精神科訪問看護を辞めたいときの判断基準|続ける条件と転職先の選び方
「精神科訪問看護を辞めたい」と思いながら、次の訪問の準備をしている看護師の方もいるはずです。 同じ「辞めたい」でも、ステーションの体制が原因なのか、利用者さんとの関わり方が原因なのかで、転職して解決するかどうかは変わります。
この記事では、辞めたくなる理由を3つのタイプに分けたうえで、辞めたほうがよいケースと残ったほうがよいケース、辞める前に職場へ頼める調整、経験が評価される転職先、辞めるときの進め方を紹介します。
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精神科訪問看護を辞めたくなる理由

精神科訪問看護を辞めたくなる理由は人それぞれですが、原因の出どころで見ると「職場の体制」「利用者さんとの関わり方」「キャリアへの不安」の3タイプに分けられます。 どのタイプかによって、職場に残って変えられることと、職場を変えないと変わらないことが違います。 きつさの具体的な中身は、以下の記事で詳しく紹介しています。
職場の体制が原因のタイプ
オンコールの当番が多い、1日の訪問件数が詰め込まれている、困ったときに相談できる先輩や管理者がいない、といった悩みはこのタイプです。 精神科の利用者さんは、電話での相談や予定外の訪問が必要になる場面もあり、体制が手薄なステーションほど一人あたりの負担が大きくなります。
このタイプは、本人の努力では変えにくい一方、ステーションの方針や人員配置しだいで改善できることもあります。 「誰に頼めば変わるのか」が見えるかどうかが、残るか辞めるかの分かれ目になります。
利用者との関わり方が原因のタイプ

利用者さんから強い口調で責められる、何度訪問しても関係が築けない、拒否が続く、といった悩みはこのタイプです。 病棟と違って自宅という利用者さんの生活の場に一人で入るため、関わりの難しさを一人で抱え込みやすい働き方でもあります。
ただ、つらさの原因が特定の利用者さんに集中しているなら、担当の変更や同行訪問で負担が軽くなることがあります。 反対に、精神疾患のある人との関わりそのものに疲れている場合は、職場を変えても同じ悩みが続く可能性があります。
キャリアへの不安が原因のタイプ
「点滴や処置をする機会が少なく、看護技術が落ちている気がする」「このまま続けて、ほかの分野に移れるのか」という不安はこのタイプです。 訪問看護の中でも精神科は、医療処置より対話や生活の支援が中心になるため、スキルが伸びていないように感じやすい分野です。
このタイプは、今の職場の体制を変えても解消しにくく、どの分野でどんな経験を積みたいかがはっきりしてから転職を考えるのが無難です。 精神科訪問看護で身につく力は、後ほど紹介する転職先でも評価されます。
「辞めたい」の中身って、整理してみると意外と違うよね
自分がどのタイプに近いかは、次の3つの観点で見分けられます。
| タイプ | 自分に聞いてみること | 今の職場で変えられるか | 転職で解決するか |
|---|---|---|---|
| 職場の体制 | 別のステーションなら、同じ利用者さんでも続けられそう? | △管理者しだい | ◯体制の整った職場なら |
| 利用者さんとの関わり方 | つらいのは特定の利用者さん?それとも精神科の関わり全体? | ◯特定の人なら担当変更で | △関わり全体なら分野を変える |
| キャリアへの不安 | オンコールや件数が減っても、不安は残りそう? | ✕体制では変わらない | ◯積みたい経験が決まれば |
体制や関わり方のタイプでも、今の職場で調整がきかない場合は、条件の違う職場を知っておくと比べやすくなります。
看護師の求人を探す辞めたほうがよいケースと残ったほうがよいケース

辞めるかどうかは、「つらさの原因が、今の職場の中で取り除けるかどうか」で考えると判断しやすくなります。 ただし、心身に不調が出ている場合は、辞めるか残るかを考える前に体を守ることを優先しましょう。
心身に不調が出ている場合
眠れない日が続く、訪問前になると動悸や吐き気がする、休日も仕事のことが頭から離れない、といった状態が続いているなら、まずは心療内科・精神科やかかりつけ医を受診しましょう。 不調の原因や病名を自分で決めつけず、今の状態で働けるかどうかも医師と相談して決めるのが安心です。
退職は、体調が落ち着いてからでも決められます。 医師から休養をすすめられたら、就業規則で休職制度を確認し、休職してから続けるかどうかを考える方法もあります。 ステーションに産業医や相談窓口がある場合は、勤務の調整を相談できる先として使えます。
不調があるときは判断する力も落ちやすいため、勢いで退職を申し出ず、受診と休養を先にしましょう。
ステーションの体制に問題がある場合
オンコールの回数や訪問件数を管理者に相談しても見直されない、相談できる人がいない状態が何か月も続いている、という場合は辞める選択も現実的です。 体制の問題は、一人のスタッフが頑張っても変わりにくいからです。
一方で、管理者がまだ実態を知らないだけというケースもあります。 一度も具体的に相談していないなら、辞める前に次の章で紹介する調整を頼んでみる価値があります。 相談した内容と返事を記録しておくと、残るか辞めるかの判断材料になります。
経験不足が原因の場合
入職して数か月で「自分には向いていない」と感じている場合は、経験不足による不安であることも多いです。 精神科訪問看護は、利用者さんとの関係ができるまでに時間がかかるため、手ごたえを感じにくい時期が続きます。
精神科訪問看護を算定するステーションでは、訪問する看護師に一定の経験か研修の修了が求められます。
精神疾患のある人への訪問看護を1年以上経験すると、その経験自体がこの要件の1つになります。 経験不足が原因なら、同行訪問や研修で支えてもらいながら1年を目安に続けてみるのも一つの選択肢です。
特定の利用者の担当が原因の場合
つらさが特定の利用者さんとの関わりに集中しているなら、辞めるより担当の変更を頼むほうが早く解決することがあります。 相性の問題は看護師の力量とは別で、担当を替えることで利用者さんとの関係が良くなる場合もあります。
ただし、暴言や威圧的な言動、身の危険を感じる場面がある場合は、我慢して訪問を続ける必要はありません。 その場で起きたことを記録し、すぐに管理者へ報告して一人で訪問しない体制にしてもらいましょう。 報告しても対応してもらえないなら、職場を変えることも考えてよい状況です。
原因が職場の中で取り除けるかどうかがカギなんだね
職場を変える方向で考え始めたら、まずは今の経験を活かせる求人があるかを知っておくと判断しやすくなります。
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参考:厚生労働省「訪問看護ステーションの基準に係る届出に関する手続きの取扱いについて(令和8年3月5日保医発0305第9号)」
辞める前に職場へ相談できる調整

職場の体制や特定の利用者さんが原因なら、辞める前に具体的な調整を頼むことで続けられる場合があります。 「つらいです」と伝えるだけでは管理者も動きにくいため、何をどう変えてほしいかを1つずつ伝えるのがポイントです。
| 職場の体制 | 利用者さんとの関わり方 | キャリアへの不安 | |
|---|---|---|---|
| 担当利用者の変更 | ○ | ◎ | − |
| 同行訪問・二人体制 | ○ | ◎ | ○ |
| オンコール回数の調整 | ◎ | − | − |
| 訪問件数の見直し | ◎ | ○ | − |
担当利用者の変更
特定の利用者さんの訪問がつらい場合は、担当を外してもらうか、主担当を別の看護師に替えてもらえないか相談しましょう。 伝えるときは、感情ではなく「どの場面で何が起きたか」を訪問記録などをもとに説明すると、管理者も判断しやすくなります。
担当を替えることは、利用者さんにとってもマイナスとは限りません。 看護師との相性が理由で拒否が続いている場合、担当が替わることで訪問を受け入れてもらえるようになることもあります。
同行訪問や二人体制への変更
関わりの難しい利用者さんや、暴言・威圧的な言動がある利用者さんの訪問は、ほかの看護師や精神保健福祉士との二人での訪問に切り替えられないか相談しましょう。
精神科訪問看護には、複数名で訪問したときの加算があり、条件を満たせばステーションの収入にもなります。
主治医の指示書への記載が必要なため、二人体制は管理者がすぐに決められるとは限りません。 指示書の見直しを待つ間だけでも、次回の訪問に管理者や先輩が同行してもらえないかを頼んでみましょう。
オンコール回数の調整
オンコールの負担がつらい場合は、月の当番回数や連続回数を減らせないか、夜間に対応した翌日の勤務を調整できないかを相談しましょう。
24時間対応体制をとるステーションでは、看護師の夜間対応の負担を軽くする取組をしていると、24時間対応体制加算が利用者さん1人につき月6,800円(取組がない場合は6,520円)になる仕組みがあります。 取組として認められるには、次の項目のうち、アかイを含む2項目以上を行う必要があります。
すべてのステーションがこの取組をしているわけではありませんが、相談するときは項目に沿って伝えると話が具体的になります。 2連続までにしてほしい、夜間に呼ばれた翌日は午後から出勤にしたいなど、自分が希望する形を決めてから相談するのがおすすめです。
訪問件数の見直し
1日の訪問件数が多く、記録や電話対応の時間がとれない場合は、件数の上限や移動時間の組み方を相談しましょう。 精神科の訪問では、利用者さんの話を聞く時間が予定より延びることもあり、件数を詰め込みすぎると次の訪問に余裕を持って向かえなくなります。
相談するときは、1週間分の訪問件数・移動時間・記録にかかった時間を書き出しておくと、どこに無理があるかを示しやすくなります。 件数を減らすと給与が下がる職場もあるため、件数と給与の関係もあわせて確認しておきましょう。
「何を変えてほしいか」が決まると、相談しやすくなるよ
それでも調整が難しいときは、オンコールなし・訪問件数少なめといった条件で探せる求人もあります。
看護師の求人を探す参考:厚生労働省「訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(令和8年3月5日保発0305第19号)」 / 厚生労働省「訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法の一部を改正する件(令和8年厚生労働省告示第74号)」
精神科訪問看護の経験が評価される転職先

精神科訪問看護は「医療行為が少なくスキルが伸びない」と思われがちですが、実際には多くの職場で通用する力が身についています。 自宅という病棟とは違う環境で、利用者さんとの関係を一から築き、医師や相談支援専門員と連携し、病状悪化のサインを一人で見極めてきた経験は、次の職場でも強みになります。
精神科外来・クリニック
精神科外来やメンタルクリニックでは、診察前の問診や電話での相談対応、デイケアでの関わりなど、対話が中心の業務が多くあります。 在宅での生活を見てきた看護師は、外来の短い時間の中で、生活の困りごとや服薬の様子を聞き取る力が活かせます。
日勤が中心でオンコールがない職場が多いため、オンコールの負担が原因だった人に向いています。 一方で、クリニックはスタッフが少なく、医療処置の機会は多くない点も知っておきましょう。
精神科病棟
精神科病棟では、急性期の症状が強い患者さんの看護や、退院に向けた支援を担当します。 退院後の生活をイメージしながら支援できる点は、訪問看護の経験者ならではの強みです。
医師や先輩がすぐ近くにいるため、一人で判断するプレッシャーが原因だった人には安心できる環境です。 ただし夜勤がある職場が多く、生活リズムが変わる点は考えておきましょう。
身体科の訪問看護ステーション
訪問看護の働き方自体は好きで、精神科の利用者さんとの関わりに疲れたという人は、身体科を中心とするステーションも選択肢です。 自宅に一人で訪問して状態を判断する経験は、そのまま活かせます。
身体科の訪問看護では、点滴や褥瘡のケア、ターミナルケアなどの医療処置が増えるため、処置の経験を積みたい人にも向いています。 オンコールの有無や頻度はステーションごとに違うので、応募前に確かめておきましょう。
- 正看護師の求人は訪問看護が最多(2,535件)
- クリニック2,384件・病院1,368件
- 訪問看護の月給中央値は32万円
ステーション選びで確認したい項目は、以下の記事にまとめています。
就労支援や相談支援の事業所
就労移行支援や就労継続支援、相談支援の事業所など、障害福祉サービスの現場も、精神科訪問看護の経験が活きる職場です。 利用者さんの体調の波に気づき、医療機関につなぐ役割を任されることがあり、医療と生活の両方を見てきた経験が評価されます。
ただし、看護師としての求人は多くなく、医療処置はほとんどありません。 相談支援の仕事は、事業所によって求める資格や経験が異なるため、求人ごとに応募条件を確認しておきましょう。
精神科で身につけた「関わる力」は、どの職場でも武器になるよ
どの転職先が合うかは、辞めたい理由がどのタイプだったかによって変わります。
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辞めるときの進め方

訪問看護では、辞めるタイミングと引き継ぎの進め方が、利用者さんの生活にも関わります。 精神科の利用者さんは担当の交代で不安定になることもあるため、余裕を持ったスケジュールで動くと、自分も利用者さんも負担を減らせます。
退職を申し出る時期
正社員のように期間の定めのない雇用契約なら、民法では退職を申し出てから2週間で雇用が終わるとされています。 ただし、多くのステーションは就業規則で「1か月前まで」などの申し出期限を決めているため、まずは就業規則を確認しましょう。
訪問看護は担当制で動いているため、後任の看護師の確保や利用者さんへの説明に時間がかかります。 退職希望日の2〜3か月前には管理者に伝えると、引き継ぎを落ち着いて進めやすくなります。 体調不良が理由で辞める場合の伝え方や、転職面接での退職理由の説明は、以下の記事で例文つきで紹介しています。
担当利用者の引き継ぎ
精神科の利用者さんにとって、担当看護師の交代は大きな変化です。
早めに動けば、引き継ぎも落ち着いてできるよ
後任の看護師と一緒に訪問する機会をつくり、利用者さんが新しい担当者と顔を合わせてから交代すると、不安を抑えやすくなります。
引き継ぎでは、訪問看護計画書や記録に書かれていない細かな情報こそ大切です。 利用者さんごとに、次のような情報を書き出しておきましょう。
主治医や相談支援専門員、ケアマネジャーなどの関係者への連絡は、管理者と分担を決めて進めましょう。 退職の理由を利用者さんにどこまで話すかも、管理者と事前にすり合わせておくと安心です。
まとめ
精神科訪問看護を辞めたいと感じたら、まず理由が「職場の体制」「利用者さんとの関わり方」「キャリアへの不安」のどれに当てはまるかを整理しましょう。 原因が今の職場の中で取り除けるなら調整を頼み、取り除けないなら転職を考える、という順番で判断すると後悔しにくくなります。
この記事のポイント
- 心身に不調があるときは、辞める判断より受診と休養を先にする
- 体制や特定の利用者さんが原因なら、辞める前に具体的な調整を頼む
- 担当変更・二人体制・オンコール回数・訪問件数は相談できる項目
- 関係構築・多職種連携・緊急時の判断は転職先でも評価される
- 退職は2〜3か月前に伝え、後任と同行して引き継ぐ
まずは、今のつらさを書き出して、管理者に相談できることがないか考えてみましょう。 転職を考える段階になったら、転職エージェントに相談すると、オンコールの頻度や訪問件数など求人票だけでは分からない条件も確認してもらえます。


