【療法士の種類】理学療法士(PT)・作業療法士(OT)・言語聴覚士(ST)の違い
「療法士」と一口に言っても、実際には理学療法士(PT)・作業療法士(OT)・言語聴覚士(ST)という3種類の国家資格があり、それぞれ専門とする領域が異なります。リハビリ職を目指す方や、ご家族がリハビリを受けることになった方にとって、「どの療法士が何をしてくれるのか」は分かりにくいものです。
この記事では、療法士の種類ごとの仕事内容・働く場所・給与の違いから、PT・OT・ST以外のリハビリ関連職まで、まとめて整理します。3職種の違いを押さえて、進路選びやリハビリの理解に役立ててください。
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療法士の主な種類

リハビリテーションを担う「療法士」と呼ばれる専門職には、主に理学療法士(PT)・作業療法士(OT)・言語聴覚士(ST)の3種類があります。いずれも医師の指示のもとでリハビリを行う名称独占の国家資格で、有資格者以外はその名称を名乗れません。
3職種に共通するのは「心身の機能が低下した方の回復・維持を支える」という目的です。
一方で、専門とする領域や対象、使う手法はそれぞれ異なります。たとえば、歩く・立つといった基本動作を担うのが理学療法士、料理や着替えなどの生活動作を担うのが作業療法士、話す・聞く・食べるを担うのが言語聴覚士、というように役割が分かれています。
まずは3職種の全体像を、下の比較表で押さえておきましょう。
| 理学療法士(PT) | 作業療法士(OT) | 言語聴覚士(ST) | |
|---|---|---|---|
| 専門領域 | 身体の動き・基本動作 運動療法・物理療法を中心に、立つ・座る・歩くといった基本的な身体機能の回復を担う | 応用的な生活動作+精神面 食事・着替え・料理・趣味など日常の作業活動を通じ、からだとこころ両面のリハビリを行う | コミュニケーション・嚥下 話す・聞く・食べる(嚥下)を専門とし、検査・訓練を一体的に行う唯一のリハ職 |
| 主な対象 | 骨・筋肉・神経の障害 骨折・脳卒中後遺症・整形外科疾患・心肺機能の低下など | 身体・精神・発達の障害 脳卒中・精神疾患・高次脳機能障害・発達障害など幅広い領域 | 言語・発達・嚥下の障害 失語症・言葉の発達遅れ・嚥下障害・吃音など |
| キーワード | 立つ座る歩く 運動療法物理療法 | 食事着替え料理 趣味活動精神面 | 話す聞く食べる 失語症嚥下 |
| 資格区分 | 3職種とも「名称独占の国家資格」/医師の指示のもとリハビリを実施 | ||
どの資格も、養成校(大学・専門学校)で3〜4年学び、国家試験に合格することで取得できます。次の章から、それぞれの職種を詳しく見ていきます。
理学療法士(PT)

理学療法士(PT:Physical Therapist)は、立つ・座る・歩くといった基本的な動作能力の回復・維持を専門とする「身体の動きの専門家」です。病気やケガ、加齢などで身体機能が低下した方に対し、運動療法や物理療法を用いて動作の改善をサポートします。
運動療法は、関節を動かす・筋力をつける・バランスを整えるといった運動を通じて、身体機能を高める方法です。一方の物理療法は、電気・温熱・水・光などの物理的なエネルギーを使い、痛みの緩和や血行の改善を図ります。
この2つを組み合わせ、患者さん一人ひとりの状態に合わせたリハビリを組み立てます。
- 関節を動かす(関節可動域訓練)
- 筋力をつける(筋力増強訓練)
- バランスを整える(協調・歩行訓練)
- 電気(低周波・干渉波)
- 温熱(ホットパック・超音波)
- 水・光(水中訓練・レーザー)
理学療法士が活躍する場は幅広く、病院やクリニックといった医療機関のほか、介護老人保健施設などの介護施設、スポーツ現場などがあります。近年は、住み慣れた自宅でのリハビリを支える訪問リハビリの分野でも需要が高まっています。
作業療法士(OT)

作業療法士(OT:Occupational Therapist)は、食事・着替え・料理・趣味など、日常生活のさまざまな「作業」を通じてリハビリを行う専門職です。基本動作を担う理学療法士に対し、作業療法士はより応用的な生活動作や社会復帰を支援する「からだとこころの専門家」といえます。
作業療法士の大きな特徴は、身体面だけでなく精神面のリハビリも担う点です。手や指を使った細かい動作の訓練だけでなく、うつ病や統合失調症などで生活のしづらさを抱える方の社会復帰も支援します。
そのため、精神科やメンタルクリニックでも活躍できるのが、ほかの療法士と異なる強みです。
- 手・指を使った細かい動作の訓練
- 食事・着替えなど日常生活動作の練習
- 料理・買い物など応用的な生活動作の支援
- 身体機能の回復から在宅復帰までをサポート
- うつ病・統合失調症など精神疾患のある方を支援
- 生活のしづらさを軽減するプログラムの実施
- 社会参加・就労復帰に向けた段階的なサポート
- 精神科・メンタルクリニックでも活躍できる
対象となるのは、身体障害・精神障害・発達障害・高齢期の障害など幅広く、子どもから高齢者まで関わります。「作業」を手段にして、その人らしい生活を取り戻す手助けをするのが作業療法士の役割です。
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言語聴覚士(ST)

言語聴覚士(ST:Speech Therapist)は、「話す・聞く・食べる(嚥下)」に関わる機能を専門とする国家資格です。失語症や言葉の発達の遅れ、聞こえの問題、飲み込みの障害(嚥下障害)などを持つ方を対象にリハビリを行います。
対象は小児から高齢者までと幅広く、ことばが遅い子どもの発達支援から、脳卒中後の失語症のリハビリ、加齢による飲み込みの機能低下への対応まで担います。
3職種のなかでも、検査を業として明確に位置づけられているのが言語聴覚士の特徴で、聴力検査や嚥下機能の評価なども行います。
-
1話す(言語・構音)失語症 構音障害 ことばの発達の遅れ脳卒中後の言語障害から子どものことばの遅れまで、「伝える」機能の回復・発達を支援する
-
2聞く(聴覚)聴力の問題 聴覚処理の障害音を「聞こえる」状態に整え、補聴や言語習得につなげるリハビリテーションを担う
-
3食べる(嚥下)嚥下障害 誤嚥リスク管理飲み込みの仕組みを評価し、安全に口から食べ続けられるよう機能回復・代償手段を提供する
-
4検査・評価(業として位置づけ)聴力検査 嚥下機能評価聴力検査・嚥下造影などの評価は言語聴覚士の業務として法的に位置づけられており、他職種と明確に区別される専門性をもつ
「言語療法士」という国家資格は存在しません。求人や資料で見かけることもありますが、国家資格としての正式名称は「言語聴覚士(ST)」です。
3種類の療法士(PT・OT・ST)の違い

ここまで見てきた3職種の違いを、「専門領域・仕事内容」「働く場所・就職先」「給与・年収」の3つの観点から整理します。共通点も多い3職種ですが、対象とする機能や活躍の場に、それぞれの個性があらわれます。
専門領域・仕事内容の違い
最も分かりやすい違いは、担当する「機能」です。理学療法士は寝返る・起き上がる・歩くといった基本動作、作業療法士は食事や着替え、趣味などの応用的な生活動作と精神面、言語聴覚士は話す・聞く・食べるという領域を担います。
大まかにいえば、「動作=PT」「生活動作・こころ=OT」「ことば・飲み込み=ST」と覚えると整理しやすいでしょう。ただし実際の現場では、1人の患者さんに複数の療法士がチームで関わることも多く、明確に線引きできない部分もあります。
理学療法士と作業療法士は、担当領域が近く比較されることも多い2職種です。仕事の大変さの違いが気になる方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。
働く場所・就職先の違い
就職先は、3職種とも医療機関・介護施設・福祉施設が中心という点で共通します。病院やクリニック、介護老人保健施設、訪問リハビリなどは、どの療法士も主要な職場です。
一方で、活躍の場には少し違いもあります。作業療法士は精神科病院やメンタルクリニックといった精神科領域、言語聴覚士は小児の療育施設や特別支援教育の現場、耳鼻科などで、それぞれの専門性を活かせます。理学療法士はスポーツ現場や整形外科クリニックで働く人が多いのも特徴です。
| 就職先 | 理学療法士 PT |
作業療法士 OT |
言語聴覚士 ST |
|---|---|---|---|
| 病院・クリニック | ○ | ○ | ○ |
| 介護老人保健施設 | ○ | ○ | ○ |
| 訪問リハビリ | ○ | ○ | ○ |
| 精神科病院・ メンタルクリニック |
△ | ○ | △ |
| 小児療育・ 特別支援教育 |
△ | △ | ○ |
| スポーツ現場・ 整形外科クリニック |
○ | △ | × |
給与・年収の違い
給与面では、3職種に大きな差はありません。厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」では、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士は同じ職種区分にまとめて集計されており、公的統計のうえでは同一の水準として扱われています。同調査(令和5年)をもとに月額給与と年間賞与から推計すると、平均年収はおよそ431万円です。
医療キャリアナビの掲載求人でも傾向は同じで、月給の中央値は3職種とも27万円前後とほぼ横並びです。年収は資格の違いよりも、勤務先の種類(訪問・病院・施設など)や経験年数、役職によって差が生まれます。
訪問リハビリなど、働き方による年収の違いを詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考になります。
今のあなたの状況は?
参考:e-Stat(政府統計の総合窓口)「令和5年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種別」
その他のリハビリ・療法に関わる専門職
リハビリに関わる専門職は、PT・OT・STの3つだけではありません。ここでは、リハビリテーションに関係する国家資格や、「療法士」と名の付く民間資格を整理します。
国家資格としては、義肢や装具を製作・適合する義肢装具士、視機能の検査や斜視・弱視の訓練を担う視能訓練士(ORT)などがあります。これらもリハビリや機能回復を支える専門職ですが、対象とする分野はPT・OT・STとは異なります。
一方、音楽療法士・園芸療法士・アロマセラピストのように「療法士」と名の付く資格もありますが、これらは国家資格ではなく民間資格です。
- 理学療法士(PT)運動・身体機能のリハビリ
- 作業療法士(OT)日常生活動作・社会参加の支援
- 言語聴覚士(ST)言語・嚥下・聴覚のリハビリ
- 義肢装具士義肢・装具の製作と適合
- 視能訓練士(ORT)視力・視野の検査、斜視・弱視の訓練
- 音楽療法士音楽を用いた心身へのアプローチ
- 園芸療法士植物・園芸を用いたアプローチ
- アロマセラピスト芳香を用いたリラクゼーション
療法士(PT・OT・ST)に関するよくある質問

最後に、療法士の種類についてよく寄せられる質問にお答えします。
3つの療法士で一番給料が高いのは?
前述のとおり、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の給与は、賃金構造基本統計調査で同じ区分に集計されるほど近い水準で、資格による大きな差はありません。強いていえば、勤務先や働き方による差のほうが大きく、訪問リハビリや管理職、独立・開業などで年収を伸ばす人もいます。
「どの資格が高いか」よりも「どこでどう働くか」で考えるのがおすすめです。
3つの療法士の共通点は?
3職種の共通点は多くあります。いずれも医師の指示のもとでリハビリを行う名称独占の国家資格で、養成校で3〜4年学び国家試験に合格して取得する点も同じです。活躍の場も、医療・介護・福祉が中心という点で共通します。
「機能が低下した方の生活を支える」という目的を共有しながら、担当する領域を分け合っているのが3職種の関係です。
3つの療法士のなかで難易度が高いのは?
国家試験の合格率を比べると、直近の試験(2025年)では理学療法士が89.6%、作業療法士が85.8%、言語聴覚士が72.9%でした。数字のうえでは言語聴覚士がやや低めです。
ただし、受験者の学習背景や養成課程が異なるため、合格率の高さだけで「難しさ」を単純に比較はできません。
(PT)
(OT)
(ST)
どの資格も、養成校でのカリキュラムと実習をこなし、国家試験に合格する必要がある点は共通しています。難易度を気にするよりも、自分が関わりたい領域(動作・生活・ことば)で選ぶことが、長く働くうえでは大切です。
参考:厚生労働省「第60回理学療法士国家試験及び第60回作業療法士国家試験の合格者発表について」 / 厚生労働省「第27回言語聴覚士国家試験の合格者発表について」
まとめ
療法士には、理学療法士(PT)・作業療法士(OT)・言語聴覚士(ST)の3種類があり、それぞれ「動作」「生活動作・こころ」「ことば・飲み込み」を専門としています。いずれも医師の指示のもとでリハビリを行う名称独占の国家資格で、給与水準や働く場所には共通点が多く、担当する領域に違いがあるのが特徴です。
進路として療法士を目指すなら、資格の名前や合格率よりも「どんな人を、どんな形で支えたいか」で選ぶのがおすすめです。3職種の違いを理解したうえで、自分に合った領域を見つけてください。リハビリ職の転職やキャリアを詳しく知りたい方は、下の関連記事もあわせてご覧ください。





