言語聴覚士の将来性は?不安視される面や今後のSTに求められること
言語聴覚士として働いていると、「この先も需要はあるのだろうか」「リハビリ職は飽和すると聞くけれど大丈夫だろうか」と不安になる場面があるかもしれません。これから言語聴覚士を目指す方にとっても、将来性は進路を決める大きな判断材料になります。
言語聴覚士の将来性は、職業全体として「ある・ない」で語れるものではありません。実際には、摂食嚥下・成人言語・小児発達・聴覚という分野ごとに需要の伸び方が異なり、どの分野を選ぶかで働き方も変わってきます。
この記事では、公的なデータをもとに言語聴覚士の将来性を整理します。需要が高まる理由だけでなく、報酬改定やAIといった不安視される面にも触れ、分野別の見通しと今後のSTに求められることまで解説します。
気になることを
キャリアパートナーに相談できます
気になる内容をお選びください(複数選択可)
言語聴覚士の将来性は高いと考えられる

言語聴覚士の将来性は、現時点では高いと考えられます。理由は単純で、対象となる方が増え続けている一方で、資格を持つ人の増え方がそれに追いついていないためです。
まずは判断の土台となる数字をまとめて確認します。有資格者がどのくらいのペースで増えているのか、養成する側の状況はどうなっているのか、そして需要と供給のバランスはどうなっているのか。この3点を押さえておくと、以降の内容が理解しやすくなります。
なお、ここで挙げる数字はすべて厚生労働省や日本言語聴覚士協会などが公表しているものです。将来性の話は印象論になりがちですが、まずは事実から確認して見ましょう。
有資格者数の推移
日本言語聴覚士協会の会員動向によると、正会員数は22,511人です(令和8年3月31日現在)。このうち有職者は85.4%で、そのうち常勤が80.1%を占めています。
有資格者が増えるペースは、国家試験の合格者数から読み取れます。第28回言語聴覚士国家試験では、受験者2,187人に対して合格者は1,453人でした(合格率66.4%)。毎年およそ1,500人前後が新たに資格を取得している計算になります。
言語聴覚士法が成立したのは平成9年で、リハビリ専門職のなかでは歴史の浅い資格です。そのため有資格者の絶対数はまだ少なく、増え方も緩やかなペースにとどまっています。
養成校の定員充足率の低下
供給側の状況を見ると、養成施設の縮小が進んでいます。厚生労働省が社会保障審議会医療部会に示した資料によると、言語聴覚士養成施設の入学定員充足率は、平成27年度の75.5%から令和6年度には63.1%まで低下しました。
養成施設の数そのものも、この10年で減り続けています。定員が埋まらない状態が続けば、学科の廃止や募集停止につながる場合もあります。
言語聴覚士 養成施設の10年推移
入学定員充足率(%)
養成施設数(校)
※直近10年、充足率・施設数とも減少傾向が続いている
養成する側が縮小しているという事実は、目指す人にとっては選択肢が減る話です。一方で、すでに資格を持って働いている方にとっては、当面の間は人材が供給過多になりにくい状況を意味します。
養成側から見た言語聴覚士の現状
- 入学定員が埋まらない状態が10年続いている
- 養成施設の数も減少が続いている
- 新たに資格を取る人が急増する見通しは立っていない
需要が供給を上回っている背景
言語聴覚士が関わる領域は、医療だけにとどまりません。日本言語聴覚士協会の会員動向によると、勤務先の分野は医療が最も多いものの、介護や福祉で働く方も一定の割合を占めています。
つまり、病院で働く人が多数派である一方、介護・福祉の現場にも活躍の場が広がっている状況です。高齢化と在宅シフトが進むなかで、この裾野はさらに広がると考えられます。
医療キャリアナビ掲載求人データ(2026年時点)でも、言語聴覚士の求人は3,111件が公開されています。病院だけでなく訪問リハビリや老健、児童発達支援など、募集元の種類は多岐にわたります。
参考:一般社団法人 日本言語聴覚士協会「会員動向」 / 厚生労働省「第28回言語聴覚士国家試験の合格発表について」 / 厚生労働省「第120回社会保障審議会医療部会 資料」
今のあなたの状況は?
言語聴覚士の需要が高まる理由

言語聴覚士の需要が伸びている背景には、社会構造そのものの変化があります。高齢化、在宅医療への移行、制度上の位置づけの変化という3つの流れが重なり、言語聴覚士が関わる場面が増えているためです。
ここでは分野ごとの話にはまだ踏み込まず、社会全体で何が起きているのかを整理します。分野別の見通しは次の章で詳しく扱います。
高齢化で対象となる患者が増える
内閣府の令和7年版高齢社会白書によると、日本の高齢化率は29.3%です(令和6年10月1日現在)。75歳以上の方だけで総人口の16.8%を占めています。
数字で見る日本の高齢化の規模
※ 令和6年10月1日現在の人口をもとにした数値
65歳以上人口がピークを迎えるのは令和25年と推計されています。つまり、あと十数年は高齢者が増え続ける見通しです。
言語聴覚士が対応する脳血管疾患後の失語症や嚥下障害は、加齢とともに増える障害です。実際、令和6年の人口動態統計(概数)では、誤嚥性肺炎による死亡数は63,665人で、前年の60,190人から増加しています。嚥下の問題は命に直結するため、対応できる専門職への期待は高まっています。
地域包括ケアで在宅のニーズが伸びる
厚生労働省は、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される地域包括ケアシステムの構築を進めています。高齢者が住み慣れた地域で暮らし続けられるようにするための仕組みで、地域包括支援センターは全国5,487か所に設置されています(令和7年4月末現在)。
在宅で暮らす方が増えれば、生活の場に出向いて支援する言語聴覚士のニーズも伸びます。食事や会話は毎日の生活そのものであり、退院後こそ支援が必要になる場面が多いためです。
医療キャリアナビ掲載求人データでも、言語聴覚士の求人はサービス種別で訪問リハビリが最も多く、病院を上回っています。求人の傾向からも、在宅分野の広がりが読み取れます。
診療報酬や介護報酬で評価される場面が増えている
言語聴覚士の需要は、制度上の位置づけにも支えられています。言語聴覚士法第42条では、診療の補助として、医師または歯科医師の指示の下に嚥下訓練や人工内耳の調整などを行えると定められています。訓練の実施が法律上明確に位置づけられている点は、需要が制度に裏打ちされていることを意味します。
令和6年度の介護報酬改定では、リハビリテーション・口腔・栄養を一体的に取り組む方向が打ち出されました。摂食嚥下は口腔と栄養の両方に関わるため、言語聴覚士が多職種のチームに加わる場面が増えています。
制度に位置づけられているということは、事業所側が「置く理由がある職種」だということでもあります。人員配置が報酬に結びつく仕組みのなかでは、資格の有無が採用の判断材料になります。
有資格者の増加が需要に追いついていない
需要が伸びる一方で、供給の増え方は限定的です。令和8年の国家試験合格者数を比べると、理学療法士が11,156人、作業療法士が4,947人であるのに対し、言語聴覚士は1,453人にとどまります。
言語聴覚士の新規参入は、理学療法士のおよそ8分の1という規模です。加えて養成施設の定員充足率も低下しているため、今後急に人数が増える見通しは立っていません。
需要が伸び、供給が追いつかない状態が続けば、有資格者の希少性は保たれます。これが「言語聴覚士の将来性は高い」と考えられる最大の理由です。
参考:内閣府「1 高齢化の現状と将来像|令和7年版高齢社会白書(全体版)」 / 厚生労働省「令和6年(2024)人口動態統計月報年計(概数)の概況」 / 厚生労働省「地域包括ケアシステム」 / e-Gov法令検索「言語聴覚士法」 / 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定について」 / 厚生労働省「第61回理学療法士国家試験及び第61回作業療法士国家試験の合格発表について」
言語聴覚士の求人を探す【分野別】言語聴覚士の将来性

言語聴覚士の将来性を考えるうえで最も大切なのは、分野ごとに伸び方が違うという点です。同じ資格でも、摂食嚥下と聴覚では求人の数も求められる経験もまったく異なります。
ここでは摂食嚥下・成人言語・小児発達・聴覚の4分野に分けて、それぞれの見通しを整理します。「言語聴覚士に将来性があるか」ではなく、「どの分野に進めば長く働けるか」という視点で読み進めてください。
摂食嚥下分野の将来性
4分野のなかで最も需要が伸びているのが摂食嚥下分野です。高齢者人口の増加に直結する領域であり、誤嚥性肺炎の予防という明確な目的があるためです。
令和6年の誤嚥性肺炎による死亡数は63,665人で、前年から増加しました。嚥下機能の評価と訓練ができる専門職への期待は、医療機関だけでなく介護施設や在宅の現場でも高まっています。
令和6年度の介護報酬改定でリハビリテーション・口腔・栄養の一体的な取り組みが打ち出されたことも、この分野の追い風です。医療キャリアナビ掲載求人データでも、高齢者施設からの募集が並びます。
摂食嚥下分野 求人の施設別内訳
介護老人保健施設・デイケア/デイサービス・特別養護老人ホーム 計692件
失語症などの成人言語分野の将来性
失語症や高次脳機能障害を対象とする成人言語分野は、言語聴覚士の中核といえる領域です。脳血管疾患後のリハビリテーションが中心となるため、回復期の病院が主な職場になります。
医療キャリアナビ掲載求人データでも、病院の求人は訪問リハビリに次ぐ多さです。急性期から回復期、生活期までの流れのなかで、言語聴覚士が関わる期間は長くなっています。
さらに、医療の枠を超えた支援も広がっています。厚生労働省の地域生活支援事業では、失語症者向け意思疎通支援者の養成と派遣が都道府県の事業として位置づけられています。訓練を終えた後の生活を支える仕組みが整ってきており、言語聴覚士が養成や指導に関わる場面も出てきました。
小児の発達支援分野の将来性
小児の発達支援分野は、ここ数年で求人が増えている領域です。児童発達支援や放課後等デイサービスが全国的に増加し、言語発達やコミュニケーションを専門とする職種が求められるようになったためです。
医療キャリアナビ掲載求人データでは、放課後等デイサービスと児童発達支援を合わせた小児向けの求人が、言語聴覚士の求人全体のおよそ2割を占めています。
ただし、成人分野に比べると絶対数はまだ少なく、地域による差も大きい領域です。小児を希望する場合は、勤務地の選択肢が限られる可能性を見込んでおくとよいでしょう。
- 求人の多くは成人・高齢者向け
- 小児を目指すなら、児童発達支援と放課後デイの両方を見ると候補が広がります
- 未経験可の求人は全体の8割。分野を変える転職は思ったより現実的です
聴覚分野の将来性
聴覚分野は、専門性が高く担い手が限られる領域です。耳鼻咽喉科や補聴器関連の企業などが主な職場になり、担当する業務は次のようなものです。
- 補聴器の適合・調整
- 人工内耳のマッピング
- 聴力検査などの聴覚検査
- 難聴のあるお子さんと家族への支援
言語聴覚士法第42条では、人工内耳の調整が診療の補助として明記されています。法律上、言語聴覚士に位置づけられた業務であることが、この分野の専門性を支えています。
早期発見の体制も整ってきました。こども家庭庁の調査によると、新生児聴覚検査の受検率は95.2%です(令和4年度)。難聴が早く見つかるほど早期の療育につながるため、支援する側の役割も大きくなっています。
一方で求人数は他の分野より少なく、募集も特定の地域や施設に偏りがちです。専門を極めれば代わりのきかない存在になれる反面、転職時の選択肢は絞られる点に注意が必要です。
参考:厚生労働省「令和6年(2024)人口動態統計月報年計(概数)の概況」 / 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定について」 / 厚生労働省「意思疎通支援」 / こども家庭庁「「新生児聴覚検査の実施状況等について」の調査結果について」 / e-Gov法令検索「言語聴覚士法」
お探しの求人は?
言語聴覚士の将来性で不安視される面

ここまで需要の話を続けてきましたが、不安材料がないわけではありません。将来性を調べている方が本当に知りたいのは、むしろこちらではないでしょうか。
ここでは代表的な3つの不安について、事実をもとに整理します。過度に楽観するのでも悲観するのでもなく、実際にどこまでのリスクなのかを見ていきます。
報酬改定の影響を受けやすい
言語聴覚士の仕事の多くは、診療報酬や介護報酬に基づいて提供されています。訓練の実施が点数として評価される仕組みのため、報酬改定の内容が現場の運営に直接影響します。
改定は原則2年ごと(介護報酬は3年ごと)に行われ、算定要件や人員配置の基準が見直されます。1日に実施できる単位数の上限や記録の要件が変われば、担当できる人数や勤務の組み方も変わります。
ただし、これは言語聴覚士に限った話ではなく、理学療法士や作業療法士、看護師なども同じ構造のなかにあります。制度に組み込まれているからこそ需要が安定するという側面もあり、リスクと安定は表裏一体だといえます。
改定の方向性は、施行の前年から審議会の資料などで公表されます。所属先の加算や体制がどう変わるかを早めに把握しておくと、働き方の見直しやキャリアの判断がしやすくなります。
AIや訓練機器の活用が進んでいる
音声認識や発話分析の技術は年々進歩しており、訓練を支援するアプリや機器も増えています。「いずれAIに置き換わるのではないか」という不安を持つ方もいるでしょう。
現時点でAIが担いやすいのは、記録の作成や課題の提示、反復練習の補助といった定型的な部分です。一方で、目の前の方の状態を評価し、原因を推定して訓練内容を組み立てる判断は、人が担う領域として残ると考えられます。
AIが担いやすい業務 と 人にしか担えない業務
評価と訓練の組み立ては人が担い、機器は訓練の質を高める道具として使いこなす対象です
摂食嚥下の場面では、実際に食べる様子を観察しながらリスクを判断する必要があります。ご家族への説明や心理面への配慮も含めて、対人支援としての比重が大きい仕事です。機器はむしろ、訓練の質を高める道具として使いこなす対象だといえます。
理学療法士・作業療法士と同じく飽和が連想される
リハビリ職の飽和という話題は、主に理学療法士の養成校増加を背景に語られてきました。同じリハビリ職である言語聴覚士も、まとめて「飽和する」と受け取られやすい状況があります。
しかし、供給の実態は3職種で大きく異なります。前述のとおり毎年の国家試験合格者数には大きな開きがあり、加えて言語聴覚士の養成施設は数も定員充足率も減少傾向にあります。
言語聴覚士が飽和するという見方には、現時点では根拠が乏しいといえます。ただし、都市部の人気施設に応募が集中しやすい点は他職種と共通しており、地域や施設によって競争の度合いは変わります。
参考:厚生労働省「第28回言語聴覚士国家試験の合格発表について」 / 厚生労働省「第61回理学療法士国家試験及び第61回作業療法士国家試験の合格発表について」 / 厚生労働省「第120回社会保障審議会医療部会 資料」
言語聴覚士の求人を探す理学療法士・作業療法士と将来性を比較

飽和のイメージがどこから来ているのかを理解するには、理学療法士・作業療法士との違いを具体的に押さえるのが近道です。3職種は同じリハビリ職として語られますが、供給の規模も法律上の位置づけも異なります。
ここでは養成の規模、配置が求められる場面、飽和のしやすさという3つの観点で比較します。
養成校数と合格者数の違い
3職種の差が最もはっきり表れるのが、毎年生まれる有資格者の数です。令和8年に実施された国家試験の合格者数を並べると、その差は一目で分かります。
理学療法士は言語聴覚士のおよそ8倍が毎年誕生している計算になります。理学療法士の飽和が語られるのは、この供給規模の大きさが背景にあります。
養成の動向も対照的です。言語聴覚士は養成施設の数も入学定員充足率も下がり続けています。供給が拡大している職種と、縮小している職種では、飽和までの距離が違います。
配置が求められる場面の違い
3職種は法律で定められた対象と業務が異なります。理学療法士は基本的動作能力の回復、作業療法士は応用的動作能力や社会的適応能力の回復を担い、言語聴覚士は音声機能・言語機能・聴覚を対象とします。
| 職種 | 主な対象 | 法律に定められた業務 |
|---|---|---|
| 理学療法士 | 身体に障害のある方の基本的動作能力の回復 | 治療体操などの運動、電気刺激・マッサージ・温熱などの物理的手段 |
| 作業療法士 | 身体または精神に障害のある方の応用的動作能力・社会的適応能力の回復 | 手芸・工作などの作業活動 |
| 言語聴覚士 | 音声機能・言語機能・聴覚に障害のある方の機能の維持向上 | 言語訓練のほか、診療の補助として嚥下訓練・人工内耳の調整 |
嚥下や聴こえに関わる支援は、言語聴覚士が中心に担う領域です。3職種は代替関係ではなく分担関係にあり、そのぶん言語聴覚士は配置される施設が限られる代わりに、配置されれば代わりが見つかりにくい職種だといえます。
飽和のしやすさの違い
飽和のしやすさは、次の2つで決まります。供給が多く、業務が他職種と重なりやすいほど、競争は激しくなります。
- 新たに資格を取る人がどれだけ増えているか
- 業務が他職種とどれだけ重なるか
言語聴覚士は毎年の合格者数が3職種のなかで最も少なく、業務も嚥下・言語・聴覚という固有の領域が中心です。この2点から、少なくとも当面は飽和しにくい職種だと考えられます。
ただし、これは「どこでも売り手市場」という意味ではありません。求人は訪問リハビリや病院に集中しており、希望する分野・地域によって状況は変わります。将来性を職種単位ではなく分野単位で考える必要があるのは、このためです。
参考:厚生労働省「第28回言語聴覚士国家試験の合格発表について」 / 厚生労働省「第61回理学療法士国家試験及び第61回作業療法士国家試験の合格発表について」 / e-Gov法令検索「言語聴覚士法」 / e-Gov法令検索「理学療法士及び作業療法士法」 / 厚生労働省「第120回社会保障審議会医療部会 資料」
転職活動するなら?
将来性のある言語聴覚士になるために必要なこと

ここまで見てきたとおり、言語聴覚士の将来性は分野によって差があります。だとすれば、個人としてやるべきことは「どの分野で強みを作るか」を決め、その分野で通用する力を積み上げることです。
ここでは、将来を見据えて働くために意識したい4つのポイントを紹介します。今の職場で始められることも多いため、転職を考えていない方も参考にしてみてください。
専門分野を決める
まず取り組みたいのが、自分の軸となる分野を決めることです。摂食嚥下、成人言語、小児発達、聴覚のどれを深めるかで、必要な知識も経験を積める職場も変わります。
分野を決めると、学ぶ内容と職場選びの基準がはっきりします。逆に、どの分野も浅く経験しただけの状態が続くと、転職時に強みを説明しにくくなります。
分野選びに迷う場合は、求人の多さと自分の関心の両面から考えるのがおすすめです。求人が多い分野は経験を積む機会も多く、後から方向転換もしやすくなります。
- 摂食嚥下|高齢者施設・在宅を含め需要が最も伸びている
- 成人言語|回復期の病院が中心で求人数も安定している
- 小児発達|求人は増加傾向だが地域差が大きい
- 聴覚|専門性は高いが求人数は限られる
認定言語聴覚士を取得する
専門性を客観的に示す方法として、日本言語聴覚士協会の認定言語聴覚士があります。高度な知識と技術を持つ言語聴覚士を養成する目的で設けられた、協会独自の資格です。
認定を受けるには、満5年を超える臨床経験と、生涯学習システムの専門プログラム修了が必要です。講習会は摂食嚥下障害や失語・高次脳機能障害をはじめ、言語発達障害や聴覚障害など複数の領域で開催されています。
認定言語聴覚士取得までの3ステップ
生涯学習システムは基礎プログラムから始まります。若手のうちから計画的に進めておくと、認定への道筋が立てやすくなります。
小児と成人の両方を経験する
キャリアの早い段階で、小児と成人の両方に触れておくと選択肢が広がります。対象が変われば評価の視点も訓練の組み立て方も変わるため、片方だけの経験では対応できる職場が限られるためです。
前述のとおり、言語聴覚士の求人は成人分野が中心です。小児の経験があること自体が、そのなかでの差別化になります。
両方の経験があると、ライフステージに合わせた働き方も選びやすくなります。たとえば、日祝休みの多い児童発達支援と、シフト制の病院とで働き方を切り替えるという選択肢も持てます。
多職種と連携できる力を身につける
言語聴覚士の仕事は、単独では完結しません。摂食嚥下では医師・歯科医師・看護師・管理栄養士・歯科衛生士と、小児では保育士や教員と、それぞれ連携しながら支援を組み立てます。
令和6年度の介護報酬改定でリハビリテーション・口腔・栄養の一体的な取り組みが打ち出されたように、制度の側も多職種での対応を前提としています。カンファレンスで自分の見立てを共有し、他職種の視点を取り入れられる人は、どの職場でも重宝されます。
言語聴覚士は職場に1人か2人という配置も珍しくありません。だからこそ、専門を分かりやすく伝える力が、そのまま活躍の幅につながります。
参考:一般社団法人 日本言語聴覚士協会「生涯学習プログラムについて」 / 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定について」
まとめ
言語聴覚士の将来性は、現時点では高いと考えられます。高齢化で対象となる方が増え続ける一方、令和8年の国家試験合格者は1,453人と少なく、養成施設の定員充足率も63.1%まで低下しているためです。
ただし、将来性は職種単位ではなく分野単位で考える必要があります。摂食嚥下は需要が最も伸び、成人言語は求人数が安定し、小児発達は増加傾向ながら地域差が大きく、聴覚は専門性が高い代わりに求人が限られます。どの分野を選ぶかで、働き方も転職のしやすさも変わります。
報酬改定の影響を受けやすいことやAIの進歩は、たしかに不安材料です。一方で、嚥下や聴こえに関わる支援は言語聴覚士法に位置づけられた固有の領域であり、他職種では置き換えにくい部分です。
まずは自分の軸となる分野を決め、認定言語聴覚士や小児・成人の両方の経験など、強みを説明できる材料を積み上げてみてください。分野の選択肢を知るうえでは、どんな職場が実際に募集しているかを確認してみるのも一つの方法です。





