社会人が看護師になる最短ルート|学歴別の選択肢と費用
社会人から看護師を目指すとき、最短ルートは「3年制の看護師養成所」と紹介されることがほとんどです。
ただ、免許を手にするまでに実際かかる年数は、在学期間だけでは決まりません。入学試験の準備、学費の工面、そして入学時期が原則として年1回であることが、スタートラインに立つまでの時間を大きく左右します。準備が間に合わなければ、次のチャンスは1年後になります。
この記事では、看護師免許を取得する4つのルートを保健師助産師看護師法の条文までさかのぼって整理し、高校卒業・大学卒業・中学校卒業といった学歴別に選べる道、そしてかかる費用と使える支援制度を条件まで含めてまとめます。
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「最短」を決める前に押さえること

看護師になるまでの総期間は、受験準備の期間+在学期間+国家試験までの3つを足したものです。在学年数だけを比べても、実際にいつ働き始められるかは見えてきません。
在学期間だけでは決まらない
看護師養成の課程は、入学が原則として年1回の4月です。願書の受付は前年の秋から冬にかけて始まるため、志望校を決めて出願書類をそろえるまでに間に合わなければ、在学年数が何年であっても丸1年遅れます。
国家試験も年1回、2月に行われます。多くの人は卒業見込みで受験し、3月の合格発表を経て4月から働き始める流れです。
第115回(令和8年)の看護師国家試験は、受験者59,614人に対し合格者52,666人で合格率88.3%でした。ただし新卒者に限ると受験54,036人・合格50,862人で合格率94.1%、そこから逆算した新卒以外の受験者は5,578人・合格1,804人で3割程度にとどまります。
- 在学中に一度で合格する前提で計画を立てる
- 卒業後に持ち越すと合格率が大きく下がる
- 入学・受験ともに年1回なので、遅れは1年単位になる
受験準備にかかる期間
必要な準備量は、受験する学校の種類と入試方式で変わります。社会人入試を設けている学校では小論文と面接が中心になる一方、一般入試では国語・数学・英語・生物などの学科試験が課されます。高校を出てから時間が空いているほど、学科試験型は準備に時間がかかります。
学校選びの判断材料として、定員の埋まり方も見ておきたいところです。看護師養成所(3年課程)の定員充足率は、平成20年度の96.7%から令和7年度は79.5%まで下がりました。一方で看護大学(3年課程)は99.7%と、ほぼ定員どおりです。
3年課程全体の受験者数も平成27年度の204,120人から令和7年度は141,234人へ減り、養成所分に限れば87,217人から32,135人と3分の1近くまで縮んでいます。
養成所は以前より入りやすくなっている反面、定員割れの続く課程は募集停止に進むことがあります。都道府県への調査では2025年以降に廃止が予定されている課程が94あり、志望校の募集が続くかどうかも確認しておくと安心です。
学費を準備する期間
厚生労働省が令和6年度に行った社会人向けの調査では、20〜49歳の2,448人のうち17.2%(421人)が看護師などの資格取得に興味があると答えました。
障壁として挙がったのは学費・時間・体力で、支援制度を十分に把握していない例が多いことも示されています。
資格取得への興味の有無(社会人2,448人)
学費の準備期間は、お金を貯める期間だけを指すわけではありません。
教育訓練給付のように受講開始前に手続きが必要な制度もあり、申請時期を逃すと入学できても給付が受けられません。志望校を絞るのと並行して、どの制度が使えるかを先に洗い出しておきましょう。
参考:厚生労働省「第1回 2040年に向けた看護職員の養成・確保の在り方に関する検討会:資料」 / 厚生労働省「第112回保健師国家試験、第109回助産師国家試験及び第115回看護師国家試験の合格発表」
看護師の求人を探す看護師免許を取得するルート

看護師国家試験を受けられる人は、保健師助産師看護師法第21条で定められています。
社会人が現実的に選べるのは、次の4つのどれかです。
看護師養成所(専門学校など・3年課程)
都道府県知事が指定した看護師養成所を卒業するルートです(同法第21条第3号)。多くは専門学校・専修学校の形をとっており、一般的に「看護専門学校」と呼ばれる学校がこれにあたり、入学資格は高等学校の卒業などです。
修業年限は3年以上。教育内容は保健師助産師看護師学校養成所指定規則の別表三に定められ、臨地実習23単位以上を含む102単位以上を修めます。3年で国家試験の受験資格に届くため、高校を卒業している社会人にとっては在学期間が最も短い選択肢になります。
看護短期大学
文部科学大臣が指定した学校で3年以上学ぶルートです(同法第21条第2号)。修業年限は3年で、卒業すると短期大学士の学位が得られます。
学校教育法第108条第7項により、短期大学の卒業者は大学に編入学できます。将来的に学位取得を目指したい場合の足がかりになりますが、看護系の短期大学は数が限られており、通える範囲にあるとは限りません。
看護大学
文部科学大臣が指定した大学で必要な学科を修めて卒業するルートです(同法第21条第1号)。修業年限は4年で、在学期間は最も長くなります。
大学によっては、看護師に加えて保健師や助産師の国家試験受験資格を選択制で得られる課程を置いています。定員充足率が99.7%と埋まっているため、養成所に比べると入試の競争は厳しめです。
准看護師を経てから進学する
准看護師は都道府県知事の免許で、医師・歯科医師・看護師の指示を受けて業務を行う資格です(同法第6条)。准看護師養成所の入学資格は中学校の卒業などで、修業年限は2年以上、教育内容は指定規則の別表四で臨地実習735時間を含む1,890時間と定められています。
准看護師から看護師になるには、2年課程(進学課程)に進みます。ここで、最終学歴と課程の選び方によって必要な実務経験が変わります。
准看護師から2年課程へ進学する条件
通信制の要件は指定規則で「5年以上」と定められています。以前の7年から短縮されているので、古い情報のまま7年と書かれた解説に注意しましょう。2年課程の教育内容は臨地実習16単位以上を含む68単位以上です。
看護師になる4つのルート比較
| ルート | 在学年数 | 入学資格 | 根拠条文 |
|---|---|---|---|
| 看護大学 | 4年 | 高等学校卒業等(大学入学資格) | 保助看法第21条第1号 |
| 看護短期大学 | 3年 | 高等学校卒業等(大学入学資格) | 保助看法第21条第2号 |
| 看護師養成所 | 3年以上 | 高等学校卒業等(大学入学資格) | 保助看法第21条第3号 |
| 准看護師を経て進学 | 2年以上 | 准看護師免許(3年以上業務従事、または高校卒業後の准看護師) | 保助看法第21条第4号 |
- まず「大学入学資格があるか」で入口が決まります
- 准看護師ルートは、最終学歴で必要な実務年数が変わります
- 通信制の要件は5年。7年と書かれた古い情報に注意を
参考:e-Gov法令検索「保健師助産師看護師法」 / e-Gov法令検索「保健師助産師看護師学校養成所指定規則」
【学歴別】選べるルートの違い

同じ「最短ルート」でも、いま持っている学歴によって選べる道が変わります。
自分に該当する欄だけ見れば、検討すべき選択肢は2つか3つに絞れます。
高校を卒業している場合
学校教育法第90条第1項の大学入学資格を満たすため、4つのルートすべてが選べます。在学期間が最も短いのは3年課程の養成所または短期大学で、免許取得まで3年です。
高等学校卒業程度認定試験(高卒認定)の合格者も同じ扱いになります。高校を中退した人は、まず高卒認定を取ることで3年課程が視野に入ります。
大学を卒業している場合
看護系大学の3年次編入学を使えば、在学2年で国家試験の受験資格に届く場合があります。ただし編入学を実施している大学は限られ、募集人数も少数です。「大卒なら2年で取得できる」と一般化はできないので、志望校の募集要項で実施の有無と出願資格を確認しましょう。
編入学の枠が取れない場合は、3年課程の養成所に入るのが現実的です。前の大学で修めた一般教養科目が既修得単位として認定されることもありますが、認定するかどうかは学校ごとの判断になります。
大学卒業後に働いて雇用保険に加入していた期間があるなら、後述する専門実践教育訓練給付金の要件を満たしやすい立場です。
中学校を卒業している場合
3年課程には大学入学資格が必要なため、直接は進めません。取れる道は2つです。
- 准看護師養成所(2年)で免許を取り、3年以上働いてから2年課程へ進む
- 高卒認定試験に合格し、3年課程の養成所や短期大学に入る
准看護師を経るルートは、働きながら学べる代わりに免許取得まで合計7年かかります。学費を働きながら賄いたい場合は有力ですが、期間だけを見るなら高卒認定を経由したほうが短くなります。
収入面の差も判断材料になります。令和7年賃金構造基本統計調査によると、推計年収は看護師が約524万円(平均42.1歳)、准看護師が約427万円(平均51.8歳)でした。
准看護師のほうが平均年齢は10歳近く高いにもかかわらず、年収は約97万円低くなっています。准看護師で止めるか看護師まで進むかで、長い目で見た収入は大きく変わります。
他の医療系資格を持っている場合
保健師助産師看護師法で受験資格の短縮が認められているのは准看護師だけです。介護福祉士・保育士・救急救命士などを持っていても、法律上は3年課程を最初から履修することになります。
とはいえ実務経験が無駄になるわけではありません。社会人入試では前職の経験が評価の対象になりますし、大学や養成所によっては以前に修めた科目を既修得単位として認定する制度があります。認定される単位数は学校ごとに違うため、出願前に問い合わせて確認しておきましょう。
| いまの学歴 | 入口になる課程 | 最短の在学期間 |
|---|---|---|
| 高校卒業 | 看護師養成所・看護短期大学(3年課程)/看護大学(4年) | 3年3年課程に入学した場合 |
| 大学卒業 | 看護大学の3年次編入学(実施校は限られる)/3年課程 | 2年編入できなければ3年 |
| 中学校卒業 | 准看護師課程(2年)→2年課程/高卒認定→3年課程 | 7年高卒認定経由なら3年+準備期間 |
| 他の医療系資格 | 高校卒業の場合と同じ(法律上の短縮は准看護師のみ) | 3年3年課程に入学した場合 |
参考:e-Gov法令検索「学校教育法」 / e-Stat「賃金構造基本統計調査 1 職種(小分類)別きまって支給する現金給与額,所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額」
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働きながら看護師を目指せるのか

結論から言うと、全日制に通いながら収入を維持するのは難しい時期があります。
ただし課程の選び方によって、その影響を小さくすることはできます。
全日制の通学の実態
3年課程で必要な臨地実習は、受け入れ先の病院の日勤帯に合わせて行うため、平日の昼間に連日入るのが基本です。実習期間中は記録の作成やカンファレンスもあり、夕方以降の時間も削られます。
そのため、全日制に通いながらフルタイムで働き続けるのは現実的ではありません。アルバイトを組めるのは講義中心の期間に限られると考えて、収支の計画を立てておくのが無難です。
学年別 実習・講義の構成イメージ(全日制3年課程)
※学校・カリキュラムにより異なります。実習の配置は年度や診療科ごとのスケジュールによって変わるため、入学後に各校の年間計画で確認してください。
専門学校の学習量は想像より多いと感じる人が多いです。実習の記録・事前学習・カンファレンスの準備が重なる時期は、仕事をしていたころより自由な時間が少なくなる時期もあります。
定時制・通信制という選択
夜間の課程を置く学校もあり、その場合は修業年限が4年に設定されていることがあります。
ただし臨地実習は昼間に行われるため、実習期間だけは日中の勤務を外す必要があります。
通信制の2年課程は、前述のとおり准看護師として免許取得後5年以上働いた人だけが入学できます。授業は印刷教材などによる学習と面接授業が中心で、臨地実習も印刷教材等による授業・面接授業・病院の見学という形で行われると指定規則に定められています。
通学の負担は軽い一方、准看護師免許と5年の実務経験が前提なので、これから資格を目指す人がいきなり選べる道ではありません。
看護師の求人を探すかかる費用と支援制度

学費は学校の設置主体によって何倍も開きます。
総額だけを見て諦める前に、給付と貸与でどこまで下げられるかを合わせて考えたいところです。
学校種別の学費の目安
国立大学の授業料は文部科学省令で標準額が定められており、年額535,800円・入学料282,000円です。4年間では約243万円になります。
私立大学は、文部科学省の調査で学部の系統別に集計されています。看護学科が含まれる「保健」区分の令和7年度の初年度納付金は1,496,580円(授業料996,030円・入学料257,732円・施設設備費242,818円)でした。2年目以降は入学料が不要なので、4年間の合計はおよそ521万円という水準になります。私立大学全体の平均1,380,983円より高めです。
専門学校(養成所)には全国共通の学費調査がありません。都道府県立や医師会立の養成所は私立大学より低く抑えられている例が多い一方、同じ3年課程でも学校によって差が大きいため、志望校の募集要項で実額を確認するのが確実です。授業料のほかに実習費・教科書代・ユニフォーム代がかかる点も見落とされがちです。
学校種別の学費目安(4年間)
公的な給付制度
看護師・准看護師の養成課程は、雇用保険の専門実践教育訓練給付金の対象です。受講費用の50%から始まり、資格取得と就職、さらに賃金の上昇という条件を満たすごとに給付率が上がります。
専門実践教育訓練給付金の給付率
利用するには雇用保険の被保険者期間が3年以上(初めて利用する場合は2年以上)必要で、在職中か離職後1年以内であることも条件です。令和6年度に初回の支給を受けたのは看護師養成課程で3,304人、准看護師養成課程で494人でした。
離職して学校に通う場合は、教育訓練支援給付金も検討できます。失業状態にあり、受講開始時に45歳未満であるなどの要件を満たすと、初めて専門実践教育訓練を受ける人に支給されます。ただし通信制・夜間制は対象外です。
転職活動するなら?
勤務先の支援制度を使う方法
病院が修学資金を貸し付け、卒業後に自院で一定年数勤務すれば返還を免除する仕組みは広く使われています。
看護助手や准看護師として働きながら進学を目指す人が使いやすい制度です。
都道府県にも同様の制度があります。東京都の看護師等修学資金は、月25,000円・50,000円・75,000円・100,000円のいずれか1口を貸与し、卒業後の勤務先と勤務年数に応じて返還が免除されます。
仕組みは「条件ごとに決まった上限額×貸与月数」まで免除されるという形で、貸与月額が上限を超えていた分は返還します。長く、より条件の厳しい施設で働くほど免除される枠が広がります。
| 従事先と年数 | 免除される上限(月あたり) | 全額免除になる貸与月額 |
|---|---|---|
| 都内施設に5年間従事 | 50,000円 | 25,000円の口 |
| 指定施設に5年間従事 | 75,000円 | 25,000円・50,000円の口 |
| 指定施設に7年間従事 | 100,000円 | 4つの口すべて |
※貸与月額が上限を超えていた分は、免除されず返還の対象になります
- 免除の判定は原則として卒業直後の就職先で決まる
- 中途退学したときや、免除の条件を満たさなかったときは返還義務が生じる
- 勤務先の奨学金と自治体の修学資金を併用すると、卒業後の勤務地・年数の条件が重なる
ひとり親の場合は、こども家庭庁が所管する高等職業訓練促進給付金の対象になります。
看護師・准看護師は対象資格に含まれ、訓練期間中は月額10万円(住民税課税世帯は70,500円)が支給され、最後の1年間は4万円が増額されます。修了後には修了支援給付金5万円(課税世帯は25,000円)も支給されます。
要件は児童扶養手当の支給を受けているか同等の所得水準にあること、養成機関で6か月以上修業することなどです。
- 准看護師の求人は6,747件、月給中央値は287,000円
- 職場別の中央値は訪問看護315,000円、病院297,000円
- 働きながら2年課程を目指す人の収入の目安になります
修学資金・奨学金と返還免除
日本学生支援機構の奨学金には、返還不要の給付型と、無利子の第一種・有利子の第二種があります。文部科学省の高等教育の修学支援新制度を使えば、授業料等の減免と給付型奨学金を組み合わせられますが、学校が制度の対象校として確認を受けていることが前提になります。志望校が対象かどうかは出願前に確かめておきましょう。
修学資金の返還免除は、前述のとおり卒業後の勤務先と勤務年数で決まります。制度ごとに条件が違うため、複数を併用するときは条件を一覧にして並べてみるのが確実です。「A病院に5年」と「県内の指定施設に7年」が重なると、卒業後の働き方の自由度はかなり狭くなります。
在学中の収入をどうするか
学費とは別に、在学中の生活費を見積もる必要があります。実習期間はシフトが組めないため、年間を通して安定した収入を当てにするのは難しくなります。
入金のタイミングにも差があります。修学資金や奨学金は月ごとに振り込まれる一方、教育訓練給付金は受講費用を払った後の支給です。入学金と初年度授業料は自分で立て替える前提で、手元資金を用意しておきましょう。
准看護師の免許を先に取ってから2年課程に進むルートなら、准看護師として働きながら学費を賄えます。在学期間は長くなりますが、貯蓄を取り崩さずに進める点は大きな違いです。
参考:文部科学省「私立大学等の入学者に係る学生納付金等調査結果について」 / 厚生労働省「教育訓練給付金」
まとめ
社会人が看護師を目指すときの「最短」は、在学年数だけでは測れません。入学も国家試験も年1回で、準備が間に合わなければ1年単位で遅れます。受験準備・学費の工面・在学期間の3つを足した総期間で見積もることが、計画を崩さない第一歩です。
学歴別に整理すると、高校を卒業していれば3年課程が最短、大学を卒業していれば編入学で2年に短縮できる可能性があり、中学校卒業なら高卒認定を経由する道と准看護師から進む道の2択になります。他の医療系資格を持っていても法律上の短縮はありませんが、社会人入試や既修得単位の認定で負担を減らせることがあります。
費用面では、専門実践教育訓練給付金で受講費用の最大80%が戻る可能性があり、ひとり親には高等職業訓練促進給付金があります。修学資金を使う場合は、返還免除の条件と満たせなかったときの扱いまで確認してから申し込みましょう。
免許を取った後の働き方は、病院の病棟だけではありません。訪問看護や高齢者施設、企業や学校など、選べる場は年々広がっています。
まずは次の3つを並べて比べるところから始めてみましょう。
- 通える範囲にある学校の課程(3年課程・2年課程・大学)と入試方式
- 出願の締切と、いま準備が間に合うかどうか
- 使える給付・貸与の制度と、返還免除がかかる条件


