HCUとは?ICUとの違いと看護師の仕事内容をわかりやすく解説
「HCU」という表示を病院で見かけて、どんな場所なのか気になった方は多いのではないでしょうか。HCUは日本語で「高度治療室」と呼ばれ、集中治療室(ICU)ほど濃密ではないものの、一般の病室よりも手厚く見守る必要のある患者さんが入る治療室です。病院によっては「準集中治療室」「重症治療室」などの名称が使われることもあります。
この記事では、HCUがどのような治療室なのかを整理したうえで、ICU・CCU・SCUとの違い、HCUで働く看護師の仕事内容、そして看護配置4対1が日々の働き方にどう表れるかまでを、厚生労働省の告示・通知にもとづいて解説します。
配属を控えた看護学生の方や、異動・転職でHCUを検討している看護師の方が、「自分が行こうとしているHCUはどういう場所か」を見極める材料としてお使いください。
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HCU(高度治療室)とは?

HCUは「High Care Unit」の略で、日本語では高度治療室と呼ばれます。
診療報酬上は「ハイケアユニット入院医療管理料」を算定する治療室がこれにあたり、一般病棟よりも手厚い体制で、状態が不安定な患者さんを継続的に観察・管理する場所です。
呼び方には病院ごとの差があり、準集中治療室、重症治療室といった名称で運用されている場合もあります。求人票や院内の掲示で名称が違っていても、届け出ている入院料が同じであれば制度上の位置づけは同じです。
ここでは、HCUが病院のなかでどこに位置するのか、どのような患者さんが入るのか、国が定めた施設基準はどうなっているのかを順に見ていきます。
HCUの役割と病棟としての位置づけ
HCUは、ICU(集中治療室)と一般病棟の中間に位置づけられる治療室です。
ICUで全身管理を受けた患者さんが、状態の改善にともなって移ってくる受け皿としての役割と、一般病棟では観察が追いつかない患者さんを引き受ける安全網としての役割をあわせ持ちます。
制度上の姿を確認しておくと、ハイケアユニット入院医療管理料は病院の一般病棟の治療室を単位として届け出るものと定められています。独立した大きな病棟ではなく、一般病棟のなかに設けられた専用の治療室というのが基本形です。
病床数についても上限があり、1つの治療室は30床以下と定められています。あわせて、その病院の一般病棟の入院患者の平均在院日数が19日以内であることも要件に含まれます。HCU単体ではなく、病院全体が急性期の患者さんを短期間で回している体制であることが前提になっているわけです。
在室期間については、公的な統計として示された日数はありません。患者さんの状態や病院の運用によって差が出るため、日数で一律に語れる部分ではないと考えられます。
HCUは一般病棟とICUの中間に位置する治療室
HCUに入室する患者の状態
HCUに入る患者さんの状態は、「ハイケアユニット用の重症度、医療・看護必要度」という評価票で毎日測定されます。
この評価票のA項目(モニタリング及び処置等)は13項目で構成されており、ここに挙がっている処置や管理が、そのままHCUで日常的に行われている医療の中身を表しています。
- 創傷処置(褥瘡の処置を除く)
- 蘇生術の施行
- 呼吸ケア(喀痰吸引のみの場合および人工呼吸器の装着の場合を除く)
- 注射薬剤3種類以上の管理(最大7日間)
- 動脈圧測定(動脈ライン)
- シリンジポンプの管理
- 中心静脈圧測定(中心静脈ライン)
- 人工呼吸器の管理
- 輸血や血液製剤の管理
- 肺動脈圧測定(スワンガンツカテーテル)
- 一時的ペーシング
- 抗不整脈剤の使用(注射剤のみ)
- 特殊な治療法等(CHDF、IABP、PCPS、補助人工心臓、ICP測定、ECMO、IMPELLA)
このうち基準①は、蘇生術の施行・中心静脈圧測定・人工呼吸器の管理・輸血や血液製剤の管理・肺動脈圧測定・一時的ペーシング・抗不整脈剤の使用・特殊な治療法等のいずれか1項目以上に該当する状態を指します。侵襲の大きい管理を受けている患者さんが、この基準①に集まる構造です。
一方の基準②は、A項目のいずれか1項目以上に該当すればよいという、より広い枠組みです。創傷処置やシリンジポンプの管理だけでも該当するため、「何らかの医療的な管理が続いている患者さん」がここに入ります。
なお、令和8年度の診療報酬改定で一時的ペーシングと抗不整脈剤の使用(注射剤のみ)がA項目に追加されました。循環動態が不安定な患者さんの管理が、より明確にHCUの役割として位置づけられたことになります。
基準①と基準②の関係
基準①に該当する状態は、すべて基準②にも含まれる
管理料1
管理料2
HCUの施設基準と看護配置
ハイケアユニット入院医療管理料には1と2の2区分があり、看護配置は管理料1が常時4対1、管理料2が常時5対1です。ここでいう4対1とは、当該治療室における看護師の数が、常時、入院患者の数が4またはその端数を増すごとに1人以上という意味になります。
重症度、医療・看護必要度の基準を満たす患者さんの割合にも差があります。管理料1・2とも基準①を満たす患者さんが2割以上必要な点は共通ですが、基準②を満たす患者さんの割合は管理料1が8割以上、管理料2が6割5分以上とされています。
体制面では、専任の常勤医師が常時1名以上いること、一般病床に専用の治療室を持つことが求められます。また、次の装置・器具を治療室内に常時備えることも要件です。ただし治療室が特定集中治療室と隣接していて、緊急時に十分対応できる場合は共有しても差し支えないとされています。
- 救急蘇生装置(気管挿管セット、人工呼吸装置等)
- 除細動器
- 心電計
- 呼吸循環監視装置
さらに令和8年度改定では、直近1年間の実績要件が加わりました。救急用の自動車または救急医療用ヘリコプターによる搬送件数が年間1,000件以上、もしくは全身麻酔による手術件数が年間500件以上といった基準のいずれかを満たす必要があります。医療資源の少ない地域に所在する病院では、それぞれ800件以上、400件以上に緩和されます。
令和8年3月31日時点で届出済みの治療室は、令和8年12月31日までこの実績要件を満たすものとみなされます
つまり実績要件が本格的に効いてくるのは令和9年以降です
参考:厚生労働省「基本診療料の施設基準等」 / 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」
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ICU・CCU・SCUとの違い

HCUを理解するうえで避けて通れないのが、ICU・CCU・SCUとの区別です。名称が似ているため混同されがちですが、診療報酬上の扱いはそれぞれ異なります。
もっとも分かりやすい比較軸は、看護配置と1日あたりの点数、そして算定できる日数の上限です。この3つを並べると、それぞれの治療室が「どのくらいの密度で、どのくらいの期間、患者さんを診る場所なのか」が見えてきます。
ICU(集中治療室)との違い
ICUは診療報酬上の「特定集中治療室管理料」を算定する治療室です。看護配置は常時2対1で、HCUの4対1と比べて倍の密度になります。
点数にも大きな差があります。特定集中治療室管理料1は7日以内で1日14,980点、8日以上で13,371点です。これに対しハイケアユニット入院医療管理料1は1日7,202点、管理料2は1日4,501点となっています。
算定日数の上限も異なり、ICUは原則14日まで、HCUは21日までです。ICUは短期集中で全身管理を行い、HCUはそれよりも長い期間、回復に向かう過程を支えるという設計の違いが読み取れます。
なお令和8年度改定で、特定集中治療室管理料の区分は従来の1から6までが1から3までに再編されました。ICU側の基準も動いているため、古い情報のまま比較すると実態とずれる点に注意が必要です。
ICUとHCUの比較
点数は令和8年度改定後の特定集中治療室管理料1(7日以内)、ハイケアユニット入院医療管理料1で比較
CCU(冠疾患集中治療室)との違い
CCU(Coronary Care Unit)は、心筋梗塞や重症心不全など、心臓の病気の患者さんを対象とした治療室として広く知られています。ただし制度面には注意が必要です。
現行の診療報酬点数表には「冠疾患集中治療室管理料」という独立した区分は存在しません。診療報酬の算定方法にも、基本診療料の施設基準等にも、CCUに対応する専用の入院料は設けられていないのです。
つまりCCUは、院内で使われている呼称にあたります。実際にどの入院料で届け出られているかは病院によって異なり、特定集中治療室管理料の場合もあれば、ハイケアユニット入院医療管理料の場合もあります。「CCU勤務」という求人を見たときは、看護配置が2対1なのか4対1なのかを必ず確認することが、実態を見誤らないポイントになります。
「CCU」は名称ではなく届出区分で見る
SCU(脳卒中集中治療室)との違い
SCUは「脳卒中ケアユニット入院医療管理料」を算定する治療室です。看護配置は常時3対1で、ICUとHCUの中間にあたります。点数は1日6,365点、算定できるのは発症後14日までです。
SCUの特徴は、対象疾患が明確に限定されている点にあります。施設基準では、脳梗塞・脳出血・くも膜下出血の患者さんをおおむね8割以上入院させる治療室であることが求められています。さらに、脳血管疾患等リハビリテーションの経験を持つ常勤の理学療法士または作業療法士が1名以上、当該治療室に勤務していることも要件です。
SCU入院患者の内訳
対象疾患を絞らないHCUに対し、SCUは脳卒中に特化し、リハビリ職が常時関わる体制を制度として組み込んでいる点が大きな違いといえます。
ICU・HCU・SCU・救命救急の比較
| 治療室・管理料 | 看護配置 | 1日あたり点数 | 算定上限日数 |
|---|---|---|---|
| ICU管理料1 | 常時2対1 | 7日以内 14,980点8日以上 13,371点 | 14日 |
| ICU管理料2 | 常時2対1 | 7日以内 10,390点8日以上 8,773点 | 14日 |
| ICU管理料3 | 常時2対1 | 7日以内 9,390点8日以上 7,770点 | 14日 |
| HCU管理料1 | 常時4対1 | 7,202点 | 21日 |
| HCU管理料2 | 常時5対1 | 4,501点 | 21日 |
| SCU | 常時3対1 | 6,365点 | 発症後14日 |
| 救命救急入院料1 | 常時2対1 | 3日以内 12,379点4〜7日 11,240点8日以上 9,894点 | 14日 |
| 救命救急入院料2 | 常時4対1 | 3日以内 10,623点4〜7日 9,629点8日以上 8,469点 | 14日 |
※現行の診療報酬点数表に「冠疾患集中治療室管理料(CCU)」の区分は設けられていない
参考:厚生労働省「診療報酬の算定方法」 / 厚生労働省「基本診療料の施設基準等」
看護師の求人を探す同じHCUでも病院によって実態が異なる理由

ここまで制度上の定義を見てきましたが、実際に働く場所としてのHCUは、病院によってかなり様子が違います。同じ「HCU」という名前でも、担当する患者さんの層も、1日の忙しさも一律ではありません。
その差を生んでいるのは、主に3つの変数です。入室の経路、届け出ている施設基準の区分、そしてICUを併設しているかどうかの3点になります。見学や面接の際にこの3つを確認できれば、一般的な定義だけでは分からない「その病院のHCU」の姿がかなり見えてきます。
入室の経路によって担う役割が変わるため
HCUに患者さんが入ってくる経路は、大きく分けて3つあります。ICUからの転室、手術後の術後管理、そして救急外来からの直接入室です。どの経路が多いかによって、HCUの性格は大きく変わります。
ICUからの転室が中心のHCUでは、人工呼吸器から離脱した直後の患者さんや、循環動態が落ち着き始めた患者さんが多くなります。回復の過程を支える色合いが強く、離床やリハビリ、一般病棟への橋渡しが業務の中心になりやすい環境です。
術後管理が中心のHCUでは、予定手術のスケジュールに合わせて入室が発生します。手術日に入室が集中し、術後数日で退室していく流れが繰り返されるため、業務の波が読みやすい一方で、繁忙のピークははっきり出ます。
救急からの入室が多いHCUでは、入室のタイミングが読めません。診断がついていない段階の患者さんを受けることもあり、対応の幅の広さが求められます。
入室経路で変わるHCUの役割
令和8年度改定で加わった実績要件も、この違いを裏づけています。救急搬送年間1,000件以上か、全身麻酔手術年間500件以上のいずれかを満たすことが求められるため、HCUを持つ病院は救急に強いタイプか、手術に強いタイプかのいずれかに寄る構造になっているのです。
施設基準の区分によって受け入れ患者の重症度が変わるため
同じHCUでも、届け出ている区分が管理料1なのか管理料2なのかで、求められる患者層が変わります。
管理料1は看護配置が常時4対1で、基準②を満たす患者さんが8割以上必要です。管理料2は常時5対1で、基準②を満たす患者さんは6割5分以上とされています。管理料1のほうが、看護師の人数も、集まる患者さんの医療的な密度も高くなるという関係です。
さらに、実績要件などを満たせなくなった治療室が算定する入院料の区分もあり、こちらは1日4,401点と定められています。管理料1の7,202点、管理料2の4,501点と並べると、同じ「HCU」の看板でも制度上の位置づけには幅があることが分かります。
見学や面接の場では、「ハイケアユニット入院医療管理料の1と2のどちらを届け出ていますか」と尋ねるのが、もっとも端的な確認方法です。
ICUを併設しているかどうかで対応範囲が変わるため
ICUを併設しているかどうかも、HCUの実態を左右します。この点は制度の条文にも表れています。
HCUには救急蘇生装置・除細動器・心電計・呼吸循環監視装置を治療室内に常時備えることが求められますが、治療室が特定集中治療室と隣接していて緊急時に十分対応できる場合は、これらを共有しても差し支えないとされています。物理的な隣接と機器の共有が想定されているということは、併設型のHCUではICUとの連携が日常的に起きる前提だといえます。
ICUを併設している病院では、状態が悪化した患者さんをICUへ戻す選択肢があります。一方、ICUを持たない病院のHCUは、院内でもっとも重症度の高い患者さんを診る場所になります。急変時に自院で対応しきるか、転院搬送を検討するかという判断まで含まれてくるため、看護師に求められる守備範囲は広くなります。
参考:厚生労働省「基本診療料の施設基準等」 / 厚生労働省「診療報酬の算定方法」 / 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」
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HCUで働く看護師の仕事内容

HCUの看護は、モニターの数値を追うことだけではありません。医療機器の管理から日常生活の援助、ご家族への対応、そして一般病棟へ送り出すための調整まで、幅の広さがこの部署の特徴です。
ここでは、5つの側面に分けて具体的に見ていきます。
全身状態のモニタリングと医療機器の管理
HCUの中心的な業務が、全身状態の継続的なモニタリングです。心電図、血圧、呼吸状態、酸素飽和度といった項目を、モニターと自分の目の両方で確認していきます。
扱う医療機器も多岐にわたります。人工呼吸器、シリンジポンプ、動脈ライン、中心静脈ライン、一時的ペーシングなどが、重症度、医療・看護必要度のA項目にそのまま並んでいることからも分かるとおり、これらの管理はHCUの日常業務です。
機器そのものの操作に加え、数値が「機器の不具合による変化」なのか「患者さんの状態の変化」なのかを見分ける判断が求められます。アラームが鳴るたびに原因を切り分けていく作業は、HCU看護の基礎体力といえる部分です。
急変の予兆の発見と初期対応
HCUに入っている患者さんは、状態が安定しきっていません。だからこそ、急変そのものへの対応よりも、急変の前に現れる小さな変化に気づくことが重視されます。
尿量のわずかな減少、呼吸回数の増加、意識レベルの微妙な変化、皮膚の色や末梢冷感といったサインは、モニターの数値が明確に崩れる前に現れることがあります。これらを拾い上げて医師に報告し、必要な指示を得るまでが看護師の役割です。
実際に急変が起きた場合は、蘇生術や輸血、抗不整脈剤の投与といった対応が必要になります。除細動器や救急蘇生装置が治療室内に常時備えられているのは、この初期対応を治療室内で完結させるためです。
日常生活の援助
HCUの看護師の仕事は、医療機器の管理だけではありません。清潔ケア、体位変換、口腔ケア、食事の介助、排泄の援助といった日常生活の援助も重要な業務です。
重症度、医療・看護必要度の評価票では、B項目として寝返り・移乗・口腔清潔・食事摂取・衣服の着脱・診療療養上の指示が通じる・危険行動の7項目を毎日評価するよう定められています。B項目は施設基準の判定には用いられませんが、評価そのものは毎日行うことが求められています。
ライン類が入った状態での体位変換や清拭は、一般病棟よりも手順が複雑になります。安全を確保しながら生活を支えるという点で、HCUの生活援助には独自の難しさがあります。
患者・家族への精神的ケア
HCUに入室した患者さんは、身体的な苦痛に加えて、環境の変化による不安を抱えていることが少なくありません。人工呼吸器などで発語が難しい場合には、意思疎通の手段を工夫する必要も出てきます。
ご家族への対応も欠かせません。急な入室や手術後の面会では、状況が飲み込めないまま治療室に入ってくるご家族もいます。医師の説明を補足したり、機器の意味を分かる言葉で伝えたりすることで、不安が和らぐ場面は多くあります。
面会については、感染対策等の正当な理由なく面会を妨げないよう配慮することが望ましいと、特定入院料の通則にも明記されています。制度としても、ご家族との関わりを閉ざさない方向が示されているといえます。
一般病棟への転棟に向けた調整
HCUは、患者さんが最後まで過ごす場所ではありません。状態が改善すれば一般病棟へ移っていくため、転棟に向けた準備と情報の引き継ぎもHCU看護師の重要な仕事です。
具体的には、離床の進み具合、食事形態、内服の管理状況、リスクの高い場面などを整理し、受け入れ側の病棟に伝えます。HCUでは4対1あるいは5対1で見ていた患者さんが、一般病棟では別の配置基準のもとで生活することになるため、観察の頻度が下がることを前提にした申し送りが求められます。
なお、HCUには早期離床・リハビリテーション加算や早期栄養介入管理加算といった加算が設けられており、入室後の早い段階から離床と栄養管理に取り組む体制が評価されています。転棟に向けた準備は、入室直後から始まっていると考えると分かりやすいでしょう。
転棟に向けた取り組みを支える加算
参考:厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」 / 厚生労働省「基本診療料の施設基準等」
看護師の求人を探す看護配置4対1が働き方にどう表れるか

「ICUは2対1、HCUは4対1」という比較はよく目にしますが、この数字が自分の1日の動き方にどう跳ね返るのかは、数字だけでは見えてきません。ここでは、4対1という配置を実際の勤務に翻訳して考えていきます。
ポイントになるのは、条文の書き方の違いです。HCUの4対1は「常時」の配置を求める基準である一方、一般病棟の7対1はそうではありません。この差が、受け持ち人数にも夜勤帯の体制にも表れてきます。
一般病棟と比べた受け持ち人数と観察の密度
一般病棟の代表的な区分である急性期一般入院料1は、いわゆる7対1です。ただし条文を読むと、これは「一日に看護を行う看護職員の数」について定めた基準であることが分かります。1日を通した延べの配置で判断するものであり、どの時間帯でも患者さん7人に看護師1人がついているという意味ではありません。
一方、HCUの基準は「当該治療室における看護師の数は、常時、当該治療室の入院患者の数が4またはその端数を増すごとに1以上であること」と書かれています。日勤でも夜勤でも、この密度が保たれている必要があります。
数え方の対象にも違いがあります。急性期一般入院料1が「看護職員」を数え、そのうち7割以上が看護師であればよいとされているのに対し、HCUの基準は「看護師」の数で定められています。准看護師を含めた人数ではなく、看護師の人数で満たす必要があるという点は、実際の人員構成に影響します。
たとえば入院患者が12人のHCUであれば、常時3人以上の看護師が治療室内にいる計算です。単純な受け持ち人数の差だけでなく、1人の患者さんに向けられる観察の時間そのものが変わってきます。
配置基準の「数え方」の違い
ICUと比べた業務範囲と患者とのかかわり方
ICUの2対1と比べると、HCUの4対1は1人あたりの受け持ちが増えます。ただし、業務の中身も同時に変わる点が重要です。
ICUでは鎮静下で全身管理を受けている患者さんが中心になりますが、HCUでは意識があり、会話ができ、食事や離床に取り組む患者さんの割合が高くなります。重症度、医療・看護必要度のB項目で寝返りや食事摂取、衣服の着脱を毎日評価するよう定められているのは、こうした生活の場面がHCU看護の一部だからです。
機器の管理と生活の援助を同時に担い、しかも人数はICUの半分の密度という点が、HCUの働き方を特徴づけています。患者さんと言葉を交わす機会が多い分、やりがいを感じやすい一方で、優先順位の判断が求められる場面も増えます。
夜勤帯の人員体制と一人が担う範囲
夜勤帯の違いは、4対1という基準がもっともはっきり表れる部分です。
一般病棟では、1日に看護を行う看護職員の数が基準を満たしていれば、夜勤を行う看護職員の数は各病棟2人以上でよいと定められています。これに対しHCUは常時4対1のため、夜勤帯でも入院患者4人あたり1人の看護師が必要です。30床の治療室が満床であれば、夜間も8人以上という計算になります。
入院患者数に対して常時必要な看護師数(4対1)
※常時、入院患者4人またはその端数を増すごとに看護師1人以上。夜勤帯も同じ基準
もうひとつ押さえておきたいのが、勤務の兼務に関する規定です。通知では、当該治療室勤務の看護師は、その治療室に勤務している時間帯は、治療室以外での夜勤を併せて行わないものとするとされています。HCUと一般病棟を行き来する形の夜勤は想定されていないということです。
なお、HCU勤務に限定した給与の公的統計は存在しません。手当の有無は病院ごとの規定によるため、特殊勤務手当や夜勤手当の金額を、求人票と就業規則の両方で確認することをおすすめします。
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- ただしHCU勤務だけを取り出した給与の公的統計はありません
- 特殊勤務手当や夜勤手当の有無は病院ごとの規定次第。求人票と就業規則の両方を見せてもらいましょう
参考:厚生労働省「基本診療料の施設基準等」 / 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」
HCUで働くのに向いている看護師の特徴

HCUは、経験年数だけで向き不向きが決まる部署ではありません。ただし、日々の業務の性質から考えると、力を発揮しやすいタイプはある程度はっきりしています。
ここでは、観察力・判断力・学習の継続という3つの観点から、HCUに向いている看護師の特徴を整理します。いずれも生まれ持った資質というより、意識と経験で伸ばしていける要素です。
小さな変化に気づける観察力がある人
HCUの患者さんは、状態が大きく崩れる前に、小さなサインを出していることがあります。尿量、呼吸回数、末梢の冷感、表情や言葉数の変化といった情報を拾えるかどうかが、その後の展開を左右します。
モニターの数値は重要な情報ですが、それだけを見ていると変化を見逃すことがあります。機器の数値と、実際に触れて見て感じた情報を突き合わせられる人がHCUでは強みを発揮します。
観察力は、経験を重ねるなかで育っていくものです。前の勤務帯との違いを意識して比べる習慣を持てる人は、配属後の伸びも期待できます。
転職活動するなら?
急変時に冷静に判断できる人
HCUでは、蘇生術や輸血、抗不整脈剤の投与といった対応が必要になる場面があります。除細動器や救急蘇生装置が治療室内に常時備えられているのは、こうした事態を治療室内で処理する前提があるからです。
急変時に求められるのは、すべてを1人で解決する力ではありません。何が起きているかを言語化して人を呼び、役割を分担することのほうが実務上は重要です。焦りを抱えながらでも、手順に沿って動ける人が向いています。
判断の場面が多い分、振り返りの機会も多い部署です。うまくいかなかった対応を次に生かせる姿勢があると、経験が積み上がっていきます。
継続的に学び続けられる人
HCUで扱う医療機器や薬剤は幅広く、施設基準も改定のたびに動きます。令和8年度改定で重症度、医療・看護必要度のA項目が変更されたように、数年前の知識のままでは現場の基準とずれることが起こり得ます。
学びを形にしたい場合、認定看護師という選択肢があります。日本看護協会によると、2025年12月時点の登録者数はクリティカルケア分野が1,034人で、旧区分の集中ケアが872人、救急看護が1,064人です。認定看護師全体ではA課程19,270人、B課程6,539人が登録されています。
認定看護師になるには、看護師免許取得後の実務研修が通算5年以上あり、そのうち3年以上が認定看護分野の実務研修であることが必要です。HCUでの経験は、この実務研修に位置づけられる可能性があります。すぐに目指さないとしても、選択肢として知っておくと配属後の見通しが立てやすくなります。
認定看護師 分野別の内訳(2025年12月時点)
日本看護協会登録者数
参考:公益社団法人日本看護協会「認定看護師」 / 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」
まとめ
HCUは、ICUと一般病棟の中間に位置する高度治療室です。看護配置は管理料1が常時4対1、管理料2が常時5対1で、点数はそれぞれ1日7,202点と4,501点、算定できるのは21日までと定められています。
ICUの2対1・14,980点、SCUの3対1・6,365点と並べると、それぞれの治療室が担う役割の違いが見えてきます。一方でCCUについては、現行の診療報酬点数表に対応する入院料の区分がなく、院内の呼称として使われている点に注意が必要です。
そして、同じHCUでも実態は病院ごとに異なります。入室の経路、届け出ている管理料の区分、ICU併設の有無という3つを確認すれば、その病院のHCUがどういう場所かをかなり具体的に想像できます。見学や面接の機会があれば、この3点を質問リストに入れておくとよいでしょう。
HCUは、機器の管理と生活の援助を同時に担い、患者さんの回復の過程に伴走できる場所です。観察力と判断力を磨きたい看護師にとって、経験の密度が高い環境といえます。配属や転職を検討している方は、まず志望先のHCUがどのタイプなのかを確かめるところから始めてみてください。





