作業療法士は増えすぎ?供給の推移と就業先の偏りについて
作業療法士は増えすぎだと言われることが増えました。養成校が増え、毎年5,000人近くが国家試験に合格していることからこのように言われています。
この記事では、有資格者数と国家試験の受験者数、養成校の入学定員の状況、就業先の分布、そして国が示した需給推計を、それぞれ出典と時点をつけて確認します。あわせて、「増えすぎ」の影響として語られがちな就職難や給与低下について、データから言えることと言えないことを分けて整理します。
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作業療法士は本当に増えすぎている?

作業療法士の人数を表す統計は複数あり、それぞれ数えているものが違います。混同したまま議論すると、実態から離れた結論になりがちです。
有資格者数の推移
日本作業療法士協会の会員統計資料によると、2025年3月31日現在の有資格者は118,465人です。これは過去の国家試験合格者数を単純に累計した数から、協会が把握した死亡退会者302人を差し引いた数値として示されています。
1年前の2024年3月31日現在は113,649人だったので、1年で4,816人増えた計算になります。
ここで注意したいのは、この118,465人が「今働いている作業療法士の人数」ではないことです。退職した人も、資格を取っただけで別の仕事をしている人も、この数に含まれています。
一方、同じ時点の協会会員数は63,352人で、組織率は約53.5%です。会員のうち7,047人(11.1%)は就業状況が「休業中」と登録されています。
数字を読むときの区別
- 有資格者118,465人=累計合格者数から死亡退会者を引いた数。就業者数ではない
- 協会会員63,352人=協会に入っている人。有資格者の約半数
- 会員のうち休業中は7,047人(11.1%)
国家試験の受験者数の動き
毎年どれだけ新しい作業療法士が生まれているかは、国家試験の結果で確認できます。厚生労働省の合格発表によると、2026年2月に実施された第61回試験は受験者5,426人・合格者4,947人(合格率91.2%)でした。
受験者数を7年分並べると、増え続けているわけではないことが分かります。2020年の第55回は6,352人でしたが、そこから5,500〜5,700人台で推移し、直近の第61回は5,426人と、この7年で最も少ない水準になりました。合格率は80%台前半から91.2%まで上がっており、合格者数は4,500〜4,900人台でほぼ横ばいです。
作業療法士国家試験 受験者数・合格者数の推移
数字が示していること
有資格者の累計は増え続けます。国家試験に毎年4,500人以上が合格し、引退による減少がまだ小さいためです。作業療法士の資格が国内で生まれたのは1966年で、初期の合格者がようやく定年を迎える時期に入ったところです。
ただし、累計が増えることと、現場で働く人が同じペースで増えることは別です。協会員63,352人の年齢構成を見ると、21〜40歳が約64%を占めます。若い層に偏った構成は、今後10〜20年かけて退職者が増えていく段階に入ることも意味します。
「増えすぎ」という言葉が指しているのが累計の有資格者数なのか、現場で働く人数なのか、特定の職場の求人倍率なのかで、話はまったく変わります。
今のあなたの状況は?
参考:日本作業療法士協会「統計情報」 / 厚生労働省「第61回理学療法士国家試験及び第61回作業療法士国家試験の合格発表について」
増えてきた背景

有資格者が10万人を超えるまでに増えた理由は、養成の受け皿が広がったことと、リハビリテーションの制度的な需要が拡大したことの2つに整理できます。
養成校の増加
厚生労働省の需給分科会に提出された資料では、養成校が増えた要因として規制緩和が挙げられています。1998年3月に閣議決定された規制緩和推進3か年計画を受けて、1999年3月に理学療法士作業療法士学校養成施設指定規則が改正され、同年4月に施行されました。
教育内容の規定が科目ごとの時間数から分野ごとの単位数に変わり、教員要件も緩和されています。
続いて2001年3月に閣議決定された規制改革推進3か年計画により、大学の学部・学科の新設手続きが許可制から届出制に変わりました。学校教育法等の改正を経て2003年4月に施行されています。
この結果、作業療法士の学校養成施設は2018年時点で190校(4年制大学80校、短期大学5校、専門学校105校)まで増えました。入学定員は2016年時点で7,533人です。
需要の拡大
制度面の後押しも同じ時期に重なりました。2000年4月に回復期リハビリテーション病棟入院料が創設され、同じ月に介護保険制度が施行されています。需給分科会の資料では、規制緩和と並ぶ養成校増加の要因としてこの2つが挙げられています。
リハビリテーションを提供する場が病院の中だけでなく、回復期の病棟や介護保険サービスへ広がったことで、作業療法士が働ける場所そのものが増えました。1999年の指定規則改正から2003年の届出制移行までの数年間は、養成の入口が広がった時期と、就業先が広がった時期がちょうど重なっています。
供給側では調整が始まっている

「増えすぎ」を論じる記事の多くは、養成校が増え続けて有資格者も増え続けるという前提に立っています。ただ、その前提は数年前から変わり始めています。
養成校の定員割れ
2025年10月27日に開かれた第120回社会保障審議会医療部会に、厚生労働省が医療関係職種の養成施設の入学定員充足率を示す資料を提出しました。ここに作業療法士のデータがあります。
厚生労働省が指定する養成施設(専門学校など)の区分では、充足率は平成27年度の77.2%から令和6年度には52.6%まで下がりました。定員のおよそ半分しか入学者が集まっていない計算です。大学などの学校区分でも106.2%から80.1%へ低下しています。
背景にあるのは18歳人口の減少です。同じ資料では、現在の大学の入学定員規模が維持された場合、2040年の定員充足率は70%台まで下がるとの推計も示されています。作業療法士だけの現象ではありません。
募集停止・学科の再編
充足率の低下は、施設数の変化にも表れています。養成施設区分の施設数は平成27年度の108校から令和6年度は98校へ減りました。ここでいう施設数は、その年度に入学者を募集している施設の数です。
一方、大学などの学校区分は78校から104校へ増えています。専門学校が減り、大学が増えるという入れ替わりが同時に起きている状態です。両方を合わせると令和6年度は202校で、平成27年度の186校からは増えていますが、充足率はどちらの区分でも下がっています。
入学定員と入学者数の差
定員の合計は、供給の上限を示す数字であって、実際に入ってくる人数ではありません。令和6年度の作業療法士養成施設の充足率52.6%は、定員から計算した供給見込みが実態の約2倍になってしまうことを意味します。
定員をもとに将来の供給を推計する場合、この差をどう扱うかで結果が大きく変わります。後述する国の需給推計も入学定員を起点にしているため、前提の確認が欠かせません。
養成校の数字は3つを区別する
- 入学定員=募集している人数の上限。供給の見込みではない
- 入学者数=実際に入学した人数。定員×充足率で求める
- 養成施設数=その年度に募集している施設の数。募集停止があれば減る
転職活動するなら?
作業療法士の就業先の偏り

全体の人数が増えているかどうかだけでは、働く場の実態は分かりません。作業療法士は就業先が特定の領域に偏っており、そこを見ないと「増えすぎ」の中身が見えてきません。
医療機関に集中している現状
日本作業療法士協会の2024年度会員統計資料によると、休業中と未回答を除いた会員の配置は医療が71.8%、介護が18.4%で、この2つで9割を占めます。
医療分野の内訳を見ると、一般病院が26,795人で最も多く、精神科病院4,799人、地域医療支援病院1,320人、特定機能病院1,015人、診療所934人と続きます。会員の約4割が一般病院で働いている計算になります。
介護分野では通所リハビリテーション1,692人、訪問看護1,452人、訪問リハビリテーション1,150人が主な配置先です。1994年の介護分野は395人(7.5%)で、30年間で9,105人(18.4%)まで伸びました。
協会員の配置領域構成比の推移(1994年→2024年)
不足が指摘されている領域
精神科領域、児童福祉・発達支援、介護保険サービスは、作業療法士の配置が広がりきっていない領域として語られることがあります。ただし「何人いれば足りるのか」を示す公的な基準はないため、不足を断定できるデータは見当たりません。
確認できるのは配置人数の少なさです。協会員のうち児童福祉法関連施設で働く人は1,330人(2.1%)で、内訳は児童発達支援525人、放課後等デイサービス422人、児童発達支援センター112人などとなっています。精神科病院は4,799人で、会員全体の7.6%にあたります。
一方、当サイトに掲載されている作業療法士の求人5,371件のうち、放課後等デイサービスは419件、児童発達支援は253件で、合わせて全体の約12%を占めます。協会員の配置割合2.1%に比べると、求人側の割合はかなり高い状態です。
地域による違い
協会の都道府県別会員数を、同じ資料に併記されている2024年国勢調査人口で割ると、地域差が見えてきます。人口10万人あたりの会員数は全国平均で約51人ですが、高知県は124.1人、東京都は26.9人と4.6倍の開きがあります。
上位に並ぶのは高知・鳥取・山形といった地方県で、下位は東京・埼玉・神奈川・千葉と首都圏が占めます。直感に反しますが、人口あたりで見ると地方のほうが作業療法士は多いことになります。
これは協会員をもとにした数字で、組織率が約53.5%である点は割り引いて見る必要があります。それでも、全国一律に「増えすぎ」と言える状況ではないことは分かります。
作業療法士の求人を探す国が示している需給の見通し

「2040年に供給が需要の1.5倍」という数字をよく見かけます。出どころと前提を確認しておきます。
需給推計の内容
この数字は、厚生労働省の医療従事者の需給に関する検討会に設けられた理学療法士・作業療法士需給分科会が、2019年4月5日の第3回会合で示したものです。資料には「PT・OTの供給数は、現時点においては、需要数を上回っており、2040年頃には供給数が需要数の約1.5倍となる結果となった」と記されています。
同じ会合の資料には、作業療法士の人口10万人あたり就業者数が2025年に86人、2040年に141人になるという推計も載っています。
理学療法士と作業療法士を合わせた推計であり、作業療法士だけの数字ではありません。また、この推計を受けて示された方向性は「養成の質の評価と適切な指導により計画的な人員養成を行う」という論点で、資格の価値が下がるといった結論ではありません。
推計の前提と限界
この推計には明示された前提があります。供給側の計算式は、入学定員数に国家試験の受験率・合格率・名簿登録率・就業率を掛けるという構造です。各パラメータは2011年から2017年の実績値の中央値が将来も維持されると仮定して設定されています。
ここで前述の充足率が効いてきます。推計の起点である入学定員は、当時も今も実際の入学者数より多い数字です。令和6年度の養成施設区分の充足率52.6%を当てはめれば、定員ベースの供給見込みは実態から離れます。
さらに、推計が公表されたのは2019年4月で、すでに7年が経過しています。18歳人口の減少と養成校の募集停止はその後に進んだ変化です。確定した予測ではなく、一定の前提を置いた試算として読むのが適切です。
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「増えすぎ」の影響として言われていること

有資格者が増えていることは確認できます。ただ、それが個人の就職や給与にどう跳ね返るかは、別の問題です。
就職・転職への影響
全国の有資格者数と、個人が就職できるかどうかを直接つなぐ公的なデータはありません。作業療法士に限定した有効求人倍率も公表されていないため、資格者が増えたから就職が難しくなったと数字で示すことはできません。
確認できるのは、募集の内訳に偏りがあることです。当サイト掲載の作業療法士求人5,371件を職場別に見ると、次の順になります。
- 訪問リハビリテーション 1,727件
- 病院 805件
- デイケア・デイサービス 650件
- クリニック 521件
- 介護老人保健施設 504件
- 放課後等デイサービス 419件
会員の配置が最も多い病院と、求人が最も多い訪問リハビリテーションが一致していません。希望する職場の種類によって、見つけやすさは変わります。
給与への影響
賃金構造基本統計調査には作業療法士単独の区分がなく、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・視能訓練士の4職種をまとめた数値が公表されています。企業規模10人以上・男女計で見ると、推計年収は令和5年が約432万円、令和6年が約444万円、令和7年が約444万円です。
同じ調査で対象となった労働者数は255,690人(令和5年)から279,650人(令和7年)へ増えていますが、平均年収は横ばいを保っています。
ただし、この数字は4職種の合算で、企業規模や地域による差も含まれていません。全国平均が横ばいであることと、個人の給与が上がるかどうかは別の話です。
給与関連指標の3か年推移
| 項目 | 令和5年 | 令和6年 | 令和7年 |
|---|---|---|---|
| 推計年収 | 約432万円 | 約444万円 | 約444万円 |
| きまって支給する現金給与額(月額) | 300,900円 | 311,400円 | 309,900円 |
| 年間賞与その他特別給与額 | 714,400円 | 704,700円 | 717,200円 |
| 平均年齢 | 35.6歳 | 35.5歳 | 36.2歳 |
| 対象労働者数 | 255,690人 | 252,750人 | 279,650人 |
参考:e-Stat「賃金構造基本統計調査 1 職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)」
状況を踏まえて考えたいこと

ここまでの数字から言えることは限られていますが、進路や転職を考えるときに使える視点はあります。
領域の選び方
医療分野に71.8%が集中している一方、児童福祉や介護の領域では配置人数がまだ少ない状態です。求人の内訳を見ると、訪問リハビリテーションや児童発達支援・放課後等デイサービスの募集は相応にあります。
医療機関を選ぶ人が多い中で、別の領域を選ぶことは競争相手が少ない場所を選ぶことでもあります。ただし、領域によって求められる知識も働き方も違うため、人が少ないという理由だけで決めるのは避けたほうが無難です。
- 訪問リハビリテーション 300,000円(最も高い)
- クリニック 283,500円/有料老人ホーム 265,000円
- 児童発達支援 264,050円/デイケア・デイサービス 260,000円
- 病院 250,250円(求人数は多いが中央値は低め)
働く地域の選び方
人口10万人あたりの会員数は、高知県の124.1人から東京都の26.9人まで幅があります。首都圏は人口あたりの作業療法士が少なく、地方は多いという構図です。
養成校の入学定員充足率にも地域差があります。令和6年度で見ると京都府は129.5%と定員を超えている一方、愛媛県は20.8%、香川県は30.0%と大きく下回ります。養成校からの供給が細っている地域では、数年先に人の補充が難しくなる可能性があります。
全国の数字ではなく、自分が働く地域の数字で考えるほうが、判断の材料としては役に立ちます。
まとめ
作業療法士の有資格者は2025年3月末時点で118,465人で、累計としては増え続けています。ただしこれは就業者数ではなく、協会員63,352人のうち11.1%は休業中と登録されています。国家試験の受験者数は2020年の6,352人から直近は5,426人まで減っており、新規参入は頭打ちに近い状態です。
供給側では変化が始まっています。養成施設区分の入学定員充足率は平成27年度の77.2%から令和6年度は52.6%まで下がり、施設数も108校から98校へ減りました。「今後も増え続ける」という前提そのものが、すでに動いています。
就業先は医療分野に71.8%が集中し、人口10万人あたりの会員数は地域によって4.6倍の差があります。国が示した「2040年に供給が需要の約1.5倍」という推計は2019年の公表で、入学定員を起点にした一定の前提のもとでの試算です。
一方、就職や給与への影響を全国の資格者数から直接導くことはできません。賃金構造基本統計調査の4職種合算の平均年収は、直近3年で横ばいです。
「増えすぎ」という言葉をそのまま受け取るより、自分が働きたい領域と地域の数字を確かめるほうが、次の一歩を決めやすくなります。求人の内訳や職場ごとの条件を見比べるところから始めてみましょう。


