作業療法士が少ない理由|人数・領域・地域の3つの視点で分析
「作業療法士は人手不足」と言われる一方で、求人を探しても希望に合う募集がなかなか見つからない。この二つは矛盾しているように見えますが、どちらも起きていることです。
「作業療法士が少ない」という言葉には、有資格者数そのものが理学療法士より少ないこと、特定の領域や地域で人手が足りていないこと、働く側から見て求人が見つかりにくいことという、性質の違う3つの話が混ざっています。
この記事では、公的統計と制度の規定をもとに、この3つを分けて整理します。
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「作業療法士が少ない」と言われる背景

「少ない」という言葉が指すものは、話し手の立場によって変わります。進路を検討している人、就職先を探している作業療法士、採用する側の管理者では、同じ言葉でも見ている対象が違います。
理学療法士と比べて有資格者数が少ない
同じリハビリテーション専門職でも、理学療法士と作業療法士では資格を持つ人の数に差があります。
令和8年2月に実施された第61回国家試験の合格者は、理学療法士が11,156人、作業療法士が4,947人でした。毎年生まれる新しい有資格者の数は、理学療法士が作業療法士の約2.3倍です。この差が数十年積み重なった結果が、現在の人数差になっています。
参考:厚生労働省「第61回理学療法士国家試験及び第61回作業療法士国家試験の合格発表について」
特定の領域・地域で人手が足りていない
全体の人数が足りているかどうかと、必要な場所に人がいるかどうかは別の問題です。
日本作業療法士協会の会員統計では、会員の56.2%が医療機関に勤務しています。一方で、介護保険サービスや障害児支援、行政の介護予防事業などに従事する会員は、それぞれ全体の数%かそれ未満にとどまります。
地域についても同じことが言えます。人口あたりで見ると、都道府県間の差は実数で見るより大きく開きます。
働く側から見て求人が見つかりにくい
「人手不足なのに就職先がない」という実感は、統計の話とはまた別の次元にあります。
求人が出るかどうかは、その職場に欠員や増員があるかで決まります。有資格者が不足していても、募集が出ていなければ求職者にとっては「求人がない」ことになります。加えて、勤務地・給与・休日といった条件で絞り込むと、選択肢は一気に減ります。
この記事で扱う3つの視点
- 理学療法士との人数差 → 養成の規模と診療報酬上の配置要件から説明
- 領域・地域による偏り → 協会統計と人口あたりの分布で確認
- 求人が見つかりにくい理由 → 条件の絞り込み・募集の頻度・欠員補充の構造
理学療法士と比べて人数が少ない理由

有資格者数の差は、資格の人気や難易度だけで説明できるものではありません。養成校の受け入れ規模と、診療報酬制度が求める人員配置の中身という、2つの制度的な要因があります。
養成校の数と入学定員の差
厚生労働省の理学療法士・作業療法士需給分科会が2019年に示した需給推計では、養成施設の入学定員を理学療法士13,629人、作業療法士7,285人(2011年から2017年の中央値)として計算しています。入り口の受け入れ枠の段階で、すでに約1.9倍の開きがあります。
理学療法士側の直近の数字も見ておきます。日本理学療法士協会の統計では、令和8年度の養成校は274校・入学定員14,142人です。定員は令和6年度の14,954人をピークに2年連続で減っていますが、それでも需給推計の前提を上回る水準が続いています。
養成校の定員が増えれば、その分だけ毎年の合格者が増えます。理学療法士の合格者数が作業療法士の2倍を超える状態が長く続いてきたのは、この受け入れ規模の差が直接反映された結果といえます。
参考:厚生労働省「理学療法士・作業療法士需給分科会」 / 日本理学療法士協会「統計情報」
制度上の配置要件の違い
上位記事がほとんど触れていない論点が、診療報酬の施設基準です。疾患別リハビリテーション料は対象疾患ごとに区分が分かれており、区分によって求められる職種の構成が違います。
令和8年度診療報酬改定後の施設基準では、脳血管疾患等リハビリテーション料(Ⅰ)を届け出るには、専従の常勤理学療法士5名以上、専従の常勤作業療法士3名以上、言語聴覚療法を行う場合は専従の常勤言語聴覚士1名以上を配置し、これらが合わせて10名以上勤務している必要があります。
これに対して運動器リハビリテーション料(Ⅰ)の要件は、専従の常勤理学療法士または専従の常勤作業療法士が合わせて4名以上。内訳の定めがないため、理学療法士だけで満たすことも作業療法士だけで満たすことも可能です。
| 職種 | 脳血管疾患等(Ⅰ) | 脳血管疾患等(Ⅱ) | 運動器(Ⅰ) | 運動器(Ⅱ) |
|---|---|---|---|---|
| PT | 5名以上 | 1名以上 | PTまたはOTで合わせて4名以上(内訳の定めなし) | PT2名以上/OT2名以上/PT+OT計2名以上のいずれか |
| OT | 3名以上 | 1名以上 | ||
| ST | 1名以上(言語聴覚療法を行う場合) | 1名以上(言語聴覚療法を行う場合) | ー | ー |
| 合計 | 10名以上 | 4名以上 | 4名以上 | 2名以上 |
つまり、脳血管疾患等の領域には作業療法士を名指しで求める規定がある一方、運動器の領域にはそれがありません。整形外科をはじめ運動器リハビリテーションを提供する医療機関は数が多く、その需要が理学療法士に向かいやすい構造になっています。
職業としての認知の差
作業療法は対象とする範囲が広く、一言で言い表しにくい面があります。日常生活動作の練習、手工芸や調理などの活動、認知機能への働きかけ、就労支援まで含むため、内容が伝わりにくいという指摘は以前からあります。
この認知の差が養成校の志望者数にどの程度影響しているかを示す統計はありません。因果関係として断定できる根拠はなく、あくまで指摘されている見方として押さえておくのが妥当です。実際には養成校の設置数という受け入れ側の制約が先にあり、志望者の動向はその枠内で動いている面もあります。
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領域によって過不足が異なる

全体の人数だけを見ていても、どこで人が足りていないのかは分かりません。日本作業療法士協会が公表する領域別の会員数から、実際の分布を確認します。以下の数字はすべて2025年3月31日現在、会員63,352人を母数としたものです。
医療機関に集中している現状
医療関連で働く会員は35,576人で、全体の56.2%を占めます。内訳は病院が34,016人と大半で、診療所は934人にとどまります。病院の中でも一般病院が26,795人、精神科病院が4,799人、地域医療支援病院が1,320人、特定機能病院が1,015人という構成です。
年次推移で見ると、休業中と未回答を除いた就業者に占める医療の割合は、1994年の71.5%から2024年の71.8%とほとんど変わっていません。有資格者が大きく増えたこの30年間も、就業先の重心は医療から動いていないことになります。
領域別 就業割合の推移(1994〜2024年)
休業中・未回答を除いた就業者に占める割合。2020年度に協会の統計区分が変更され、前後の数値は連続しない
なお、協会は2020年度に統計項目の見直しを行っており、その前後で数値が不連続になる点には注意が必要です。
介護保険サービスでの不足
介護関連で働く会員は9,105人、全体の14.4%です。居宅サービスが5,298人で、内訳は通所リハビリテーション1,692人、訪問看護1,452人、訪問リハビリテーション1,150人、通所介護831人となっています。
割合そのものは1994年の7.5%から2024年の18.4%へと伸びており、介護分野への広がりは確実に起きています。ただし、介護保険の人員基準は作業療法士を名指しで求めていません。
介護老人保健施設の基準では「理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士」を常勤換算で入所者数を100で除した数以上と定めています。通所リハビリテーションも同様に、リハビリテーションの提供に当たる理学療法士、作業療法士または言語聴覚士を利用者100人ごとに1人以上とする規定です。通所介護に至っては、機能訓練指導員を1人以上置けばよく、看護職員や柔道整復師なども対象に含まれます。
介護分野の求人は「PT・OT・ST いずれか」で募集されることが多く、作業療法士に限定した枠として確保されているわけではありません。
参考:e-Gov法令検索「介護老人保健施設の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準」 / e-Gov法令検索「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」
精神科領域
精神科は、作業療法士の配置が診療報酬上はっきりと位置づけられている数少ない領域です。
精神科作業療法は1日につき220点。施設基準では作業療法士が専従者として最低1人必要と定められており、他の職種で代替することはできません。1人の作業療法士が担当する患者さんの数は1日50人が標準、専用の施設の広さは作業療法士1人あたり50平方メートルが基準とされています。
精神科病院に勤務する会員は4,799人。医療機関で働く会員のうち、7人に1人程度がこの領域にいる計算です。資格の名称がそのまま診療報酬の項目名になっている領域であり、作業療法士でなければ成り立たない業務が制度上明確に存在します。
児童発達支援・特別支援教育
障害関連で働く会員は2,082人、全体の3.3%です。事業の種類ごとに分けると、次の図のとおり多いところでも数百人という規模になります。
児童発達支援や放課後等デイサービスの人員基準では、機能訓練を行う場合に機能訓練担当職員を置くと定められています。ただし、この職員は「日常生活を営むのに必要な機能訓練を担当する職員」と定義されているだけで、作業療法士に限定されていません。
機能訓練担当職員の数は児童指導員・保育士の合計数に含めることができますが、その場合でも合計数の半数以上は児童指導員または保育士でなければならないという制限があります。リハビリテーション職だけで人員基準を満たす仕組みにはなっていません。
学校教育の現場はさらに限られます。特別支援学校・小中学校・教育委員会を合わせても、協会員は全国で100人に届きません。ニーズが語られる場面は増えていても、常勤の職として存在している数はごく少ないのが現状です。
参考:厚生労働省「児童福祉法に基づく指定通所支援の事業等の人員、設備及び運営に関する基準」
予防・地域支援
介護予防や地域づくりの分野は、政策としてリハビリテーション専門職の関与が求められている領域です。介護予防・日常生活支援総合事業の指針は、一般介護予防事業の一つとして地域リハビリテーション活動支援事業を置き、通所・訪問・地域ケア会議・住民運営の通いの場などへの専門職の関与を促進するとしています。
一方、実際にこの領域で働く協会員は、介護予防・日常生活支援総合事業が28人、一般介護予防事業が25人、地域包括支援センターが26人。3つを合わせても80人程度です。
制度が想定しているのは常勤配置ではなく、医療機関や介護事業所に所属する専門職が地域の活動に関与する形です。そのため「予防分野で働く」という選択肢が求人として現れにくく、政策上の期待と就業の実態が噛み合っていない領域といえます。
参考:厚生労働省「介護予防・日常生活支援総合事業の適切かつ有効な実施を図るための指針」 / 日本作業療法士協会「統計情報」
作業療法士の求人を探す地域による偏在

領域と並ぶもう一つの偏りが、地域です。実数で見るのと人口あたりで見るのとでは、まったく違う景色が見えてきます。
都市部と地方の違い
協会員数の実数が多いのは、東京都3,811人、福岡県3,371人、大阪府3,323人、北海道3,052人、兵庫県2,924人という順です。人口の多い都市部が上位に並びます。
この数字だけを見れば「都市部には作業療法士が多い」という結論になります。求人数も同じ傾向で、医療キャリアナビに掲載されている作業療法士の求人も都市部に集中しています。
人口あたりで見た分布
日本作業療法士協会の都道府県別会員数と、同じ資料に併記されている2024年10月1日現在の人口から、人口10万人あたりの会員数を算出しました。
全国平均は50.9人でした。上位を占めるのは高知県・鳥取県・山形県・徳島県・熊本県、下位に並ぶのは東京都・埼玉県・神奈川県・千葉県・愛知県です。
最も多い高知県と最も少ない東京都では4.6倍の差があり、実数で1位だった東京都が人口あたりでは最下位になります。実数の順位と人口あたりの順位は、ほぼ逆転すると言ってよい関係です。
なお、この数字は協会員をもとにした算出であり、有資格者全体ではありません。協会の組織率は約53.5%です。都道府県ごとに組織率が異なる可能性もあるため、傾向を見る目安として扱うのが適切です。
偏在が生じる背景
人口あたりの分布が地方で高く出る理由は、就業先の構成から説明がつきます。会員の56.2%が医療機関で働いている以上、作業療法士の分布は病院の分布に引っ張られます。
厚生労働省の令和6年医療施設調査によれば、人口10万人あたりの病院数は全国平均6.5施設です。この数字を都道府県ごとに並べると、人口あたりの作業療法士が多い県と、病院が多い県はおおむね重なります。
都市部は人口が多い分だけ医療機関を利用する人も多いのですが、1施設あたりの規模が大きく、外来や在宅の比重も高くなります。病院数という受け皿の数で見ると、人口あたりでは地方のほうが厚くなります。
特定の地域が優れている・劣っているという話ではありません。医療提供体制の形が違えば、必要な人員の配置も変わるというだけのことです。
参考:厚生労働省「令和6(2024)年医療施設(動態)調査・病院報告の概況」
お探しの求人は?
働く側から見て求人が少なく感じる理由

ここまでは「どこに人がいるか」の話でした。ここからは、求職者の側から見た「なぜ求人が見つからないのか」を扱います。人手不足という言葉と、実際の求人の少なさは、別々のメカニズムで動いています。
希望する条件で絞ると選択肢が減る
医療キャリアナビ掲載求人データ(2026年時点)では、作業療法士の求人は5,371件です。全体の数としては少なくありませんが、条件を付けた瞬間に対象は絞られます。
休日や勤務時間に関する条件は、いずれも全体の2〜3割以下。これらを組み合わせれば、残る求人はさらに少なくなります。「求人がない」のではなく「条件を満たす求人が少ない」という状態が、体感としての求人不足の正体である場合は珍しくありません。
領域によって募集の頻度が違う
働いている場所の分布と、求人が出ている場所の分布は一致しません。
協会統計では会員の大半が病院に勤務している一方、求人数が最も多いのは訪問リハビリテーションで、病院はその半分以下です。
このずれは、事業所が増えている領域ほど募集が出やすいことを意味します。訪問リハビリテーションや児童発達支援のように新規開設が続く分野では増員の募集が定期的に出るのに対し、病院は組織が安定しているぶん、欠員が出たときにしか募集が発生しません。
月給の中央値は全体で27万円ですが、求人数が最も多い訪問リハビリテーションはこれを上回ります。募集が多い領域が、必ずしも条件の悪い領域とは限りません。
欠員補充が中心になりやすい
求人には、新規開設や増員によるものと、退職者の欠員補充によるものがあります。この2つは出るタイミングがまったく違います。
新規開設・増員の募集は、開設予定や年度の切り替えに合わせて計画的に出ます。一方、欠員補充は退職の申し出があってから動くため、時期が読めません。求職者が探しているタイミングで、たまたま希望の職場に欠員が出ているとは限らないわけです。
病院を志望する場合ほど、この「タイミング頼み」の要素が強くなります。配置人数が決まっている職場では、誰かが辞めない限り枠が空かないためです。数か月単位で探し続ける前提を持っておくか、非公開求人を扱う経路も併用しておくと、選択肢を取りこぼしにくくなります。
- 求人が多いのは訪問リハビリテーション。協会員が最も多い病院は求人では2番手
- 働いている場所と募集が出る場所は一致しない
- 病院志望なら、欠員が出るタイミングを待つ前提で探す
不足している領域で働く場合に確認したいこと

「人手が足りない領域なら就職しやすい」という考え方には、注意が必要です。人が足りていない職場には、足りていないなりの理由や事情があります。応募前に確認しておきたい点を整理します。
教育体制と相談できる相手
配置人数が少ない職場では、先輩から手技や判断の根拠を教わる機会が限られます。特に新卒や、その領域が未経験の人にとっては、この差が最初の数年を大きく左右します。
確認しておきたいのは、指導担当が決まっているか、勉強会や症例検討の場があるか、外部研修に参加する費用や時間の補助があるかといった点です。掲載求人のうち研修補助ありと明示されているものはごく一部で、求人票の記載だけで判断できる情報は多くありません。見学や面接の場で直接聞くのが確実です。
一人職場になる可能性
介護老人保健施設や通所リハビリテーション、放課後等デイサービスのように、人員基準が「理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士」でまとめられている職場では、リハビリテーション職が施設に1人だけというケースがあります。
一人職場では、評価や訓練内容の判断を自分だけで完結させることになります。判断に迷ったときに相談できる相手がいるか、他職種との連携体制がどうなっているかは、事前に確認しておきたい点です。
一人職場で確認しておきたいこと
- 同じ法人内に他のリハビリテーション職がいるか、いる場合に相談できる仕組みがあるか
- 医師や看護師、介護職との情報共有の場が定期的にあるか
- 休みを取るときに業務を引き継ぐ相手がいるか
- 外部の勉強会や職能団体の研修に参加できる時間を確保できるか
一人職場が必ずしも悪いわけではありません。裁量が大きく、自分の判断で組み立てられる面白さもあります。合うかどうかは経験年数と性格によるので、自分にとって今それが適した環境かを見極めることが大切です。
作業療法士の求人を探す業務範囲と役割の期待
配置人数の少ない職場ほど、作業療法以外の業務を担うことになりやすい傾向があります。介護施設であれば送迎やレクリエーション、記録・書類の作成、家族への連絡といった業務です。障害児支援であれば送迎や活動の準備が加わります。
これらが業務の一部として位置づけられているのか、それとも人手が足りないときだけ手伝う位置づけなのかで、日々の働き方は変わります。面接や見学の際に、1日の流れを時間単位で聞いておくと、実際に作業療法に充てられる時間が見えてきます。
採用する側が作業療法士に何を期待しているかも、確認しておきたい点です。期待される役割と自分がやりたいことがずれていると、入職後に食い違いが出やすくなります。
不足の背景にある働き方の課題

人が定着しなければ、有資格者が増えても現場の不足は解消しません。ここでは、離職につながりやすい要因を個人の資質ではなく、業務量や体制といった環境の側から整理します。
業務量と時間外労働
医療機関の作業療法士の業務量は、診療報酬上の実施単位数で測ることができます。疾患別リハビリテーション料の実施単位数は、1日18単位を標準とし、1日24単位・週108単位が上限です。
8時間勤務のうち6時間が個別療法で埋まると、記録・カンファレンス・計画書の作成・他職種との調整は、その外側で行うことになります。
令和8年度の診療報酬改定では、専従の療法士が従事できる業務の範囲を明確化するとともに、単純な労働時間の増加につながらないよう、他の業務に従事した時間も20分ごとに1単位として実施単位数に含める扱いが示されました。
令和7年の労働安全衛生調査では、仕事に強い不安・悩み・ストレスを感じる事柄として「仕事の量」が39.5%と最も多く、「対人関係」の32.9%を上回りました。
専門性を発揮しにくい場面
制度上の配置要件が「理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士」でまとめられている領域では、作業療法士として採用されても、求められる役割が作業療法の専門性と一致しないことがあります。
運動器リハビリテーション料の施設基準に職種の内訳がないことは前述のとおりで、作業療法士が運動器中心の業務を担う職場も少なくありません。介護分野でも、通所介護の機能訓練指導員は資格の種類を問わない配置です。
日常生活動作や活動・参加への働きかけといった作業療法の中心的な役割が業務に組み込まれているかどうかは、職場によって差があります。専門性を発揮できないまま数年が過ぎると、やりがいを見失いやすくなる点は、離職の背景としてしばしば指摘されます。
定着を左右する要素
協会統計では、会員63,352人のうち休業中が7,047人で11.1%を占めます。会員の60.8%が女性で、年齢構成は26歳から30歳が12,050人と最も多く、40歳以下が全体の約65%です。出産・育児と重なる年代に人数が集中しており、この時期に働き続けられるかどうかが定着を左右します。
作業療法士協会員の年齢構成(人)
2025年3月31日現在の会員63,352人(61歳以上は4区分を合算)
令和7年の労働安全衛生調査では、メンタルヘルス不調で1か月以上休業または退職した人がいた事業所の割合は、医療・福祉で16.8%と全体の13.5%を上回りました。個人の問題ではなく、業務量や体制の設計に関わる課題として扱う必要があります。
一方で、61歳以上の会員は1,091人と全体の1.7%にとどまります。定年前後の層がまだ薄い資格であり、長く働き続けるモデルケースが現場に少ないことも、キャリアの見通しを立てにくくしている一因といえます。
参考:厚生労働省「令和7年 労働安全衛生調査(実態調査) 結果の概況」 / 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」
まとめ
「作業療法士が少ない」という言葉には、3つの異なる話が含まれていました。
有資格者数が理学療法士より少ないのは、養成施設の入学定員が約1.9倍の差で設定されてきたことと、脳血管疾患等リハビリテーション料のように職種ごとの人数を指定する施設基準と、運動器リハビリテーション料のように内訳を定めない施設基準が併存していることが背景にあります。
領域の偏りは、会員の56.2%が医療機関に集中し、その割合が30年間ほとんど変わっていないことに表れています。精神科作業療法のように作業療法士でなければ算定できない領域がある一方、介護・障害児支援・予防の分野では「理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士」というまとめ方が多く、作業療法士固有の枠として確保されていません。
地域については、人口10万人あたりで見ると高知県と東京都で4.6倍の差があり、実数の順位とはほぼ逆になります。就業先の6割近くが医療機関である以上、分布は病院の分布に従います。
そして求職者が感じる「求人の少なさ」は、条件による絞り込み、領域ごとの募集頻度の違い、欠員補充が中心という構造から生まれています。
人手が足りない領域を選ぶ場合は、教育体制、一人職場になる可能性、業務範囲と期待される役割の3点を確認してから決めるのが安全です。数字の背景を理解しておけば、自分がどの疑問に答えを求めているのかがはっきりし、次に取る行動も選びやすくなります。


