看護師と介護士の仕事内容・役割の違い|医療行為の範囲・境界についても解説
介護施設で働いていて「この処置は介護士がしてもいいの?」と迷ったり、これから目指す資格を看護師にするか介護士にするかで悩んだりしていませんか?
看護師と介護士の違いは、仕事の目的、できる医療行為の範囲、資格の取り方、働く場所に表れます。
この記事では、看護師と介護士の違いを比較表で整理し、厚生労働省の通知をもとに「介護士ができる行為・研修を受ければできる行為・看護師にしかできない行為」の境界を具体的な行為名で紹介します。
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看護師と介護士の仕事内容と役割の違い

看護師は利用者さんの健康状態を管理して治療や回復を支え、介護士は食事・入浴・排泄など毎日の暮らしを支えます。 まずは両者の違いを5つの項目で比べてみましょう。
| 項目 | 看護師 | 介護士 |
|---|---|---|
| 目的 | 治療と回復を支える | 日常生活と自立を支える |
| 仕事内容 | 健康管理・医師の指示による処置・急変対応 | 食事・入浴・排泄などの身体介護と生活援助 |
| 働く場所 | 病院が中心。診療所・訪問看護・介護施設にも | 介護施設・デイサービス・訪問介護が中心 |
| 資格 | 国家資格(看護師免許)が必須 | 無資格でも勤務可。介護福祉士は国家資格 |
| 給料 | 月36.6万円年収試算 約525万円 | 月27.8万円年収試算 約388万円 |
給料は、看護師の年収(試算)が介護職員より約137万円高い結果です。 ただし介護職員の数字には、介護福祉士・実務者研修修了者・無資格者がまとめて含まれています。
目的と役割の違い
看護師の役割は、病気やけがのある人の「療養上の世話」と、医師の指示による「診療の補助」です。 体調の変化に気づいて医師につなぎ、治療を受けながら暮らせるように支えます。
介護士の役割は、心身の障害で日常生活に支障がある人の暮らしそのものを支えることです。 できないことを代わりにするだけでなく、残っている力を活かしてその人らしい生活を続けられるようにすることが目的です。
-
看護師健康状態を見て、治療と回復を支える
-
介護士生活動作を手伝い、自立と暮らしを支える
看護師が担う業務
看護師の業務は、観察・判断・処置の3つが中心です。 病院でも介護施設でも、利用者さんの状態を医学的に見て、必要な処置をするのが看護師の担当です。
- バイタルサインの測定と、その数値をもとにした体調の判断
- 注射・点滴・採血などの医師の指示による処置
- 服薬の管理と、薬の効果や副作用の観察
- 褥瘡(床ずれ)の処置や傷の手当て
- 医師への報告と、急変時の初期対応
介護施設では医師が常にいるとは限らないため、「医師を呼ぶべきか」を最初に判断するのも看護師の大切な役割です。
介護士が担う業務
介護士の業務は、利用者さんの生活に直接かかわる身体介護と生活援助が中心です。
- 食事・入浴・排泄・着替えなどの身体介護
- ベッドから車いすへの移乗や歩行の付き添い
- 掃除・洗濯・買い物などの生活援助
- レクリエーションや機能を保つための声かけ
- 利用者さんや家族の相談対応と記録
同じ施設で分担が重なる業務
介護施設では、看護師と介護士が同じ利用者さんを担当します。 食事・排泄・入浴・服薬などは両方がかかわる業務で、「どこまでが介護士で、どこからが看護師か」の線引きが現場で迷いやすいところです。
| 業務 | 介護士が担うこと | 看護師が担うこと |
|---|---|---|
| 食事 | とろみ食を含む食事介助、経管栄養の準備・片付け | むせ込みや食事量の変化の評価、経管栄養の注入判断 |
| 排泄 | おむつ交換、ストマのパウチにたまった排泄物の処理、市販浣腸器での浣腸 | 肌に接着したパウチの交換、膀胱留置カテーテルの管理 |
| 入浴 | 入浴介助、入浴後の軟膏塗布(褥瘡を除く) | 入浴してよい体調かの判断、褥瘡の処置 |
| 測定 | 体温・血圧・パルスオキシメータでの測定 | 測定値から受診や投薬が必要かを判断 |
| 服薬 | 一包化された薬の内服介助、湿布の貼付 | 薬の管理、副作用の観察、介助してよい状態かの確認 |
基本の考え方は、日常の介助は介護士、状態の判断と医療的な処置は看護師です。 たとえばバイタル測定は介護士もできますが、測った数値から「受診が必要か」を判断するのは看護師や医師の役割です。
同じ食事介助でも、担当が分かれる場面があるんだね
参考:政府統計の総合窓口(e-Stat)「令和7年賃金構造基本統計調査 職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)」 / e-Gov法令検索「保健師助産師看護師法」
医療行為の境界はどこにある?

介護士は医療行為が「原則できない」とよく言われますが、実際の線引きはもっと細かく決まっています。 医師・看護師などの免許がない人の医業は、医師法第17条や保健師助産師看護師法第31条で禁止されています。
一方で厚生労働省は、介護現場で判断に迷いやすい行為のうち「原則として医行為ではない」ものを通知で具体的に示しています。
通知は平成17年に出され、令和4年(その2)と令和7年12月(その3)に対象となる行為が追加されました。
介護士が実施できる医行為でない行為
次の行為は、通知で「原則として医行為ではない」とされており、資格や研修の有無にかかわらず介護士が実施できます。
- 体温計での体温測定(腋の下・耳)
- 自動・半自動血圧測定器での血圧測定
- パルスオキシメータの装着(新生児以外)
- 持続血糖測定器のセンサー貼付・値の読み取り
- 一包化された内服薬・舌下錠の介助
- 軟膏塗布(褥瘡を除く)・点眼・坐薬・鼻腔への噴霧
- 湿布の貼付
- 吸入薬・分包された液剤の介助
- お薬カレンダーへのセット令和7年
- 服薬直前にPTPシートから取り出す令和7年
- 異常のない爪の爪切り・やすりがけ
- 歯ブラシなどでの口腔ケア
- 耳垢の除去(耳垢塞栓を除く)
- 入れ歯の着脱・洗浄
- とろみ食を含む食事介助
- 軽い切り傷・擦り傷・やけどの処置
- ストマのパウチにたまった排泄物の処理
- 市販のディスポーザブル浣腸器での浣腸
- 蓄尿バッグからの尿の廃棄と尿量・色の確認
- 経管栄養・在宅酸素の準備と片付け
- 吸引器の汚水の廃棄・水の補充
体温・血圧の測定や湿布の貼付、一包化された薬の内服介助など、現場で「これはいいの?」と迷いやすい行為の多くがここに入ります。
ただし、どの行為にも条件があります。
病状が不安定で専門的な管理が必要な人には、同じ行為でも医行為とされることがあります。服薬介助は、容態が安定していることなどを医師・看護職員が確認し、本人や家族から具体的な依頼がある場合に限られます。
また、測った数値をもとに薬を使うかどうかを決めるのは医学的な判断で、医行為にあたります。 事前に決められた範囲から外れた数値が出たら、医師や看護職員に報告することが通知で求められています。
研修を受けた介護職員ができる喀痰吸引と経管栄養
痰の吸引と経管栄養は医行為ですが、社会福祉士及び介護福祉士法で、一定の研修を修了した介護職員にも認められています。
対象は口腔内・鼻腔内・気管カニューレ内部の喀痰吸引と、胃ろう・腸ろう・経鼻の経管栄養の5つの行為です。
| 担い手 | 必要な研修 | できる範囲 |
|---|---|---|
| 介護福祉士 | 養成課程などの医療的ケア+実地研修 | 実地研修を修了した行為 |
| 介護職員(第1号研修) | 講義50時間+演習+5行為すべての実地研修 | 5行為すべて |
| 介護職員(第2号研修) | 講義50時間+演習+一部の行為の実地研修 | 実地研修を修了した行為 |
| 介護職員(第3号研修) | 講義・演習9時間+特定の利用者さんでの実地研修 | 研修を受けた特定の利用者さんへの行為 |
介護福祉士であれば誰でもできるわけではなく、実地研修を修了した行為だけを、医師の指示の下で行います。
介護福祉士以外の介護職員は、都道府県などが行う喀痰吸引等研修を修了し、「認定特定行為業務従事者」の認定証を受ける必要があります。
看護師にしかできない行為
上の2つにあてはまらない医療的な処置は、医師の指示の下で看護師(准看護師を含む看護職員)が行います。 通知の中でも「看護職員が行うこと」と明記されている行為があります。
- 注射・点滴・採血などの処置
- 褥瘡の処置
- 経鼻チューブが胃に入っているかの確認
- 胃ろう・腸ろうの状態の確認と、注入内容・量の判断
- 酸素吸入の開始と停止
- 肌に接着したストマ装具(パウチ)の交換
- 膀胱留置カテーテルと蓄尿バッグの定期交換
- 測定値をもとにした受診や投薬の判断
経管栄養や在宅酸素では、準備や片付けは介護士、開始・停止と状態確認は看護職員と、1つのケアの中で担当が分かれます。
同じケアでも「準備」と「判断」で担当が変わるんだね!
判断に迷ったときは自己判断せず、看護職員に確認するのが無難です。
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参考:厚生労働省「医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について(その2)」 / 東京都保健医療局「医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について(その3)」
資格と取得ルートの違い

看護師として働くには国家資格が必要ですが、介護士は資格がなくても働き始められます。 介護士は働きながら段階的に資格を取っていけるのが大きな違いです。
看護師の資格と養成課程
看護師になるには、大学・短期大学・専門学校などの養成課程で3年以上学んだうえで看護師国家試験に合格し、厚生労働大臣の免許を受ける必要があります。
養成課程では、解剖学や薬理学などの専門基礎から各分野の看護学、病院での臨地実習までを学びます。 働きながら取れる資格ではないため、学校に通う期間と学費を見込んでおく必要があります。
介護士の資格と段階的な取得ルート
「介護士」は資格名ではなく、介護の仕事をする人の総称です。 無資格から始めて、研修や国家資格で段階的にステップアップしていくのが一般的です。
国家資格の介護福祉士は、実務経験ルートなら従業期間3年以上(1,095日以上)かつ従事日数540日以上の実務経験と、実務者研修の修了が受験資格です。
介護士は働きながら一歩ずつ資格を増やせるのがいいところだね!
業務独占と名称独占の違い
看護師は、資格がない人がその業務をしてはいけない「業務独占資格」です。 保健師助産師看護師法で、看護師でない人が療養上の世話や診療の補助を業として行うことは禁じられています。
介護福祉士は、資格がない人が「介護福祉士」と名乗ってはいけない「名称独占資格」です。 介護の仕事そのものは資格がなくてもできますが、介護福祉士の名称を使えるのは登録を受けた人だけです。
業務独占と名称独占の制度や、ほかの医療・介護資格の区分は以下の記事で紹介しています。
参考:e-Gov法令検索「社会福祉士及び介護福祉士法」 / 社会福祉振興・試験センター「受験資格:実務経験+実務者研修」
働く場所の違い

看護師の職場は病院が中心で、介護士の職場は介護施設や在宅サービスが中心です。 介護施設や訪問サービスでは両方が働いており、同じ利用者さんを別の立場から支えます。
看護師の主な職場
看護師の約3人に2人は病院で働いています。
病院と診療所を合わせると全体の約8割で、介護保険施設や訪問看護ステーションで働く看護師はそれぞれ1割に届きません。
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訪問看護と訪問介護の違いは、以下の記事で詳しく紹介しています。
介護士の主な職場
介護士は、介護保険や障害福祉のサービスを提供する施設・事業所で働きます。
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入所施設特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・有料老人ホーム・グループホームなど
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通所サービスデイサービス・デイケアなど
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訪問サービス訪問介護(ホームヘルパー)・訪問入浴など
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障害福祉サービス障害者支援施設・グループホームなど
訪問介護は、利用者さんの自宅で一人でケアをする場面が多い働き方です。 病院でも、看護助手(ナースエイド)として介護職が働いています。
両方が在籍する介護施設での役割分担
介護施設では、介護士が人数の大半を占め、看護師は少人数で全体の健康管理を担う形が一般的です。 特別養護老人ホームの人員基準を見ると、その比率が分かります。
看護師は少人数で全員の健康状態を見るため、介護士からの報告が判断の材料になります。 夜間は看護師が不在でオンコール対応になる施設もあり、夜間に介護士が気づいた変化をどう看護師へつなぐかが分担のポイントです。
夜に看護師さんがいないと、介護士さんも不安になるよね
介護施設で働く看護師にとっては、医療処置よりも健康管理や介護職との連携が仕事の中心になります。
- 特養の正看護師求人は1,171件(月給中央値27.1万円)
- 老健は679件(月給中央値28.8万円)
- 有料老人ホームは369件(月給中央値29.2万円)
参考:厚生労働省「令和6年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」 / e-Gov法令検索「指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準」
向いている人の違い

看護師と介護士は、どちらも人を支える仕事ですが、得意なことを活かせる場面が違います。 自分がどんな場面でやりがいを感じるかを考えると、選びやすくなります。
- 医学的に考えるのが好き
- 急変時も落ち着いて動ける
- 学び続けることが苦にならない
- 同じ人と長く関わりたい
- 体を動かす仕事が合っている
- まず現場で経験を積みたい
看護師に向いている人
看護師に向いているのは、体の変化を医学的に考えることに興味がある人です。 検査値や症状から「何が起きているか」を考え、医師と相談しながら処置を進める場面が多くあります。
急変時に落ち着いて動けることや、学び続ける姿勢も大切です。 医療は新しい知識や技術が増え続けるため、資格を取ったあとも勉強が続きます。 夜勤のある職場も多いため、生活リズムの変化に対応できるかも考えておきましょう。
介護士に向いている人
介護士に向いているのは、利用者さんの暮らしに長く寄り添うことにやりがいを感じる人です。 同じ利用者さんと毎日顔を合わせ、小さな「できた」を一緒に喜べるのが介護の仕事です。
向き不向きは、実際に働いてみて分かることも多いよ
移乗や入浴の介助など体を使う場面が多いため、体力に自信がある人にも合います。 また、資格がなくても始められるため、まず現場を経験してから将来の方向を考えたい人にも向いています。
まとめ
看護師と介護士は、同じ利用者さんを「健康」と「暮らし」の両面から支える仕事です。 医療行為の境界は、行為ごとに「誰が・どんな条件でできるか」が厚生労働省の通知や法律で決まっています。
この記事のポイント
- 看護師は治療と回復を、介護士は生活と自立を支える
- 体温・血圧測定や服薬介助は条件付きで介護士もできる
- 喀痰吸引等は研修と事業所の登録があれば介護職もできる
- 看護師は国家資格が必須、介護士は無資格から段階的に取れる
- 介護施設では看護師が少人数で全体の健康管理を担う
介護施設で働く看護師は、病院とは違う「暮らしの中の看護」にかかわれます。 介護施設や訪問看護など、病院以外の職場も含めて働き方を比べたいときは、転職エージェントに相談すると職場ごとの看護師の役割まで確認しやすくなります。


