なものとしては、以下が挙げられます。
三次救急で扱う代表的な疾患・病態
厚生労働省「救急医療対策事業実施要綱」でも、救命救急センターの施設基準として、集中治療室(ICU)に加えて急性期の重篤な心臓病に対応する心臓病専用病室(CCU)、脳卒中専用病室(SCU)、小児救急専門病床、重症外傷専用病室を必要に応じて設けることが示されています。扱う疾患の幅が、そのまま病床の構成に表れている形です。
さらに、広範囲熱傷・指肢切断・急性中毒といった特殊疾病については、後述する高度救命救急センターが担う位置づけになっています。
- 同じ脳梗塞・心筋梗塞でも、すべてが三次救急に運ばれるわけではありません
- 発症からの時間・意識レベル・全身状態などから、その場で重症度が判断されます
- 疾患名ではなく「生命の危険がどの程度切迫しているか」が振り分けの基準です
三次救急が担う役割
三次救急の役割は、重篤な患者さんの受け入れだけにとどまりません。厚生労働省「救急医療対策事業実施要綱」は、救命救急センターに対して三つの役割を求めています。
一つ目は後方支援です。救命救急センターは初期救急医療施設および第二次救急医療施設の後方病院と位置づけられ、これらの医療施設や救急搬送機関からの救急患者さんを24時間体制で必ず受け入れるものとされています。地域の救急医療が行き詰まったときの最終的な引き受け手ということです。
二つ目は病床の確保です。同要綱では、適切な救急医療を受けて生命の危険が回避された患者さんについては、積極的に併設病院の病床や転送元の医療施設へ転床させ、常に必要な病床を確保するよう定められています。次の重篤な患者さんを受け入れられる状態を保つことまでが役割に含まれます。
三つ目は臨床教育です。救命救急センターは、医学生・臨床研修医・医師・看護学生・看護師・救急救命士などに対する救急医療の臨床教育を行うものとされており、地域の救急医療を担う人材を育てる場としても機能しています。
救命救急センターに求められる3つの役割
参考:厚生労働省「・救急医療対策事業実施要綱(◆昭和52年07月06日医発第692号)」 / 総務省消防庁「令和7年版 救急救助の現況」
一次救急・二次救急との違い

三次救急の位置づけは、一次救急・二次救急と並べて見ると分かりやすくなります。三つの区分は上下関係というより、重症度に応じた役割分担だと捉えるのが実態に近いといえます。
区分を分ける軸は、大きく四つあります。想定する重症度、入院や手術に対応できるか、患者さんがどのように来院するか、そしてどんな医療機関が担うかです。ここでは三次救急の側から見た違いを整理します。
一次救急・二次救急・三次救急の違い
| 比較する軸 | 一次救急 | 二次救急 | 三次救急 |
|---|---|---|---|
| 想定する重症度 | 入院や手術を必要としない軽症 | 入院や手術を要する救急患者さん | 複数の診療科領域にわたるすべての重篤な救急患者 |
| 入院・手術への対応 | 外来での診療にとどまり非対応 | 入院・手術に対応 | 24時間体制で集中治療・緊急手術に対応 |
| 主な来院方法 | 患者さん本人の来院が前提 | ウォークイン63.0%が中心/救急車等36.0% | ウォークイン60.0%が中心/救急車等38.8% |
| 担う医療機関 | 休日夜間急患センター・在宅当番医制 | 病院群輪番制病院・共同利用型病院 | 救命救急センター(高度救命救急センター等を含む) |
※三次救急は救急車での搬送よりウォークインでの受診が多い
なお、この三区分は患者さんが自分で選ぶものではありません。救急隊による重症度の判断や、受診した医療機関からの転送によって振り分けられるのが基本です。
一次救急との違い
一次救急(初期救急)は、入院や手術を必要としない軽症の患者さんを、外来で診療する体制です。休日夜間急患センターや在宅当番医制がこれにあたり、厚生労働省「救急医療対策事業実施要綱」では休日の診療は午前8時から午後6時まで、夜間の診療は午後6時から翌日午前8時までと定義されています。
三次救急との違いは、まず対応できる範囲です。一次救急は自力で歩いて受診できる患者さんが前提であり、入院設備や手術室を備えているとは限りません。一方の三次救急は、24時間体制の集中治療と緊急手術を前提に人員と設備を整えています。
もう一つの違いは開いている時間帯です。一次救急は休日・夜間という限られた時間帯を補う仕組みであるのに対し、三次救急は年間を通じて24時間体制を維持します。
二次救急との違い
二次救急は、入院や手術を必要とする救急患者さんに対応する体制です。病院群輪番制病院や共同利用型病院がこれにあたり、地域の複数の病院が当番を組んで対応するケースが多くなっています。
二次救急と三次救急の違いは、入院や手術ができるかどうかではありません。どちらも入院・手術に対応します。分かれ目になるのは、複数の診療科にまたがる重篤な状態に一施設で対応できるかどうかです。三次救急は、救急科の専門医と各診療科の医師、集中治療の設備を同じ施設内に集約することで、この対応を可能にしています。
もう一つの違いが、受け入れ体制の常時性です。二次救急は輪番制で当番日を分担している施設が多く、当番日以外は救急対応を行わない場合があります。これに対し三次救急は、当番の有無にかかわらず年間を通じて受け入れる前提で運営されています。
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参考:厚生労働省「・救急医療対策事業実施要綱(◆昭和52年07月06日医発第692号)」 / 厚生労働省「救急医療提供体制の現況調べ(令和4年度実績)について」
三次救急を担う医療機関の種類

三次救急を担うのは、都道府県知事の要請を受けて整備され、厚生労働大臣が適当と認めた救命救急センターです。厚生労働省「救命救急センター設置状況一覧」によると、令和7年4月1日現在で全国に312か所が設置されています。
この312か所は一律ではなく、機能や規模によっていくつかの類型に分かれます。求人票では単に「救命救急センター」とだけ書かれていることも多いため、応募前に施設の類型を確認しておくと、扱う症例の幅を見立てやすくなります。
応募前に確かめたい3つのポイント
- 高度救命救急センターかどうか(広範囲熱傷・急性中毒などの特殊疾病を扱うか)
- 専用病床の規模(概ね20床以上か、10〜20床未満の地域救命救急センターか)
- 小児の重篤例を受け入れる体制があるか
救命救急センター
救命救急センターは三次救急の基本形にあたる医療機関です。厚生労働省「救急医療対策事業実施要綱」では、センターの責任者が直接管理する概ね20床以上の専用病床を持ち、24時間体制で重症および複数の診療科領域にわたるすべての重篤な救急患者さんに対応する高度な診療機能を有するものとされています。
人員面では、三次救急医療の専門的知識と技能を持つ専任の責任者を置き、内科・外科・循環器科・脳神経外科・心臓血管外科・整形外科・小児科・眼科・耳鼻科・麻酔科・精神科などの医師を必要に応じて適時確保できる体制が求められます。看護師についても、重篤な救急患者さんの看護に必要な専任の看護師を適当数配置することとされています。
なお、最寄りの救命救急センターまで概ね60分以上かかる地域については、専用病床10床以上20床未満の「地域救命救急センター」を整備できる例外規定があります。令和7年4月1日現在で19か所が該当し、規模は小さいものの三次救急の役割を担っています。
高度救命救急センター
高度救命救急センターは、救命救急センターのうち特に高度な診療機能を有するものとして厚生労働大臣が認めた施設です。令和7年4月1日現在で全国に50か所あります。
一般の救命救急センターとの違いは、担当する疾患の範囲が上乗せされている点にあります。厚生労働省「救急医療対策事業実施要綱」では、高度救命救急センターは救命救急センターに収容される患者さんのうち、特に広範囲熱傷、指肢切断、急性中毒等の特殊疾病患者を受け入れるものとされています。
これらの特殊疾病は、専用の設備や特定の診療科の技術がそろっていなければ治療が難しいものばかりです。たとえば広範囲熱傷では専用の病床と重症熱傷患者用の備品が、指肢切断では再接着のためのマイクロサージャリー技術が求められます。高度救命救急センターは、こうした症例を地域を越えて引き受ける役割を担っているといえます。
特殊疾病に対応するための設備保有率
※全国の救命救急センター301施設のうち各設備を保有する施設の割合
小児救命救急センター
小児救命救急センターは、小児の重篤な救急患者さんに対応する三次救急の枠組みです。厚生労働省「救急医療対策事業実施要綱」では、救命救急センターのうち小児救急専門病床(小児専門集中治療室)を設置する場合は、小児病棟を有し広域搬送による受入が可能な医療機関を対象とし、小児の救急患者さんへの集中治療に対応する小児科医師と看護師を専任で確保することとされています。
ただし、その数は多くありません。厚生労働省「救急医療提供体制の現況調べ(令和4年度実績)について」の調査票B3を集計すると、令和5年4月1日時点で小児救命救急センターとして掲載されているのは全国で19施設です。都道府県によっては設置がなく、広い区域から搬送を受ける前提で運営されています。
小児の重篤例に特化した経験を積みたい場合は、成人中心の救命救急センターとは選択肢の数が大きく異なる点を押さえておく必要があります。
参考:厚生労働省「救命救急センター設置状況一覧」 / 厚生労働省「・救急医療対策事業実施要綱(◆昭和52年07月06日医発第692号)」 / 厚生労働省「救急医療提供体制の現況調べ(令和4年度実績)について」
三次救急の病院で働く前に知っておきたい実態

ここまでは制度上の定義を見てきました。ただ、三次救急の病院を就職先・転職先として考えるのであれば、定義から受ける印象と現場の実態のずれを知っておくことが欠かせません。
「三次救急指定病院=重篤な患者さんだけを診る職場」というイメージで応募すると、入職後にギャップを感じることがあります。ここでは、厚生労働省の調査データから見える三つの実態を整理します。
三次救急の病院は二次救急も受け入れている
三次救急を担う病院が、重篤な患者さんだけを受け入れているわけではありません。むしろ実態は逆です。
厚生労働省「救急医療提供体制の現況調べ(令和4年度実績)について」の調査票A3(令和5年4月1日時点・301施設)を集計すると、救命救急センターが1年間に受け入れた救急患者さん3,726,217人のうち、ウォークイン(独歩・自家用車・民間救急車等)での受診が6割を占めています。救急車で運ばれてくる患者さんより、自力で受診する患者さんのほうが多いということです。
これは制度上も想定された姿です。前述のとおり救命救急センターは初期救急医療施設・第二次救急医療施設の後方病院と位置づけられており、二次救急の機能をあわせて担っている病院が少なくありません。
救命救急センター301施設 年間受入3,726,217人の来院方法
さらに、受診した患者さんが全員入院するわけでもありません。同じ調査票A3では、センターの年間外来患者実数3,562,160人に対し、入院患者実数は866,715人でした。割合にすると入院に至るのは約24%で、残りは外来対応で完結していることになります。
入職しても救命救急センターに配属されるとは限らない
もう一つ知っておきたいのが、配属の問題です。三次救急指定の病院に入職できても、救命救急センターの部署に配属されるとは限りません。
調査票A3を集計すると、救命救急センターを持つ301施設では、病院全体の看護師のうちセンター専任は中央値で8.8%にとどまります。病床数で見ても同じ傾向で、センターが運営する病床は病院全体のごく一部にすぎません。
救命救急センターは、大規模病院のなかの一部門という位置づけであることが数字にも表れています。
※いずれも中央値。センターは病院組織の一部門にあたります
求人票に「三次救急指定病院」「救命救急センターを併設」と書かれていても、それは病院の機能を示すものであって、配属先を約束するものではありません。救急に携わりたい場合は、応募段階で配属部署の確認や希望の申し出をしておくことが大切です。
重篤患者以外への対応も業務に含まれる
三次救急の現場では、救命処置そのもの以外の業務が大きな比重を占めます。
分かりやすいのが、患者さんの流れの調整です。厚生労働省「救急医療対策事業実施要綱」は、生命の危険が回避された患者さんについて、積極的に併設病院の病床や転送元の医療施設等へ転床させ、常に必要な病床を確保するよう求めています。
実際、調査票A3でセンターを退院・退出した患者さんの転帰を集計すると、最も多いのは転科・転棟で、過半数を占めていました。
救命救急センター 退院・退出患者さんの転帰内訳
- 転科・転棟58.8%
- 退院(自宅療養・通院)28.1%
- 退院(在宅医療)0.8%
- 転院4.5%
- 死亡7.9%
転科・転棟が過半数を占める一方、死亡や自宅への退院など転帰は多岐にわたります。
センターを出たあとも院内で治療が続く患者さんが多く、状態が落ち着いた方を次の場所へ送り出す業務が日常的に発生します。
また、救急要請のすべてを受け入れられるわけでもありません。同じ調査では、消防機関からの搬送受入要請のうち一定数が受け入れに至っていないことが分かります。受け入れ可否の判断や他施設との調整も、現場の業務に含まれるということです。
看護師の求人を探す参考:厚生労働省「救急医療提供体制の現況調べ(令和4年度実績)について」 / 厚生労働省「・救急医療対策事業実施要綱(◆昭和52年07月06日医発第692号)」
三次救急で働く看護師の仕事内容

三次救急で働く看護師の仕事は、搬送されてきた直後の救命処置から、集中治療室での全身管理、そして次の療養先への橋渡しまで、患者さんの経過に沿って段階的に広がります。
厚生労働省「救急医療対策事業実施要綱」でも、救命救急センターには重篤な救急患者さんの看護に必要な専任の看護師を適当数配置することとされており、専門性の高い看護が前提となっています。ここでは代表的な四つの業務を見ていきます。
初療室での救命処置
初療室(救急外来の処置室)は、搬送されてきた患者さんが最初に運び込まれる場所です。ここでの看護師の役割は、医師の指示を待って動くことよりも、チームの一員として同時並行で処置を進めることにあります。
具体的には、次のような処置に同時進行で関わります。
- モニターの装着とバイタルサインの確認
- 静脈路の確保、輸液・輸血・薬剤の準備と投与
- 気道確保や人工呼吸器装着の介助
- 心肺蘇生時の胸骨圧迫や除細動の対応
これと並行して、救急隊からの申し送りを受け止め、記録を残し、緊急検査や手術の手配を進めます。
数分単位で状態が変わる患者さんを前に、複数の作業を並行して判断する力が求められる場面です。経験を積むほど、次に何が必要になるかを先読みして動けるようになります。
集中治療室での全身管理
初療室での処置を終えた患者さんは、集中治療室(ICU)や救命救急センターの専用病床へ移り、全身管理の段階に入ります。
人工呼吸器や補助循環装置、持続的血液浄化療法などの機器を使いながら、呼吸・循環・意識・体温・排泄といった全身状態を継続して観察します。鎮静・鎮痛の管理、感染予防、体位変換や口腔ケアといった日常のケアも、重症患者さんでは合併症を防ぐ重要な処置になります。
三次救急の集中治療室では、複数の診療科にまたがる状態の患者さんを受け持つことも珍しくありません。臓器ごとの知識をつなぎ合わせて全身を捉える視点が必要になる点が、一般病棟との大きな違いです。
患者家族への対応
三次救急では、患者さん本人が意識障害などで意思疎通できない状態で搬送されるケースが多くあります。そのため、ご家族への対応が看護業務の重要な一部を占めます。
到着したご家族への状況説明の場を整え、医師からの説明に同席し、理解を確認しながら意思決定を支えます。予期しない発症や事故で運ばれてきた場合、ご家族は心の準備がないまま重い決断を迫られることになります。説明を受け止められる状態にあるかを見極めながら関わる姿勢が欠かせません。
面会時間の調整や、他院・他施設への転院に伴う説明もご家族対応の一環です。医療者側の都合だけで進めず、ご家族の不安や生活の事情をくみ取ることが求められます。
他院からの受け入れ調整
三次救急には、他の医療機関で対応が難しくなった患者さんを引き受ける役割があります。この受け入れ調整も看護師が関わる業務です。
消防機関や他院からの受け入れ要請に対し、現在の病床の空き状況、対応可能な診療科の当直体制、実施中の処置などを踏まえて、受け入れの可否を医師とともに判断します。すべての要請に応えられているわけではありません。
※消防機関からの搬送受入要請に対し、実際に受け入れた件数の割合
受け入れが決まれば、到着までに必要な物品や人員を整え、関係部署へ連絡を回します。逆に状態が落ち着いた患者さんを転院・転棟させる際は、送り出す側として情報を引き継ぎます。地域の救急医療の流れを止めないための調整役という側面が、三次救急の看護師にはあります。
転職活動するなら?
参考:厚生労働省「・救急医療対策事業実施要綱(◆昭和52年07月06日医発第692号)」 / 厚生労働省「救急医療提供体制の現況調べ(令和4年度実績)について」
三次救急で働くやりがい

三次救急は負担の大きい職場として語られがちですが、そこでしか得られない経験があるからこそ志望する看護師が集まります。ここでは代表的な三つのやりがいを挙げます。
救命の最前線に立てる
三次救急の最大のやりがいは、救命の結果を自分の目で確かめられることです。
心肺停止の状態で運ばれてきた患者さんが呼吸を取り戻し、意識を回復し、ご家族と言葉を交わすまでを一連の流れで見届けられる職場は多くありません。厚生労働省「救急医療提供体制の現況調べ(令和4年度実績)について」の調査票A3を集計すると、救命救急センターを退院・退出した患者さんのうち28.1%が自宅療養・通院での退院に至っています。
自分たちの関わりが患者さんの生死に直結する場面に立ち会うことは、大きな責任であると同時に、看護の手応えを最も強く感じられる部分でもあります。
高度な急性期看護のスキルが身につく
三次救急の現場では、急性期看護の技術と判断力が短期間で蓄積されます。
人工呼吸器や補助循環装置の管理、循環動態のアセスメント、急変時の初期対応など、一般病棟では経験する機会が限られる場面に日常的に関わります。厚生労働省「救急医療対策事業実施要綱」でも、救命救急センターの専任看護師は専門的な三次救急医療に精通しているとの客観的評価を受けていることが望ましいとされ、日本看護協会の救急看護認定看護師などが例に挙げられています。
こうした環境で培った経験は、集中治療室、手術室、フライトナースなど、他の急性期領域へ移る際にも評価されやすいものです。将来の選択肢を広げる意味でも意義があります。
多職種連携の経験を積める
三次救急は、一人の患者さんに多くの職種が同時に関わる現場です。
厚生労働省の調査票A3を集計すると、救命救急センターには救急を担当する専任の医師のほか、救急科専門医、臨床工学技士、転棟・退院調整を行う担当者が配置されています。ここに診療放射線技師、臨床検査技師、薬剤師、理学療法士などが加わります。
各診療科の医師が入れ替わり関わるなかで、患者さんの状態を最もそばで見ているのは看護師です。情報を集約して伝える立場に立つ機会が多く、チーム医療の要としての動き方を実践のなかで身につけられます。
看護師の求人を探す参考:厚生労働省「救急医療提供体制の現況調べ(令和4年度実績)について」 / 厚生労働省「・救急医療対策事業実施要綱(◆昭和52年07月06日医発第692号)」
三次救急で働く大変さ

やりがいの裏側には、相応の負担があります。入職後のミスマッチを避けるためにも、大変さの中身を具体的に知っておくことが大切です。
心身の負担が大きい
三次救急は24時間体制で受け入れを続ける職場です。夜間・休日を問わず重症患者さんが搬送されるため、夜勤を含む交代勤務が前提になります。
業務そのものの密度も高くなります。処置の同時進行、急変対応、限られた時間での判断が重なり、勤務中の緊張が途切れにくい環境です。加えて、センターの平均在院日数は病院全体より短く、受け持つ患者さんが次々に入れ替わるため、そのつど状態を把握し直す負担もあります。
平均在院日数で見る、患者さんの入れ替わりの速さ
※センターの平均在院日数は病院全体の半分以下で、担当する患者さんが次々と入れ替わります
体力面の負担と、精神的な緊張の両方が同時にかかる点が三次救急の特徴です。勤務形態や夜勤回数、休憩の取りやすさは施設によって差があるため、応募前に確認しておきたい部分といえます。
今のあなたの状況は?
救命できないケースに向き合う
三次救急では、力を尽くしても救命に至らないことがあります。厚生労働省「救急医療提供体制の現況調べ(令和4年度実績)について」の調査票A3を集計すると、救命救急センターを退院・退出した患者さんのうち7.9%が死亡という結果でした。
急な事故や発症で運ばれてきた患者さんを看取る場面では、ご家族の悲嘆に立ち会うことにもなります。準備のない別れに直面したご家族への対応は、経験を重ねても負担が軽くなるとは限りません。
一方で、こうした負担を個人で抱え込ませない取り組みも広がっています。心理的な負担を分かち合う体制を整えている職場では、次のような仕組みが用意されています。
- デスカンファレンス(亡くなった患者さんの経過をチームで振り返る場)の開催
- リエゾンチームや公認心理師による職員向けの相談窓口
- 上司・先輩との定期的な面談やデブリーフィング
職場見学や面接の際に、こうしたサポート体制の有無を確認しておくと、働き続けるうえでの安心材料になります。
経験が浅いうちは配属されにくい
三次救急の現場は、新卒や経験の浅い看護師がすぐに配属される部署ではないことが一般的です。急変対応の判断が求められる場面が多く、一定の臨床経験を前提にした人員配置がなされているためです。
配属や転職で評価されやすいのは、救急・集中治療の実務経験に加えて、関連する資格を持っていることです。具体的には次のようなものが挙げられます。
- ACLS(二次救命処置)などの蘇生に関するプロバイダー資格
- JPTEC・JNTECなど外傷の病院前・病院内対応に関する資格
- 日本看護協会のクリティカルケア認定看護師(旧・救急看護認定看護師)
- 集中治療領域や急性・重症患者看護の専門看護師
厚生労働省「救急医療対策事業実施要綱」でも、救命救急センターの専任看護師について日本看護協会の救急看護認定看護師などが客観的評価の例として示されています。
資格取得を支援する制度がある施設も多いため、まず急性期病棟や集中治療室で経験を積み、段階的に三次救急を目指す進み方が現実的です。三次救急を志望先に含めるなら、まずは急性期の経験を積める職場を探すところから始めてみてください。
参考:厚生労働省「救急医療提供体制の現況調べ(令和4年度実績)について」 / 厚生労働省「・救急医療対策事業実施要綱(◆昭和52年07月06日医発第692号)」
まとめ
三次救急とは、一次救急・二次救急では対応できない重篤な救急患者さんを、24時間体制で受け入れる救急医療の最上位区分です。担うのは都道府県が整備する救命救急センターで、令和7年4月1日現在で全国に312か所あり、うち高度救命救急センターが50か所、地域救命救急センターが19か所となっています。小児を対象とする小児救命救急センターは全国で19施設と限られています。
一方で、三次救急の病院=重篤な患者さんだけを診る職場ではありません。救命救急センターが受け入れた救急患者さんの60.0%はウォークインでの受診であり、入院に至るのは約24%です。病院全体の看護師のうちセンター専任は中央値で8.8%にとどまり、入職しても救命救急センターに配属されるとは限りません。
三次救急で働く看護師の仕事は、初療室での救命処置、集中治療室での全身管理、ご家族への対応、他院からの受け入れ調整と多岐にわたります。急性期看護のスキルが身につく反面、心身の負担や看取りへの向き合いといった大変さもあります。
志望する場合は、施設の類型と救急の受け入れ実態、配属部署の考え方、そして心理的なサポート体制までを確認したうえで判断することをおすすめします。気になる点があれば、転職支援サービスを通じて職場の内情を事前に聞いておくのも一つの方法です。





