薬剤師に英語は必要?場面別に求められる力と海外で働きたい場合について解説
「外国人の患者さんが来局したとき、きちんと説明できるだろうか」「企業へ転職するなら英語は必須なのか」。薬剤師の英語をめぐる悩みは、ひとくくりにできません。
服薬指導で使う会話、論文や添付文書を読む力、企業で求められる文書作成は、どれも「英語力」と呼ばれますが中身は別物です。必要な範囲が分からないまま漠然と勉強を始めても、時間と費用が思うように活きません。
この記事では、薬剤師に英語が必要とされる場面を分解したうえで、外国人患者さんへの対応で実際に起きていること、海外で薬剤師として働く場合の制度上の前提、目的から逆算した学習の進め方を、公的データと法令をもとに整理します。
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英語が必要とされる場面

薬剤師が英語に接する場面は、大きく4つに分かれます。それぞれ使う技能が違うため、「英語ができる薬剤師になる」という目標のままでは的が絞れません。
場面別・求められる英語力の中身
| 場面 | 主に使う技能 | 問われること | 英語以外に必要なもの |
|---|---|---|---|
| 患者さんへの対応 | 聞き取りと会話 | 説明が伝わったかを確かめられること | 相手の言語が英語でない場合の手段 |
| 文献や資料を読む | 読解 | 限られた分野の語彙と構文に慣れること | 国内の添付文書と突き合わせる確認 |
| 企業での業務 | 文書の読み書き | 決まった様式で正確に書けること | 職種ごとに異なる業務知識 |
| 海外で働く | 会話と読解の両方 | その国が定める語学要件を満たすこと | その国の薬剤師資格 |
患者さんへの対応で使う場面
来局した外国人の患者さんに、氏名や体調、併用薬を確認し、用法・用量を伝える場面です。ここで求められるのは、流暢さよりも伝わったかどうかを確かめる力です。薬剤師法第25条の2は、調剤した薬剤の適正な使用のため、必要な情報を提供し、薬学的知見に基づく指導を行わなければならないと定めています。この義務は患者さんの国籍や使用言語によって変わるものではありません。つまり、言葉が通じにくい相手であっても、指導の内容が届いたことを確認する責任は同じように残ります。
なお、日本に住む外国人の使用言語は英語とは限りません。
文献や資料を読む場面
海外の学術論文、海外の規制当局が公表する安全性情報、国際的なガイドラインなどを読む場面です。会話とは技能が異なり、辞書を使いながら自分のペースで読み進められるため、話す力がなくても成立します。
企業での業務で使う場面
製薬企業やCROなどで、海外拠点や海外の規制当局とやり取りする場面です。会話より文書の読み書きに寄るのが特徴で、求められるのは英文資料を正確に扱う力です。ただし、企業内のすべての職種が同じように英語を使うわけではありません。
海外で働く場合
海外の薬局や病院で薬剤師として働く場合、語学よりも先に確認すべきことがあります。日本の薬剤師免許は日本の法律に基づくもので、そのまま他国で通用するわけではありません。英語が話せるかどうかとは別に、その国の制度に沿った資格の取得が前提になります。
外国人患者さんへの対応は英語だけの問題ではない

「外国人の患者さんが増えているから英語が必要」という説明は、実態を単純化しすぎています。日本に住む外国人が主に使う言語は英語とは限らず、また個人の語学力に頼らない手段も公的に整備されています。
在留外国人の状況を確認する
出入国在留管理庁の発表によると、令和7年末時点の在留外国人数は412万5,395人で、前年末比9.5%増となり初めて400万人を超えました。在留カードなどに表記された国籍・地域の数は196にのぼります。
国籍・地域別の上位は、中国930,428人、ベトナム681,100人、韓国407,341人、フィリピン356,579人、ネパール300,992人と続きます。上位10か国・地域で在留外国人全体の約85%を占めますが、そのなかで英語を公用語の一つとする国はフィリピンにとどまります。米国や英国は上位10位に入っていません。
もちろん、母語が英語でなくても英語で意思疎通できる人はいます。それでも、来局する外国人の患者さんに英語が通じることを前提にした備えだけでは足りない場面が出てきます。
英語以外の言語への対応
在留外国人の構成を踏まえると、中国語、ベトナム語、韓国語、ポルトガル語などへの対応が必要になる場面があります。
分布には地域差があります。都道府県別で最も多いのは東京都の801,438人で全国の19.4%を占め、次いで大阪府375,319人、愛知県357,800人、神奈川県317,353人、埼玉県290,937人と続きます。国籍の構成は地域によって違うため、必要になる言語も勤務地によって変わります。全国の統計をそのまま自分の薬局に当てはめるより、実際に来局する人を見て判断するほうが確かです。
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医療通訳という選択肢
厚生労働省は、外国人患者の受入れ環境整備として医療通訳に関する取り組みを進めています。医療通訳育成カリキュラム基準や医療通訳テキストが公表されているほか、希少言語に対応した遠隔通訳サービスの委託事業も行われています。
ただし、制度があることと自分の職場で使えることは別です。令和5年度の実態調査では、回答した5,673病院のうち医療通訳・電話通訳・ビデオ通訳・翻訳機器のいずれかを利用できる病院は41.2%でした。
この調査は全国の病院と京都府・沖縄県の診療所が対象で、薬局は含まれていません。薬局で同じ手段が使えるとは限らず、勤務先ごとに確認が必要です。
公的に整備された多言語資料
厚生労働省は「外国人向け多言語説明資料 一覧」を公表しており、13言語に対応しています。自分で訳文を用意しなくても、公的に整備された資料をそのまま印刷して使える場面があります。薬局の業務に直接関わるものも含まれます。
翻訳ツールを使うときの注意
翻訳ツールは、その場で使える手段として広がっています。一方で、医薬品名や用法・用量の訳出が意図どおりにならない場合があります。一般名と商品名が混在したとき、剤形や単位が省略されたとき、「食後」「頓服」のような日本の服薬習慣に根ざした表現を訳したときは、出力された内容を確認する手順を挟むほうが安全です。
- 薬剤名が一般名・商品名のどちらで訳出されたかを確認する
- 用量の数字と単位(mg・mL・錠数)が原文と一致しているか見る
- 服用のタイミングが時刻や食事との関係として伝わっているか確認する
- 訳文を見せたうえで、患者さんに内容を言い返してもらう
ツールを使うこと自体に問題はありません。訳した内容をそのまま渡さず、確認の工程を残すかどうかが分かれ目です。
参考:出入国在留管理庁「令和7年末現在における在留外国人数について」 / 厚生労働省「令和5年度 医療機関における外国人患者の受入に係る実態調査の結果」
服薬指導で使う表現

英語で服薬指導をする場面では、フレーズを数多く覚えるより、確認すべき事項の順番を決めておくほうが役に立ちます。順番が決まっていれば、言葉が詰まっても抜け落ちる項目がなくなります。
来局時に確認する内容
最初に確認するのは、患者さんの本人情報と薬を使ううえでの前提条件です。
- 氏名と生年月日(Could I have your name and date of birth?)
- アレルギーの有無(Do you have any allergies to medicines or foods?)
- 現在使用中の薬・サプリメント(Are you taking any other medicines or supplements?)
- 妊娠・授乳の有無(Are you pregnant or breastfeeding?)
- これまでに薬で副作用が出た経験(Have you ever had a bad reaction to a medicine?)
短い質問でも、相手が「はい」とだけ答えた場合は内容が伝わっていない可能性があります。はい・いいえで答えられる質問だけで済ませず、薬の名前を言ってもらう、手元のお薬手帳を見せてもらうといった確認を挟むと確実です。
用法・用量の伝え方
誤解が生まれやすいのは、回数・時間・食事との関係の3点です。日本語の指示をそのまま英語に置き換えても、食事や就寝の習慣が違う相手には意図が届かないことがあります。
数字は聞き間違いが起きやすいため、口頭で伝えるだけでなく、薬袋やカレンダー形式の指示書に書いて渡すと誤解が減ります。
副作用と受診の目安
副作用の説明では、症状名を並べるより「どうなったら連絡するか」を先に伝えると行動につながります。
- 起こりうる症状(drowsiness=眠気/nausea=吐き気/rash=発疹)
- 受診・連絡が必要な状態(Stop taking it and call us if you have a rash or trouble breathing)
- 連絡先と受付時間
日本の医療制度に慣れていない患者さんには、薬局と医療機関のどちらに連絡すればよいかも合わせて伝えると迷いが減ります。
薬剤師の求人を探す伝わったかどうかを確かめる方法
説明のあとに「Do you understand?」と尋ねると、内容が伝わっていなくても「Yes」と返ってくることがあります。確実なのは、患者さん自身の言葉で説明し直してもらう方法です。「Could you tell me how you are going to take this medicine?(この薬をどう飲むか教えてもらえますか)」のように尋ねれば、理解のずれがその場で見つかります。
この手順は言語にかかわらず必要なものです。日本語の服薬指導でも、患者さんに復唱してもらう場面は同じ意味を持ちます。
記録の残し方
調剤の記録については、薬剤師法第28条が薬局開設者と薬剤師それぞれの義務を定めています。
通訳や多言語資料を使った場合は、次の来局時に同じ手段を用意できるよう、使った手段と伝えた内容を残しておくと引き継ぎがスムーズです。
- どの言語で対応したか
- 通訳を介したか(電話通訳・ビデオ通訳・家族による通訳など)
- 使用した多言語資料の種類
- 理解の確認をどう行い、どこにずれがあったか
参考:e-Gov法令検索「薬剤師法」 / 厚生労働省「外国人向け多言語説明資料 一覧」
文献や資料を読むための英語

読解は、会話とは別に組み立てられる技能です。話す力に自信がなくても、扱う分野を絞れば読み進められる場合があります。
一般名は英語表記が基本である
医薬品の一般的名称は国際的な枠組みのもとで整備されています。WHOが定める国際一般名(INN)があり、日本ではこれに対応する形で日本医薬品一般的名称(JAN)が定められています。
医薬品医療機器総合機構(PMDA)の手続きでも、INNに収載されている品目は届出、収載されていない品目は命名申請と区分されており、国際的な名称と日本の名称が対応づけられた状態が制度として維持されています。日々扱っている薬の英語名を知っておくだけで、英語資料を検索したり読み始めたりする入口になります。
INNとJANのつながり方
添付文書やガイドラインを読む
海外の規制当局や学会が公表する資料を参照する場面では、国内の情報だけでは分からない内容に触れられます。国内未承認の薬について海外の審査結果や安全性情報を確認する、国内のガイドラインが扱っていない領域の推奨を調べるといった使い方です。
こうした資料は原文が英語のため、翻訳版の公開を待たずに読めることが利点になります。一方で、海外の資料に書かれた用法や適応が、日本国内で承認された内容と一致するとは限りません。国内の患者さんに使う薬の判断材料にする場合は、国内の添付文書と突き合わせる工程が欠かせません。
必要になる読解の範囲
日常会話とは違い、医薬品分野の資料は語彙と構文が限られます。臨床試験の論文であれば、目的・方法・結果・考察という構成がほぼ共通し、使われる統計用語も繰り返し登場します。
最初から全文を訳そうとせず、要旨と結果の表だけを読む進め方もあります
扱う領域を1つに絞ると、同じ語彙が繰り返し出てくるため負担が減ります
日本語で確認できる情報源
英語の資料に取りかかる前に、日本語で確認できる範囲を押さえておくと手間が減ります。PMDAのウェブサイトでは、医療用医薬品について幅広い情報を日本語で検索できます。
日本語で確認できる主な情報の種類
日本国内で使う薬の情報は、まず日本語の一次情報にあたるのが基本です。英語の資料が必要になるのは、国内で未承認の薬や、国内資料では扱われていない知見を確認する場面に絞られます。
参考:国立医薬品食品衛生研究所「日本医薬品一般的名称(JAN)データベース」 / 独立行政法人医薬品医療機器総合機構「医薬品に関する情報」
企業で求められる英語

製薬企業やCROへの転職を考えるとき、英語は判断材料の一つになります。ただし「企業=英語必須」と一括りにはできません。
職種による違い
同じ企業内でも、職種によって英語の使い方が変わります。
職種による英語の使い方の違い
| 職種 | 主に扱う英語 | 使う相手・場面 |
|---|---|---|
| 研究開発 | 論文と試験報告書の読み書き | 海外の文献、共同研究の相手先 |
| 薬事(レギュラトリー) | 承認申請資料と照会事項の文書 | 海外の規制当局、海外拠点の薬事担当 |
| 学術・メディカルインフォメーション | 論文と製品情報の読解、問い合わせ回答の作成 | 社内の関係部署、医療機関からの問い合わせ |
| 安全性情報の管理 | 副作用報告の文書と用語の統一 | 海外拠点、海外の規制当局への報告 |
| 生産・品質管理 | 手順書や記録の様式、査察対応の文書 | 海外の当局査察、海外の製造委託先 |
ここで押さえておきたいのは、薬剤師免許が必要な職種と、英語を使う職種は別の軸だということです。医薬品医療機器等法(薬機法)第17条は、医薬品の製造販売業者に総括製造販売責任者として薬剤師を置くこと、製造業者に製造所ごとの医薬品製造管理者として薬剤師を置くことを定めています。
つまり企業内で薬剤師免許が法令上求められるのは、品質管理や製造販売後安全管理を担う責任者の役割です。一方、英語を多く使うのは海外申請や海外拠点との調整に関わる業務で、こちらは免許の有無で決まりません。
国内向けの業務が中心の職種では、英語に触れる機会が限られる場合もあります。求人票の業務内容から、どの場面で英語を使うのかを読み取るのが近道です。
応募要件として示されるスコア
求人でTOEICなどのスコアが応募要件として示されることがあります。ただし、要件の水準は企業と職種によって大きく異なり、「何点あれば有利」と一般化できるものではありません。
スコアを示さずに「英文資料の読解ができる方」といった書き方をする求人もあります。志望する企業の実際の求人で、要件の有無と水準を確認するのが確実です。
- 英語を「読む・書く・話す」のどれで使うのかを業務内容から読む
- 「英文資料の読解ができる方」など、スコアを示さない書き方の求人もある
- 要件の水準は企業と職種でまったく違うため、個別に確認する
実際に使う場面
企業で英語を使う場面は、日常的な会話より文書のやり取りに寄ります。承認申請の資料は、日米欧の規制当局と製薬業界が参加するICH(医薬品規制調和国際会議)で国際共通の様式が定められており、CTD(コモン・テクニカル・ドキュメント)として第1部から第5部までの構成が決まっています。第1部だけが各地域固有で、品質・非臨床・臨床に関する第3部から第5部は共通様式です。同じ資料を複数の国の申請に使える構造のため、海外申請に関わる職種では英文での作成・確認が業務に組み込まれます。
このほか、海外拠点とのメールやオンライン会議、国際学会での情報収集などが挙げられます。会議の場でも、事前に資料が共有されていれば読んで準備したうえで臨めます。
お探しの求人は?
入社後に習得する場合
入社時点の英語力だけで配属や評価が決まるわけではありません。扱う製品や領域が決まれば、使う語彙の範囲も定まるため、業務を通じて慣れていく形は現実的です。研修制度や資格取得の支援を用意している企業もあります。
参考:e-Gov法令検索「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」 / 独立行政法人医薬品医療機器総合機構「ICH-M4 CTD(コモン・テクニカル・ドキュメント)」
海外で薬剤師として働くには

海外勤務を目標にする場合、英語の学習より先に確認しておきたいのが資格の問題です。ここを飛ばしたまま準備を進めると、時間と費用の使い方を誤りかねません。
日本の薬剤師免許は他国では通用しない
薬剤師の免許は、薬剤師法が定める国内の制度のもとで与えられます。
日本の薬剤師免許は日本の法律に基づく資格であり、それ自体で他国の薬剤師業務を行えるものではありません。海外で薬剤師として働くには、その国が定める資格を別途取得する必要があります。
国ごとに制度が異なる
手続きの内容は国によって違いますが、学歴の評価、試験、実務経験、語学要件といった項目が組み合わされるのが一般的です。
一例として米国では、米国外で薬学教育を受けた人が州の薬剤師免許試験に進む前に、全米薬事評議会(NABP)のFPGEC認証を取得する必要があります。
米国で薬剤師を目指す場合の流れ(例)
※1〜3はFPGEC認証(米国薬学部卒業者と同等の教育要件を満たした証明)の要件。免許そのものではなく、免許取得の可否は州が判断する
NABPは、FPGEC認証そのものは薬剤師業務を行う免許ではなく、米国の薬学部卒業者と同等の教育要件を満たすことを示すものだと明記しています。語学要件は手続きの一部にすぎず、それだけで完結しません。
制度は変更される場合があります。実際に手続きを検討する段階では、必ず最新の公式情報を確認しましょう。
薬剤師以外の職種で海外に関わる方法
現地の薬剤師資格を持たなくても、海外に関わる働き方はあります。製薬企業の海外部門や国際的な共同開発に関わる職種、国際機関やNGOでの業務などが該当します。これらは薬剤師として調剤や服薬指導を行う仕事ではありませんが、薬学の知識を前提とする役割です。
「海外で働く」と「薬剤師として海外で働く」は別の目標だと分けて考えると、選択肢が整理しやすくなります。
薬剤師の求人を探す情報を確認する方法
各国の制度は、その国の規制当局や薬剤師会が公式に公表しています。
- 規制当局・薬剤師会の公式サイトで最新の要件を確認する
- 学歴評価・試験・語学要件・実務経験の4点を個別に確認する
- 情報を見た時点(参照日)を控えておく
- 転職メディアや個人の体験談の記述だけで判断しない
参考:National Association of Boards of Pharmacy「Foreign Pharmacy」
学習の進め方

英語の勉強を始める前に決めておきたいのは、教材ではなく目的です。必要な範囲が定まれば、取り組む内容も自然に絞られます。
目的を先に決める
服薬指導で使うのか、資料を読むのか、企業への転職に備えるのかによって、伸ばす技能が変わります。
複数の目的を同時に追うより、当面の1つに絞るほうが進みます。
業務に関連づけて学ぶ
日々扱っている医薬品の英語名や、頻繁に説明している用法の表現から始める方法があります。調剤した薬の一般名を英語で確認する、よく出す薬の副作用を英語で言えるようにするといった取り組みは、業務のなかで繰り返し使うため定着しやすくなります。
汎用的な英会話教材から入ると、薬局で使わない表現に時間を割くことになりがちです。
転職活動するなら?
職場の支援を確認する
研修費用の補助や資格取得の支援制度を設けている職場があります。ただし、支援を明示している求人はそれほど多くありません。医療キャリアナビ掲載求人データ(2026年時点)では、薬剤師の求人1,450件のうち「研修補助あり」の条件が付いているのは31件でした。
数が限られるからこそ、応募先にこうした制度があるかを確認する項目に加えておくと、入社後の学習の進め方が変わります。求人票に書かれていない場合も、面接で質問すれば分かることがあります。
確認しておきたい項目
- 語学研修・eラーニングの費用補助があるか
- 資格試験の受験料補助や合格時の手当があるか
- 外国人患者さんへの対応マニュアルや多言語資料が整備されているか
- 通訳サービスの契約があるか
資格試験との付き合い方
スコアの取得が必要になるのは、応募要件として示されている場合や、海外の資格取得手続きで語学要件が定められている場合です。それ以外の場面では、スコアそのものより、必要な資料を読めるか、患者さんに伝わる説明ができるかのほうが実務に直結します。
スコアが必要な場面とそうでない場面を分けておくと、勉強の優先順位を決めやすくなります。受験を目的にするのではなく、目的を満たす手段として使う位置づけが無難です。
まとめ
薬剤師の英語は、場面ごとに求められる中身が違います。服薬指導で使う会話、文献を読むための読解、企業で扱う文書の読み書きは、それぞれ別の技能として整理できます。
外国人の患者さんへの対応については、「英語ができれば解決する」とは限りません。在留外国人の国籍・地域別の構成を見ると、上位を占めるのは英語圏以外の国です。厚生労働省が整備した多言語の説明資料や、医療通訳・遠隔通訳の仕組みなど、個人の語学力に頼らない手段も用意されています。まずは自分の職場でどの手段が使えるかを確認しておくと、いざというときに落ち着いて対応できます。
海外で薬剤師として働くことを考えている場合は、日本の薬剤師免許が他国ではそのまま通用しない点が出発点になります。国ごとに学歴の評価、試験、実務経験、語学要件が定められており、語学だけで越えられる条件ではありません。制度は変わるため、当該国の規制当局や薬剤師会の公式情報を、参照した時点とあわせて確認しましょう。
学習を始めるなら、教材を選ぶ前に目的を決めることからです。扱っている薬の英語名や、よく使う説明の表現といった身近なところから広げていけば、業務と学習が切り離されずに続きます。





