理学療法士の残業は実際どれくらい?統計と現場の差・職場別の違い
定時で上がれる日もあるのに、月末には記録と計画書に追われて帰れない。そんな働き方をしていると、「理学療法士の平均残業時間は月5時間」という数字を見ても自分のことだとは思えません。
残業が生まれる業務の構造、職場ごとの差、そして残業代が正しく払われているかの確認方法まで整理してみました。
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理学療法士の平均残業時間

公的な統計で理学療法士の残業時間を調べると、厚生労働省の賃金構造基本統計調査で確認できます。
統計上の超過実労働時間数
令和7年の賃金構造基本統計調査(企業規模10人以上)では、理学療法士を含む職種区分の超過実労働時間数は1か月あたり5時間です。所定内実労働時間数は157時間で、集計対象となった労働者は約28万人います。
従業員1,000人以上の規模では8時間、100〜999人と10〜99人ではいずれも4時間となり、大規模法人だけが平均を押し上げています。
大学病院や大規模な急性期病院を抱える法人ほど、超過時間が長く記録されているということです。
この数字が理学療法士単独の値ではない理由
調査表に記載されている職種区分の正式名称は「理学療法士,作業療法士,言語聴覚士,視能訓練士」です。4つの職種をひとまとめにした区分で、理学療法士だけを抜き出した欄はありません。
集計対象の約28万人も4職種の合計であり、理学療法士の就業者数より多い人数です。作業療法士の作業活動を使った介入や言語聴覚士の嚥下訓練、視能訓練士の視機能検査は業務の中身も勤務形態も違うので、4職種を平均した5時間を理学療法士の実態として扱うことはできません。
同じ5時間を引用するなら、職種区分の正式名称と調査年、企業規模の区分を併記するのが正確です。
「理学療法士等」職種区分の内訳
えっ、5時間って4職種をまとめた数字なの?
統計と現場の実感が合わない理由
もう一つの理由は、この統計が数えているのが勤務先が把握している超過実労働時間、つまり給与計算の対象になった時間だという点です。申告していない残業は、どれだけ働いても統計には乗りません。
厚生労働省は労働時間の把握について、タイムカードやパソコンの使用記録など客観的な記録を基礎にするのが原則で、自己申告制に頼る場合は実態調査をして労働時間を補正すること、事業場内にいた時間との著しい乖離があれば補正することを求めています。
残業時間に上限を設けるなど、適正な申告を妨げる措置を講じてはならないことも示されています。裏を返せば、申告が実態に追いついていない職場が一定数あるという前提で作られたルールです。
加えて、日中の時間がリハビリの単位で埋まる構造があります。1単位は20分以上の個別療法で、担当する患者さんの数だけ時間枠が並びます。枠を埋めることが優先されると、記録や書類は枠の外、つまり終業後に押し出されていきます。
- 統計の5時間は「申告された残業」の平均
- 申告していない時間は統計にも給与にも反映されない
- 自己申告制でも、実態との乖離は補正されるべきもの
他の医療職との比較
同じ令和7年の調査で医療・福祉の主な職種を並べると、理学療法士を含む区分は医師の4分の1強、看護師より短い位置にあります。
夜勤や当直が制度として組み込まれていない職種なので、時間外に業務が伸びにくいという事情もあります。
ただしこの数字は4職種合算であり、職場によって中身が大きく違うことは変わりません。医師や看護師と違って交代制勤務の枠に縛られない分、残業が「記録や書類が終わっていないから残る」という形で出やすいのが理学療法士の特徴です。
参考:e-Stat「賃金構造基本統計調査 1 職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)」 / 厚生労働省「労働時間の適正な把握方法について教えて下さい。」
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理学療法士の残業が発生する原因

理学療法士の残業は、リハビリの実施そのものではなく、実施に付随する記録・書類・会議から生まれます。どれも診療報酬の算定に必要な業務で、省略できるものではありません。
カルテ・報告書の記録
1単位20分以上の個別療法を1日に何件も担当すると、患者さんの入れ替わりの合間に記録を書き切るのは難しくなります。評価の数値、実施した内容、反応、次回の方針を1件ずつ残す必要があり、記録が溜まったまま夕方を迎える日が出てきます。
病棟での情報収集やリスクの確認も記録と同じ時間帯に集中しがちです。午前の予約が始まる前に情報を取り、終業前に書く流れになると、前後が業務時間からはみ出します。
リハビリテーション総合実施計画書の作成
リハビリテーション総合計画評価料は、医師・看護師・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士などの多職種が共同してリハビリテーション計画を策定した場合に、患者1人につき1月に1回に限り算定できます。
つまり担当患者さんの人数分の計画書が、毎月1回ずつ必ず発生します。評価の数値を集め、目標を書き直し、他職種の確認を取る工程があるため、1件あたりの作業量も小さくありません。
- 策定者 医師・看護師・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士等の多職種が共同して計画を策定した場合に算定
- 算定頻度 患者1人につき1月に1回に限り算定
| 初回 | 2回目以降 | |
|---|---|---|
| 評価料1 | 300点 | 240点 |
| 評価料2 | 240点 | 196点 |
カンファレンスと情報共有
計画書は多職種が共同で策定することが算定の要件なので、カンファレンスは書類の前提として組み込まれています。ところが医師・看護師・リハビリ職の全員が揃う時間は限られ、リハビリの予定が入らない早朝や終業後に設定されやすいという事情があります。
退院前の調整や家屋評価の報告が加わる週は、カンファレンスの回数自体が増えます。
勉強会や症例検討会
院内の勉強会や症例検討会も、業務時間内に枠を取ると単位が削られるため終業後に回りがちです。発表が当番制になっている職場では、数か月に一度は資料作成の期間が通常業務に重なります。
学会発表や研究の準備
学会発表や論文の準備は、データの整理、抄録の執筆、スライド作成と工程が長く、締め切りが決まっています。職場が推奨する活動として扱われている場合は、どこまでが業務指示でどこからが個人の研究なのかが曖昧になりやすい領域です。
新人指導と実習生の指導
新人のフォローや臨床実習の指導は、自分の担当単位を消化しながら並行して進めます。実習生のレポート確認やフィードバックは患者さんの前ではできないため、指導にあてる時間はリハビリの枠の外に出ます。
実習指導者を任される時期は、通常の記録・書類に指導の分が上乗せされると考えておくと見通しが立てやすくなります。
記録とカンファで定時が溶けるの、よくあるよね
参考:厚生労働省「・診療報酬の算定方法(◆平成20年03月05日厚生労働省告示第59号)」
理学療法士の求人を探す職場による残業時間の違い

同じ理学療法士の資格でも、残業の出方は職場の機能で変わります。単位の取り方、書類の種類、診療時間の長さが施設ごとに違うためです。
急性期病院
入退院の回転が速く、1人の患者さんを担当する期間が短いため、情報収集と初回評価、そして退院時の報告が次々に発生します。全身状態の変動が大きい患者さんを扱うので、リハビリ前のリスク確認にも時間がかかります。
統計で従業員1,000人以上の規模だけ超過実労働時間が8時間と長かったことを踏まえると、大学病院や大規模な急性期病院を含む層で残業が長めに記録されていると読めます。カンファレンスや委員会活動が多いのもこの層の特徴です。
回復期リハビリテーション病棟
入院期間が長く担当患者さんが固定されるため、日中の単位は安定して埋まります。急性期のように新規の情報収集に追われる場面は少なく、1日の流れは読みやすい職場です。
その代わり、定期的な機能評価と計画の見直しが決まった周期で回り続けます。残業の量は読みやすいけれどゼロにはなりにくいという出方になります。
クリニック・整形外科
外来のみのクリニックは、診療時間が夜まで設定されていることがあり、終業時刻そのものが遅くなります。昼休みが長く夕方の診療が19時台まで続く形だと、拘束時間の長さが残業の感覚につながります。
一方で入院患者さんがいないため、病棟カンファレンスや退院調整の書類はありません。書類は少なく、診療時間が長いという組み合わせになります。
介護老人保健施設・デイサービス
介護保険のサービスなので、診療報酬の単位を積み上げる働き方とは組み立てが違います。個別機能訓練の記録や計画の更新はありますが、医療機関ほど短い周期では回りません。
送迎の有無と行事の準備が残業の要因になりやすく、行事前の週だけ忙しくなるという波の出方をします。終業時刻が17時台に設定されている施設も多く、日々の残業は短めです。
訪問リハビリ
1日の訪問件数と移動時間で勤務が組まれます。訪問の合間に記録を書ける働き方なら持ち帰りは起きにくく、直行直帰が認められていれば移動と残業の感覚も変わります。
逆に訪問件数が詰まっていて事業所に戻って記録する運用だと、帰所後の時間が残業になります。報告書の提出先が主治医やケアマネジャーに分かれる点も、書類量に影響します。
訪問リハビリ 残業が分かれる分岐
職場タイプ別 求人数・給与・残業の出方
| 職場 | 求人件数 | 月給中央値 | 終業時刻の傾向 | 書類量 |
|---|---|---|---|---|
| 急性期病院 | 819件 | 251,425円 | 入退院対応・カンファレンスで業務が集中しやすい | 初回評価・退院報告書が次々発生 |
| 回復期リハ病棟 | 日中の枠が埋まり書類が終業後に残りやすい | 計画書・定期評価が担当者数分まとまって発生 | ||
| クリニック | 999件 | 285,000円 | 夕方の診療が19時台まで続き遅めになりやすい | 病棟カンファ・退院調整の書類はなく少ない |
| 介護老人保健施設等 | 558件 老健 777件 デイサービス | 260,000円 老健 262,750円 デイサービス | 17時台で終業する施設も多く短め | 個別機能訓練の記録はあるが短い周期では回らない |
| 訪問リハビリ | 1,983件 | 300,000円 | 直行直帰か帰所後に記録するかで運用次第 | 提出先が主治医・ケアマネジャーに分かれる |
※求人件数・月給中央値は急性期病院と回復期リハ病棟で「病院」区分として同一集計
残業代が正しく支払われているかの確認

残業そのものより問題になりやすいのが、働いた分が賃金に反映されていないケースです。理学療法士の職場で論点になりやすい3つの扱いを押さえておきましょう。
みなし残業(固定残業代)の扱い
時間外労働や深夜労働の割増賃金を、あらかじめ定額の手当として支給する制度を定額残業制(固定残業制)といいます。
求人票で「みなし残業20時間分を含む」と書かれているのがこれです。
この仕組みには条件があります。基本給に含めて支払う場合は割増賃金相当部分とそれ以外の賃金部分を明確に区別する必要があり、就業規則などに残業手当の定額払いであることを明記しなければなりません。
そして、実際の残業時間から計算した割増賃金が定額を超えたときは、その差額を支払う義務があります。
- 基本給と残業手当が給与明細で区別されているか
- 手当が何時間分の残業に相当するか示されているか
- 定額を超えた月に差額が支払われているか
勉強会・研修は労働時間にあたるか
判断の軸は、使用者の指揮命令下にあったかどうかです。業務上参加が義務づけられている研修や、上司の指示で業務に必要な学習をしていた時間は労働時間に当たります。
逆に、業務上義務づけられていない自由参加の勉強会であれば労働時間には当たりません。ただし不参加が減給処分の対象になっていたり、参加しないと業務が回らないなど事実上参加を強制されている場合は労働時間として扱われます。
「自主的な勉強会」という名称かどうかではなく、参加しない選択が現実にできるかどうかで見ます。
名前が自主参加でも、断れないなら労働時間だよ!
持ち帰り仕事の扱い
記録や計画書を自宅で仕上げる、いわゆる持ち帰り仕事も、使用者の指示で業務に従事していた時間であれば労働時間です。厚生労働省のガイドラインは、休憩や自主研修と報告されていても、指揮命令下に置かれていた時間は労働時間として扱わなければならないとしています。
自宅で作業した日は、日付と時間、何をしたかを自分の手元に残しておきましょう。業務用の端末を使えばログが残りますが、紙の書類を持ち帰った場合は記録が何も残らないまま時間だけが消えます。
相談できる窓口
まずは職場の上司や事務部門に確認するのが順序ですが、話が進まない場合は外部の窓口が使えます。
各都道府県労働局や労働基準監督署内に設置されている総合労働相談コーナーは全国378か所あり、予約不要・無料で専門の相談員が面談または電話で対応します。
賃金の引下げや解雇、いじめ・嫌がらせまで労働問題全般を扱い、法律違反の疑いがある場合は関係部署に取り次いでくれます。助言・指導やあっせんの案内もあるので、いきなり争うのではなく状況を整理する相談先として使えます。
総合労働相談コーナーの利用条件
参考:厚生労働省「基本給に含めた割増賃金って何?」 / 厚生労働省「総合労働相談コーナーのご案内」
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残業を減らすためにできること

転職しなくても手を打てる部分があります。理学療法士の残業は記録と書類に集中するので、その処理の仕方を変えるだけで帰れる時間が変わります。
記録を業務時間内に組み込む
単位の予定を詰めすぎると記録の時間が消えます。午前と午後にそれぞれ記録用の枠を確保し、その枠には患者さんの予約を入れない運用にすると、持ち帰りが減ります。
記録を書くタイミングを担当した直後に固定するのも効果があります。後でまとめて書こうとすると内容を思い出す時間が加算され、1件あたりの所要時間が伸びてしまいます。
書類のテンプレートを整える
計画書や報告書は項目が決まっているので、評価の記載順や定型文を自分用のひな形にしておくと作成時間が縮みます。疾患や病期ごとに数パターン用意しておけば、ゼロから文章を考える工程をなくせます。
部署で共有すれば新人の作成時間も短くなり、指導にかかる時間も一緒に減ります。
単位数の配分を見直す
1日の単位が特定の時間帯に偏っていると、そこで記録が詰まります。予約枠を組むときに担当者ごとの単位を時間帯で平らにするだけでも、終業前の渋滞は緩みます。
計画書の算定が月1回であることを踏まえ、担当患者さんの作成期限を月内に分散させるのも有効です。期限が同じ週に固まっていると、その週だけ残業が集中します。
※配分の考え方を示した模式図
部署内で業務分担を見直す
委員会活動、勉強会の運営、実習指導、備品管理といった業務は、担当が一部の人に集まりやすいものです。誰が何を抱えているかを一覧にして棚卸しすると、偏りが目に見えます。
個人の工夫で吸収できる量を超えているなら、人員配置や予約枠の設計そのものを上司に相談するのが現実的です。記録の時間が確保できていないという事実は、単位数の実績と記録の所要時間を示せば説明しやすくなります。
理学療法士の求人を探す残業の少ない職場の見つけ方

職場を変える判断をするなら、求人票・面接・見学の3段階で確認する内容を分けておくと、入職後のずれを小さくできます。
求人票で確認する項目
まず見るのは終業時刻と、みなし残業の有無です。基本給の中に残業代が含まれているかどうかで、同じ月給でも実際の時間単価が変わります。
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終業時刻診療時間が夜まで続く外来中心の職場かどうかが分かる
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みなし残業何時間分が含まれるか、超過分の支払いが明記されているか
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休憩時間の長さ昼休みが長い職場は終業時刻が後ろにずれやすい
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年間休日・完全週休2日休日出勤で振替が必要になる頻度の手がかり
- 「残業ほぼなし」は6,409件のうち1,162件(18%)
- 「17時退社」945件・土日祝休み986件(各15%)
- 年間休日120日以上は1,475件(23%)
面接で確認する質問
残業時間を直接聞くより、業務の回り方を聞いたほうが実態が見えます。「記録はいつ書いていますか」「計画書は誰がどのタイミングで作成しますか」という質問なら、答えの中に業務時間内で処理できているかどうかが表れます。
勉強会やカンファレンスについては、開催時間と参加の扱いをあわせて聞くと判断材料になります。実習指導や委員会の担当がどう割り振られているかも、入職後の上乗せ業務を見積もるのに役立ちます。
面接で聞くと分かること
見学で確認するポイント
見学は夕方に設定をお願いするのがおすすめです。終業時刻の前後にスタッフが何をしているかを見れば、記録が業務時間内に収まっているかが分かります。
リハビリ室にパソコンが何台あるか、スタッフの人数に対して足りているかも確認したいところです。記録用の端末が不足している職場では、順番待ちがそのまま残業になります。
予約表の埋まり方や、スタッフ同士が引き継ぎをしている時間帯の様子も見ておきましょう。
まとめ
理学療法士の平均残業時間として広く引用されている月5時間は、賃金構造基本統計調査の「理学療法士,作業療法士,言語聴覚士,視能訓練士」という4職種をまとめた区分の値です。しかも企業規模1,000人以上では8時間、それ以下では4時間と差があり、申告された残業だけを数えた数字でもあります。
残業の中身は記録・計画書・カンファレンスに集中します。これらは診療報酬の算定に必要な業務なので、減らすには記録の時間を業務時間内に確保する、書類のひな形を整える、単位の配分と期限を分散させるといった組み立ての見直しが効きます。
働いた時間が賃金に反映されていない疑いがあるなら、みなし残業の区別と差額の支払い、勉強会の労働時間性、持ち帰り仕事の扱いを確認してみましょう。


