薬剤師のDI業務とは?仕事内容と職場別の違い・必要なスキルとDI業務に就くための経路
「調剤や病棟の業務より、医薬品の情報を深く調べる仕事がしたい」と、DI業務(Drug Information=医薬品情報業務)に興味を持つ薬剤師は少なくありません。 薬剤師のDI業務は、医薬品の情報を集めて評価し、医師や看護師、患者さんに必要な形で届ける仕事です。
この記事では、DI業務の仕事内容を5つに分けて紹介し、病院・製薬会社・医薬品卸・薬局本部という職場ごとの違い、求められるスキル、年収の考え方、DI業務に就くための3つの経路まで整理します。
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薬剤師のDI業務の仕事内容

DI業務は、医薬品情報を「集める・評価する・届ける」ことで、医薬品が安全に正しく使われるよう支える仕事です。 どの職場でも中心になるのが次の5つの業務です。
医薬品情報の収集と評価
DI業務の土台は、情報の収集と評価です。 添付文書やインタビューフォーム、厚生労働省や医薬品医療機器総合機構(PMDA)が出す安全性情報、学術誌の論文、製薬企業の資料など、情報源は多岐にわたります。
- 厚生労働省・PMDAなど公的機関
- 製薬企業・医薬品卸
- 学術誌・学会
- 院内の副作用・ヒヤリハット
- 医師
- 看護師
- 病棟や調剤の薬剤師
- 患者さん・家族
集めた情報は、そのまま使うのではなく信頼できるかどうかを専門的に評価してから使うのが基本です。
製薬企業の資料には、適正使用のための資材と販売促進のための資材があり、両者を見分けて扱う必要があります。 論文であれば、査読の有無に加えて研究デザインや統計の手法まで確認します。
院内や社内への情報提供
病院では、重大な副作用や回収の情報など、緊急性の高い情報ほど迅速かつ確実に伝える工夫が求められます。
病棟薬剤業務実施加算1の施設基準では、医薬品情報管理室が院内の副作用やヒヤリハット、外部から入手した安全性情報などを集めて評価し、一元的に管理したうえで、関係する医療従事者に速やかに周知することが求められています。
問い合わせへの対応
医師や看護師、ほかの薬剤師、患者さんからの質問に答えるのも、DI業務の大きな柱です。 質問をそのまま調べるのではなく、まず「誰が・何に困っていて・いつまでに答えが必要か」を確認するところから始まります。
回答したら終わりではなく、質問内容・使った情報源・回答・その後の経過を記録して共有することで、同じような質問が来たときにすぐ参照できるようになります。
資料や医薬品情報ニュースの作成
日常業務で役立つ資料を作るのも、DI担当の仕事です。 院内医薬品集の作成・改訂や、新しく採用した薬や添付文書の改訂を知らせる「DIニュース」の発行がその代表です。
資料は、受け手が医師なのか、看護師なのか、患者さんなのかで、必要な情報の量や言葉づかいを変えます。 現場の時間は限られているため、忙しい中でも一目で必要な情報にたどり着ける形にまとめるのがポイントです。
委員会への参画
病院では、薬事委員会や医療安全管理委員会、医薬品安全管理委員会などにDI担当薬剤師が参加することがあります。
薬事委員会では、新しく採用する医薬品の申請を受け付け、製薬企業へのヒアリングを含めて情報を集め、有効性・安全性・経済性を比べた資料を作って説明します。
採用後も、使用状況や安全性を調べて採用医薬品を見直します。 医療機関によっては、治験審査委員会(IRB)で治験実施計画書の内容確認に関わることもあります。
調べて答えるだけじゃなく、薬の採用や安全対策にも関わるんだね
参考:日本病院薬剤師会「医薬品情報業務の進め方2018」 / 関東信越厚生局「基本診療料の届出一覧(令和8年度診療報酬改定)」
DI業務を担う職場の違い

DI業務を担う職場は、大きく分けて「病院のDI室」「製薬会社の学術・メディカルインフォメーション」「医薬品卸」「調剤薬局やドラッグストアの本部」の4つです。
同じDIでも、誰に向けて情報を出すのか、何を評価されるのかが職場ごとに変わります。
| 職場 | おもな情報の受け手 | 扱う医薬品の範囲 | 評価されやすい点 |
|---|---|---|---|
| 病院のDI室 | 院内の医師・看護師・薬剤師、患者さん | 自施設の採用薬が中心(未採用薬も調べる) | 患者さんの治療に合った情報を早く正確に |
| 製薬会社 | 社外の医療関係者・患者さん、社内のMR | 自社製品 | 承認内容と社内基準に沿った正確な回答 |
| 医薬品卸 | 取引先の病院・薬局、社内の営業担当 | 複数メーカーの製品 | 製品を横断した比較や供給に関する情報 |
| 薬局・ドラッグストア本部 | 自社店舗の薬剤師 | 店舗で扱う医療用医薬品・一般用医薬品 | 全店舗で対応の質をそろえる情報の標準化 |
病院のDI室
病院のDI業務は、医薬品情報管理室(DI室)が中心になって担います。
診療報酬の薬剤管理指導料でも、医薬品情報管理室を持ち、院内からの相談に対応できる体制があることが施設基準の一つです。 ただし、DI室に薬剤師が常時いる必要はなく、相談に応じる体制を医師などに周知していればよいとされています。
そのため、規模の小さい病院では、調剤や病棟業務と兼務しながらDIを担当する薬剤師も多くいます。
薬剤師の求人を探す製薬会社の学術・メディカルインフォメーション
製薬会社では、自社の医薬品について、医師・薬剤師などの医療関係者や患者さんからの問い合わせに答える部門がDI業務を担います。 問い合わせ窓口のほか、自社製品の資料作成や、社内のMRへの情報提供を担当することもあります。
求人票での呼び方は会社ごとにばらばらで、「学術」「DI」「メディカルインフォメーション」「くすり相談」などの名称が使われます。
病院のDIが「自施設の患者さんにとって最適な情報」を探すのに対し、製薬会社のDIは自社製品の情報を、承認された内容と社内の基準に沿って正確に回答することが評価の軸です。 同じ製薬会社でも、新しい薬を生み出す研究職とは仕事の中身が大きく異なります。
医薬品卸
医薬品卸にも、取引先の病院や薬局から寄せられる医薬品の問い合わせに答える学術・DI担当がいます。 特定のメーカーに限らず、多くのメーカーの製品を横断して扱うのが卸のDIの特徴です。
問い合わせの内容は、供給状況や代替品の情報、同じ成分の製品の違いなど、流通に近いテーマも多くなります。
営業担当(MS)の勉強会の講師や、社内向け資料の作成を任される会社もあります。
調剤薬局やドラッグストアの本部
店舗数の多い調剤薬局チェーンやドラッグストアでは、本部の学術部門がDI業務を担うことがあります。 各店舗の薬剤師からの問い合わせに答えたり、添付文書の改訂や新薬の情報をまとめて全店舗に配信したりするのがおもな仕事です。
本部のDIは、多くの店舗で同じ質の対応ができるよう、情報を標準化する役割が大きくなります。
同じDIでも、職場によって相手も仕事の中身も違うんだね
参考:e-Gov法令検索「医療法施行規則」 / 関東信越厚生局「特掲診療料の届出一覧(令和8年度診療報酬改定)」
DI業務に求められるスキル

DI業務では、薬の知識そのものよりも、「情報を正しく読み解き、相手に合わせて届ける力」が問われます。 調剤や病棟で培った経験はそのまま生かせますが、意識して伸ばしておきたいスキルが4つあります。
文献を評価する力
DI業務で最も重視されるのが、文献や情報の信頼性を見極める力です。 同じテーマでも、論文によって結論が違うことは珍しくありません。
論文を読むときは、次のような点を確認して、結果をそのまま信じてよいかを判断します。
- 査読を受けた論文かどうか
- 研究デザインは何か(ランダム化比較試験、観察研究など)
- バイアスや交絡因子への対処はされているか
- 統計解析の方法は適切か
- 対象患者が自施設の患者さんに当てはまるか
書籍などの三次資料は、作られた時点と今とで医学・薬学の考え方が変わっている可能性があるため、発行年や改訂の有無も確認しましょう。
相手に合わせて伝える力
調べた情報が正しくても、相手に伝わらなければ意味がありません。 DI業務では、相手の職種や知識、急ぎ具合に合わせて伝え方を変える力が求められます。
質問の背景を聞き取る力も大切です。 「この薬は粉砕できますか?」という質問の裏に「患者さんが錠剤を飲み込めない」という問題があれば、粉砕の可否だけでなく、剤形の変更や簡易懸濁法まで含めて提案できます。
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英語で原著論文を読む力
新しい薬や海外で報告された副作用の情報は、まず英語の論文や海外の添付文書で出ることが多くあります。 日本語の情報を待っていると対応が遅れる場面もあるため、英語の原著論文を読んで要点をつかむ力があると、DI業務の幅が広がります。
論文の構成(背景・方法・結果・考察)に沿って、方法と結果を中心に読めれば十分に役立ちます。
資料作成とデータ整理
DIニュースや委員会資料、院内医薬品集を作るには、情報を短く分かりやすくまとめる文章力と、表計算ソフトなどでデータを整理するスキルが必要です。
質疑応答の記録をデータベースにまとめ、ほかの医療従事者が必要なときにすぐ調べられる状態にしておくことも、DI担当の仕事です。
文献検索や要約に生成AIを使う医療機関や企業も出てきていますが、AIが出した答えの根拠を確かめて評価するのは薬剤師の役割です。
「調べる力」と「伝える力」の両方が大事なんだね!
DI業務の年収

DI業務だけを対象にした公的な年収統計はありません。 DI業務の給与は、「DI担当だから」ではなく、勤め先の給与体系で決まると考えると分かりやすくなります。
病院で働く場合
病院のDI室で働く薬剤師の給与は、DI担当かどうかではなく、病院薬剤師としての給与規程に沿って決まります。
医療キャリアナビ掲載求人データ(2026年時点)で病院の薬剤師求人(正社員)の月給を見ると、調剤薬局の求人より低めの水準です。
この金額はDI担当に限らない病院の薬剤師求人全体のもので、賞与や夜勤・当直の手当は含まれません。 国公立病院では公務員や法人の給与規程、民間病院では法人ごとの規程が使われるため、同じDI業務でも病院によって差が出ます。
企業で働く場合
製薬会社や医薬品卸、薬局本部の学術・DI職も、職種別の公的統計はなく、会社ごとの給与体系で決まります。 企業の求人票では、年収が「〇〇万円〜〇〇万円」のように幅で示されることが多く、経験やスキルによって提示額が変わります。
薬剤師の求人を探す企業の求人を比べるときは、提示された年収の幅だけでなく、次の項目もあわせて確認しましょう。
- 賞与の支給実績(年何か月分か)
- 固定残業代が含まれているか
- 住宅手当や退職金などの福利厚生
- 転勤の有無
病院や薬局から企業に移る場合、当直や夜勤の手当がなくなる分、月給が上がっても年収が思ったほど増えないこともあります。 今の年収の内訳と比べてから判断すると安心です。
DIの年収って、思ったよりも職場の給与体系しだいなんだね
DI業務で感じる負担とやりがい

DI業務は、患者さんと直接向き合う時間が少ない分、裏方として医療を支える責任とやりがいがあります。 実際に働く前に、負担に感じやすい点とやりがいを知っておくと、ミスマッチを防げます。
回答の正確さに責任が伴う
DI担当の回答は、医師の処方や看護師の投与にそのまま反映されることがあります。 根拠が不十分な回答や、古い情報に基づく回答は、患者さんの治療に直接影響するため、一つひとつの回答に重い責任が伴います。
「急ぎで答えがほしい」と言われる場面も多く、スピードと正確さの両立にプレッシャーを感じる人もいます。 分からないことは「分からない」と伝え、回答の期限と根拠をはっきりさせる姿勢が大切です。
情報の更新に追われる
医薬品の情報は毎日のように更新されます。 添付文書の改訂、新薬の承認、安全性情報、出荷調整や供給停止の情報など、確認すべき情報は途切れません。
情報を追いかけるだけで一日が終わってしまわないよう、自施設に関係する情報を優先して取捨選択することが欠かせません。
PMDAのメール配信サービスなどを使って、情報が届く仕組みを整えておくと効率が上がります。
最新の医薬品情報に触れられる
DI業務の魅力は、新薬や最新のエビデンスにいち早く触れられることです。 調べた知識は自分の財産になり、薬剤師としての専門性を高め続けられます。
日本医薬品情報学会には、「医薬品情報専門薬剤師」や「医薬品情報認定薬剤師」の制度があり、DI業務の経験を資格という形で示す道もあります。
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医師や他職種から頼られる
「この薬のことはDI室に聞けば分かる」と頼られることは、DI担当の大きなやりがいです。 自分が調べて提案した情報で処方が変わり、患者さんの副作用が防げたときなど、チーム医療に貢献している手応えを感じられます。
委員会での発言や資料が、病院全体の医薬品の採用や安全対策に反映されることもあります。
頼られる場面が多い分、やりがいも大きい仕事だよ!
DI業務に就くための経路

DI業務は、調剤や病棟業務に比べると募集の数が限られ、どこから入るかが最初の壁になります。
| 1院内でDI室に異動 | 2企業の学術職に転職 | 3未経験で応募 | |
|---|---|---|---|
| 今の職場 | DI室がある病院 | 調剤薬局・病院 | 調剤薬局・病院・ドラッグストアなど |
| 入口 | 調剤・病棟を経験したあとの配属 | 製薬会社・医薬品卸・薬局本部の求人 | 問い合わせ窓口や本部学術部門の求人 |
| 生かせる経験 | 病棟で受けた質問への回答 | 服薬指導・疑義照会 | 薬剤師としての実務全般 |
| 準備 | 上司に希望を伝えておく | 回答の実例を職務経歴書に書く | 添付文書や論文を読む練習 |
病院内でDI室に異動する
病院薬剤師であれば、院内の異動でDI室に配属されるのが最も一般的な経路です。 多くの病院では、調剤や病棟業務をひととおり経験したあとにDI担当になるため、今の業務で臨床の経験を積むことが、そのままDIへの準備になります。
すでに病院で働いていてDI室のある病院へ移りたい場合は、求人票の仕事内容に「医薬品情報管理」「DI業務」の記載があるかを確認しましょう。
今の現場での経験も、DIにつながる大事な一歩だよ
調剤薬局から企業の学術職に転職する
調剤薬局で働く薬剤師が、製薬会社や医薬品卸、薬局本部の学術・DI職に転職するケースもあります。 企業のDIでは、医療関係者や患者さんの質問の意図をくみ取る力が求められるため、服薬指導や疑義照会で身につけた経験をアピールできます。
応募書類では、「どんな質問に、どの情報源を使って、どう答えたか」を具体的に書くと、DIの適性が伝わりやすくなります。
- 「学術」「DI」など複数の呼び方で求人を探す
- 仕事内容欄で問い合わせ対応の比重を確認
- 質問に答えた実例を職務経歴書に書く
未経験で応募する場合
DI業務の経験がなくても、応募できる求人はあります。 企業のコールセンター型の問い合わせ窓口や、薬局本部の学術部門では、薬剤師としての実務経験があればDI未経験から始められる求人も見られます。
未経験で応募するときは、次のような準備をしておくと、面接で意欲が伝わりやすくなります。
- 添付文書・インタビューフォームの読み方を復習する
- PMDAのWebサイトで安全性情報を定期的に確認する習慣をつける
- 英語の論文を1本、要約まで読んでみる
- 日本医薬品情報学会などの研修やセミナーに参加する
まとめ
薬剤師のDI業務は、医薬品情報を集めて評価し、医師や看護師、患者さんに必要な形で届ける仕事です。 同じDIでも、病院・製薬会社・医薬品卸・薬局本部で、情報を届ける相手と評価の軸が変わります。
この記事のポイント
- DI業務の柱は情報の収集・評価・提供・問い合わせ対応
- 病院のDI室は医療法や診療報酬の施設基準とも関わる
- 企業のDIは呼び方が会社ごとに違うため仕事内容で確認
- 年収は公的統計がなく勤め先の給与体系で決まる
- 経路は院内異動・企業への転職・未経験応募の3つ
DI業務を目指すなら、まずは今の職場で「調べて答える」経験を積み重ねることが近道です。 DI業務を含む求人は数が限られ、仕事内容も職場ごとに違うため、転職エージェントに相談すると、求人票だけでは分からない業務の範囲まで確認してもらえます。


