潜在看護師が復職しない理由5選|不安の正体と復帰のために整える条件
「もう一度看護師として働きたい気持ちはあるけれど、なかなか一歩が踏み出せない」と感じていませんか? 潜在看護師が復職しない理由は、スキルへの不安や育児・介護との両立、夜勤への抵抗感など、人によってさまざまです。
この記事では、潜在看護師の人数や就業意向の実態を公的データで確認したうえで、復職しない理由5つを「自分の準備で解消できるもの」と「職場の条件で解消できるもの」に分けて整理します。 あわせて、ブランクへの不安を減らせる職場の条件や、ナースセンターなどの復職支援制度も紹介します。
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潜在看護師の人数と復職の実態

潜在看護師とは、看護職の免許を持ちながら、看護職として働いていない人のことです。 厚生労働省の資料では「潜在看護職員」と呼ばれ、保健師・助産師・准看護師も含めて推計されています。
潜在看護師の人数
厚生労働省の資料によると、2018年(平成30年)末時点の65歳未満の潜在看護職員数は約69.5万人と推計されています。 この数値は厚生労働科学研究による推計で、同じ年代の就業者数と比べると規模の大きさが分かります。
就業者の半数近い規模の人が、免許を持ちながら看護職として働いていないことになります。 ほかの記事やサイトで見かける「約71万人」は2010年末時点の推計にあたるため、数値を見るときは推計の時点も確認しましょう。
離職が多い年代
看護職員が辞める理由は、年代ごとのライフイベントと強く結びついています。 日本看護協会の中央ナースセンターが、看護職として働いていない求職者に退職理由を聞いた結果(2021年度)では、年代ごとに上位の理由がはっきり分かれました。
| 年代 | 1位 | 2位 | 3位 |
|---|---|---|---|
| 20代 | 結婚13.1% | 転居12.7% | 看護職の他の職場への興味11.5% |
| 30代 | 結婚15.7% | 妊娠・出産15.2% | 子育て14.5% |
| 40代 | 子育て16.1% | 結婚13.0% | 妊娠・出産11.9% |
| 50代 | 親族の健康・介護12.7% | 自分の健康(主に身体的理由)10.4% | 結婚10.4% |
30代・40代は結婚・出産・子育て、50代は親族の介護が上位に入り、家庭の事情で一度現場を離れる人が多いことが分かります。 20代は転居や「看護職の他の職場への興味」が上位で、自分の健康(主に精神的理由)も4位に入っています。
就業意向の内訳
厚生労働省が離職中の看護職員に今後の再就職希望を聞いた調査(2010年実施)では、「看護職員として働きたい」は36.1%でした。
一方で、「看護職員以外として働きたい」が19.6%、「就業希望なし」が17.5%で、合わせて約4割は看護職への復職を希望していません。 残りの24.0%は「未定」で、迷っている人も少なくありません。
離職期間が1年未満の人は6割以上が看護職への復職を希望していますが、期間が長くなるほどその割合は下がり、20年以上では1割を下回ります。 復職を考えているなら、ブランクが長くなる前に情報収集だけでも始めておくと選択肢を残しやすいです。
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看護職以外の仕事も視野に入れている場合は、職種ごとの選択肢と復職への影響をまとめた以下の記事が参考になります。
「戻りたい」と「戻れるかな」の間で迷っている人も多いんだね
参考:厚生労働省「看護師等(看護職員)の確保を巡る状況」 / 厚生労働省「看護職員就業状況等実態調査結果」
潜在看護師が復職しない理由

潜在看護師が復職しない理由は、大きく5つに分けられます。 理由によって、自分の準備で解消しやすいものと、職場選びで解消しやすいものがあるため、どちらに当てはまるかを確認しておきましょう。
| 復職しない理由 | 自分の準備 | 職場の条件 |
|---|---|---|
| 医療スキルへの不安 | ◎学び直し・復職支援研修 | ○入職後の研修がある職場 |
| 育児・介護との両立 | ○家族と役割分担を決める | ◎託児所・短時間勤務 |
| 夜勤に戻れない | △働ける時間帯を整理する | ◎日勤のみの職場 |
| 受け入れ体制への不安 | △面接で教育体制を聞く | ◎復職研修・プリセプター |
| ブランク評価・人間関係 | ○見学で雰囲気を確かめる | ○ブランク可・採用実績あり |
自分の理由は、準備と職場選びのどっちで解決できそう?
最新の医療スキルに追いつけるか不安なため
離職中の看護職員が「看護職員以外として働きたい」と答えた理由では、「看護業務から離れていたことによる不安がある」が22.3%を占めています。 医療機器や電子カルテ、感染対策のルールなどは数年で変わることがあり、「今の現場についていけるか」が復職の大きなハードルです。
この不安は、復職前の学び直しで小さくできるタイプの理由です。 基本的な看護技術や最新の機器は、復職支援研修で学び直せる地域もあります。
育児や介護と両立できないため
再就職について「未定」と答えた人の理由で最も多かったのは、「家事・育児のため仕事が続けられそうにない」(22.2%)でした。 子どもの急な発熱や行事、介護の通院付き添いなど、時間の読めない予定があると、シフト勤務に戻るのは難しく感じやすいです。
院内託児所や短時間勤務制度のある職場を選ぶこと、家族との役割分担を事前に整理しておくことが、この壁を乗り越えるための現実的な準備です。
夜勤のある働き方に戻れないため
看護職員として働きたいと答えた離職者のうち、希望する勤務体制は「日勤のみ」が85.2%で、交代勤務を希望する人は11.4%にとどまりました。 雇用形態も「パート・アルバイト」の希望が48.0%で最も多く、フルタイムの夜勤ありに戻る前提だと、復職をためらう人が多くなります。
夜勤は体力面だけでなく、家族の生活リズムにも影響します。 この理由は、日勤のみ・短時間勤務ができる職場を選ぶことで解消しやすいです。
職場の受け入れ体制が整っていないため
ブランクのある看護師を受け入れた経験が少ない職場では、「経験者だから大丈夫」と即戦力として扱われ、十分な教育を受けられないことがあります。 復職直後に一人で受け持ちを任されるような環境だと、スキルへの不安が大きくなり、早期離職につながりかねません。
この理由は自分の努力だけでは解消しにくく、復職者向けの研修や指導担当がいる職場かどうかを見極めることが大切です。
ブランクへの評価や人間関係が不安なため
「ブランクがあることを周りにどう思われるか」「年下の先輩に教わることになる」など、人間関係への不安も復職をためらう理由になります。 日本看護協会の調査では、看護職が働き続けるために重視することとして、「職場の人間関係が良い」が48.5%で上位に入りました。
人間関係は入職前に完全には分かりませんが、見学や面接で雰囲気を確かめることで、ある程度は見極められます。 ブランクのある看護師の採用実績がある職場なら、受け入れる側も慣れているため安心です。
看護師の求人を探す参考:厚生労働省「看護職員就業状況等実態調査結果」 / 日本看護協会「2025年 看護職員実態調査 結果」
復職しない理由を解消するための準備

スキルへの不安や家庭との両立は、復職前の準備で軽くできる部分があります。 いきなり求人に応募するより、条件の整理・学び直し・家族との調整の順に進めると、無理のない復職先を選びやすいです。
復職の条件と不安を書き出す
最初に、働ける条件と不安に感じていることを紙やスマホのメモに書き出しましょう。 頭の中だけで考えていると、「なんとなく不安」のまま止まってしまいがちです。
書き出したら、「絶対に譲れない条件」と「慣れたら変えてもよい条件」に分けておくと、求人を比べるときの軸になります。
たとえば「最初の半年は週3日・日勤のみ、慣れたら週4日に増やす」のように、段階的な働き方を描いておくと、選べる職場の幅が広がります。
最新の看護知識を学び直す
学び直しは、不安の中身に合わせて方法を選ぶのが効率的です。 知識面の不安なら書籍や動画で十分なこともありますが、採血や点滴などの手技に不安がある場合は、実際に手を動かせる研修が向いています。
| 方法 | 向いている不安 | 特徴 |
|---|---|---|
| 書籍・看護雑誌 | 薬や疾患の知識、最近の看護の考え方 | 自宅で好きな時間に進められる。手技の練習はできない |
| 動画・オンライン講座 | 手技の手順の確認、感染対策など | スキマ時間に見られる。手順のイメージづくりに向く |
| 復職支援研修ナースセンター | 基本的な看護技術、現場の感覚 | 実際に手を動かせる。日程と内容は都道府県ごとに異なる |
| 入職後の職場研修 | その職場の機器・手順・記録の方法 | 職場のやり方に合わせて覚えられる。内容は職場で差がある |
全部を復職前に取り戻そうとすると、準備だけで疲れてしまいます。 基本的な技術と、希望する分野でよく使う知識に絞って学び直すのがおすすめです。
全部じゃなくていいなら、少し気がラクになるね
家族と勤務時間を調整する
育児や介護をしながら復職する場合は、勤務時間が決まる前に、家族と役割分担を話し合っておきましょう。 特に、子どもが急に体調を崩したときの対応は、復職後に慌てやすいポイントです。
- 保育園や学童の送り迎えを誰が担当するか
- 子どもが急に発熱したときに誰が迎えに行くか
- 病児保育やファミリー・サポートなど地域の預け先の登録
- 介護サービスの利用日と勤務日が重ならないか
- 残業が発生したときの連絡方法
家族の協力が得られる範囲が分かれば、「週何日・何時まで」なら働けるかがはっきりし、求人選びや面接での条件交渉がしやすくなります。
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ブランクへの不安を減らせる職場の条件

受け入れ体制や夜勤、育児との両立といった理由は、職場の条件によって大きく左右されます。 求人を探すときは、次の4つの条件を目安にしましょう。
ブランク可の求人
求人票に「ブランク可」「ブランクOK」と書かれている職場は、ブランクのある看護師の採用を前提にしているため、応募のハードルが下がります。
ただし、ブランク可でも教育体制は職場ごとに差があるため、過去にブランクのある看護師を採用した実績があるかを面接で確認しておくと安心です。
ブランクがある看護師の復職先選びや探し方は、以下の記事でも紹介しています。
日勤のみ・短時間勤務ができる職場
夜勤への抵抗感や家庭との両立が理由なら、日勤のみや短時間勤務を選べる職場が候補になります。
日本看護協会の調査では、病院が看護職員を確保するために導入している働き方として、「日勤のみ」が54.7%で最も多い結果でした。
病院でも日勤のみの働き方を選べるところがあり、復職先を外来やクリニックに限定する必要はありません。
- 正看護師の求人は9,633件
- うちパート・アルバイト求人は3,393件
- 「ブランクOK」「時短勤務OK」の求人も掲載
介護施設も日勤中心の求人が多く、介護老人保健施設では医療と介護の両方に関われます。
復職研修やプリセプター制度がある職場
受け入れ体制への不安が大きい人は、復職者向けの研修や、指導担当がつくプリセプター制度がある職場を選びましょう。 新人向けのプリセプター制度を、中途入職者やブランクのある看護師にも適用している職場もあります。
- 入職後のオリエンテーションや研修の期間
- 指導担当(プリセプター)がつくか、どのくらいの期間か
- 一人で受け持ちを始めるまでの目安
- 採血や点滴などの技術を練習できる機会があるか
託児所や院内保育がある職場
小さな子どもがいる場合は、託児所や院内保育所がある職場を選ぶと、送り迎えの負担を減らせます。 院内保育所は国の地域医療介護総合確保基金でも整備・運営の支援対象になっており、看護職員の確保策として設けている病院もあります。
利用を考える場合は、対象年齢・利用料・夜間や休日の保育の有無・空き状況を事前に確認しておきましょう。 「託児所あり」の求人でも、定員がいっぱいで入れない場合があります。
職場の条件で解決できる不安も意外と多いんだね
参考:日本看護協会「2025年 病院看護実態調査 結果」 / 厚生労働省「看護師等(看護職員)の確保を巡る状況」
潜在看護師が使える復職支援制度

潜在看護師の復職を後押しする公的な制度には、都道府県ナースセンターの支援と、ハローワークの求職者支援訓練があります。
いずれも無料で利用でき、ナースセンターでは相談から研修、職業紹介まで一貫してサポートを受けられます。
都道府県ナースセンターの復職支援研修
都道府県ナースセンターは、看護師等の人材確保の促進に関する法律に基づいて、47都道府県に1か所ずつ設置されています。 ブランクがあり再就業に不安がある人向けに、再就業支援研修や離職中の人同士の交流会、無料の職業紹介を実施しています。
研修の内容や日程は都道府県ごとに異なり、講義だけでなく技術演習や病院での実習を組み合わせているところもあります。 受講を考える場合は、住んでいる都道府県のナースセンターのサイトで日程を確認しましょう。
ナースセンターから遠い地域では、ハローワークでナースセンター相談員による巡回相談を実施している場合もあります。
看護師等免許保持者の届出制度
2015年10月から、看護職の免許を持ちながら働いていない人が、氏名や連絡先などを都道府県ナースセンターに届け出る制度が始まりました。 届出は法律で定められた努力義務で、看護師等の届出サイト「とどけるん」から入力できます。
届出の対象になるのは、次のような場合です。
- 病院・診療所・介護老人保健施設などを離職した場合
- 看護職の仕事に従事しなくなった場合
- 免許取得後、すぐに就業しない場合
- 現在、看護職の仕事に従事していない場合
届け出ておくと、ナースセンターから復職研修の案内や求人情報などが定期的に届きます。 すぐに復職するつもりがなくても、情報を受け取れる状態にしておくだけで、働きたいと思ったときに動き出しやすくなります。
まずは「とどけるん」で届出しておくと情報が届くよ
ハローワークの求職者支援訓練
求職者支援訓練は、雇用保険を受給できない人などが、無料の職業訓練を受けられる国の制度です。 収入や資産などの要件を満たせば、訓練期間中に生活支援の給付金も受け取れます。
求職者支援訓練は看護技術の研修ではなく、IT・事務・医療事務・介護などの分野が中心です。
看護職以外の仕事も視野に入れている人や、まず事務スキルを身につけて医療機関で働きたい人の選択肢になります。 看護職として復職したい場合は、ハローワークの窓口でナースセンターの巡回相談についても聞いてみましょう。
参考:厚生労働省「ブランクを経て働く|看護職のキャリアと働き方支援サイト」 / 厚生労働省「求職者支援制度のご案内」
まとめ
潜在看護師が復職しない理由は、スキルへの不安、育児・介護との両立、夜勤、受け入れ体制、人間関係の5つに分けられます。
理由ごとに「自分の準備」で解消できるものと「職場の条件」で解消できるものがあるため、自分の理由を確認してから動くと遠回りせずにすみます。
この記事のポイント
- 潜在看護職員は2018年末時点で約69.5万人と推計
- 離職中の看護職員の約4割は看護職への復職を希望していない
- スキルへの不安は学び直しや復職支援研修で軽くできる
- 夜勤・受け入れ体制・育児の不安は職場の条件で解消しやすい
- ナースセンターへの届出で研修や求人の情報を受け取れる
まずは働ける条件と不安を書き出し、ナースセンターへの届出や研修の情報収集から始めてみましょう。 日勤のみや復職者向けの研修がある職場を自分で探すのが難しいときは、転職エージェントに相談すると、求人票だけでは分からない教育体制や職場の雰囲気まで確認してもらえます。


