薬剤師国家試験の合格率は?過去の推移と数字の正しい読み方・大学選びの指標
薬剤師国家試験の合格率を調べると過去5年は「68〜69%」となっています。
合格率は受験した人に対する割合であって、薬学部に入学した人のうち何割が薬剤師になれたかを示す数字ではありません。
この記事では、第111回までの合格率と推移を厚生労働省の公表資料で確認したうえで、分母の取り方で見え方がどう変わるか、合格基準がどんな仕組みで決まっているか、大学選びの指標として使うときに何を併せて見ればよいかを整理します。
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直近の合格率

第111回薬剤師国家試験(令和8年2月21日・22日実施)の合格率は68.49%でした。過去5回はいずれも68〜69%台で、回による大きな振れはありません。
最新の回の結果
第111回は受験者12,774名に対し合格者8,749名、合格率68.49%でした。区分別では6年制新卒が86.25%(受験7,781名・合格6,711名)、6年制既卒が41.33%(受験4,871名・合格2,013名)で、同じ試験にもかかわらず44.92ポイントの差があります。
旧4年制課程の卒業者や受験資格認定者を含む「その他」の区分は、受験122名・合格25名で20.49%でした。
男女別の合格率は男性64.76%、女性70.83%。大学の設置主体別では国立79.41%、公立82.92%、私立67.43%です。
過去の推移
第107回から第111回までの5回は、全体の合格率が68.02%〜69.00%の範囲に収まっています。新卒は84%台〜86%台、既卒は40%台〜44%台で、区分ごとの水準もほぼ一定です。
一方で受験者数は、第107回の14,124名から第111回の12,774名へ5回で1,350名減りました。合格率が横ばいのまま母数が縮んでいるため、合格者数も9,607名から8,749名へ減っています。
合格率の推移(第107回〜第111回)
数字を確認する方法
合格発表は例年3月下旬です。第112回は令和9年3月25日(木)午後2時に、厚生労働省ホームページの資格・試験情報のページで発表されます。
発表当日には報道発表資料として、結果の概要、合格基準及び正答、試験回次別合格者数の推移、都道府県別合格者数、大学別合格者数がまとめて公開されます。新卒・既卒の別や男女別の受験者数まで載っているのはこの一次資料だけです。
予備校や大学のサイトに載る集計は一次資料を加工したものなので、まず厚生労働省の資料で数字と時点を確かめてから読むと誤解が避けられます。
参考:厚生労働省「第111回薬剤師国家試験の合格発表を行いました」 / 厚生労働省「薬剤師国家試験のページ」
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合格率は分母の取り方で変わる

同じ「合格率」という言葉でも、受験者を分母にしたもの、新卒だけを取り出したもの、入学者を分母にしたものがあります。どれを見るかで、同じ年の同じ集団が58%にも86%にも見えます。
同じ第110回新卒集団 分母を変えると
新卒と既卒で大きく異なる
第111回の全体68.49%は、新卒86.25%と既卒41.33%を合算した数字です。受験者の約6割が新卒なので、全体の合格率は新卒側に引っ張られます。
在学中に受験する人にとって実感に近いのは新卒の数字、卒業後に再受験する人にとって近いのは既卒の数字です。全体の68.49%だけを見ると、どちらの立場からも実態とずれます。
受験した人に対する割合である
合格率は「合格者数÷受験者数」で計算されます。出願したものの受験しなかった人は分母に入りません。第111回は出願14,261名に対し受験12,774名で、1,487名が出願しながら受験していません。
さらに、そもそも国家試験を受けるには6年制課程の卒業が要ります。在学中に進級や卒業の要件を満たせなかった人は、受験者にも出願者にも該当しません。
入学者を分母にすると見え方が変わる
文部科学省は毎年、6年制学科を置く全大学について、入学から卒業・国家試験合格までの状況を調査して公表しています。2025年度調査では、2019年度に入学した10,894人のうち6年後までに卒業したのが7,374人(67.7%)、第110回までに国家試験に合格したのが6,402人でした。入学者を分母にすると58.8%です。
第110回の新卒合格率は84.96%です。同じ年度に入学した同じ集団を入学者で割り直すと58.8%になります。差の大半は、卒業までたどり着かなかった人が受験者に含まれていないことで生まれています。
2019年度入学生1万894人の追跡(入学者を分母)
第110回までの累計・入学者を分母とした割合
設置主体別でも開きがあります。国立は入学560人に対し合格448人(80.0%)、公立は428人に対し325人(75.9%)、私立は9,906人に対し5,629人(56.8%)でした。
設置主体別 入学者を分母にした合格率
2019年度入学生・第110回までの累計
大学別の数字を読むときの注意
厚生労働省は合格発表と同時に大学別合格者数も公表しています。ただしここから計算できる合格率も、受験者を分母にした数字です。
卒業の判定が厳しい大学では、合格の見込みが立たない学生が受験者に含まれにくくなり、受験者を分母にした合格率は上がります。判定の運用が緩やかな大学ではその逆が起こります。大学別の合格率だけを並べても、学修の状況を比べたことにはなりません。
- 合格率を見たら、まず「分母は受験者か入学者か」を確認する
- 在学中に受験する人は新卒、卒業後に再受験する人は既卒の数字を見る
- 大学を比べるなら、合格率だけでなく進級率・卒業率も並べる
合格率を大学の比較に使うなら、入学者数・進級率・卒業者数・合格者数が大学ごとに並んでいる文部科学省の調査で、入学からの流れを追うほうが実態に近づきます。
参考:文部科学省「薬学部における修学状況等」 / 厚生労働省「第110回薬剤師国家試験の合格発表を行いました」
薬剤師の求人を探す合格基準の仕組み

合格基準は「何点取れば受かる」という固定の点数ではありません。総得点の基準、必須問題の基準、禁忌肢の基準の3つを全て満たした人が合格になります。
合格に必要な3つの基準
総得点
平均点と標準偏差を用いた相対基準で毎回設定(配点の65%以上なら少なくとも合格)
必須問題
全体で配点の70%以上 かつ 各科目で配点の30%以上
禁忌肢
選択数2問以下
総得点による基準
薬剤師国家試験は1問2点、全345問で690点満点が基本です。総得点の基準は、問題の難易を補正したうえで平均点と標準偏差を用いた相対基準により毎回設定されます。
実際のラインは、第108回が470点、第109回が420点、第110回と第111回が426点でした。回によって50点動いています。
総得点の合格基準ラインの推移
下限の目安はあります。厚生労働省は基準を見直した際、当分の間は全問題への配点の65%以上を取って他の基準を満たしていれば少なくとも合格になるよう設定するとしています。65%は「下回ると不合格」の線ではなく「超えていれば安全」の線です。
なお、設問の不備などで採点対象から外れた問題があると、その分だけ満点が下がります。第109回は688点、第111回は686点が満点でした。得点率で過去と比べるときは、分母の満点も確認が要ります。
必須問題に関する要件
必須問題は問1から問90までの90問で、ここには総得点とは別の基準がかかります。必須問題全体で配点の70%以上、かつ必須問題を構成する各科目でそれぞれ配点の30%以上が必要です。
必須問題の科目は物理・化学・生物、衛生、薬理、薬剤、病態・薬物治療、法規・制度・倫理、実務の7つ。1科目でも30%を割ると、総得点が基準を超えていても合格になりません。
一般問題には科目ごとの基準はありません。科目別の足切りがかかるのは必須問題だけです。
基準は変更されることがある
総得点を相対基準で決める方式は第101回から始まりました。それ以前は得点率65%という絶対基準で、受験者の学力や問題の難易度が少し振れるだけで合格者数が大きく動く点が課題とされていました。
このため、第100回以前の合格率と第101回以降の合格率を、同じ意味の数字として並べることはできません。試験の科目や合格者の決定方法を定めるときは医道審議会の意見を聴くことになっており、見直しは制度として起こりうる前提です。
2026年3月には新しい基本方針が取りまとめられました。令和6年度の入学生が受験する第115回から、試験科目が「社会と薬学」「基礎薬学」「医療薬学」「衛生薬学」「臨床薬学」の5つに改められ、複合問題は10問減ります。合格基準の考え方そのものは引き継がれます。
禁忌肢の取り扱い
禁忌肢は、薬剤師として選んではいけない選択肢のことです。法律に抵触する内容、公衆衛生に甚大な被害を及ぼす内容、倫理的に誤った内容、患者さんに重大な障害を与える危険がある内容などから作られます。
基準は禁忌肢問題の選択数が2問以下であること。第104回から導入され、第111回まで同じ基準が使われています。
どの問題に禁忌肢が含まれていたかは公表されません。偶発的な選択で不合格にならないよう出題数や問題の質に配慮するとされているため、禁忌肢だけを狙った対策を組む必要は薄いといえます。
参考:厚生労働省「薬剤師国家試験のあり方に関する基本方針」 / 厚生労働省「薬剤師国家試験制度について新たな基本方針を取りまとめました」
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試験の概要

第112回薬剤師国家試験は令和9年2月20日・21日に実施されます。受験資格・科目・手続きは、厚生労働大臣が毎年8月下旬ごろに公告で示します。
受験資格
受験できるのは、学校教育法に基づく大学で6年制の薬学課程を修めて卒業した人です(薬剤師法第15条第1号)。第112回では令和9年3月15日までに卒業する見込みの人も含まれます。
卒業見込証明書で出願した人は、令和9年3月15日午後2時までに卒業証明書を提出しなければなりません。提出がない場合、その受験は無効になります
外国の薬学校を卒業した人や外国の薬剤師免許を持つ人は、厚生労働大臣から同等以上の学力および技能があると認定されれば受験できます(同条第2号)。
4年制課程については、平成18年度から平成29年度までに入学して4年制課程を卒業し、大学院で薬学の修士または博士の課程を修了した人を対象とする経過措置が残っています。平成30年度以降の入学者は6年制課程のみが対象です。
出題される科目と範囲
出題は必須問題、一般問題(薬学理論問題)、一般問題(薬学実践問題)の3区分、合計345問です。区分ごとの内訳は必須問題90問、薬学理論問題105問、薬学実践問題150問で、2日間に分けて実施されます。
科目は物理・化学・生物、衛生、薬理、薬剤、病態・薬物治療、法規・制度・倫理、実務の7つ。薬学理論問題には実務が含まれず、必須問題と薬学実践問題には含まれます。
薬学実践問題150問のうち130問は、実務とほかの科目を組み合わせた複合問題です。知識を単独で問う形より、現場の場面に当てはめて答える形が中心になっています。
日程と手続き
受験願書は在籍中または卒業した大学で入手できるほか、薬剤師国家試験運営本部事務所へ郵送でも請求できます。郵送の場合は手元に届くまで1週間ほどかかります。
受験手数料は6,800円で、収入印紙を受験願書に貼って納めます。書類が受理された後は、受験しなかった場合でも返還されません。
試験地は北海道、宮城県、東京都、石川県、愛知県、大阪府、広島県、徳島県、福岡県の9か所です。会場は受験票の送付時に案内され、会場に関する問い合わせには応じられません。日程も試験地も年度ごとに変わるため、受験する回の公告で確認しましょう。
第112回薬剤師国家試験 日程
合格から免許取得までの流れ
国家試験に合格しただけでは、薬剤師の業務は行えません。薬剤師の免許は、試験に合格した人の申請により薬剤師名簿へ登録されることで与えられます。
申請先は住所地の保健所などです。厚生労働省は、窓口で申請してから登録が完了するまでに2か月程度、免許証が手元に届くまでにさらに1〜2か月程度かかるとしています。3月下旬の合格発表から数えると、免許証が届くのは初夏以降になる計算です。
就職日までに免許証が間に合わないことは珍しくありません。希望すれば登録日に「登録済証明書」が発行され、免許証が届くまでの資格の証明として使えます。必要な場合は申請時に窓口で申し出ておきましょう。
合格から免許証到着までの流れ
参考:厚生労働省「薬剤師国家試験」 / 厚生労働省「薬剤師免許の申請手続き等について」
既卒の合格率が低い背景

既卒の合格率が新卒の半分以下にとどまるのは、既卒だけ試験の内容が難しくなるからではありません。受験する人の状況と、対策に使える環境が違うためです。
新卒 と 既卒 の比較
受験する状況が異なる
既卒の受験者には、卒業後に就職して働きながら受験する人、複数回受験している人、体調や家庭の事情で学習時間を確保しにくい人が含まれます。在学中のように1日の大半を試験対策に充てられるとは限りません。
新卒は「その年の卒業生」という条件がそろった集団です。対して既卒は、卒業からの年数も置かれた状況もばらばらの人が集まった集団です。性質の違う集団を同じ物差しで並べると、条件の差が実力の差のように見えてしまいます。
試験対策の環境
在学中に手元にあった対策の仕組みは、卒業すると自動的には手に入りません。教材の入手、出題基準の改定への対応、学習のペース配分を自分で組み立てることになります。差の大きな部分は、この環境の違いで説明がつきます。
既卒の合格率が4割前後だからといって、一人ひとりの見通しが4割になるわけではありません。学習時間をどれだけ確保できるか、対策の環境をどう整えるかによって条件は変わります。
薬剤師の求人を探す大学選びの指標として使う場合

進路を検討する段階で合格率を見るなら、受験者を分母にした数字だけでは足りません。公表されている複数の指標を組み合わせると、入学から薬剤師になるまでの流れが見えてきます。
公表されている指標
文部科学省の「薬学部における修学状況等」には、6年制学科を置く全大学について次の項目が大学別に並んでいます。
- 入学者数と入学定員充足率
- 5年次進級率
- 実務実習修了率
- 卒業者数と卒業率
- 国家試験の受験者数・合格者数・合格率
全体で見ると、6年制学科は入学定員を満たしていません。入学の段階で絞り込みが働きにくい分、進級や卒業の段階の数字を見る意味が大きくなります。
厚生労働省側で公表されるのは合格発表時の大学別合格者数です。両方を並べると、入学から合格までの各段階で人数がどう変わるかを追えます。
合格率だけで判断しない
受験者を分母にした合格率は、卒業の判定の仕方で動きます。合格率が高い大学が、入学した学生を確実に薬剤師にしている大学とは限りません。
入学者を分母にした合格率と、受験者を分母にした合格率の差が大きい大学ほど、在学中に受験に至らなかった人が多いことになります。どちらが良い悪いという話ではなく、2つの数字をセットで見ないと学修の状況は判断できないということです。
複数年分を見ることも役立ちます。入学者数が少ない大学ほど、単年度の数字は振れやすくなります。
確認したい情報
進路を検討するときに調べておきたい項目は4つあります。いずれも文部科学省の調査と、各大学が公表する情報で確認できます。
大学選びで確認したい4項目
大学のパンフレットやWebサイトに載る合格率は新卒のみの数字であることが多いため、分母が何かを併せて確かめておくと安心です。
オープンキャンパスなどで直接聞ける機会があれば、入学者数に対する合格者数を尋ねてみるのも一つの方法です。
学費と在学期間
6年制課程は在学期間が6年です。私立大学薬学部の初年度納付金は令和7年度で平均2,181,184円(授業料1,418,656円、入学料326,148円、施設設備費338,340円ほか)。2年目以降と合わせると、6年間でおよそ1,100万〜1,200万円になります。
国立大学は省令で定める標準額が入学料282,000円・年間授業料535,800円で、6年間で約350万円です。
- 薬剤師の正社員求人の月給は中央値350,000円(最低215,000円/最高550,000円)
- 職場別の月給中央値は、調剤薬局365,000円・病院300,500円
- 医療キャリアナビ掲載求人データ(2026年時点・薬剤師求人1,450件)
在学期間が延びると、その年数分の授業料が上乗せされます。進級率や卒業率を見るのは、学修の状況を知るためだけでなく、在学期間が延びる可能性を費用に織り込むためでもあります。
どこまでを許容範囲とするかは家庭の事情によって変わるため、数字を並べたうえで判断するのが現実的です。
参考:文部科学省「私立大学等の入学者に係る学生納付金等調査結果について」 / e-Gov法令検索「国立大学等の授業料その他の費用に関する省令」
まとめ
薬剤師国家試験の合格率は、直近の第111回で68.49%、6年制新卒で86.25%、6年制既卒で41.33%でした。ここ5回の水準はほぼ横ばいで、回ごとの難易度で大きく動くものではありません。
読み方で押さえておきたいのは、公表されている合格率がすべて受験者を分母にした数字だという点です。入学者を分母にすると、2019年度入学生では58.8%になります。大学別の合格率も同じ理由で、卒業の判定の仕方によって上下します。
合格基準は、相対基準で決まる総得点、必須問題の70%と各科目30%、禁忌肢2問以下の3つを満たすことが条件です。総得点のラインは回によって変わり、第100回以前とは基準そのものが違います。
過去の数字を並べるときは、基準が同じ回同士かどうかを確かめておきましょう。


