老年薬学認定薬剤師の役割と評価される場面|高齢者の薬物療法で担う業務と認定の要件
高齢の患者さんの処方を見ていて、「この薬、本当に全部必要なのかな」と感じたことはありませんか?
老年薬学認定薬剤師は、日本老年薬学会が認定する資格で、高齢者の薬物療法を専門に支える薬剤師としての役割を担います。
この記事では、老年薬学認定薬剤師の役割と、令和8年度調剤報酬改定で認定が算定要件に関わるようになった場面、認定を受けるための要件と更新の流れを紹介します。
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老年薬学認定薬剤師が担う役割

老年薬学認定薬剤師は、一般社団法人日本老年薬学会が「高齢者の薬物療法についての専門家として一定水準以上の実力を有する薬剤師」として認定する資格です。
学会による民間の認定なので、認定を受けても薬剤師としてできる業務の範囲が広がるわけではありません。 役割の中心は、同じ業務を「高齢者の特性を踏まえて、より深く」行うことにあります。
老年症候群への薬学的管理
老年症候群とは、ふらつき・転倒、せん妄、食欲低下、便秘、排尿障害など、高齢者によくみられる症状の総称です。 厚生労働省の「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」では、薬物有害事象が老年症候群として表れ、見過ごされやすいことに注意を促しています。
「年齢のせい」と思われがちな症状の裏に、薬が関わっていないかを疑う視点が、老年薬学認定薬剤師に求められる役割の一つです。
多剤併用の見直しと処方提案
総論編では、薬物有害事象は薬剤数にほぼ比例して増え、6種類以上が特に薬物有害事象の発生増加に関連したというデータが紹介されています。 ただし、剤数だけで判断せず、処方の中身を見て適正化することが大切だとされています。
複数の医療機関から少しずつ処方が積み重なったり、副作用に別の薬で対処する「処方カスケード」が起きたりすると、多剤併用は気づかないうちに進みます。
老年薬学認定薬剤師は、服用中の薬を一元的に把握したうえで問題点を整理し、医師へ処方提案を行う役割を担います。
処方を決めるのは医師、根拠をそろえて提案するのが薬剤師ってことだね!
生活環境を踏まえた服薬支援
高齢の患者さんは、同じ処方でも暮らし方によって飲み続けられるかどうかが変わります。 独居か家族と同居か、薬を管理するのは本人か介護者か、飲み込みにくい剤形はないかなど、生活の情報を集めたうえで支援の方法を選びます。
- 服用回数を減らせないか(朝・昼・夕・寝る前の4回を1回にまとめられないか)
- 剤形が嚥下機能に合っているか
- 薬を管理する人が、管理方法を無理なく続けられるか
厚生労働省の「高齢者の医薬品適正使用の指針(各論編(療養環境別))」でも、介護施設などでは患者さん本人や服薬補助者が管理しやすい処方への見直しを検討することが求められています。
多職種連携での調整
高齢者の薬物療法では、医師だけでなく、看護師、ケアマネジャー、介護職員、管理栄養士などと情報を共有する場面が多くあります。 「最近ぼんやりしている」「食事量が落ちた」といった変化は、日々関わる職種のほうが先に気づくことも少なくありません。
老年薬学認定薬剤師は、ほかの職種から得た情報を薬の視点で読み解き、処方医への提案や施設間の情報引き継ぎにつなげる調整役を担います。
退院・退所で療養環境が変わるときに、変更・中止した薬とその理由を次の医療機関や薬局へ伝えることも大切な役割です。
薬剤師の求人を探す参考:厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)について」の通知発出について / 厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針(各論編(療養環境別))について」の通知発出について
認定が評価される場面

令和8年度調剤報酬改定で、服用薬剤調整支援料2の算定要件に「老年薬学認定薬剤師であるかかりつけ薬剤師」が明記されました。 一方で、ポリファーマシー対策に関わるほかの点数の多くは、認定がなくても算定できます。
調剤報酬の算定要件との関係
服用薬剤調整支援料2(1,000点)は、複数の医療機関から6種類以上の内服薬が処方されている患者さんについて、かかりつけ薬剤師が服用薬を総合的に評価したうえで、処方医に文書で調整を提案した場合の評価です。
算定できるのは、「服用薬剤総合評価を行うために必要な研修を修了したかかりつけ薬剤師」に限られ、通知では次のどちらかと定められています。
-
日本老年薬学会の老年薬学服薬総合評価研修会を修了したかかりつけ薬剤師研修会の受講には、実務経験5年以上や特定の認定・試験合格などの条件がある
-
日本老年薬学会が定める老年薬学認定薬剤師であるかかりつけ薬剤師研修会を修了していなくても要件を満たす
つまり、老年薬学認定薬剤師は、算定要件を満たすための2つの選択肢の1つです。 認定があるだけでは算定できず、かかりつけ薬剤師であることや、決められた評価項目の実施なども必要です。 また、服用薬剤調整支援料2は令和9年(2027年)5月31日までは算定できず、令和9年6月から算定が始まります。
| 点数 | 場面・対象 | 老年薬学認定薬剤師の扱い |
|---|---|---|
| 服用薬剤調整支援料1 | 薬局/内服薬6種類以上から2種類以上の減薬 | 要件ではない保険薬剤師なら認定がなくても算定可 |
| 服用薬剤調整支援料2 | 薬局(在宅含む)/複数の医療機関から6種類以上 | 要件の選択肢の1つかかりつけ薬剤師であることが前提。研修会修了でも可。2027年6月から算定 |
| 薬剤総合評価調整加算 | 病院/入院前から内服薬6種類以上など | 要件ではない多職種による処方評価・変更の取組を評価 |
服用薬剤調整支援料1(125点)は、6種類以上の内服薬を2種類以上減らす提案が実を結んだ場合の評価で、認定の有無は問われません。
在宅や介護施設での関わり
服用薬剤調整支援料2は、通院が難しく在宅患者訪問薬剤管理指導料などを算定している患者さんでも、かかりつけ薬剤師としての同意を得て服用薬剤総合評価を実施すれば算定できます。 在宅では、残薬や飲み忘れ、介護者の負担など、外来では見えにくい問題が見つかりやすく、老年症候群や服薬支援の知識をそのまま活かせる場面です。
介護施設では、施設の看護職員・介護職員と協力しながら、服用回数や剤形を施設の服薬介助に合わせて整える関わり方があります。
病院の病棟業務での関わり
病院では、入院時の持参薬確認から処方の総合的な評価、退院時の情報提供までを評価する「薬剤総合評価調整加算」があります。
この加算は、医師・薬剤師・看護師などの多職種で処方を評価・変更する取組を評価するもので、老年薬学認定薬剤師の配置は算定要件に含まれていません。
認定があれば、どの点数でも有利になるわけじゃないんだね
ただし、通知では評価にあたって「高齢者の医薬品適正使用の指針」や日本老年医学会のガイドラインなどを参考にするよう示されています。
ポリファーマシー対策のカンファレンスや手順書づくりで、高齢者の薬物療法に詳しい薬剤師として中心的な役割を担いやすくなるのが、病院での実利といえます。
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参考:厚生労働省「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(令和8年3月5日保医発0305第6号)別添3 調剤報酬点数表に関する事項」 / 厚生労働省「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(令和8年3月5日保医発0305第6号)別添1 医科診療報酬点数表に関する事項」
認定を受けるための要件

老年薬学認定薬剤師の認定要件は、日本老年薬学会の認定制度規則・施行細則で定められています。 以下は、2026年10月19日に学会公式サイトで確認した「認定申請の要件(2025年12月23日版)」に基づく内容です。
薬剤師免許と実務経験
申請時点で、薬剤師免許を取得してから3年以上経っている必要があります。 要件の文言は「免許取得後3年以上」で、実務経験の年数そのものは定められていません。
ただし、後述する症例報告は「業務を通じて」関わった高齢者の症例に限られるため、高齢の患者さんに継続して関われる職場での経験が事実上必要です。
学会の会員期間
3年度以上続けて日本老年薬学会の一般会員であることが必要で、申請する年度は数に含めません。 学会の年度は3月1日から翌年2月末までなので、入会した月によってカウントが変わります。
学会のよくある質問では、2021年2月に入会した場合は2020年度から会員歴に数え、2020〜2022年度を継続すれば2023年度に申請できる例が示されています。
条件は「引き続いて」会員であることなので、途中で退会すると要件を満たせなくなる点に気をつけましょう。
ほかの認定薬剤師であること
2024年度の申請から、次のどちらかの資格を持っていることが要件に加わりました。
-
薬剤師認定制度認証機構(CPC)が認証した認定薬剤師生涯研修認定制度(G)または特定領域認定制度(P)による認定
-
日本医療薬学会の専門薬剤師同学会の専門薬剤師制度で認定されたもの
老年薬学会の単位をそろえても、この前提資格がないと申請できません。申請時には認定証の写しの提出が必要で、更新のときにも同じ写しを求められます。
前提の認定薬剤師まで必要なのは、知らないと焦るよね
研修認定薬剤師などの資格が切れていないか、老年薬学の単位集めと並行して確認しておきましょう。
研修単位と実技実習
申請年度を除く4年度以内に、学会が指定する研修などで30単位以上を取得する必要があります。
30単位には、日本老年薬学会学術大会への1回以上の参加と、学会が主催(共催・協賛を含む)する学術大会・研修会の単位15単位以上を含めなければなりません。
- 学術大会への参加(1回以上が必須):1日最大4単位、2日間で6単位
- 主催・共催・協賛の研修会:90分で1単位
- 学術大会での筆頭発表:2単位
- 学会が後援する研修会:90分で1単位
- 指定の医療系学会の学術大会:1回2単位
- e-learning:3講座で1単位(上限4単位)
あわせて、同じ4年度以内に実技実習などを3項目以上受講する必要があります。
実技実習には、車椅子・高齢者疑似体験、救命救急・AED、簡易懸濁法、フィジカルアセスメントなどのコードがあり、3項目は全て異なるコードでなければなりません。 学会以外が開く実習を使う場合は、実習部分が1時間以上あることなどの条件があります。
症例報告
業務を通じて高齢者の薬物療法の有効性または安全性に直接寄与した症例を10例報告する必要があります。 学会の「症例報告書作成のための手引き」では、対象や書き方について次のように定めています。
- 対象は65歳以上の高齢者
- 過去5年以内の症例
- 医師の指示どおりに対応して経過を記録しただけの症例は対象外
- 1人の患者さんにつき1報告
「残薬が多いので一包化した」「飲み込みにくいので口腔内崩壊錠に変えた」だけの症例は、報告の対象にならないと明記されています。 どのような評価から問題があると判断し、どう介入して、結果をどう考察したかまで書けることが求められます。
このほか、学会役員・所属長(病院長や施設長など)・保険薬局の開設者のいずれかの推薦と、認定試験の合格も要件です。
薬剤師の求人を探す参考:日本老年薬学会「認定申請」 / 日本老年薬学会「制度概要」
認定までの流れと更新

認定までの準備は、単位・実技実習・症例を4年度かけて集め、試験に合格してから申請する流れです。 申請や試験は年1回なので、逆算して計画を立てておくと、年度の区切りで単位が無効になるのを防げます。
単位の取得計画
単位は「申請年度を除く4年度以内」のものしか使えないため、早く集めすぎた単位は期限切れになります。 学会主催の単位15単位以上という条件があるので、まず学術大会への参加と学会主催の研修会を軸に予定を組むのが効率的です。
e-learning「メディカルナレッジ」の老年薬学の講座は、3講座(1講座30分)で1単位として使えますが、申請に使えるのは4単位までです。
2023年5月以降の学会主催研修会の単位は「WEB取得単位システム」で管理されるため、申請時にはその画面のPDFを提出します。
- 薬剤師求人1,450件中、研修補助ありは31件(2%)
- 学会参加費の補助は面接で確認するのが確実
症例報告の準備
10症例は申請受付期間に一気に書くと負担が大きいため、介入した時点で記録を残しておきましょう。 手引きでは、プロブレムリストは100字以内、具体的な介入内容は300字以内、介入結果と考察は200字以上400字以内など、項目ごとに字数の目安が決められています。
申請画面の入力フォームには文字数が表示されません。 学会が配布している「症例報告準備用フォーマット」で下書きを作り、控えとして手元に保存しておくと安心です。
認定試験
認定試験は年1回、3月に実施されます。 学会は、単位・実技実習・症例・推薦などの準備が整う見込みがある場合にのみ受験するよう案内しています。
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2026年度の試験日2026年3月1日(日)13:00〜14:30
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申込期間2026年1月5日〜31日
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受験形式自宅または職場からのオンライン受験
次回の日程や出題範囲、参考図書は、学会の認定試験ページで確認しましょう。合格率は公表されていません。 試験に合格したものの認定審査で不合格になった場合は、合格の記録を次年度の申請時まで持ち越せます。
申請の時期
認定申請は、試験の合格通知後、毎年4月1日〜5月31日の2か月間に学会サイトの会員専用ページから行います。 推薦書は申請日からさかのぼって3か月以内のものしか使えないため、前年度に用意したものは使えません。
申請後は審査料を支払い、審査結果は9月1日頃に会員ページで開示される予定です。 合格した場合は、通知から30日以内に登録料を納めます。
更新の周期と要件
認定は5年ごとの更新制で、認定を受けた翌年度から数えて5年度目に更新の手続きをします。 更新しなかった場合や学会を退会した場合は資格を失い、老年薬学認定薬剤師を名乗れなくなります。
| 項目 | 新規の認定 | 更新 |
|---|---|---|
| 単位 | 30単位以上 | 40単位以上 |
| うち学会主催 | 15単位以上 | 20単位以上 |
| 実技実習 | 3項目以上 | 求められない |
| 症例報告 | 10例 | 10例 |
| 試験 | 認定試験 | 更新に係るWeb試験 |
| 前提の認定薬剤師 | 写しを提出 | 写しを提出 |
| 審査料・登録料 | 各11,000円 | 各11,000円 |
4年度の計画を立てておけば、更新も慌てずに済みそう!
更新に使える単位は、認定を申請した年度から更新申請の前年度までに取ったもので、更新する年度に取った単位は使えません。 認定薬剤師全般の更新の考え方や単位が足りないときの対処法は、以下の記事が参考になります。
産休・育休などで更新が難しい場合は、理由書を出せば最長3年間保留できますが、保留中は老年薬学認定薬剤師を名乗れません。
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参考:日本老年薬学会「認定試験」 / 日本老年薬学会「更新申請」
上位資格の老年薬学指導薬剤師

老年薬学認定薬剤師の上には、日本老年薬学会が認定する「老年薬学指導薬剤師」があります。 学会の一覧(2026年10月19日確認)によると、老年薬学認定薬剤師は233名(2026年10月1日時点)、指導薬剤師は28名です。
位置づけ
老年薬学指導薬剤師は、顕著な実務経験と多くの学術活動・学会活動の実績を持ち、老年薬学認定薬剤師を養成するための指導や評価にあたる薬剤師として位置づけられています。 認定されると、本人の認定証とあわせて指導施設の認定書が交付されます。
臨床で高齢者の薬物療法を実践するのが認定薬剤師、その育成や症例審査などを通じて制度を支えるのが指導薬剤師という役割分担です。
指導薬剤師は、研究や発表の実績を積み重ねた先にある資格なんだ
求められる要件
指導薬剤師に申請できるのは、老年薬学認定薬剤師の資格を持っている人だけで、認定薬剤師と同時に申請することはできません。 認定薬剤師としての経験年数は問われませんが、学会発表や論文の実績が求められます。
学術論文は、複数の査読者による審査を経て全国的・国際的な学会誌などに掲載されたものに限られ、商業誌の記事は対象外です。 指導薬剤師も5年ごとの更新制で、申請受付は認定薬剤師と同じく毎年4月1日〜5月31日です。
参考:日本老年薬学会「新規申請(指導薬剤師制度)」 / 日本老年薬学会「指導薬剤師一覧」
まとめ
老年薬学認定薬剤師は、高齢者の特性を踏まえて薬の問題を見つけ、医師への処方提案や多職種との調整につなげる役割を担う認定資格です。
令和8年度改定で、服用薬剤調整支援料2の算定要件を満たす選択肢の1つになり、認定を持つことが勤務先の評価に直接結びつく場面が生まれました。
この記事のポイント
- 認定で業務範囲は広がらず、役割は処方提案と服薬支援の質
- 服用薬剤調整支援料2は2027年6月から算定開始
- CPC認証のG・P認定薬剤師などが申請の前提
- 30単位・実技実習3項目・症例10例は申請年度を除く4年度以内
- 更新は5年度目で40単位と症例10例が必要
まずは前提となる認定薬剤師の有効期限と、学会の会員歴を確認するところから始めましょう。 高齢の患者さんに継続して関われる職場を探したいときは、在宅医療や施設対応に力を入れている薬局・病院の求人を比べてみるのも一つの方法です。


