多職種連携で大切なことは?チーム医療との違いや場面別の実践ポイントを解説
多職種連携で大切なことは、「尊重」「情報共有」「コミュニケーション」です。
しかし実際に現場で迷うのは、カンファレンスで何をどう発言するか、記録をどう書けば他職種に伝わるか、意見が食い違ったときにどう進めるか、といった場面ごとの判断です。
この記事では、多職種連携で大切なことを場面別の具体的な行動に落とし込んで解説します。
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多職種連携とは?

多職種連携とは、医療・介護・福祉の異なる専門職が、患者さん・利用者さんの生活を支えるという共通の目的のもとで、それぞれの専門性を持ち寄って協働することです。
定義そのものより、なぜ必要とされ、どこまでの範囲を指すのかを押さえておくと、後の実践が理解しやすくなります。
多職種連携の目的
多職種連携の目的は、患者さん・利用者さんの生活を切れ目なく支えることにあります。医学的な問題が解決しても、食事や移動、経済面に課題が残れば生活は成り立ちません。1つの職種が担える範囲は限られており、複数の視点を重ねて初めて全体像が見えます。
現場レベルでは、次の3点が連携の実際的な狙いになります。
- 支援の重複や抜け落ちを防ぐ
- 自分の専門外で起きた変化に早く気づく
- 本人の希望に沿った方針を1つにまとめる
チーム医療との違い
チーム医療は、厚生労働省の通知で「多種多様な医療スタッフが、各々の高い専門性を前提とし、目的と情報を共有し、業務を分担するとともに互いに連携・補完し合い、患者の状況に的確に対応した医療を提供する」ものと説明されています。
両者は対立する概念ではありません。チーム医療は主に医療機関の中での協働を指すのに対し、多職種連携は医療機関の枠を越え、介護・福祉・行政まで含む協働を指します。
多職種連携とチーム医療の範囲の違い
協働する範囲の違い
範囲が違うと、連携の難しさも変わります。院内であれば電子カルテを開けば互いの記録が見えますが、事業所をまたぐと記録は共有されず、勤務時間帯も所属も異なります。
地域包括ケアシステムとの関係
地域包括ケアシステムは、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される体制を、市町村や都道府県が地域の特性に応じて作り上げていく仕組みです。多職種連携は、この体制を現場で動かす手段にあたります。
制度上の裏づけもあります。市町村が行う在宅医療・介護連携推進事業は、介護保険法第115条の45第2項第4号に基づく地域支援事業として位置づけられ、平成30年4月以降はすべての市町村で実施されています。
医療機関と介護事業所の連携は、個々の職員の心がけだけでなく、市町村が担う事業として制度に組み込まれているということです。
事業の中身を見ると、研修や相談支援、住民への普及啓発まで含まれています。現場の職員が個人で抱え込む前に、市町村の窓口や相談支援の仕組みを使えないかを確認する余地があるということです。
今のあなたの状況は?
参考:厚生労働省「地域包括ケアシステム」 / 厚生労働省「医療スタッフの協働・連携によるチーム医療の推進について」 / e-Gov法令検索「介護保険法」 / 厚生労働省「在宅医療・介護連携推進事業に係るプラットフォーム」 / 内閣府「令和7年版高齢社会白書 高齢化の現状と将来像」
多職種連携で大切なこと

学術的な枠組みとしては、多職種連携コンピテンシー開発チームが2016年に公表した「医療保健福祉分野の多職種連携コンピテンシー」があり、専門職が身につけるべき連携の力が6つの領域に整理されています。
ここからは、この枠組みも踏まえながら、現場で意識したい5つを具体的に見ていきます。
患者さん・利用者さんを軸にした共通目標を持つ
連携がかみ合わない原因の多くは、職種ごとの目標がずれたまま並走していることにあります。どの職種も、自分の専門性から見れば正しい目標を持っています。ただ、目標がばらばらのままだと、同じ人に対して別方向の働きかけが同時に起きます。
本人の言葉を共通目標に置く
これを防ぐには、目標を本人の言葉に置き換えることです。「歩行能力の改善」ではなく「トイレまで自分で行きたい」と書けば、リハビリ職も看護師も介護職も、自分の関わり方をその目標に結びつけられます。専門職の目標は、この共通目標に対する手段として位置づけると整理しやすくなります。
他職種の役割と権限の範囲を理解する
役割の理解というと「何ができるか」に目が向きますが、連携で問題になるのはむしろ「制度上できないこと」の理解不足です。無資格者に医行為を求めるような依頼は、ここから生まれます。
やっかいなのは、その線引きが「できる/できない」の2択ではないことです。介護職への依頼を例にとると、そのまま頼めるもの、条件を満たした場合だけ介助できるもの、研修と登録を済ませた人にしか頼めないもの、そもそも頼めないものに分かれます。同じ「服薬」という言葉でも、どの段階の話かで答えが変わります。
- 腋の下での体温測定
- 自動血圧測定器による血圧測定
- 軽微な切り傷・すり傷の処置
- 爪そのものに異常がなく周囲の皮膚に化膿や炎症がない場合の爪切り
- ストマ装具にたまった排泄物を捨てること
- 一包化された内用薬の内服
- 皮膚への軟膏の塗布(褥瘡の処置を除く)
- 点眼薬の点眼
- 坐薬の挿入
医師・歯科医師・看護職員が次の3点を確認していることが前提
- 1入院・入所して治療する必要がなく容態が安定していること
- 2医師や看護職員による連続的な経過観察が不要なこと
- 3医薬品の使用方法自体に専門的な配慮が不要なこと
- 喀痰吸引(口腔内・鼻腔内・気管カニューレ内部)
- 経管栄養(胃ろう・腸ろう・経鼻経管栄養)
- インスリンの注射そのもの
- 測定した数値をもとに投薬の要否などを判断すること
もう1つ押さえたいのが、資格の種類による違いです。医師や看護師、薬剤師は無資格者がその業務を行えない業務独占資格ですが、理学療法士や管理栄養士は名称独占資格で、業務そのものを独占しているわけではありません。
自分の専門性を相手の言葉で説明する
専門用語をそのまま使うと、相手には「よく分からないが専門家がそう言うなら」としか伝わりません。それでは判断材料になりません。
言い換えのコツは、相手が何を決めたいのかから逆算することです。ケアマネジャーが知りたいのは検査値そのものではなく、サービスの回数や内容を変える必要があるかどうかです。介護職が知りたいのは、明日の入浴介助で何に気をつければよいかです。同じ評価結果でも、相手によって訳し方は変わります。
たとえば「立ち上がり動作にMMT4程度の筋力低下あり」は、介護職に向けては「手すりがあれば自分で立てますが、支えがないと膝が折れることがあります」と伝えるほうが行動につながります。
情報を必要な相手に必要な形で渡す
全員に全部を送ることは情報共有ではありません。受け取る側が読み切れなければ、重要な情報ほど埋もれます。渡す前に、次の3点を決めます。
-
誰に渡すかその情報で判断や行動が変わる人に絞る
-
いつまでに渡すか次の行動が起きる前に届くタイミングを選ぶ
-
どの粒度で渡すか相手が使える形まで訳してから渡す
判断が変わらない人にまで送ると、次から読まれなくなります。逆に、判断が変わる人に届いていなければ、記録に残していても共有したことにはなりません。
判断の根拠まで共有する
「本日の入浴は中止しました」だけでは、受け取った側は次の判断ができません。体調不良によるものなのか、本人が拒否したのか、家族の希望なのかで、翌日の対応はまったく変わります。
伝えるときは、観察した事実・そこからの解釈・実際に行った判断を分けて示すと、他職種が自分の専門性で再検討できます。根拠が共有されていれば、状況が変わったときに、その場にいる人が自分で判断を修正できます。逆に結論だけを引き継ぐと、判断した人が不在の間、チームは動けなくなります。
参考:厚生労働省「医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について(通知)」 / e-Gov法令検索「社会福祉士及び介護福祉士法」 / 多職種連携コンピテンシー開発チーム「医療保健福祉分野の多職種連携コンピテンシー」
職種ごとの役割と連携時に押さえるポイント

職種の役割を覚えることが目的ではありません。連携の場で必要なのは、その職種が何を根拠に動いているかと、こちらから何を確認すべきかです。以下では主な8職種について、担っていることと連携時に確認したいことをセットで整理します。
職種ごとの資格の種類と根拠法
| 職種 | 資格の種類 | 医師の指示の下に行う業務 | 根拠法 |
|---|---|---|---|
| 医師 | 業務独占 | ー(指示を出す側) | 医師法 |
| 看護師 | 業務独占 | あり(診療の補助) | 保健師助産師看護師法 |
| 薬剤師 | 業務独占(調剤) | あり(処方箋に基づく調剤) | 薬剤師法 |
| 理学療法士・作業療法士 | 名称独占 | あり(理学療法・作業療法) | 理学療法士及び作業療法士法 |
| 言語聴覚士 | 名称独占 | あり(嚥下訓練・人工内耳の調整など) | 言語聴覚士法 |
| 管理栄養士 | 名称独占 | なし | 栄養士法 |
| ケアマネジャー | 介護支援専門員証の交付が必要 | なし | 介護保険法 |
| 介護福祉士 | 名称独占 | あり(喀痰吸引等) | 社会福祉士及び介護福祉士法 |
| 社会福祉士 | 名称独占 | なし | 社会福祉士及び介護福祉士法 |
医師
医業は医師法第17条により医師の業務独占とされており、診断と治療方針の決定、他職種への指示は医師が担います。多職種連携では、方針の起点になる職種です。
連携時に確認したいのは、指示の範囲です。どこまでが指示に含まれ、どこからは改めて確認が必要なのかがあいまいだと、現場が動けなくなります。多忙で連絡がつきにくい場合は、連絡手段と、すぐ連絡すべき状態の基準をあらかじめ決めておくと滞りが減ります。
看護師
保健師助産師看護師法第5条により、看護師は療養上の世話と診療の補助を担います。同法第37条では、主治の医師または歯科医師の指示があった場合を除き、診療機械の使用や医薬品の授与などを行ってはならないと定められています。
連携時のポイントは、看護師が医療と生活の両方に接している点です。医師の指示の範囲を把握しつつ日常の様子も見ているため、判断に迷ったときの最初の相談先になりやすい職種といえます。他職種からは、観察した事実を具体的に伝えると話が早く進みます。
薬剤師
薬剤師法第19条により調剤は薬剤師の業務独占です。さらに第25条の2で、調剤した薬剤の適正な使用のため、必要な情報提供と薬学的知見に基づく指導を行うことが義務づけられています。
連携時に共有したいのは、服薬状況の変化です。残薬が増えていないか、他院の処方や市販薬との重複がないかは、介護職や訪問看護師が気づく場面も多くあります。飲めていない事実を隠さず伝えることが、処方の見直しにつながります。
リハビリ職(PT・OT・ST)
理学療法士および作業療法士は、理学療法士及び作業療法士法第2条により医師の指示の下に理学療法・作業療法を行います。言語聴覚士は言語聴覚士法第2条で言語訓練などを担い、第42条により嚥下訓練や人工内耳の調整などは医師または歯科医師の指示の下で行います。いずれも名称独占資格です。
連携時は、訓練の場面でできる動作と、生活の中で安全にできる動作を分けて確認することが重要です。リハビリ室で歩けることと、夜間にトイレまで1人で行けることは別の話です。介助量や見守りの要否まで具体的に聞くと、介護側の対応が変わります。
管理栄養士
栄養士法第1条第2項により、管理栄養士は傷病者に対する療養のため必要な栄養の指導や、給食管理などを担います。名称独占資格で、栄養士とは免許の種類も業務範囲も異なります。
連携時に確認したいのは、食形態と水分量、そして禁忌です。嚥下機能については言語聴覚士、服薬との相互作用については薬剤師と関心が重なるため、食事に関する変更は3職種で同時に共有すると行き違いが減ります。
ケアマネジャー
介護保険法第7条第5項により、介護支援専門員は要介護者等の相談に応じ、サービスを利用できるよう関係者との連絡調整を行う職種と定義されています。介護支援専門員証の交付を受けた者に限られます。
在宅の連携では、サービス調整の窓口になる存在です。医療側が伝えるべきなのは、検査値や診断名そのものより、その情報が本人の生活の何を変えるのかです。入浴の可否、外出の制限、見守りの必要性といった形にすると、そのままケアプランに反映されます。
介護職
社会福祉士及び介護福祉士法第2条第2項により、介護福祉士は心身の状況に応じた介護と、本人や介護者への指導を行います。名称独占資格です。日々の生活に最も近い距離で関わるため、食欲や表情、動きの変化に最初に気づく立場にあります。
連携時に押さえたいのは、医行為の線引きです。喀痰吸引や経管栄養は、介護福祉士については同法第48条の2を根拠に、それ以外の介護職員については研修を修了し認定を受けることで実施できますが、いずれも事業所ごとの登録が必要です。
医療ソーシャルワーカー
医療ソーシャルワーカーは、経済的な課題や退院後の生活基盤など、医療の枠に収まらない問題を担当します。厚生労働省の医療ソーシャルワーカー業務指針は令和8年3月に23年ぶりに全部改正され、業務の範囲が8つに再編されました。担い手としては社会福祉士が想定されると明記されています。
連携時は、退院や在宅移行の話が出た時点で早めに情報を渡すことがポイントです。なお同指針には他職種の業務独占範囲を侵害しないことが明記されており、役割の線引きは指針そのものに書き込まれています。
条件にあった求人を探してもらう参考:e-Gov法令検索「医師法」 / e-Gov法令検索「保健師助産師看護師法」 / e-Gov法令検索「薬剤師法」 / e-Gov法令検索「理学療法士及び作業療法士法」 / e-Gov法令検索「言語聴覚士法」 / e-Gov法令検索「栄養士法」 / 厚生労働省「医療ソーシャルワーカー業務指針の全部改正について」
【場面別】大切なことを行動に落とす

ここからが本題です。共通目標や情報共有といった原則を、実際の場面でどう動くかに変換していきます。カンファレンス、記録、電話やICT、日常の立ち話の4場面に分けて見ていきます。
カンファレンス・サービス担当者会議
サービス担当者会議は、指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準第13条第9号で、ケアプランの原案について担当者から専門的な見地の意見を求める場と定められています。テレビ電話装置等を活用して行うこともでき、末期の悪性腫瘍の患者さんなどやむを得ない理由がある場合に限り、担当者への照会で意見聴取に代えられます。
会議が報告会で終わってしまうのは、準備と締め方に原因があります。次の流れを意識すると、決まる会議になります。
会議を機能させる3つの場面
- 自分の伝えたい結論を1つに絞る
- その結論の根拠になる観察・数値を手元にそろえる
- 他職種に確認したいことを先に書き出す
- 発言は事実、判断、提案の順に並べる
- 持ち時間は1人2分程度を目安にする
- 分からない言葉が出たらその場で確認する
- 決まったことと決まらなかったことを読み上げて確認する
- 誰がいつまでに何をするかを全員で共有する
- 合意した内容と理由を記録に残す
発言を事実、判断、提案の順に固定すると、聞き手は途中で口をはさむ位置が分かります。「食事量が3日続けて半分以下です」「脱水のリスクが上がっていると考えます」「訪問看護の回数を週2回に増やすことを提案します」という形です。逆に提案から話し始めると、根拠をたずねるやりとりで時間が消えます。
締めの確認を省くと、同じ議題が次回も出てきます。会議の成果は、その場で何を話したかではなく、終わった後に誰が動けるかで決まります。
申し送りと記録
記録は、自分の職種の人だけが読むものではありません。他職種が読む前提で書くと決めるだけで、書き方は変わります。
避けたいのは、職種内でしか通じない略語と、観察と解釈が混ざった一言です。状態をまとめた短い表現は、書いた本人には意味が通じても、読む側には何が起きたのか分かりません。何時に、何が、何回あったのかという事実と、そこから考えたことを分けて書きます。
記録は制度上も残す必要があります。医師法第24条では診療録への記載と5年間の保存が定められ、指定居宅介護支援では利用者に対する支援の記録を完結の日から2年間保存することとされています。記録は連携の道具であると同時に、事業所を守る根拠でもあります。
電話・ICTツールでのやりとり
連絡手段は、内容の緊急度で選びます。すぐ判断が必要なことをチャットに流しても届きませんし、翌日でよい報告のために電話で相手の業務を止める必要もありません。
緊急度で選ぶ連絡手段の目安
| 緊急度 | 電話 | ICTツール・チャット | 記録・連絡票 | 次の会議で共有 |
|---|---|---|---|---|
| すぐ判断が必要 | ◯ | ✕ | ✕ | ✕ |
| 今日中に共有したい | △ | ◯ | ◯ | ✕ |
| 翌日以降でよい | ✕ | ◯ | ◯ | ◯ |
◯ 適している/△ 場合による/✕ 向かない
電話は、冒頭で名乗ったあと、用件と緊急度を先に伝えます。「すぐの判断が必要です」なのか「確認だけお願いします」なのかを最初に置くと、相手は聞き方を切り替えられます。そのうえで、結論、理由、依頼の順に話します。
ICTツールやチャットは、後から検索される前提で書きます。件名や冒頭に患者さん・利用者さんの名前と用件を入れておくと、必要なときに探し出せます。なお、サービス担当者会議をテレビ電話で行う場合、本人や家族が参加するときは同意を得る必要があります。
日常の短いやりとり
会議や記録だけが連携ではありません。廊下やナースステーションでの30秒のやりとりが、状況を大きく変えることもあります。
短い会話を成立させるコツは、最初に範囲を区切ることです。「1つだけ確認させてください」と前置きすれば、相手は数十秒なら応じられます。逆に、何分かかるか分からない話を突然始めると、次から避けられてしまいます。
口頭で合意したことも、記録に残さなければチームには伝わりません。その場にいなかった職種は、決まった経緯を知らないまま動くことになります。短いやりとりほど、記録に落とすまでを1セットにします。
参考:e-Gov法令検索「指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準」 / e-Gov法令検索「医師法」
多職種連携がうまくいかない原因

うまくいかない理由を特定できないと、対処のしようがありません。ここでは原因を4つに分類します。自分の職場がどれに当てはまるかを考えながら読み進めてください。
なお、日本医療機能評価機構の医療事故情報収集・分析・提供事業では、報告義務対象医療機関から2024年に報告された医療事故の発生要因13,506件のうち、「連携ができていなかった」が913件、全体の6.8%を占めています。連携の不足は、意識の問題にとどまらず事故の要因として集計されています。
職種ごとに前提としている視点が違う
同じ患者さんを見ていても、職種によって見ている時間の幅が違います。今日1日の生活を見ている職種もあれば、数か月先の生活設計を見ている職種もあります。どちらも正しく、どちらも全体ではありません。
この違いがあるため、同じ言葉でも指す内容がずれます。「安静」が絶対臥床を意味するのか、負荷の高い活動を控えることを意味するのかは、職種によって受け取り方が変わります。
共通の言葉ほど、具体的な行動に置き換えて確認する必要があります。
役割の境界があいまいになっている
誰の担当か決まっていない業務は、落ちるか重複します。爪切りや服薬の見守り、家族への連絡といった業務は、複数の職種が「相手がやっている」と思い込みやすい領域です。
もう1つの問題は、境界があいまいなまま制度上できない依頼が発生することです。断る側は角が立つことを恐れて受けてしまい、後から責任の所在が問題になります。できない依頼を断ることは、非協力的な態度ではなく制度上の必要だという共通認識が要ります。
情報を共有する場が機能していない
会議は開かれているのに何も決まらない職場では、場が報告会になっています。各職種が持ち時間で近況を述べて終わり、判断が必要な論点が議題に上がらない状態です。
記録の分断も起きます。医療側と介護側で記録が別々に管理され、互いに見ないままだと、同じことを何度も聞かれる状況が生まれます。患者さん・利用者さんに同じ質問が繰り返されているなら、情報共有が機能していないサインです。
職種間に上下関係の意識が残っている
指示関係と上下関係は別のものです。医師の指示の下に業務を行う職種があるのは法律上の役割分担であり、意見を述べてはいけないという意味ではありません。
しかし実際には、発言しにくい空気が残っている職場があります。問題は、最初に変化に気づく立場の職種ほど、発言機会が少ない傾向にあることです。介護職や新人が気づいた違和感が届かないまま、状態が悪化してから医療職に情報が上がる。この構造がある限り、会議の回数を増やしても連携は改善しません。
条件にあった求人を探してもらう参考:日本医療機能評価機構「医療事故情報収集・分析・提供事業 2024年年報 YA-41-A 発生要因」
意見が食い違ったときの対処

多職種連携で最も負荷が高いのは、判断が分かれた場面です。「お互いを尊重しましょう」という言葉は、実際に意見が割れたときには機能しません。ここでは対立を避ける心構えではなく、進め方の手順として整理します。
意見が食い違ったときの進め方
意見の対立か情報の不足かを切り分ける
対立に見える場面の多くは、持っている情報が違うだけです。退院を急ぐ医師と慎重なケアマネジャーが対立しているように見えても、実は自宅の段差や家族の勤務状況を医師が知らないだけ、ということがあります。
そこで最初にすることは、互いが見ている事実を並べることです。「私が見ているのはこの範囲です」と情報源を明示し合うと、意見の違いなのか、単に情報が届いていなかったのかが分かります。情報の不足であれば、そこで解消します。
それぞれの判断の根拠を持ち寄る
情報をそろえても意見が分かれる場合は、根拠の種類を確認します。ここを混ぜたまま議論すると、結論の出ない話し合いが長引きます。
まず切り分けたいのが制度・法令上の制約です。制度上できないことは、話し合っても結論が変わりません。この点を最初に外しておけば、残りの時間を実質的な検討に使えます。
本人・家族の希望は、専門職の評価で置き換えるものではありません。専門職として反対する場合も、希望そのものを否定するのではなく、実現するために必要な条件を示す形に変えると話が進みます。
専門職としての評価が分かれた場合は、どちらが正しいかを決めるより、判断が変わる条件を先に決めておくと前に進みます。「3日以内に食事量が戻らなければ方針を見直す」といった形です。結論を保留にしても、条件が決まっていれば次に動けます。
決まった内容と理由を記録に残す
結論だけを記録すると、後から関わる人が同じ議論を繰り返します。なぜその結論になったのか、どの根拠を採用し、どの案を採らなかったのかまで書きます。
保留にしたことも記録に残します。「訪問回数の変更は、次回の受診結果を見て再検討」と書いておけば、誰が見ても次のタイミングが分かります。記録に残っていない合意は、なかったことと同じ扱いになります。
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経験が浅くても連携に参加するための工夫

新人や、会議で発言機会の少ない職種にとって、連携の場は緊張するものです。ただ、経験が浅いことと、連携に貢献できないことはイコールではありません。経験に関係なく使える方法があります。
観察した事実を具体的に伝える
解釈に自信がなくても、見たこと・聞いたことをそのまま伝えるのは経験に関係なくできます。むしろ、日常的に接している時間が長い人ほど、事実の情報量は多くなります。
伝え方は、いつ・何が・どのくらいを数字で添えることです。「なんとなく元気がない」ではなく「今朝は朝食を半分残し、いつも参加している体操に来ませんでした」と伝えれば、判断は他職種が引き取れます。解釈まで完成させてから報告しようとすると、報告そのものが遅れます。
- 連携で最初に伝えるべきは、解釈ではなく観察した事実です
- 他職種に依頼する前に、制度上できる行為かを確認しましょう
- 口頭で決まったことは、その日のうちに記録へ落とします
分からないことをその場で確認する
会議中に分からない言葉が出たとき、後で調べようと流してしまうと、その場の合意内容を理解しないまま持ち帰ることになります。実行する段階で迷いが出て、結局やり直しになります。
確認は「確認させてください」と前置きすると切り出しやすくなります。分からなかったのは自分だけではないことが多く、確認はその場の全員の理解を助けます。
私が見ているのは日中の食事場面です。そこでは主食を半分以上残す日が3日続いています
確認させてください。今の方針は、入浴を来週まで中止するという理解で合っていますか
解釈は自信がないのですが、事実だけお伝えします。今朝は体操に参加されませんでした
自分が担当している範囲を明確に示す
発言の前に、自分がどの範囲を見ているかを添えます。「日中の食事場面を担当しています」と示せば、聞く側はその情報の位置づけを理解でき、足りない部分を他職種が補えます。
範囲を示すことは、責任の限定ではなく情報の精度を伝えることです。見ていない時間帯について推測で語らないほうが、結果として発言の信頼度は上がります。
まとめ
多職種連携で大切なことは、相互尊重や情報共有という言葉そのものではなく、それを場面ごとの行動に落とせているかどうかです。共通目標を本人の言葉で置き、他職種の制度上できないことまで理解し、判断の根拠まで含めて共有する。この3つが土台になります。
そのうえで、カンファレンスでは決まったことと担当者を最後に確認する、記録は他職種が読む前提で事実と解釈を分けて書く、連絡手段は緊急度で選ぶ、といった具体的な行動に変換していきます。意見が食い違ったときは、情報の不足か、評価の違いか、制度上の制約かを切り分けてから話し合うと前に進みます。
経験が浅くても、観察した事実を具体的に伝え、分からないことをその場で確認し、自分の担当範囲を明示することはできます。連携は特別な能力ではなく、日々の伝え方の積み重ねです。まずは次のカンファレンスで、発言を事実・判断・提案の順に整理することから始めてみてください。



