特別養護老人ホームの機能訓練指導員の役割は?業務内容と配置の実際

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特別養護老人ホーム(特養)の機能訓練指導員は、人員基準で「一以上」と定められた職種です。

他の職種と違い、入所者数に応じて人数を増やす規定はありません。一人ひとりに時間をかけて個別訓練を重ねる働き方とは、業務の組み立て方が大きく変わります。

この記事では、特養における機能訓練指導員の役割を、配置基準と対象資格、入所者さんの状態を前提とした目標の立て方、介護職員への助言、看取り期の関わり、加算に関わる業務まで順に整理します。

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特養における機能訓練指導員の位置づけ

特別養護老人ホームの外観と青空

特養は介護保険法上の「介護老人福祉施設」にあたり、入所する要介護者さんに対して、入浴・排せつ・食事等の介護その他の日常生活上の世話、機能訓練、健康管理、療養上の世話を行う施設と定められています。

機能訓練はこの4本柱のひとつとして法律に書かれた業務であり、機能訓練指導員はその担い手として人員基準に置かれた職種です。

配置に関する基準

指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第39号)第2条第1項第5号は、機能訓練指導員の員数を「一以上」と定めています。

特養の人員基準 職種別の配置人数
職種配置基準(員数)入所者数に応じた上乗せ
医師健康管理・療養上の指導に必要な数なし
生活相談員入所者の数が100又はその端数を増すごとに1以上あり
介護職員又は看護職員総数が常勤換算で、入所者の数が3又はその端数を増すごとに1以上あり
栄養士又は管理栄養士1以上なし
機能訓練指導員1以上なし
介護支援専門員1以上(入所者の数が100又はその端数を増すごとに1を標準)あり

介護職員・看護職員や生活相談員には入所者数に比例して増やす規定がありますが、機能訓練指導員には人数の上乗せ規定がありません。入所定員が100人を超える施設でも、基準を満たすだけなら1人で足ります。

なお、ここでの入所者の数は前年度の平均値を使います。常勤換算方法は、従業者の勤務延時間数の合計を、その施設で常勤の従業者が勤務すべき時間数で割って算出します。

1週間の所定労働時間が32時間を下回る場合は、32時間を基本として計算します。

他の職務との兼務が認められていること

同基準第2条第8項は、機能訓練指導員について「当該指定介護老人福祉施設の他の職務に従事することができる」と定めています。専従を求める規定ではないため、看護職員や生活相談員として勤務しながら機能訓練指導員を兼ねる形が制度上認められています。

さらに解釈通知では、入所者さんの日常生活やレクリエーション、行事等を通じて行う機能訓練指導について、その施設の生活相談員または介護職員が兼務して行っても差し支えないとされています。

つまり、機能訓練指導員の資格を持つ人が行う訓練と、生活の場面のなかで行われる機能訓練指導とを、制度は分けて考えています。

機能訓練指導、担当できるのは誰か
① 機能訓練指導員が行う訓練 評価・計画に基づく個別の訓練など ② 生活場面での 機能訓練指導 生活相談員・介護職員も兼務で担当可 (日常生活・レクリエーション・行事等)
機能訓練指導員(有資格者)が行う訓練
担当:理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護職員・柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師等、機能訓練指導員に配置される資格を持つ人
日常生活やレクリエーション、行事等を通じて行う機能訓練指導
担当:施設の生活相談員または介護職員が兼務して行っても差し支えない(解釈通知)

兼務が認められているのは人員基準を満たすうえでの話です。後述する個別機能訓練加算を算定する場合は、専従・常勤の要件が別に課されます。

機能訓練指導員になれる資格

解釈通知は、第2条第7項にいう「訓練を行う能力を有すると認められる者」を、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、看護職員、柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師の資格を有する者としています。看護職員には看護師と准看護師が含まれます。

これに加えて、平成30年度の介護報酬改定で、一定の実務経験を有するはり師・きゅう師が対象に加わりました。ここでいう一定の実務経験とは、上記6資格のいずれかを持つ機能訓練指導員を配置した事業所で6月以上勤務し、機能訓練指導に従事した経験を指します。

機能訓練指導員になれる資格
理学療法士
作業療法士
言語聴覚士
看護師
准看護師
柔道整復師
あん摩マッサージ指圧師
はり師・きゅう師
はり師・きゅう師のみ、上記6資格のいずれかを持つ機能訓練指導員を配置した事業所で6月以上勤務し、機能訓練指導に従事した実務経験がある場合に限り対象となる

はり師・きゅう師の免許だけでは、いきなり機能訓練指導員として配置されることはできません。6月以上の機能訓練指導の実務経験が先に必要です。転職前に、前職での従事内容を証明できるか確認しておきましょう。

通所介護との違い

通所介護は、利用者さんが居宅での生活を続けられるように通ってくるサービスです。利用は週に数回、1日のうち数時間に限られ、その時間内で入浴・食事・機能訓練を提供します。対して特養は入所者さんの生活の場そのものであり、24時間365日の暮らしが施設の中で完結します。

通所介護なら利用時間内にどんな訓練を組むかが主題になりますが、特養では、限られた訓練の時間よりも、朝起きてから夜眠るまでの生活の組み立て方のほうが入所者さんの状態に影響します。

参考:e-Gov法令検索「指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準」厚生労働省「指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準について」

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入所者の状態を前提に考える

介護施設の居室に置かれたベッドと車いす

特養の機能訓練指導員の役割は、業務を並べるだけでは見えてきません。目の前にいる入所者さんがどういう状態の人なのか、そこから逆算したほうが、何を目標に置くべきかが整理できます。

入所の要件と要介護度

介護保険法の改正により、平成27年4月1日以降、特養への入所は原則として要介護3以上の方に限定されています。要介護1・2の方については、居宅で日常生活を営むことが困難なやむを得ない事由がある場合に限り、特例入所が認められます。

さらに基準省令第7条第1項は、特養のサービス対象を「身体上又は精神上著しい障害があるために常時の介護を必要とし、かつ、居宅においてこれを受けることが困難な者」と定めています。

制度の入口の段階で、常時の介護を必要とする状態の方が集まる仕組みになっているわけです。

特養の入所要件と要介護度
対象者の定義(基準省令第7条第1項)
身体上又は精神上著しい障害があるために常時の介護を必要とし、かつ、居宅においてこれを受けることが困難な者
判断ポイント
要介護3以上か(平成27年4月1日以降)
YES(要介護3以上)原則どおり特養に入所できる
NO(要介護1・2)居宅での日常生活が困難なやむを得ない事由がある場合に限り、特例入所が認められる

生活の場であるという前提

入所者さんは施設で暮らしています。機能訓練指導員が直接関わるのは1日のうちごく一部で、残りの時間は介護職員や看護職員が支える生活の中にあります。

そのため、訓練の時間だけを切り出して考えると、施設全体での効果は大きく変わりません。座る時間をどれだけ確保できているか、食事の姿勢はどうか、車椅子のクッションは合っているか。

こうした日常の場面の積み重ねのほうが、入所者さんの状態を左右します。訓練を設計する仕事であると同時に、生活の場面を設計する仕事でもあると捉えると、業務の優先順位をつけやすくなります。

目標の立て方が変わること

基準省令第17条は、特養が入所者さんに対して行う機能訓練を「日常生活を営むのに必要な機能を改善し、又はその減退を防止するための訓練」と定めています。改善だけでなく、減退の防止も制度上の目的として明記されている点が重要です。

実際の目標は、次のように幅を持ちます。

機能訓練の目標が持つ4つの方向
1
できる動作を増やす
起き上がり、立ち上がり、移乗など
2
今できている動作を保つ
現在の状態を維持し続ける
3
低下の速さをゆるやかにする
機能が落ちるペースを抑える
4
痛みや不快感を減らす
安楽な姿勢をとれるようにする
目標にできる方向のうち、動作を新たに増やすものは1つだけです。

機能の向上だけを目標に置くと、状態が変わらない、あるいは少しずつ低下していく入所者さんに対して、成果が出ていないという評価になってしまいます。維持や苦痛の軽減も達成すべき目標として計画に書き込んでおくと、多職種で評価を共有しやすくなります。

家族への説明

ご家族から「リハビリをしてほしい」という希望が出ることは少なくありません。ここでずれが生じやすいのは、介護保険上の位置づけが異なるためです。

通所リハビリテーションは、主治の医師が治療の必要の程度について基準に適合すると認めた方に対して行う、理学療法・作業療法その他必要なリハビリテーションと定義されています。

一方、特養で提供する介護福祉施設サービスは「機能訓練」であり、医師の指示に基づくリハビリテーションとは制度上の位置づけが異なります

「リハビリ」と「機能訓練」は介護保険上の位置づけが別です。同じ言葉で受け取られたままにすると、提供内容への期待と実際にずれが残ります。

説明するときは、できないことを並べるより、施設で何をどのくらい行っているかを具体的に伝えるほうが伝わります。

加えて、目標が改善だけではないこと、現在の状態を保つことも計画に含まれていることを、計画書の内容に沿って共有しておくと、後の認識のずれを減らせます。

参考:厚生労働省「指定介護老人福祉施設等の入所に関する指針について」e-Gov法令検索「介護保険法」

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直接行う機能訓練

手すりとベッドが並ぶ機能訓練室

機能訓練指導員が入所者さんに直接関わる場面は、訓練室での運動に限りません。生活の動作そのものが訓練の対象になるため、居室やフロアでの関わりが中心になります。

直接行う機能訓練 場面別の視点
目標臥床時間を短くすること
あわせて検討する環境ベッドの高さ/手すりの位置/寝具の硬さ
検討する移乗の場面ベッド⇔車椅子、車椅子⇔トイレ
評価する場所歩行・車椅子自操は、実際に使うフロアなど生活場所で評価
食事座位姿勢と自助具が合っているか
排せつトイレへの移動と便座への移乗、困難な箇所を分けて見る
入浴浴槽をまたぐ動作、シャワーチェアへの移乗
関節可動域可動域を保つための運動
ポジショニング姿勢の保ち方、クッションの当て方
内容体操・レクリエーション
目的離床の機会と活動量の確保
注意点個別機能訓練加算の対象訓練とは別物

離床と起き上がり

臥床時間が長くなると、体力の低下だけでなく、覚醒の低下や食事量の減少にもつながります。ベッドから離れる時間をどう確保するかは、特養の機能訓練の出発点にあたる部分です。

起き上がりでは、どこまで自分で行えるかを場面ごとに見極めます。ベッドの高さ、手すりの位置、寝具の硬さといった環境要因で結果が変わることも多いため、動作の練習と環境の調整をセットで検討します。

離床の目標時間は、疲労や血圧の変動も見ながら、介護職員や看護職員と共有できる形で決めておくと運用しやすくなります。

移乗と移動

移乗は、入所者さんにとっても介助する職員にとっても負担の大きい動作です。ベッドから車椅子、車椅子からトイレといった場面ごとに、どの方法が安全かを検討します。

移動については、歩行の練習だけでなく、車椅子の自操をどこまで行えるかも評価の対象になります。フロアの動線、床材、段差の有無によって、同じ能力でも実際にできることは変わります。評価は訓練室ではなく、実際に移動する場所で行うほうが実態に合います

食事・排せつ・入浴に関わる動作

食事では、座位姿勢の安定、テーブルと椅子の高さ、自助具の適合を見ます。姿勢が崩れていると、飲み込みにくさや食事量の低下につながることがあるため、看護職員や管理栄養士と情報を共有しながら調整します。

排せつでは、トイレまでの移動と、便座への移乗、衣服の上げ下ろしのどこに困難があるかを分けて評価します。入浴では、浴槽をまたぐ動作やシャワーチェアへの移乗が中心です。いずれも介護職員が毎日介助している場面なので、実際の介助を見せてもらったうえで方法を検討すると、現場で続けられる形になります。

拘縮や廃用の予防

常時の介護を必要とする方が多い特養では、関節可動域の制限や筋力低下の予防が業務の中で大きな比重を占めます。可動域の運動に加えて、車椅子やベッド上での姿勢の保ち方、クッションの当て方といったポジショニングの検討が含まれます。

拘縮が進むと、着替えやおむつ交換の負担が増え、痛みの原因にもなります。予防に関わる内容は、機能訓練指導員が直接行う回数よりも、日々の介助のなかで実践される回数のほうがはるかに多くなります。ここが次の章で扱う助言・指導につながる部分です。

集団で行う活動

体操やレクリエーションは、離床の機会をつくり、活動量を確保する手段として有効です。ただし、集団体操と、個別機能訓練加算の対象となる訓練は別のものです。加算の対象は、入所者さんごとに作成した個別機能訓練計画に基づいて計画的に行う訓練を指します。

集団活動を実施する場合は、活動量の確保なのか、交流なのか、離床の習慣づけなのか、目的を決めておくと記録や計画の整理がしやすくなります。

業務内容として「マッサージ」を挙げている情報を見かけますが、あん摩・マッサージ・指圧を業として行うには、あん摩マッサージ指圧師の免許が必要です。行える範囲は各自の免許によって決まります。判断に迷う行為があれば、施設の管理者や都道府県の担当窓口に確認しておくと安心です。

参考:e-Gov法令検索「あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律」

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介護職員への助言と指導

スクラブや白衣を着た職員が集まる勉強会の様子

特養の機能訓練指導員の役割のうち、実務上もっとも比重が大きくなりやすいのが、介護職員への助言と指導です。直接訓練を行う時間より、こちらに割く時間のほうが長くなる施設も珍しくありません。

間接的な関わりが中心になる理由

理由は人数の構造にあります。令和6年の調査では、介護老人福祉施設で働く機能訓練指導員は全国で12,794人。同じ施設で働く介護職員は299,123人でした。

特養で働く機能訓練指導員 資格別内訳
12,794
看護師30.5%
理学療法士20.9%
准看護師20.5%
作業療法士11.7%
柔道整復師8.6%
あん摩マッサージ指圧師4.3%
言語聴覚士2.6%
はり師・きゅう師0.9%

これを1施設あたりに置き換えると、機能訓練指導員の人数に対して入所者さんの人数がどれだけ多いかが見えてきます。

1施設あたりの人員構造(令和6年調査)
1.5
機能訓練指導員
66.5
在所者(平均)
70.4
定員
94.5%
利用率

1人の機能訓練指導員が向き合う入所者さんは数十人規模です。全員に毎日20分ずつ関わることは、時間の制約から現実的ではありません。

そこで効いてくるのが、介護職員が日常的に行っている介助の質です。移乗が1日に何回あり、おむつ交換が何回あり、食事が3回ある。その一つひとつの方法が変われば、機能訓練指導員が直接関わる時間よりも大きな影響が入所者さんの状態に及びます。

間接的な関わりが中心になるのは、担当者の力不足ではなく、制度と人数の構造がそうさせているという理解が出発点になります。

ポジショニングと介助方法

助言の中心になるのは、褥瘡と拘縮の予防、そして安全な移乗です。

  • 車椅子・ベッド上での姿勢の保ち方とクッションの当て方
  • 身体を起こす前に体をゆるめる手順
  • 移乗時に持つ位置と、入所者さん自身に力を出してもらう場面
  • 食事中の座位姿勢と足底の接地
  • おむつ交換時の下肢の動かし方

ポジショニングは、方法を伝えるだけでは定着しにくい領域です。どのクッションをどの向きで使うのかまで具体的に決め、写真や図で残しておくと、勤務帯が変わっても同じ方法を続けやすくなります。

福祉用具や環境の調整

車椅子の座面の高さ、フットサポートの位置、クッションの種類、ベッド周りの手すりの向き、トイレの手すりの位置。これらは入所者さんの動作に直結しますが、日々の介助のなかでは見直しの機会を持ちにくい部分でもあります。

機能訓練指導員が定期的に確認して調整する仕組みをつくっておくと、転倒や褥瘡のリスクを下げられます。用具が合っていないために、できるはずの動作ができていない入所者さんは少なくありません

伝え方の工夫

助言が現場で続くかどうかは、伝え方でかなり変わります。

助言を現場で定着させる5ステップ
1
専門用語を使わず、動作の目的を短い言葉で伝える
2
口頭だけで終わらせず、実際にやって見せる
3
一度に多くを変えず、優先順位の高い1つに絞る
4
居室やベッドサイドに図・写真を掲示して、勤務帯をまたいで共有する
5
記録に残し、次の申し送りで結果を確認する

もう1つ大切なのが、関係の築き方です。介護職員はすでに自分の方法で介助を続けており、そこに外から指摘が入る形になると、受け止められにくくなります。

指導する立場というより、一緒に質を高める相手として関わる姿勢が求められる場面です。

介護職員の負担にも関わること

適切な介助方法の共有は、入所者さんのためだけのものではありません。持つ位置や体の使い方が変われば、介助する職員の腰や肩への負担も減ります。

この視点を添えて伝えると、助言が受け入れられやすくなります。入所者さんのために変えてくださいと言うよりも、この持ち方のほうが腰への負担が軽くなりますと伝えたほうが、実際に試してもらいやすくなるためです。

職員の負担軽減は離職の防止にもつながるため、施設全体にとっても意味のある関わりだといえます。

参考:厚生労働省「令和6(2024)年介護サービス施設・事業所調査の概況」

看取り期の関わり

高齢者の手をそっと握る様子

特養は生活の場であり、入所者さんの最期に立ち会う場面があります。この局面で機能訓練指導員に何ができるのかは、実際に働くうえで避けて通れない論点です。

積極的な訓練が適さない時期があること

看取り介護加算は、医師が一般に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがないと診断した入所者さんについて、その旨を本人またはご家族に説明し、その後の療養方針についての合意を得たうえで、医師・看護職員・介護職員等が共同して支援する場合に算定されるものです。

この段階では、離床時間を延ばす、歩行距離を伸ばすといった目標は適しません。何を続け、何をやめるのかの判断が必要になります。判断の軸は施設の方針と医師の診断にあり、機能訓練指導員が単独で決める領域ではありません。

この時期にできること

積極的な訓練が適さない時期でも、機能訓練指導員の関わりがなくなるわけではありません。

看取り期の役割分担
機能訓練指導員ができること
体位の調整と、圧が集中しない姿勢の検討
関節拘縮による痛みや不快感をやわらげる関わり
ベッド上で楽に過ごせるクッションの当て方
ご家族が付き添いやすい姿勢・環境の整え方
看護職員・医師に委ねること
回復の見込みがないという医学的診断と看取り介護加算算定の判断
療養方針についての合意形成
痛みの原因が医療的なものかどうかの判断

いずれも生活の質に直結する部分です。ただし、痛みの原因が医療的なものかどうかの判断は、看護職員や医師と共有する必要があります。姿勢を変えたときの表情の変化や、触れたときの反応といった観察した事実を具体的に伝え、判断は医療職に委ねる形が基本になります。

多職種で共有すること

看取り期の方針は、施設内で共有されていなければ意味を持ちません。どの姿勢が楽そうだったか、どの時間帯に落ち着いていたかといった情報は、次の勤務帯に引き継がれて初めて役に立ちます。

方針とその根拠、実際に行った関わりと反応は記録に残します。記録は、ご家族への説明の材料にもなり、職員間で判断がぶれたときの拠り所にもなります。

関わる側の負担

看取りに関わることは、精神的な負担を伴います。担当していた入所者さんが亡くなる経験が続くと、自分の関わりが正しかったのかと考え込んでしまうこともあります。

こうした負担は個人の努力だけで処理できるものではありません。施設として、看取り後に多職種で振り返る機会があるか、相談できる相手がいるかは、応募前に確認しておきたい項目のひとつです。

面接で確認しておきたいこと


  • 看取りに関わる職員への支援体制があるか
  • 看取り後に多職種で振り返る機会を持っているか
  • 看取り期の方針を共有する仕組みがあるか

参考:厚生労働省「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(短期入所サービス及び特定施設入居者生活介護に係る部分)及び指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項について」

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加算に関わる業務

電卓をはじいて計算する手元

機能訓練指導員の業務は、算定する加算の要件と直結します。特養の加算は通所介護と要件が異なるため、デイサービスでの経験をそのまま当てはめると誤解のもとになります。ここでは令和6年度介護報酬改定時点の内容で整理します。

個別機能訓練加算

介護福祉施設サービスの個別機能訓練加算は、(Ⅰ)から(Ⅲ)までの3区分に分かれています。

個別機能訓練加算 特養(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)の違い

項目 加算(Ⅰ) 加算(Ⅱ) 加算(Ⅲ) 通所介護(Ⅰ)
単位数 1日につき12単位 1月につき20単位 1月につき20単位 1日につきイ56単位・ロ76単位
配置要件 専従常勤の理学療法士等1名以上(入所者100人超の施設はさらに常勤換算方法で入所者数÷100以上を追加配置) (Ⅰ)の配置要件を満たしたうえで算定 (Ⅰ)(Ⅱ)の配置要件を満たしたうえで算定 特養とは別に定められている
追加要件 個別機能訓練計画に基づく計画的な訓練 個別機能訓練計画書の情報を厚生労働省に提出し、フィードバックを計画の見直しに活用 (Ⅱ)に加え、口腔衛生管理加算(Ⅱ)と栄養マネジメント強化加算を算定し、機能訓練・口腔・栄養の情報を一体的に活用

算定の前提となるのは、機能訓練指導員、看護職員、介護職員、生活相談員その他の職種が共同して入所者さんごとに個別機能訓練計画を作成し、その計画に基づいて計画的に機能訓練を行っていることです。機能訓練指導員が1人で作る書類ではありません。

配置面の要件は、人員基準より厳しくなります。加算(Ⅰ)では、専ら機能訓練指導員の職務に従事する常勤の理学療法士等を1名以上配置していることが求められます。

さらに入所者数が100を超える施設では、専従・常勤の1名に加えて、常勤換算方法で入所者数を100で割った数以上を機能訓練指導員として配置する必要があります。

人員基準と加算要件の違い


  • 人員基準の「一以上」は兼務でも満たせる
  • 加算(Ⅰ)を算定するには専従・常勤の配置が要る
  • 入所者100人超の施設はさらに上乗せの配置が必要

加算(Ⅱ)は、加算(Ⅰ)を算定したうえで、入所者さんごとの個別機能訓練計画書の内容等の情報を厚生労働省に提出し、そのフィードバック情報を計画の見直しに活用することが要件です。加算(Ⅲ)は、加算(Ⅱ)に加えて口腔衛生管理加算(Ⅱ)と栄養マネジメント強化加算を算定し、機能訓練・口腔・栄養の情報を一体的に活用することが求められます。

関連する他の加算

機能訓練指導員が関わり得る加算は、個別機能訓練加算だけではありません。1月単位で算定するものと1日単位で算定するものが混在するため、区別して見ておく必要があります。

個別機能訓練加算以外の関連加算(単位数)
1月につき算定するもの
050単位100単位150単位200単位
ADL維持等加算(Ⅰ)
30単位
ADL維持等加算(Ⅱ)
60単位
生活機能向上連携加算(Ⅰ)
100単位
生活機能向上連携加算(Ⅱ)
200単位
1日につき算定するもの
030単位60単位90単位120単位
在宅復帰支援機能加算
10単位
若年性認知症入所者受入加算
120単位

生活機能向上連携加算は、外部のリハビリテーション専門職等と連携して入所者さんの状態を評価し、個別機能訓練計画を作成した場合に算定するものです。施設内に理学療法士等がいない場合でも、外部との連携で計画の質を確保できる仕組みとして用意されています。

どの加算を算定しているかは施設ごとに異なります。同じ特養でも、算定状況によって求められる書類の量や記録の頻度は変わるため、応募先がどの加算を算定しているかは確認しておきたい情報です。

参考:厚生労働省「指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準」厚生労働省「厚生労働大臣が定める基準」

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働くうえでの実際

チェックリストと書かれた紙とペン

制度上の役割が分かっても、実際に働くとなると気になるのは配置の人数や勤務条件です。求人票から読み取れる範囲と、確認しておきたい点を整理します。

一人配置と兼務の実情

前述のとおり、人員基準は「一以上」で、他の職務との兼務も認められています。その結果として、機能訓練指導員が1人だけという施設は珍しくありません。1施設あたりの平均人数も、一人配置の施設が一定数あることを示しています。

一人配置の場合、判断を相談できる同職種が施設内にいない状態になります。逆に、看護職員との兼務であれば医療的な視点を持ち込みやすい一方、機能訓練に割ける時間は短くなります。どちらが良いという話ではなく、自分がどちらの働き方を想定しているかを面接の段階ですり合わせておくことが大切です。

勤務時間と休日

特養は24時間稼働する施設ですが、機能訓練指導員の勤務は日勤帯が中心になることが多い職種です。ただし、看護職員として兼務する場合は、施設によって夜勤やオンコールの対象になることもあります。

労働時間の考え方自体は、他の職場と同じ労働基準法のルールが適用されます。

関連法令
労働時間・休日の原則(労働基準法)
労働時間の上限
1日8時間・1週40時間
休日の付与
毎週少なくとも1回、又は4週間を通じて4日以上

年間休日数や夜勤の有無は施設ごとに差があるため、求人票の記載と実際の運用を確認しておくと安心です。

求人票で確認したいこと

編集部からのアドバイス

求人票の職種欄が「機能訓練指導員(看護師)」のように資格名と併記されている場合は、その資格の業務を兼ねる前提での募集と考えておくと実態に近くなります。機能訓練に充てられる時間がどのくらいあるのかは、面接で具体的に聞いておきましょう。

キャリアパートナー

特養は、どの資格で入職するかによって求人の数が大きく変わる職場です。医療キャリアナビ掲載求人データ(2026年時点)で、資格ごとの求人件数と月給の中央値を並べてみます。

特養 資格別 求人件数と月給中央値
正看護師1,171件
271,300
准看護師1,016件
269,450
理学療法士328件
255,000
作業療法士269件
255,700
柔道整復師266件
249,400
あん摩マッサージ指圧師159件
243,500
言語聴覚士108件
255,500
はり師・きゅう師61件
245,000

機能訓練指導員という職種単独の公的な給与統計は存在しないため、これは自社の求人データにもとづく目安です。資格によって求人数には大きな差がありますが、月給中央値の幅は3万円程度に収まっています

条件面のほかに、次の点を確認しておくと入職後のずれを減らせます。

  • 機能訓練指導員は何人配置されているか、兼務か専従か
  • 個別機能訓練加算を算定しているか、算定している場合は区分はどれか
  • 入所定員と現在の在所者数
  • 機能訓練室や訓練機器の有無と、実際に使われているか
  • 記録の方式(紙・システム)と、1日の記録に要する時間
  • 看取りに関わる機会の有無と、職員への支援体制

参考:e-Gov法令検索「労働基準法」

まとめ

特養の機能訓練指導員は、人員基準では「一以上」とだけ定められ、他の職務との兼務も認められた職種です。入所者数に比例して増える規定がないため、1人が数十人に向き合う構造になります。

そのなかで役割の中心になるのは、直接の訓練だけではありません。

  • 介護職員が日常的に行うポジショニングや移乗の方法への助言が、結果として入所者さんの状態を大きく左右する
  • 生活の場であるため、機能の向上だけでなく、状態を保つこと・低下をゆるやかにすること・苦痛を減らすことも目標になる
  • 看取り期は、医療的な判断を看護職員や医師と共有しながら、安楽な姿勢を検討する関わりが中心になる
  • 個別機能訓練加算の要件は通所介護と別建てで、加算(Ⅰ)を算定するなら専従・常勤の配置が要る

応募前に確認したい3点


  • 機能訓練指導員の配置人数と、兼務か専従か
  • 算定している加算と、その区分
  • 看取りに関わる機会と、職員への支援体制

この3点が分かると、同じ「特養の機能訓練指導員」という求人でも、実際の業務の重心がどこにあるかを比べられます。求人票の記載だけで判断せず、見学や面接の場で実際の運用を聞いてみましょう。

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医療キャリアナビ編集部

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記事の執筆・編集は、医療業界に精通した編集スタッフが担当しています。日々の転職支援業務で得た現場のリアルな情報と、厚生労働省をはじめとする公的機関のデータに基づき、信頼性の高いコンテンツをお届けしています。

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