皮膚・排泄ケア認定看護師になるには?資格取得方法や魅力点を解説
「患者さんの生活を支えるために、もっと深い専門知識と技術を身につけたい。」
そんな思いを抱えている看護師さんにとって、皮膚・排泄ケア認定看護師は大きなキャリアアップのチャンスとなる資格です。
皮膚や排泄に関する問題は、病院や医療施設で頻繁に発生する課題であり、そのケアを専門的に行う皮膚・排泄ケア認定看護師は重要な役割を担っています。
この記事では、皮膚・排泄ケア認定看護師の仕事内容や資格取得方法、メリット、皮膚・排泄ケア認定看護師に興味がある方へおすすめの研修について解説していきます。
皮膚・排泄ケア認定看護師とは?

皮膚・排泄ケア認定看護師は、患者の皮膚や排泄に関する問題を専門的にサポートし、最適なケアを提供するための認定資格を持つ看護師です。
WOC(ウォック)ナースとも呼ばれ、主に褥瘡(じょくそう)や皮膚障害、ストーマに関するサポート、尿失禁、便失禁などの排泄に関わる障害の予防・治療・ケアを行います。
WOCナースとは、創傷(Wound)、ストーマ(Ostomy)、失禁(Continence)ケアの専門家の皮膚・排泄ケア認定看護師のことを指します。
2024年12月時点で、全国で約2800名の皮膚・排泄ケア認定看護師が登録しています。(A過程、B過程含む)認定看護師の分野別では3番目に登録者が多い分野になります。
皮膚・排泄ケア認定看護師の仕事内容は?
皮膚・排泄ケア認定看護師は、皮膚や排泄に関連する問題に特化した専門的な知識と技術を持つ看護師のスペシャリストです。
具体的には、以下のような仕事内容を担います。
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褥瘡(じょくそう)の予防と治療褥瘡が発生するリスクが高い患者さんに対して、体位変換のタイミングや方法を指導したり、特殊なマットレスやクッションの使用を提案します。すでに褥瘡が発生している場合は、傷の状態をチェックし、適切なドレッシング材を選び、感染症を予防しながら治療を行います。また、栄養状態のチェックや、患者さんに合った治療計画を立てることも重要な仕事です。
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排泄ケアの支援尿失禁や便失禁がある患者さんには、個別のケアプランを作成します。例えば、尿漏れパッドの選定や、カテーテルの適切な管理、便失禁の予防のための食事指導などを行います。また、ストーマ患者さんに対しては、ストーマのケア方法や日常生活での注意点を指導します。排泄に関するトラブルが患者の生活の質に大きな影響を与えるため、細やかな支援が求められます。
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皮膚の健康管理とケア褥瘡以外にも、患者さんの皮膚が乾燥やかぶれ、発赤などを起こしていないか日常的にチェックします。例えば、糖尿病患者さんの皮膚に傷ができやすい場合、傷の予防として保湿やマッサージを行うことがあります。皮膚の状態が悪化しないよう、皮膚に優しいケアを指導することも大切です。
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患者・家族への教育と指導患者さんやその家族には、日常生活での皮膚や排泄のケア方法を指導します。例えば、患者さんに合った体位の変え方や、お風呂でのケア方法、排泄後のケアの仕方を教えることがあります。家族にも、どういったサポートが必要かをアドバイスし、患者さんが自立して生活できるようサポートします。
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医療スタッフへの教育・サポート他の看護師や医師、介護士などの医療スタッフに対して、皮膚排泄ケアの重要性や具体的なケア方法を教育します。例えば、新しいスタッフには褥瘡の予防方法や、適切な排泄ケアの方法を教える研修を行うこともあります。病院全体のケアの質向上に貢献します。
これらの業務を通じて、患者さんの生活の質を向上させ、医療現場で欠かせない役割を果たします。
皮膚・排泄ケア認定看護師は、患者さんを皮膚や排泄のリスクから守り、尊厳を守りながら生活の質を向上させる専門家です。
皮膚・排泄ケア認定看護師の就業先は?
病院だけでなく、介護、在宅、福祉など、さまざまな分野で活躍できるため、キャリアの幅が広がり将来性のある多様な職場で自分のスキルを活かすことができます。
皮膚・排泄ケア認定看護師の資格取得方法や費用について

皮膚・排泄ケア認定看護師を取得するためには、教育機関での専門教育を経て認定審査を受ける必要があります。
具体的なステップは以下になります。
指定教育機関への入学に際して、具体的に望まれる看護実績及び教育課程入学時に望まれる勤務状況は以下になります。
- 通算 3 年以上、皮膚・排泄ケア領域における看護実績を有すること。
- 皮膚・排泄ケア領域における看護を 5 例以上担当した実績を有すること。ただし、創傷、 ストーマ、排泄管理の事例を各 1 例以上含むこと。
- 現在、皮膚・排泄ケア領域における看護を行う臨床現場に勤務していることが望ましい。
参考:日本看護協会 特定看護分野の実務研修内容の基準(特定の看護分野における看護実績及び教育課程入学時に望まれる勤務状況)
無事、教育機関に入学した後、約1年間のカリキュラムを経て、認定審査を受けることができます。
認定証を交付されてからは、5年ごとの資格更新が必要です。
2019年度の認定看護師制度の改正に伴い、2021年度からB課程認定看護師(特定認定看護師)が誕生しました。
現在はA課程、B課程の認定看護師が活躍しています。A課程は2026年度に現行教育が終了し、2029年度に認定審査が終了予定となっています。
認定看護師については、詳しくはこちらの記事をご参照ください。
皮膚・排泄ケア認定看護師の資格取得までにかかる費用
皮膚・排泄ケア認定看護師を取得するためには、教育機関での専門教育を経て認定審査を受ける必要があります。
専門機関の入学から認定までにかかる総費用は約140万円~になります。
内訳は以下の通りです。
この他、交通費や引っ越し費用などの実費がかかることがあります。
また、複数の教育機関を受験する場合には、その都度、入学試験料も必要になります。
費用面に不安がある方は、日本看護協会の「認定看護師教育課程奨学金」や、勤務先の病院による奨学金制度を活用する方法もあるため、事前に情報を調べておくと安心です。
また、在学中の給与支給については勤務先によって異なります。
一般的には基本給のみ支給されるケースが多いですが、一部支給や全額支給、あるいは無給となる場合もあります。
教育課程にかかる費用や収入への影響も考慮しながら、しっかりと準備と計画を立てて受験することが大切です。
皮膚・排泄ケア認定看護師の難易度と教育機関について
皮膚・排泄ケア認定看護師の合格率は正式な統計データは出ていないものの、高い合格率になっています。
皮膚・排泄ケア認定看護師の資格取得において、最大の関門とされているのが認定審査(筆記試験)ではなく、教育機関への入学です。
2025年4月時点で、皮膚・排泄ケア分野(B課程)に対応した教育機関は全国に4校となっており、感染管理分野(A課程)に対応した教育機関は全国に1校、それぞれの定員は10~30名程度と限られています 。
全国の年間定員をA課程、B課程合計しても約130名程度 となっており、人気の高さに対して定員は決して十分とは言えません。
参考:日本看護協会 認定看護師教育機関別の開講状況・定員数一覧(特定行為研修を組み込んでいる教育機関:B課程認定看護師教育機関)
皮膚・排泄ケア分野は認定看護師の中でも需要が高く、開校数が限られているため入学倍率も高くなっています。
教育機関は全国各地に分散しているものの、希望する地域に必ずしも教育機関があるとは限らないため、遠方からの通学が必要になるケースも多く、交通費や宿泊費の負担が発生します。
また、教育期間中は勤務先を一時的に離れなければならないこともあり、職場の理解や休職制度の活用が求められることもあります。
このように、皮膚・排泄ケア認定看護師になるためには、知識や経験だけでなく、経済的・地理的・職場的な調整も必要であり、決して簡単な道のりではありません。
資格取得を目指す際には、これらの点を十分に考慮することが重要です。
皮膚・排泄ケア認定看護師のメリット3選

皮膚・排泄ケア認定看護師は、自身の専門的知識のスキルアップだけではないメリットがたくさんあります。
急性期から終末期まで、患者に寄り添った専門的なケアができる
皮膚・排泄ケア認定看護師は、急性期から終末期まで幅広い患者に対応できるスキルを持つことができます。
急性期や術後の患者さんへは、褥瘡の予防や管理を行います。
慢性期には栄養管理を取り入れた褥瘡治療を実施したり、ストーマの管理方法のレクチャーなどの役割を担います。
終末期には排泄ケアを通じて、患者さんの生活の質を維持することができます。
このように、患者と深く関わりながら、目に見える形でケアの成果を実感できるため、やりがいや満足感を得やすい働き方ができます。
また、患者さんやその家族からの感謝の言葉を直接受け取ることが多く、人と密に関わることができる魅力的な役割です。
専門知識を活かし、チームをリードする役割
褥瘡予防や排泄ケアの専門家として、病院内外のケアチームをリードする役割を担います。
例えば、褥瘡の患者さんが入院した場合、他の看護師や医師、栄養士と連携して治療計画を立て、ケアを提供します。
患者の個別の状態に合わせたケアプランの作成と実行に関わるため、他のスタッフにとっても頼れる存在になり、チーム内での信頼感も向上します。
また、教育担当として他の看護師に専門的な技術を教える場面も多く、指導力を高めることができます。
専門的な役割を果たしながら、人間関係やネットワークを築くことができる点でも魅力的なポジションです。
多様な現場で活躍でき、キャリアアップの幅が広がる
皮膚・排泄ケア認定看護師の資格は、病院だけでなく、介護施設や訪問看護、在宅医療などでも重宝されます。
例えば、在宅で褥瘡や排泄問題を抱える患者さんに対して、専門的なケアを提供することで、患者さんの自立を支援し、生活の質を向上させることができます。
また、施設で勤務すれば、複数の患者さんのケアを同時に管理しながら、質の高いケアを提供するスキルが身につきます。
現場での活躍の幅が広がることで、収入や昇進のチャンスも増えるため、将来のキャリアにも大きなプラスとなります。
皮膚・排泄ケア認定看護師は、患者さんの回復や快適さを直接支えることができ、成果を実感しやすい点が魅力です。その過程で大きなやりがいと充実感を感じながら働くことができます。
皮膚・排泄ケア認定看護師に興味がある方におすすめの資格・研修

以下に、皮膚・排泄ケア認定看護師を目指す方や、関心のある看護師向けに、代表的な関連の資格や学会をご紹介します。
臨床スキンケア看護師
日本創傷・オストミー・失禁管理学会が、看護師向けに皮膚トラブルへの予防的ケア実践を強化するために制定したものです。
講習会(8時間)と臨床研修(8時間)によってスキンケア全般に関する専門的な知識と技術を習得します。
受講条件はありますが、皮膚・排泄ケア認定看護師ほど取得ハードルは高くないため、いずれ認定看護師をとりたいと考えている看護師さんへの入門資格としてもおすすめです。
受講条件:看護師免許を有している、看護師の臨床経験が3年以上ある、日本創傷・オストミー・失禁管理学会正会員である、日本創傷・オストミー・失禁管理学会学術集会(過去5年以内)に1回以上参加している
費用:約30,000円〜50,000円
参考:日本創傷・オストミー・失禁管理学会 臨床スキンケア看護師
認定褥瘡看護師
日本褥瘡学会が認定する褥瘡認定師の資格で、褥瘡の予防と管理に特化した専門家として、看護師として高い技術と知識を証明する資格です。
褥瘡ケアにおけるスキルアップと、専門的な立場を確立できます。
こちらも、継続的に学会に所属しているなどの申請条件がありますが、褥瘡に関して専門的に知識を深めていきたい看護師さんにおすすめの資格です。
受講条件:看護師免許証取得後4年以上経過している、4年以上日本褥瘡学会の正会員である、褥瘡症例の予防計画・医療記録を有する、日本褥瘡学会が指定するセミナー受講証明書を有する
費用:約26,000円~
参考:日本褥瘡学会 褥瘡認定士
皮膚・排泄ケアに関する学会
皮膚・排泄ケアに関する学会は他にもあります。
各学会で認定資格や研修、セミナーを実施しているため、この領域に興味がある方は合わせて確認しておきましょう。
まとめ
皮膚・排泄ケア認定看護師は、褥瘡や創傷、ストーマ、失禁などの皮膚・排泄トラブルに対する専門的なケアを提供し、患者さんのQOL向上と医療チーム全体のケアの質向上を担う重要な役割を果たしています。
資格取得には、皮膚・排泄ケア分野での実務経験が3年以上必要であり、認定看護師教育機関にて約1年間の専門教育を受ける必要があります。
皮膚・排泄ケア認定看護師としての資格を取得することで、病院内での皮膚・排泄ケアを支える専門家となり、患者さんへの直接的なケア提供、スタッフ教育などを通じて、キャリアアップにもつながります。
皮膚・排泄ケア認定看護師に興味がある方は、ぜひ自分のキャリアの一歩として、資格取得を目指してみてください。
皮膚排泄ケアにまつわるお役立ち情報については、以下もご参照ください。
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