柔道整復師の欠格事由とは?4つの項目と該当した場合の扱いを解説
過去に罰金を払ったことがある、通院歴がある。
そうした事情から、柔道整復師の免許は取れないのではないかと不安になる人がいます。柔道整復師の欠格事由は柔道整復師法第4条に4つ定められていますが、条文は「免許を与えないことがある」という書き方で、該当したら自動的に免許が下りない仕組みにはなっていません。
この記事では、4つの事由の中身、該当したときに何がどう判断されるのか、免許取得後に該当した場合の扱い、そして国家試験の受験資格との違いまで、条文と厚生労働省の通知をもとに整理します。
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柔道整復師の欠格事由とは?

欠格事由は、免許を与えないことがある事情として法律に並べられた項目です。柔道整復師については柔道整復師法第4条に4つ定められています。ここで押さえておきたいのは、これが免許に関する規定であって、国家試験の受験資格とは別の制度だという点です。
柔道整復師法に定められた事由
欠格事由を定めているのは柔道整復師法第4条です。柱書と4つの号で構成されています。
条文に書かれているのはこの4つだけで、これ以外の経歴や属性を理由に免許を与えないとする規定は置かれていません。
「相対的欠格事由」であること
第4条の語尾は「免許を与えないことがある」であって、「免許を与えない」ではありません。該当する事情があっても、そこで不許可が決まるのではなく、厚生労働大臣が免許を与えるかどうかを個別に判断します。このように、該当し得るというだけで当然に免許が与えられないわけではない規定を、相対的欠格事由と呼びます。
厚生労働省の施行通知でも、精神の機能の障害により該当し得る場合について、必要に応じて診断書を作成した医師に障害の程度・内容を確認したうえで、厚生労働省の担当者と同省が選任した非常勤の専門家が共同で、認知・判断・意思疎通を適切に行えるかを個別に判断するとされています。
- 「欠格事由に該当する=免許が取れない」ではありません
- 条文が定めているのは、免許を与えないことが「ある」という扱いです
- 該当し得る事情があっても、申請自体はできます
絶対的欠格事由との違い
資格制度によっては、該当すれば必ず免許が与えられない「絶対的欠格事由」が置かれています。医師法第3条の「未成年者には、免許を与えない」がその形です。
柔道整復師法には、この型の条文がありません。第4条の4つはいずれも「免許を与えないことがある」の下に並んでおり、柔道整復師については相対的欠格事由だけが定められています。
絶対的欠格事由 と 相対的欠格事由
参考:e-Gov法令検索「柔道整復師法」 / 厚生労働省「障害者等に係る欠格事由の適正化等を図るための医師法等の一部を改正する法律の施行について〔柔道整復師法〕」
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それぞれの事由の内容

4つの事由は、条文がどう書かれているかと、どのような場合が想定されるかを分けて読むと整理しやすくなります。
心身の障害により業務を適正に行うことができない場合
第4条第1号が委任している厚生労働省令は、柔道整復師法施行規則第1条です。ここでは「精神の機能の障害により柔道整復師の業務を適正に行うに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者」と定められています。
「心身の障害」の規定が見ているもの
要するに、障害があること自体が該当の理由になるのではなく、業務にあたって必要な認知・判断・意思疎通を適切に行えるかどうかで見る規定です。しかも判断の時点で治療によって状態が軽減していれば、その状況が考慮されます。
麻薬・大麻・あへんの中毒
第2号の文言は「麻薬、大麻又はあへんの中毒者」です。中毒の状態にある人を指す書き方で、過去に使用歴があることそのものを対象にした条文ではありません。
免許の申請では、精神の機能の障害または麻薬・大麻・あへんの中毒者であるかないかに関する医師の診断書を添えることになっています(施行規則第1条の3第2項第3号)。第2号に該当するかどうかは、この診断書をもとに確認される形です。
なお、覚醒剤は第2号の文言に入っていません。ただし覚醒剤取締法違反で刑に処せられれば、次の第3号で扱われることになります。
罰金以上の刑に処せられた場合
第3号は「罰金以上の刑に処せられた者」です。刑法第9条は主刑を死刑・拘禁刑・罰金・拘留・科料の順に定め、第10条第1項でこの順序が刑の軽重だとしています。つまり「罰金以上の刑」とは罰金・拘禁刑・死刑を指し、罰金より軽い拘留と科料は含まれません。
もうひとつの特徴は、第3号が罪の種類を限定していないことです。柔道整復の業務と関係のない犯罪でも、罰金以上の刑に処せられていれば文言上は含まれます。
交通違反については、罰金と反則金が混同されやすい部分です。反則行為として通告を受け、期限内に反則金を納付した場合は公訴を提起されない仕組みなので(道路交通法第128条第2項)、反則金の納付は罰金刑ではありません。
一方、反則の対象にならない違反などで略式命令を受けて罰金を納めた場合は罰金刑です。
業務に関し犯罪または不正の行為があった場合
第4号は「前号に該当する者を除くほか、柔道整復の業務に関し犯罪又は不正の行為があつた者」です。第3号(罰金以上の刑)に当たらない場合を受ける規定で、刑事罰に至っていなくても、柔道整復の業務に関する不正行為であれば対象になり得ます。療養費の不正請求などが想定される範囲です。
同じ「業務に関し犯罪又は不正の行為」でも、どこまでを指すかは資格ごとに書き分けられています。
「業務に関し犯罪又は不正の行為」の範囲(資格別)
| 資格(根拠条文) | 条文の文言 |
|---|---|
| 柔道整復師柔道整復師法 第4条第4号 | 「柔道整復の業務に関し犯罪又は不正の行為があつた者」 |
| 医師医師法 第4条第4号 | 「医事に関し犯罪又は不正の行為のあつた者」 |
| あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律 第3条第4号 | 「第一条に規定する業務に関し犯罪又は不正の行為があつた者」 |
参考:e-Gov法令検索「柔道整復師法施行規則」 / e-Gov法令検索「道路交通法」
柔道整復師の求人を探す該当すると免許が取れない?

第4条に当たる事情があっても、そこで手続きが終わるわけではありません。厚生労働大臣が免許を与えるかどうかを決める過程があり、申請者の側が事情を示す場面も用意されています。
情状などを勘案して判断される
判断の材料になるのは、申請時に提出する書類です。罰金以上の刑に処せられたことがある場合、免許の申請では判決謄本または略式命令書、罰金の領収証書、反省文、略歴書を添えることになっています。反省文や略歴書まで求められるのは、刑に処せられたという事実だけでなく、事案の内容やその後の状況まで見て判断するためです。
精神の機能の障害についても、施行規則第1条の2で治療等により障害の程度が軽減している状況を考慮するよう定められており、診断書の記載内容をもとに個別に見られます。いずれも、一律に線を引くのではなく事情を踏まえる作りになっています。
- 「該当するかもしれない」段階で、進学や受験をやめる必要はありません
- 条文を読んでも結論は出ません。判断材料を揃えて窓口に当たるほうが早いです
- 問い合わせた日付・相手・聞いた内容をメモに残しておくと、その後の手続きが進めやすくなります
判断の手続き
柔道整復師の免許は、国家試験に合格した者に対して厚生労働大臣が与えるものです(柔道整復師法第3条)。実際には柔道整復師名簿への登録によって免許が行われ、免許証が交付されます(第6条)。
名簿の登録事務は、指定登録機関として厚生労働大臣が指定した公益財団法人柔道整復研修試験財団が担っています。
申請を受けて、第4条に該当すると認められる場合にどうするかは、第7条に手続きが置かれています。
意見を述べる機会
第7条は、厚生労働大臣が免許を申請した者について第4条第1号(心身の障害)に該当すると認め、免許を与えないこととするときは、あらかじめ申請者にその旨を通知し、その求めがあったときは厚生労働大臣の指定する職員に意見を聴取させなければならない、と定めています。
柔道整復師法第7条 意見聴取までの流れ
読み方で注意したいのは次の2点です。
-
対象が限られる条文上この手続きが定められているのは第4条第1号の場合で、第2号から第4号には同じ規定が置かれていません
-
本人の求めが要る通知は必ず行われますが、意見の聴取は申請者が求めたときに行われる仕組みです
免許を与えないという通知が届いた段階で、黙っていると意見を述べないまま手続きが進むことになります。通知を受け取ったら、求めができる期間や方法をその場で確認しておくと安心です。
参考:e-Gov法令検索「柔道整復師法」 / 公益財団法人柔道整復研修試験財団「2.柔道整復師免許証の登録事務」
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免許取得後に該当した場合

免許を取った後に第4条の事由に当たるようになったときの扱いは、柔道整復師法第8条に定められています。処分の種類も手続きも、医師や看護師とは並びが違います。
免許の取消しと業務の停止
第8条第1項は、柔道整復師が第4条各号のいずれかに該当するに至ったときは、厚生労働大臣がその免許を取り消し、または期間を定めて業務の停止を命ずることができる、と定めています。条文に置かれている処分は「免許の取消し」と「業務の停止」の2種類だけです。
医師法第7条第1項と保健師助産師看護師法第14条第1項には、これに加えて「戒告」があり、業務の停止も「三年以内」と上限が定められています。柔道整復師法には戒告がなく、業務停止の期間の上限も条文には書かれていません。
業務の停止を命じられた期間中に業務を行った場合は、30万円以下の罰金と定められています(第30条第1号)。
処分が決まるまでの流れ
医師の場合、医師法第7条第3項で処分の前に医道審議会の意見を聴かなければならないと定められています。柔道整復師法には、これに当たる規定がありません。柔道整復師法で医道審議会が出てくるのは第12条第2項、受験資格の基準を定めるときだけです。
では手続きがないのかというと、そうではありません。免許の取消しも業務の停止も行政庁による不利益処分なので、行政手続法が適用されます。同法第13条第1項は、処分の種類によって意見を述べるための手続きを振り分けています。
- 期日までに相当な期間をおいて書面で通知される(第15条)
- 期日に出頭して意見を述べ、証拠書類等を提出できる
- 原因となる事実を証する資料の閲覧を求められる
- 原則として弁明書の提出による(第29条)
- 行政庁が認めたときは口頭で弁明できる
どちらの手続きでも、予定される処分の内容と原因となる事実があらかじめ書面で知らされます。処分が決まる前に反論する機会が、制度として用意されているということです。
再免許の可能性
第8条第2項は、免許を取り消された者であっても、取消しの理由となった事項に該当しなくなったとき、その他その後の事情により再び免許を与えることが適当と認められるに至ったときは、再免許を与えることができると定めています。
ここでも医師・看護師との違いが出ます。医師法第7条第2項と保健師助産師看護師法第14条第3項には、罰金以上の刑などを理由に取り消された場合について「処分の日から起算して五年を経過しない者を除く」という期間の制限があります。柔道整復師法第8条第2項には、この期間の制限が置かれていません。
なお、免許の取消しや業務の停止の処分に関する事項、再免許を受けた場合はその旨が、柔道整復師名簿に登録されます(施行規則第2条第4号・第5号)。
参考:e-Gov法令検索「柔道整復師法」 / e-Gov法令検索「行政手続法」
柔道整復師の求人を探す心配な場合はどうすればいい?

自分の状況が第4条に当たるかどうかは、条文を読んでも判断できません。確認できる相手は決まっているので、段階に応じて当たるのが妥当です。
養成校に相談する
進学前や在学中なら、まず養成校です。養成校は毎年、卒業生の免許申請を扱っているため、手続きの実際を把握しています。
入学前であれば入試相談の窓口やオープンキャンパスで聞けます。ただし、免許を与えるかどうかを決めるのは学校ではありません。学校で「大丈夫」と言われたことが、そのまま免許の可否になるわけではない点は分けて考えましょう。
申請先に確認する
免許の登録事務は、指定登録機関である公益財団法人柔道整復研修試験財団が行っています。申請書の請求先も照会先も同財団で、手続きや提出書類について直接確認できる窓口です。
免許を与えるかどうかを決めるのは厚生労働大臣なので、財団が可否を判断するわけではありません。それでも、どの書類をどう整えて出すかは財団に聞くのが確実で、自己判断で進学や申請をあきらめる前にひと声かけておく価値があります。
申請時に必要となる書類
新規登録の申請書と診断書は、財団が配付するものを使います。基本の書類に加えて、事情に応じて添付が増えます。
- 判決謄本または略式命令書
- 罰金以上の刑にかかる領収証書
- 反省文(様式自由)
- 略歴書
判決謄本や領収証書は、手元にないと取り寄せに時間がかかる書類です。必要になりそうなら、申請の直前ではなく早めに揃えはじめると余裕をもって進められます。書類の種類や様式は変わることがあるため、申請する時点で財団の案内を確認しましょう。
参考:公益財団法人柔道整復研修試験財団「2.柔道整復師免許証の登録事務」 / e-Gov法令検索「柔道整復師法」
今のあなたの状況は?
欠格事由に関するよくある誤解

欠格事由の情報は、他の資格の話や古い解説と混ざって伝わりがちです。進路の判断を左右しやすい3つを取り上げます。
受験自体ができないという誤解
欠格事由は第4条、つまり免許の章に置かれた規定です。国家試験の受験資格は第12条第1項で、指定された学校または養成施設で3年以上修得したことだけを条件にしています。第4条に当たる事情があっても、受験資格を満たしていれば国家試験は受けられます。
受験が止まる規定がないわけではありませんが、内容は別です。第13条は、試験に関して不正の行為があった場合に、その不正行為に関係のある者の受験を停止させ、または試験を無効とできると定めたもので、第4条とは対象が違います。
一度該当すると生涯取得できないという誤解
第3号の「罰金以上の刑に処せられた者」には、いつまでという期間が書かれていません。ここだけ見ると一生ついて回ると読めますが、条文の柱書は「免許を与えないことがある」です。該当し得ることと、免許が下りないことは別です。
免許を取った後に取り消された場合も同じで、第8条第2項に再免許の規定があり、しかも医師や看護師にあるような5年の期間制限が置かれていません。柔道整復師法は、制度として道が閉じる書き方になっていません。
他の医療系資格と同じ規定だという誤解
欠格事由に並ぶ4つの項目は資格をまたいで似ていますが、処分や再免許の規定は資格ごとに違います。
欠格事由と処分規定の比較(柔道整復師・医師・看護師)
| 観点 | 柔道整復師 | 医師 | 看護師 |
|---|---|---|---|
| 絶対的欠格事由 | なし | あり(医師法第3条、未成年者には免許を与えない) | なし |
| 処分の種類 | 免許の取消し・業務の停止の2種類(柔道整復師法第8条第1項) | 戒告・医業の停止・免許の取消しの3種類(医師法第7条第1項) | 戒告・業務の停止・免許の取消しの3種類(保健師助産師看護師法第14条第1項) |
| 業務停止期間の上限 | 条文に定めなし | 三年以内 | 三年以内 |
| 再免許の期間制限 | なし(柔道整復師法第8条第2項) | 処分の日から5年(医師法第7条第2項) | 処分の日から5年(保健師助産師看護師法第14条第3項) |
| 処分前の医道審議会への意見聴取 | 法律に規定なし | あり(医師法第7条第3項) | あり(保健師助産師看護師法第15条第1項) |
法改正の情報も混ざりやすい部分です。2019年(令和元年)に成立した「成年被後見人等の権利の制限に係る措置の適正化等を図るための関係法律の整備に関する法律」により、成年被後見人・被保佐人を一律に資格から排除する欠格条項が多くの法律から削除されました。
医療分野では医療法・医師法・歯科医師法などが対象です。柔道整復師法第4条にはもともとこの規定がなく、この改正の対象にも入っていません。
参考:e-Gov法令検索「医師法」 / 参議院「成年被後見人等の権利の制限に係る措置の適正化等を図るための関係法律の整備に関する法律案」
まとめ
柔道整復師の欠格事由は柔道整復師法第4条の4項目で、いずれも「免許を与えないことがある」という相対的欠格事由です。該当し得る事情があっても、そこで結論が決まるのではなく、提出書類や診断書をもとに厚生労働大臣が個別に判断します。
免許取得後に該当した場合の処分は免許の取消しと業務の停止の2種類で、再免許に期間の制限は置かれていません。
自分のケースが該当するかどうかは、条文からは判断できません。進学前なら志望校、免許申請の段階なら公益財団法人柔道整復研修試験財団と、聞く先は決まっています。不確かな情報で進路をあきらめる前に、確認できるところに当たってみましょう。


