言語聴覚士の年収はいくら?勤務先・年代別の相場と収入を上げる方法
言語聴覚士として働くうえで、年収がどのくらいになるのかは気になるところです。ただ、検索して出てくる金額はサイトごとにばらつきがあり、どれを目安にすればよいのか分かりにくくなっています。
この記事では、厚生労働省「賃金構造基本統計調査」の令和7年(2025年)の結果をもとに、言語聴覚士の年収相場を月収と賞与の内訳・年代別・勤務先別に分けて整理します。あわせて、公的統計を読むときに押さえておきたい前提と、額面年収から社会保険料や税を差し引いた手取りの目安、収入を上げるための現実的な選択肢も解説します。
数字そのものだけでなく、その数字がどこから来ているのかまで確認したうえで、進路や転職の判断材料にしてください。
気になることを
キャリアパートナーに相談できます
気になる内容をお選びください(複数選択可)
言語聴覚士の平均年収

公的統計から言語聴覚士の年収を算出すると、推計で約443万6千円です。厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(令和7年)で、言語聴覚士が含まれる職種区分の月額給与と年間賞与を合算した金額です。
ただし、この区分は言語聴覚士だけを集計したものではありません。理学療法士・作業療法士・視能訓練士と合わせた4職種の合算値である点を、先に押さえておいてください。
まずは、この443万6千円がどのような内訳になっているのかを見ていきます。
月収と賞与の内訳
令和7年の調査では、この区分の平均像は次のようになっています。
- きまって支給する現金給与額:309,900円(月額)
- 所定内給与額:298,200円(月額)
- 年間賞与その他特別給与額:717,200円
- 平均年齢:36.2歳/平均勤続年数:8.4年
きまって支給する現金給与額を12か月分にして年間賞与を足すと、309,900円×12か月+717,200円で4,436,000円になります。これが冒頭の約443万6千円の根拠です。
注目したいのは、きまって支給する現金給与額(309,900円)と所定内給与額(298,200円)の差です。差額の11,700円が時間外・休日・深夜労働に対する手当にあたり、年間に換算すると約14万円です。所定内実労働時間は月157時間、超過実労働時間は月5時間となっており、残業が収入を大きく押し上げる働き方ではないことが読み取れます。
賞与は月給の約2.3か月分にあたる水準です。年収に占める割合は約16%で、賞与の有無や支給月数が年収を大きく左右します。
推計年収443万6千円の構成比
所定内給与・残業等手当は月額を12倍して年間賞与と合算した内訳(概算)。
男女別の年収
同じ調査を男女別に見ると、男性はきまって支給する現金給与額が325,100円、年間賞与が766,900円で推計年収は約466万8千円です。女性はきまって支給する現金給与額が292,700円、年間賞与が660,600円で推計年収は約417万3千円になります。
差は約49万5千円で、女性の年収は男性の約89%にあたります。平均勤続年数が男性9.2年、女性7.6年と差があることが、金額差の一因と考えられます。
一方、全産業の一般労働者では、所定内給与額で見た女性の水準は男性の76.6%です。これと比べると、リハビリ職を含むこの区分は男女差が小さい部類にあたります。
資格に基づく職種で、給与テーブルが職種単位で設定されやすいことが背景にあると考えられます。
男女別の推計年収と勤続年数
男性
4,668,100円
勤続年数 9.2年
女性
4,173,000円
勤続年数 7.6年
全産業の平均との比較
賞与を含む年収は産業や職種で集計の条件が変わるため、同じ調査のなかで比べられる所定内給与額(月額)で並べます。
- 全産業の一般労働者:340,600円
- 医療,福祉の一般労働者:315,700円
- 理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・視能訓練士の区分:298,200円
全産業の平均と比べると月額で約4万2千円低い水準で、比率にすると約88%です。医療,福祉全体と比べても月額で約1万7千円低くなっています。
ただし、この差をそのまま「給与水準が低い」と読むのは早計です。医療,福祉の平均年齢は44.0歳で、この区分の36.2歳より8歳ほど高くなっています。年齢構成が違えば平均賃金も変わるため、年代をそろえて比べる必要があります。年代別の推移は後半のH2で確認してください。
参考:e-Stat「賃金構造基本統計調査 1 職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)」 / 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況」
お探しの求人は?
言語聴覚士の年収データを読むときの注意点

ここまでの金額をそのまま自分の将来の収入として受け取る前に、この数字が持つ限界を知っておいてください。金額そのものより、数字の出どころを理解しておくことのほうが、進路や転職の判断では役に立ちます。
言語聴覚士の年収データを読むときに押さえておきたい前提は、大きく3つあります。
言語聴覚士単独の公的統計はない
賃金構造基本統計調査の職種区分は「理学療法士,作業療法士,言語聴覚士,視能訓練士」の4職種合算です。言語聴覚士だけを切り出した平均年収は、この調査からは算出できません。
この区分の労働者数は279,650人です。一方、日本言語聴覚士協会の会員動向(令和8年3月31日現在)によると、正会員数は22,511人です。協会に入会していない有資格者もいるため単純比較はできませんが、4職種のなかで言語聴覚士が占める割合は限られることが分かります。つまり、この443万6千円という数値は、人数の多い理学療法士の水準に強く引っ張られた金額です。
インターネット上で「言語聴覚士の平均年収は約443万円」と紹介されている数値は、ほぼすべてこの合算値です。出典を示さずに金額だけを載せている記事もあるため、金額を見たら必ず調査名と集計区分を確認することをおすすめします。
この区分の対象労働者は279,650人
言語聴覚士だけを取り出した平均年収は公表されていない。よく見る「言語聴覚士の平均年収」はこの合算値
勤務先の構成比が平均値を左右する
平均値は、どの職場で働く人がどれだけ含まれているかで動きます。日本言語聴覚士協会の会員動向によると、有職者の勤務先は医療分野が60.70%で最も多く、医療と介護の複合が16.71%、介護のみが6.56%、福祉が5.26%、学校養成所が2.20%となっています。
医療分野が6割を占め、そのほかに介護・福祉・教育と幅広く分かれています。複数の施設種類にまたがる勤務先は複合として集計されています。
- 医療60.70%
- 医療と介護の複合16.71%
- 介護6.56%
- 福祉5.26%
- 学校養成所2.20%
- その他(複合施設・研究教育機関など)8.57%
※有職の会員22,511人に対する割合。複数の施設種類にまたがる勤務先は複合として集計
そして職場が違えば給与水準も変わります。医療キャリアナビ掲載求人データ(2026年時点)では、言語聴覚士の正社員求人の月給中央値は病院が250,000円、訪問リハビリが300,000円で、月5万円の差があります。
この構成比が変われば平均年収も動くため、平均値は「自分の年収の予想値」ではなく「全体の重心」として読むのが適切です。
実際の水準は求人票の提示額で確かめる
自分が受け取る金額に近いのは、統計の平均値よりも実際に募集されている求人票の提示額です。
医療キャリアナビ掲載求人データ(2026年時点)では、言語聴覚士の正社員求人の月給は中央値270,000円で、最も低い提示額は160,000円、最も高い提示額は1,905,000円と幅があります。
求人票を見るときは、次の項目を確認してください。
- 基本給と各種手当が分けて書かれているか
- 賞与の支給月数と、支給実績があるか
- 昇給の有無と、1年あたりの昇給幅
- 退職金制度の有無
- みなし残業(固定残業代)が月給に含まれていないか
同じ求人データでは、賞与・ボーナスありの求人が72%、退職金制度ありが52%です。月給が同じでも、賞与と退職金の有無で生涯の収入は大きく変わります。月給だけを比べて判断しないよう注意してください。
参考:e-Stat「賃金構造基本統計調査 1 職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)」 / 日本言語聴覚士協会「会員動向」
【年代別】言語聴覚士の年収の推移

年収は経験を重ねるにつれて上がっていきます。賃金構造基本統計調査(令和7年)の年齢階級別データから、20代前半から60代までの推移を確認します。
なお、ここで使う数値も「理学療法士,作業療法士,言語聴覚士,視能訓練士」の4職種合算値です。言語聴覚士単独の年代別データは公的統計には存在しないため、水準そのものより上がり方のカーブに注目して読んでください。
20代の年収
20代前半と後半では、年収に大きな差があります。20〜24歳はきまって支給する現金給与額が253,900円、年間賞与が328,400円で、推計年収は約337万7千円です。
20〜24歳の平均勤続年数は1.4年で、賞与の算定期間が短い人が多く含まれます。そのため賞与が328,400円と低く出ており、2年目以降は賞与が満額になることで年収が一段上がります。25〜29歳ではきまって支給する現金給与額が279,700円、賞与が621,500円まで増え、推計年収は約397万8千円で、20代前半との差は約60万円になります。
初任給の目安としては、令和7年の新規学卒者の賃金(全産業・男女計)が専門学校卒230,700円、大学卒262,300円です。言語聴覚士の養成課程は専門学校と大学の両方にあるため、学歴によって出発点が異なります。
30代の年収
30代は年収が着実に伸びる時期です。30〜34歳はきまって支給する現金給与額が298,200円、年間賞与が736,900円で、推計年収は約431万5千円です。
35〜39歳になると、きまって支給する現金給与額が316,900円、年間賞与が768,300円まで増え、推計年収は約457万1千円になります。平均勤続年数は30〜34歳で7.1年、35〜39歳で9.5年です。20代後半から35〜39歳までの約10年で年収は約60万円増えており、1年あたりの上がり幅は10万円前後という計算になります。
この時期は主任・係長といった役職につく人が出始める一方で、結婚や出産で働き方を変える人も多く、個人差が広がりやすい年代です。
40代の年収
40代に入ると、年収は本格的に上がります。40〜44歳はきまって支給する現金給与額が333,200円、年間賞与が822,900円で、推計年収は約482万1千円です。
45〜49歳ではきまって支給する現金給与額が354,500円、年間賞与が943,400円まで増え、推計年収は約519万7千円で500万円台に入ります。賞与は20〜24歳の約2.9倍で、平均勤続年数は14.3年です。管理職や部門責任者として処遇される人が増えることが、この伸びを支えていると考えられます。
50代以降の年収
50代前半が年収のピークです。50〜54歳はきまって支給する現金給与額が377,700円、年間賞与が955,600円で、推計年収は約548万8千円になります。これは20〜24歳の約1.6倍の水準です。
55〜59歳ではきまって支給する現金給与額が363,900円、年間賞与が885,200円で推計年収は約525万2千円と、わずかに下がります。定年や再雇用の影響が出る65〜69歳になると、きまって支給する現金給与額が253,200円、年間賞与が320,900円で、推計年収は約335万9千円まで下がります。
なお60〜64歳は推計年収が約592万6千円と高く出ていますが、この年齢階級の労働者数は2,570人と少なく、少数の高額回答に影響されやすい数値です。60代以降の金額は参考程度に見てください。
年代別の推計年収カーブ(20〜24歳→65〜69歳)
数値は推計年収(万円)。横軸は各年代の開始年齢(20=20〜24歳、65=65〜69歳)。点線でつながる60(※)は労働者数が少なく参考値。
- 上がり方は「勤続年数」に連動している
- 20代前半の低さは賞与の算定期間が短いことが主な要因
- 60代の数値は対象人数が少なく振れ幅が大きい
参考:e-Stat「賃金構造基本統計調査 5 職種(小分類)、年齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)」 / 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況」
転職活動するなら?
【勤務先別】言語聴覚士の年収の傾向

言語聴覚士の職場は医療・介護・福祉・教育に広がっており、給与水準もそれぞれ違います。ここからは公的統計に加えて、実際の求人の提示額から勤務先別の傾向を見ていきます。
言語聴覚士単独の勤務先別の公的な賃金統計は存在しないため、月給の水準は求人データの中央値で比較します。金額はいずれも正社員求人の月給です。
- 求人3,111件のうち、訪問リハビリが939件で最多です
- 病院559件、放課後等デイサービス395件、老健330件と続きます
- 賞与あり72%・退職金あり52%。月給だけで比べないのがコツです
病院
病院は言語聴覚士が最も多く働く職場です。日本言語聴覚士協会の会員動向では、医療分野の勤務者が60.70%を占めています。
医療キャリアナビ掲載求人データ(2026年時点)では、病院の月給中央値は250,000円で、求人件数は559件です。月給の中央値で見ると、主な勤務先のなかでは低めの水準にあたります。
一方で病院には、金額に表れにくい強みがあります。
- 症例数が多く、摂食嚥下障害や失語症など幅広い症例を担当できる
- リハビリ部門の規模が大きく、相談できる先輩や同僚がいる
- 新人教育やプリセプター制度など教育体制が整いやすい
- 組織が大きいぶん昇給テーブルや退職金制度が整っている職場が多い
経験を積む場としての価値や生涯収入まで含めると、月給の順位だけで判断するのは早計です。
介護老人保健施設
介護老人保健施設(老健)は、在宅復帰を目指す高齢の利用者さんへのリハビリを担う職場です。月給中央値は260,250円、求人件数は330件で、病院より1万円ほど高い水準です。
老健では言語聴覚士の配置数が少なく、施設に1人という体制も珍しくありません。ひとりで判断する場面が増えるぶん、経験者が優遇されやすい傾向があります。日本言語聴覚士協会の会員動向では、介護分野のみの勤務者が6.56%、医療と介護の複合が16.71%です。
訪問リハビリテーション
訪問リハビリは、主な勤務先のなかで月給の水準が最も高い職場です。月給中央値は300,000円で、病院と比べると月5万円、年間で60万円の差になります。求人件数は939件で、言語聴覚士の求人のなかで最も多い区分です。
金額が高い背景には、移動を伴う勤務であることや、訪問件数に応じたインセンティブが設定される場合があることなどが挙げられます。そのぶん、単独訪問での判断が求められ、天候や交通事情にも左右される働き方です。
収入面だけで選ぶと負担とのバランスを崩しやすいため、訪問件数の目安や移動手段の支給条件まで確認しておくことをおすすめします。
児童発達支援などの福祉施設
小児分野は言語聴覚士のニーズが高い領域です。医療キャリアナビ掲載求人データ(2026年時点)では、児童発達支援の月給中央値が265,000円(266件)、放課後等デイサービスが257,500円(395件)です。
2つを合わせると661件で、言語聴覚士の求人全体の約2割にあたります。成人・高齢者向けの職場が多数を占めるなかでは限られた枠であり、小児分野を希望する場合は求人が出るタイミングを逃さないことが大切です。
月給の水準は病院より高く、訪問リハビリよりは低い位置にあります。日本言語聴覚士協会の会員動向では、福祉分野のみの勤務者は5.26%です。言語発達の遅れや構音障害への支援が中心で、保護者への助言も業務に含まれます。
児童発達支援 と 放課後等デイサービス の求人比較
養成校などの教育機関
言語聴覚士の養成校で教員として働く道もあります。日本言語聴覚士協会の会員動向では、学校養成所の勤務者が2.20%、研究・教育機関が0.96%です。合わせても3%程度で、募集そのものが少ない進路です。
給与水準の参考として、賃金構造基本統計調査(令和7年)の全分野平均では、大学講師・助教(高専含む)の推計年収が約712万円、大学准教授が約876万円です。ただしこれは分野を問わない平均値で、言語聴覚士の養成校教員に限定した数値ではありません。金額をそのまま自分の見込みとして受け取らないよう注意してください。
教員として採用されるには、修士や博士の学位、臨床経験、研究業績などが求められるのが一般的です。臨床を続けながら大学院に進み、段階的に移る人もいます。
参考:日本言語聴覚士協会「会員動向」 / e-Stat「賃金構造基本統計調査 1 職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)」
言語聴覚士の求人を探す言語聴覚士の年収と手取りの違い

ここまで見てきた金額は、すべて額面の年収です。実際に生活に使えるのは、そこから社会保険料と税を差し引いた手取りです。
年収443万6千円と聞いても、手元に残るのはその8割程度です。生活設計を考えるうえでは、額面より手取りを基準にしたほうが判断を誤りません。
手取り額の計算方法
手取りは、額面の年収から次の4つを差し引いて求めます。
- 社会保険料(健康保険・厚生年金・雇用保険)
- 介護保険料(40歳以上のみ)
- 所得税
- 住民税
社会保険料の令和8年度の料率は、健康保険が東京都で9.85%、厚生年金が18.3%で、いずれも会社と本人が半分ずつ負担します。雇用保険は一般の事業で本人負担0.5%です。加えて令和8年4月分から、子ども・子育て支援金0.23%が健康保険料率とは別に加わっています。健康保険と厚生年金は月給そのものではなく、標準報酬月額という区分に当てはめて計算します。
所得税は、年収から給与所得控除を引いて給与所得を出し、そこから社会保険料控除と基礎控除などを引いた課税所得に税率をかけて求めます。年収360万円超660万円以下の給与所得控除は「収入金額×20%+44万円」です。基礎控除は、令和7年分と令和8年分については上乗せの特例があり、合計所得が132万円超336万円以下の場合は88万円になります。
住民税は、課税所得に対する所得割10%に、均等割4,000円と森林環境税1,000円を加えた金額です。前年の所得をもとに計算されるため、社会人1年目は住民税がかからず、2年目から差し引かれる点に注意してください。
手取りを考えるときの目安
- 手取り率は年収の75〜80%が目安
- 40歳になると介護保険料が加わり手取りが下がる
- 住民税は社会人2年目から差し引かれる
- 賞与からも社会保険料と所得税が引かれる
年収400万円台の手取りの目安
言語聴覚士の推計平均年収は443万6千円で、400万円台に収まります。この帯の手取りを試算してみます。
試算の条件は、会社員・独身・扶養なし・40歳未満・協会けんぽ東京都支部・雇用保険は一般の事業・賞与なしで12等分としました。保険料率は令和8年度、所得税は令和7年分以降、住民税は令和8年度の基準です。
年収400万円の手取りは約316万円(月約26万3千円)で、手取り率は約79.0%です。内訳は社会保険料が598,952円、所得税が65,395円、住民税が175,600円です。推計平均年収の443万6千円なら手取りは約348万円(月約29万円)、年収450万円なら約354万円(月約29万5千円)になります。
つまり年収が50万円増えても、手取りの増加は約38万円にとどまります。増えた分の2割強は社会保険料と税に回るため、昇給や転職で年収が上がるときは手取りベースで比べてください。
年収別の手取り率の比較
年収が50万円増えても、手取り率は78〜79%の範囲でほぼ一定。
また40歳になると介護保険料(令和8年度1.62%・労使折半)が加わります。年収450万円の場合、本人負担は年間で約3万7千円増え、手取りはその分下がります。
参考:全国健康保険協会「令和8年度の協会けんぽの保険料率は3月分(4月納付分)から改定されます」 / 日本年金機構「厚生年金保険の保険料」 / ハローワーク立川「令和8(2026)年度 雇用保険料率のご案内」 / 国税庁「No.1410 給与所得控除」 / 国税庁「No.1199 基礎控除」 / 国税庁「No.2260 所得税の税率」
今のあなたの状況は?
理学療法士・作業療法士との年収差

同じリハビリ職である理学療法士・作業療法士と比べて、言語聴覚士の年収は低いのではないかと気にする人もいます。結論としては、公的統計でも求人データでも、3職種の間に明確な年収差は確認できません。
理由は単純です。賃金構造基本統計調査では、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・視能訓練士が同じ職種区分にまとめられており、職種ごとの数値がそもそも公表されていません。「言語聴覚士は理学療法士より年収が低い」という比較は、公的統計では成立しないのです。
そこで実際の求人の提示額を見ると、医療キャリアナビ掲載求人データ(2026年時点)の正社員求人の月給中央値は、3職種の差が月2,500円以内に収まっています。給与水準としてはほぼ同じです。医療機関や施設の多くが、リハビリ職を職種で分けずに同一の給与テーブルで扱っていることが背景にあると考えられます。
| 比べる項目 | 理学療法士 | 作業療法士 | 言語聴覚士 |
|---|---|---|---|
| 正社員の月給中央値 | 272,500円 | 270,000円 | 270,000円 |
| 求人件数 | 6,409件 | 5,371件 | 3,111件 |
月給の差は2,500円以内。一方で求人件数は言語聴覚士が理学療法士の約半分
一方で明確に違うのは求人の数です。言語聴覚士の求人件数は3,111件で、理学療法士の約半分にとどまります。日本言語聴覚士協会の正会員数は22,511人と有資格者の母数自体が小さいため、求人数も少なくなります。選べる職場の数が限られる分、条件の良い求人を見つけたときの判断が重要になります。
つまり年収を左右するのは職種の違いではなく、どの職場・どの地域で、どれだけの経験を積んで働くかです。3職種で迷っている場合も、年収の差より働き方や対象となる患者さんの違いで選ぶほうが納得しやすくなります。
参考:e-Stat「賃金構造基本統計調査 1 職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)」 / 日本言語聴覚士協会「会員動向」
言語聴覚士の求人を探す言語聴覚士が年収を上げる方法

言語聴覚士の年収は、勤続年数・役職・職場の選択で変わります。ここでは公的データで裏づけられる範囲に絞って、収入を上げる方法を5つ紹介します。
すぐに効くものと、時間をかけて効いてくるものがあります。自分の年代と状況に合うものから検討してみてください。
経験年数を積む
もっとも確実なのは、経験を積み続けることです。賃金構造基本統計調査(令和7年)の年齢階級別データでは、推計年収は20〜24歳の約337万7千円から45〜49歳の約519万7千円まで上がります。20代前半と40代後半で約1.5倍の差です。
この区分の平均勤続年数は8.4年で、20〜24歳では1.4年、45〜49歳では14.3年です。勤続年数の伸びと年収の伸びが連動していることが読み取れます。
短期間で転職を繰り返すと勤続年数が積み上がらず、昇給テーブルの上のほうに乗りにくくなります。転職を検討する際は、移った先で何年働くかまで含めて考えることをおすすめします。
管理職を目指す
役職につくかどうかは、年収に大きく影響します。賃金構造基本統計調査(令和7年)の役職別の賃金(全産業・男女計・所定内給与額)を見ると、非役職者を100とした指数で係長級が128.6、課長級が170.4、部長級が204.8です。係長級になるだけで月額が約8万9千円上がる計算になります。
ただしリハビリ部門は組織が小さく、主任・係長・科長といったポストの数が限られます。役職を目指すなら、リハビリ部門の規模が大きい職場や、法人内に複数の事業所がある職場のほうが機会は多くなります。転職時に組織図や役職者の人数を確認しておくと判断しやすくなります。
認定言語聴覚士を取得する
日本言語聴覚士協会には、専門性を高める仕組みとして認定言語聴覚士の制度があります。協会の生涯学習プログラムで基礎プログラムと専門プログラムを修了し、臨床経験6年目以上になると認定言語聴覚士講習会に参加できます。
基礎プログラムと専門プログラムは同時進行で受講できますが、基礎プログラムの修了証交付申請を行っていない段階では専門プログラムの交付申請はできません。取得までに数年かかる制度であり、早めに着手するほど選択肢が広がります。
なお、認定言語聴覚士の取得によって給与がいくら上がるかを示す公的な統計はありません。資格手当の額は職場ごとの規定によります。金額を期待して取るというより、担当できる領域を広げ、役職や転職の選択肢を増やすための投資と考えるのが現実的です。
給与水準の高い職場へ転職する
短期間で年収を動かしたい場合、もっとも効果が大きいのは職場を変えることです。医療キャリアナビ掲載求人データ(2026年時点)の月給中央値では、訪問リハビリが300,000円、病院が250,000円で月5万円・年間60万円の差があります。
同じ求人データでは、正社員求人の月給は最低160,000円から最高1,905,000円まで幅があります。経験年数が同じでも、職場によって提示額はまったく違います。
ただし金額だけで選ぶと、業務量や勤務形態が合わずに続かないことがあります。年間休日120日以上の求人が24%、残業ほぼなしの求人が18%というように、条件面には偏りがあります。転職先を比べるときは、給与とあわせて次の点も確認しておくと安心です。
- 年間休日と完全週休2日かどうか
- 残業時間の目安と、みなし残業が含まれていないか
- 訪問系なら1日の訪問件数と移動手段の支給条件
- 昇給の幅と、退職金制度の有無
- 言語聴覚士が何人いるか(ひとり配置かどうか)
非常勤の勤務を組み合わせる
常勤の勤務に非常勤を組み合わせて収入を増やす方法もあります。賃金構造基本統計調査(令和7年)の短時間労働者のデータでは、この職種区分の1時間当たり所定内給与額は1,993円です。短時間労働者全体の平均1,518円の約1.3倍にあたります。
同じ調査では、この区分の短時間労働者の平均は実労働日数が月13.0日、1日当たりの所定内実労働時間が5.8時間です。この条件で計算すると月約15万円になります。日数を絞って週1日だけ働く形なら、月3万〜4万円程度が目安です。
ただし副業を認めるかどうかは職場の就業規則によります。医療キャリアナビ掲載求人データ(2026年時点)では、副業・WワークOKと明示された求人は1%にとどまります。始める前に必ず就業規則を確認し、必要な場合は許可を得てください。年間20万円を超える副業所得がある場合は、確定申告も必要になります。
参考:e-Stat「賃金構造基本統計調査 5 職種(小分類)、年齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)」 / e-Stat「賃金構造基本統計調査 1 短時間労働者の職種(小分類)別1時間当たり所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)」 / 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況」 / 日本言語聴覚士協会「資格をお持ちの方へ」
まとめ
言語聴覚士の年収は、公的統計から算出すると推計で約443万6千円です。ただしこの数値は理学療法士・作業療法士・視能訓練士を含む4職種合算値であり、言語聴覚士単独の平均年収を示す公的統計は存在しません。金額を見るときは、必ず調査名と集計区分まで確認してください。
年代別では20代前半の約337万円から50代前半の約548万円まで上がり、勤続年数の伸びとほぼ連動します。勤務先別では、求人の月給中央値で訪問リハビリが300,000円、病院が250,000円と月5万円の差があります。理学療法士・作業療法士との差は月2,500円以内で、年収を左右するのは職種よりも職場と経験です。
手取りは額面の8割程度で、年収400万円なら約316万円、450万円なら約354万円が目安です。年収が50万円増えても手取りは約38万円しか増えないため、条件を比べるときは手取りベースで考えてください。
収入を上げたい場合は、経験年数を積むこと、役職を目指すこと、給与水準の高い職場へ移ることが柱になります。まずは今の求人でどのくらいの提示額が出ているかを確認し、自分の水準と照らし合わせてみることから始めてみてください。





