プライマリ・ケア認定薬剤師の役割と活かせる場面|地域での業務と認定の取得要件
処方箋の薬だけでなく、市販薬の相談や暮らしの困りごとまで受け止めたいと思いながら、どう力をつければいいか迷っている薬剤師は多いはずです。
プライマリ・ケア認定薬剤師は、地域で患者さんを継続して支える力を学会が認める認定で、役割を知ると日々の業務のどこで活きるかが見えてきます。
この記事では、プライマリ・ケア認定薬剤師の役割と活かせる場面、2026年度の要件にもとづく取得と更新の流れ、取得前に確認したいことを紹介します。
お申し込みを受け付けました
以下からひな形と見本をダウンロードできます。
プライマリ・ケア認定薬剤師が担う役割

プライマリ・ケア認定薬剤師は、一般社団法人日本プライマリ・ケア連合学会が認定する資格です。 学会の要綱では、地域を基盤に継続して展開される包括的・全人的なプライマリ・ケアの知識・技能・態度を身につけた薬剤師を認定すると定めています。
要綱が認定する資質として挙げるのは、近接性・包括性・継続性・協調性・責任性の5つの機能と、問題解決能力です。
2026年10月19日時点で、学会サイトの認定資格取得者一覧に掲載されているプライマリ・ケア認定薬剤師は224名です。 数が少ない分、地域でこの視点を持つ薬剤師は貴重な存在です。
患者の状態を総合的に把握する
プライマリ・ケアの薬剤師は、処方内容だけでなく、生活環境や家族の状況、本人の価値観まで含めて患者さんを見ます。 たとえば「最近血圧が安定しない」という相談でも、飲み忘れなのか、市販の解熱鎮痛薬を併用しているのか、食生活が変わったのかで対応はまったく違います。
複数の医療機関にかかる高齢の患者さんは、処方が別々の医師から出ていて、全体を見ている人がいないことも少なくありません。
お薬手帳や問診から全体像をつかみ、薬が増えすぎていないか、生活に合った飲み方かを確認するのが、この認定で磨く力の中心です。
薬だけじゃなく、その人の暮らしごと見るってことだね!
多職種と連携する
日本プライマリ・ケア連合学会は、医師・歯科医師・薬剤師・看護師・介護職・福祉職などが同じ学会に参加しているのが特徴です。 認定薬剤師の研修も、多職種と同じ席で学ぶ機会が多くあります。
-
医師処方の意図を確認し、副作用の兆候や飲みにくさを処方提案につなげる
-
訪問看護師自宅での服薬状況や体調の変化を共有する
-
ケアマネジャー生活の中で薬を管理できる体制を一緒に考える
-
病院薬剤師入退院時に薬の情報を切れ目なく引き継ぐ
情報を受け取るだけでなく、薬剤師の側から「この症状は薬の影響かもしれません」と発信できることが、連携の質を左右します。
セルフメディケーションの支援
認定の研修では、OTC医薬品・健康食品・漢方薬の知識と活用が必須の学習領域の一つです。 軽い不調で薬局に来た人に対して、市販薬で様子を見てよいのか、受診をすすめるべきかを見極める役割があります。
受診をすすめるときは「どの診療科に、いつまでに」まで具体的に伝えると、相談した人が動きやすくなります。
市販薬と処方薬の飲み合わせや、健康食品の重複も確認ポイントです。 処方箋を持たない人とも接点を持てるのは、地域の薬局ならではの強みです。
生活習慣や在宅ケアへの関わり
生活習慣指導・メンタルケア・在宅ケアも、認定の研修で学ぶ領域に含まれます。 糖尿病や高血圧のように、薬だけでなく食事・運動・睡眠と合わせて支える病気では、継続して話を聞ける薬剤師の存在が支えになります。
通院が難しくなった患者さんには、自宅での薬の管理を整える関わり方もあります。 認定はあくまで知識と姿勢を身につけた証明で、要綱でも認定によって業務の範囲や報酬に特典を求めるものではないと定めています。
30秒でかんたん登録!
無料で応募書類テンプレをプレゼント
参考:日本プライマリ・ケア連合学会「プライマリ・ケア認定薬剤師要綱」 / 日本プライマリ・ケア連合学会「家庭医療従事者を探す」
役割を発揮できる場面

プライマリ・ケア認定薬剤師の役割は、かかりつけ薬剤師としての日々の対応、在宅訪問、地域の健康づくりの3つの場面で発揮しやすくなります。
研修で学ぶ10の必須領域は、それぞれの場面と結びついています。
かかりつけ薬剤師としての対応
かかりつけ薬剤師は、患者さんが選んだ1人の薬剤師が、服薬状況を一元的・継続的に把握して対応するしくみです。
令和8年度の調剤報酬改定で、かかりつけ薬剤師指導料と包括管理料は廃止され、服薬管理指導料の中で「かかりつけ薬剤師が行った場合」として評価する形に変わりました。
かかりつけ薬剤師として届け出る薬剤師の要件には、勤務経験・勤務時間・在籍期間のほか、薬剤師認定制度認証機構が認証している研修認定制度等の研修認定を取得していること、医療に係る地域活動の取組に参画していることが含まれます。
かかりつけ薬剤師の算定要件の詳細は、以下の記事にまとめています。
認定で磨いた「患者さんを総合的に見る力」が活きるのは、制度の要件を満たした後の中身の部分です。
残薬の確認、受診の勧め、生活の変化への気づきなど、同じ薬剤師が継続して関わるほど、認定で学んだ視点が成果につながります。
薬剤師の求人を探す在宅訪問での関わり
在宅訪問では、患者さんの自宅で薬の保管状況や飲み残し、飲み込みのしやすさを直接確認できます。 薬局のカウンターでは見えなかった生活の様子から、剤形の変更や一包化、服用時間の調整を医師に提案するきっかけが生まれます。
訪問看護師やケアマネジャー、ヘルパーと情報を共有しながら関わるため、多職種連携の力がもっとも試される場面です。 終末期の緩和ケアに関わることもあり、認定の研修で学ぶ在宅ケア・薬物治療・メンタルケアの領域がそのまま役立ちます。
地域の健康づくりの活動
学校薬剤師としての活動、薬物乱用防止の啓発、地域住民向けの健康講座なども、プライマリ・ケアの薬剤師が力を発揮できる場面です。 地域包括ケアの会議に参加し、薬の面から地域の課題を共有する薬剤師もいます。
薬局の認定制度と結びつけて考える人もいますが、法令上の基準とプライマリ・ケア認定薬剤師は別のものです。
どちらの基準にも特定の認定薬剤師の名称は書かれておらず、プライマリ・ケア認定薬剤師がいることは地域連携薬局・健康サポート薬局の要件ではありません。 認定で学んだ地域連携の視点は、こうした薬局で働くときの実務の質を高める力として活きます。
健康サポート薬局は、法改正により今後、認定制の「健康増進支援薬局」へ移行することが決まっています。
認定を取れば、薬局の加算や認定に直結するわけじゃないんだね!
参考:e-Gov法令検索「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則」 / 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定の概要【調剤】」
認定を受けるための要件と流れ

プライマリ・ケア認定薬剤師の新規認定は、研修開始届の提出から始まり、単位の取得、書類審査と筆記試験を経て認定されます。
申請できるのは日本の薬剤師資格を持つ人で、要件は学会の要綱・細則と、年度ごとの申請手引きで定められています。
研修開始の届け出
最初に「研修開始届出書」を学会事務局にメールで提出します。 届出は随時受け付けているため、新規申請の期間を待たず、研修を始めた時点で出せます。
研修開始届の記載内容が変わったときは、新しい届出用紙で変更を届け出る必要があります。 勤務先や連絡先が変わったら、早めに更新しておきましょう。
研修期間と必要な単位
新規認定に必要なのは50単位以上で、最初の研修単位を取得してから4年以内に申請しなければなりません。 学会主催の研修会や学術大会などの研修は、原則として90分で1単位です。
50単位のうち30単位以上は、学会主催の研修会や学会関連の指定講座で取得した「学会関連の単位」である必要があります。
ほかの認定制度の指定講座で取得した単位は20単位まで、e-ラーニングは学会主催分と指定分を合わせて15単位までしか使えません。
必須領域の単位
必須領域はAからJの10領域で、各2単位・計20単位の取得が必要です。
- A:プライマリ・ケアに関する知識と認定薬剤師の役割
- B:コミュニケーションスキル
- C:服薬指導・支援
- D:プライマリ・ケアにおける薬物治療
- E:生活習慣指導
- F:メンタルケア(自殺予防を含む)
- G:在宅ケア
- H:セルフメディケーション(OTC・健康食品・漢方薬)
- I:地域活動(薬物乱用防止・学校薬剤師・健康教育など)
- J:地域連携・チーム医療
研修会によって対象となる必須領域が決まっています。 1枚の受講証で使える必須領域は原則1領域のみで、特例として指定された受講証に限り2領域まで使えます。
見学実習
見学実習は、学会の認定医・専門医・指導医による外来診療や訪問診療を見学するもので、新規認定には8単位が必須です。 原則として半日で1単位のため、合計で半日×8回分の見学が必要になります。
受け入れ条件(人数・期間・内容)は医療機関ごとに異なり、施設によっては見学実習の費用がかかります。 申込みの条件は後ほど「取得前に確認したいこと」で紹介します。
書類審査と筆記試験
申請は年1回で、2026年度は7月1日から7月31日まで(消印有効)、書類は郵送のみの受付でした。 新規認定は書類審査と試験の両方で判定され、試験は記述式を含む筆記試験です。
申請時には審査料、合格後には登録料がかかります。 審査料の会員価格は、申請年の6月30日時点で学会員名簿に載っていることが条件で、入会申込日ではなく年会費の納入日が入会日として扱われます。
| 学会員 | 非会員 | |
|---|---|---|
| 審査料(申請時) | 10,000円 | 15,000円 |
| 登録料(合格後) | 10,000円 | 10,000円 |
| 認定までの合計 | 20,000円 | 25,000円 |
| 年会費(医師以外の正会員) | 10,000円 | なし |
審査料と登録料は、結果に関わらず返金されないよ
参考:日本プライマリ・ケア連合学会「プライマリ・ケア認定薬剤師 2026年度の新規申請手引き」 / 日本プライマリ・ケア連合学会「プライマリ・ケア認定薬剤師要綱 細則」
認定後の更新

プライマリ・ケア認定薬剤師の有効期間は3年で、3年ごとに更新が必要です。 更新しなかった場合は認定が取り消されます。
更新の周期と必要な単位
更新には、認定(または前回更新)から3年間で各年5単位以上・合計30単位以上の取得が必要です(2026年度更新申請手引きで2026年10月19日に確認)。 1年だけでまとめて取るのではなく、毎年コンスタントに研修を受け続ける前提の制度です。
単位の内訳にも、新規認定と同じように学会関連の単位や必須領域の条件があります。 更新の受付期間(7月中の郵送受付)と審査料は、新規申請と同じです。
薬剤師の求人を探す事例報告
更新では、単位に加えて5事例分の事例報告(活動報告を含む)を提出します。 珍しい事例である必要はなく、日常業務の中の事例でかまいません。
1事例あたりA4で2枚が基準で、1ページ半に満たないものや、個人が特定できる記載があるものは修正・再提出を求められることがあります。
同じ患者さんの事例を重ねない、ほかの薬剤師の報告をそのまま使わないといったルールもあります。
更新時に試験がないこと
更新は書類審査で判定され、新規認定のような筆記試験はありません。 その分、事例報告の中身が審査の中心になります。
日々の業務で「この患者さんへの関わりは事例になりそう」と感じたら、その時点で経過をメモしておきましょう。 3年目にまとめて思い出そうとすると、5事例をそろえるのに苦労しがちです。
特段の事情で期限までに更新できない場合は、更新保留を申請できます。保留期間中は認定薬剤師を名乗れないため、保留の条件は申請前に学会の手引きで確認しておきましょう。
試験がないなら、事例をコツコツためておけば大丈夫そう
参考:日本プライマリ・ケア連合学会「プライマリ・ケア認定薬剤師 2026年度の更新申請手引き」 / 日本プライマリ・ケア連合学会「プライマリ・ケア認定薬剤師更新時の事例報告(活動報告を含む)に関する説明」
取得前に確認したいこと

プライマリ・ケア認定薬剤師は論文発表が要件にない一方で、数年単位の研修期間と、学会関連の単位の確保が必要です。
働きながら無理なく続けられるかを、研修期間・単位の集めやすさ・ほかの認定との兼ね合いの3点で確かめておきましょう。
研修期間の長さ
研修期間の上限は4年ですが、見学実習には申込みの条件があるため、単位を集める順番も大切です。
2027年度の認定試験を受ける人向けの見学実習(2026年8月1日〜2027年7月31日)は、申込み時点で認定単位30単位を取得済みであることが条件です。
研修会で30単位を集めてから見学実習を申し込み、実習をしながら残りの単位をそろえて8月の試験に臨む流れです。 試験は年1回のため、30単位をそろえる時期が少し遅れるだけで受験が1年先になることもあり、研修開始から認定まで数年単位で計画しておくのが無難です。
学会関連の単位の集めやすさ
学会関連の単位は、学会主催の認定薬剤師研修会、年1回開かれる学術大会、学会のe-ラーニング、地方会や支部会などで取得します。
認定薬剤師研修会はオンライン開催も多い一方、先着順で定員があり、申込期間を逃すと次の回まで待つことになります。
休日に研修が続くと、家庭との両立がちょっと心配だよね
学会のe-ラーニングを受けるには会員番号が必要で、会員になると研修会の受講料や審査料も会員価格になります。 年会費(医師以外の正会員10,000円)とのバランスを見て、入会するかを決めるのがおすすめです。
研修会の多くは日曜・祝日に開かれるため、土日に休みを取りやすい職場かどうかも続けやすさを左右します。
30秒でかんたん登録!
無料で応募書類テンプレをプレゼント
ほかの認定薬剤師との併用
プライマリ・ケア認定薬剤師制度は、薬剤師認定制度認証機構から「特定領域」の認定制度(認証番号P02)として認証を受けています。
ほかの認証制度の研修のうち学会が指定した講座の単位は、新規申請で20単位まで使えるため、すでに別の認定薬剤師の研修を受けている人は、その一部を活かせる可能性があります。
ただし、受講証の重複使用はできず、ほかの認定申請に使った単位は使えません。 複数の認定を並行して目指す場合は、どの受講証をどの申請に回すかを最初に決めておくと、申請時に慌てずにすみます。
- 研修開始届は研修を始めた時点ですぐ出す
- 受講証はどの申請に使うか決めて保管する
- 事例になりそうな関わりはその都度メモする
興味のある認定の研修日程は、年度の初めにまとめて確認しておくと重なりを避けやすくなります。
参考:日本プライマリ・ケア連合学会「プライマリ・ケア認定薬剤師 2027年度見学実習 受入先情報提供申込」 / 日本プライマリ・ケア連合学会「プライマリ・ケア認定薬剤師研修会(2026年12月13日午前)オンライン開催案内」
まとめ
プライマリ・ケア認定薬剤師は、患者さんを総合的に見て、多職種と連携しながら地域で継続して支える力を認める認定です。 かかりつけ薬剤師としての対応や在宅訪問、地域の健康づくりの場面で、学んだ視点を活かせます。
この記事のポイント
- 役割の土台は近接性・包括性・継続性・協調性・責任性
- 新規は4年以内に50単位と見学実習8単位、筆記試験
- 更新は3年ごと、30単位と5事例の報告で試験なし
- 地域連携薬局やかかりつけの要件そのものではない
- 見学実習の申込みには30単位の取得が先に必要
まずは研修開始届を出し、学会の研修会スケジュールを確認するところから始めてみましょう。 在宅訪問や地域活動に力を入れている薬局で働くと、研修で学んだことを実践しやすく、事例報告の材料も集めやすくなります。


