看護師は妊娠したら夜勤を免除できる?根拠となる制度と申請方法・対処法
妊娠が分かったけれど、来月の勤務表にはもう夜勤が入っている。人手が足りない病棟で「夜勤を外してほしい」と言い出しにくい看護師は少なくありません。
妊娠中の看護師は、本人が請求すれば夜勤を免除してもらえます。根拠になるのは労働基準法と男女雇用機会均等法で、診断書がなくても請求できます。 この記事では、看護師が妊娠中に夜勤を免除してもらうための制度の根拠、申し出の手順、夜勤以外に制限できる業務、断られたときの対処法まで紹介します。
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妊娠中の看護師は夜勤を免除できる

妊娠中の看護師は、職場に請求すれば夜勤を免除してもらえます。 根拠は2つあり、労働基準法が「夜勤をしなくてよい権利」を、男女雇用機会均等法が「請求したことで不利に扱われない保護」と「主治医の指導を守るための措置」を定めています。
労働基準法の深夜業の制限
労働基準法第66条第3項は、妊産婦が請求した場合、使用者は深夜業をさせてはならないと定めています。 深夜業とは午後10時から午前5時までの労働のことで、2交代の16時間夜勤も3交代の深夜勤も、この時間帯を含むため免除の対象です。
この請求に、医師の指導や診断書は必要ありません。 人員不足などを理由に断れるという例外もなく、違反した使用者には罰則(6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金)があります。
診断書がなくても、請求するだけで夜勤は外してもらえるんだね
夜勤を含む病院の変則的なシフトの仕組みは、以下の記事で紹介しています。
男女雇用機会均等法の母性健康管理の措置
男女雇用機会均等法は、夜勤免除の請求を後押しする役割を持っています。 主な規定は次の3つです。
-
第9条(不利益取扱いの禁止)妊娠・出産や、深夜業をしなかったことなどを理由とする解雇・降格・減給などを禁止
-
第15条(ハラスメント防止措置)上司・同僚からの妊娠・出産に関する嫌がらせを防ぐ体制づくりを事業主に義務づけ
-
第17条・第18条(母性健康管理の措置)妊婦健診の時間の確保と、主治医の指導を守るための勤務時間の変更・勤務の軽減を事業主に義務づけ
2026年10月1日の改正で条番号が変わり、母性健康管理の措置は旧第12条・第13条から第17条・第18条に、ハラスメント防止措置は旧第11条の3から第15条になりました。 職場の資料や古い解説で旧番号を見かけても、中身は同じです。
| 労働基準法 第66条 | 男女雇用機会均等法 | |
|---|---|---|
| 役割 | 夜勤をしなくてよい権利 | 請求しても不利にされない保護と、主治医の指導を守る措置 |
| 医師の指導 | 不要。本人の請求だけでよい | 勤務の軽減などの措置は主治医の指導が前提 |
| 交渉で使う場面 | 夜勤・残業・休日出勤を外してほしい | 勤務時間の短縮や作業の制限、休業を求めたい |
| 守られないとき | 使用者に罰則がある | 労働局の助言・指導・勧告。勧告に従わないと企業名の公表もある |
職場と話すときは、夜勤を外してほしいなら労働基準法第66条、体調に合わせて仕事を軽くしてほしいなら均等法第18条、と使い分けると伝わりやすくなります。
請求できる期間
深夜業の免除を請求できるのは「妊産婦」、つまり妊娠中と産後1年を経過しない女性です。 妊娠初期から請求でき、出産後も1年間は夜勤を断れます。
ただし、妊娠中の軽易業務への転換(労働基準法第65条第3項)のように、妊娠中だけが対象の制度もあります。 産後も夜勤を控えたい場合は、復帰前に改めて請求しておくと行き違いがありません。
看護師の求人を探す参考:e-Gov法令検索「労働基準法」 / e-Gov法令検索「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」
妊娠中に夜勤を続けるリスク

夜勤そのものが妊娠経過にどこまで影響するかは、勤務形態や体調によって異なり、一律には言えません。 ただ、看護師の仕事は立ち仕事や患者さんの移乗など体への負担が大きく、厚生労働省の母性健康管理の資料でも、切迫流産・切迫早産のときに注意が必要な作業の例として「看護師」が挙げられています。
体調の変化を感じたら、自己判断せず主治医に相談しましょう。
切迫流産・切迫早産
流産は妊娠22週未満、早産は妊娠22週以降37週未満で妊娠が終わってしまうことをいいます。 切迫流産・切迫早産は、その一歩手前の「流産・早産しかかっている状態」です。
性器出血やおなかの張り・痛みなどが徴候とされ、措置は本来は休業です。 主治医の指示によっては、仕事の負担を減らしたうえで勤務を続けられる場合もあります。
おなかの張りや出血に気づいたら、勤務中でも我慢せず、早めに受診しましょう。夜勤帯は相談できる人が少ないため、異変を伝える相手をあらかじめ決めておくと安心です。
妊娠高血圧症候群
妊娠高血圧症候群は、妊娠20週以降から分娩後12週までに高血圧がみられる状態、または高血圧に蛋白尿を伴う状態です。 重症化すると胎児に影響が出るほか、出産後も症状が続くことがあります。
妊婦健診で血圧の上昇を指摘された場合、主治医は休業や勤務時間の短縮、ストレスや緊張を多く感じる作業の制限などを指示できます。
| 症状等 | 休業 | 勤務時間の短縮 | 身体的負担の大きい作業の制限 | ストレス・緊張の多い作業の制限 | 休憩の配慮 |
|---|---|---|---|---|---|
| 腹部緊満感・子宮収縮 | ○ | ○ | ○ | - | ○ |
| 血圧の上昇 | ○ | ○ | ○ | ○ | - |
| 全身倦怠感 | ○ | ○ | ○ | - | ○ |
| 腰痛 | ○ | - | ○ | - | - |
| 不安・不眠・落ち着かない | ○ | ○ | - | ○ | ○ |
睡眠不足と疲労の蓄積
夜勤は生活リズムが崩れやすく、夜勤明けにしっかり眠れないまま次の勤務に入ることもあります。 妊娠中はつわりや眠気、腰痛などが重なるため、普段なら乗り切れる夜勤でも疲れが抜けにくくなります。
「みんな頑張ってるのに」って思うと、言い出しにくいよね
夜勤帯は少ない人数で病棟を回すため、休憩を取りにくく、急変対応で走ることもあります。 体調が悪くても交代を頼みにくい点も、日勤との大きな違いです。
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参考:働く女性の心とからだの応援サイト(厚生労働省)「切迫早産(妊娠22週以降)」 / 働く女性の心とからだの応援サイト(厚生労働省)「妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)」
夜勤免除を申し出る手順

夜勤免除は、妊娠を報告し、夜勤をしない旨を請求すれば成り立ちます。 体調に合わせた業務の軽減も求めたい場合は、母健連絡カードを使うと主治医の指導が正確に伝わります。
妊娠を報告するタイミング
法律で決まった報告時期はありませんが、看護師の勤務表は早めに組まれるため、夜勤を外したい月の勤務表が作られる前に伝えるのがおすすめです。 医療機関で妊娠が確定し、出産予定日が分かった段階が報告の目安です。
つわりがつらい、体調に不安があるなど、勤務に影響が出そうなときは、安定期を待たずに伝えても問題ありません。 報告を受けた職場には、育児休業制度などを個別に知らせ、取得の意向を確認する義務もあります。
誰に伝えるか
最初に伝える相手は、勤務表を作る直属の上司(看護師長や主任)が基本です。 報告するときは、出産予定日と「いつから夜勤を外してほしいか」をセットで伝えると、勤務調整がスムーズに進みます。
- 出産予定日
- 夜勤を外してほしい開始時期
- 体調面で配慮してほしいこと(あれば)
- 同僚への公表時期の希望
口頭だけだと「言った・言わない」になりやすいため、請求した日付と内容をメールや書面でも残しておくと安心です。
母性健康管理指導事項連絡カードを使う
母性健康管理指導事項連絡カード(母健連絡カード)は、主治医の指導内容を職場に正確に伝えるための書式です。 妊婦健診で主治医が「勤務時間の短縮」や「身体的負担の大きい作業の制限」などが必要と判断したときに記入してもらい、本人が職場に提出します。
カードが提出されたら、事業主は記載内容に応じた措置を講じる必要があります。 様式は厚生労働省の「働く女性の心とからだの応援サイト」からダウンロードできます。
夜勤免除だけが目的なら、カードがなくても請求できます。 立ち仕事や移乗介助の負担も減らしたいときに使うと効果的です。
夜勤を外すだけなら請求でOK、仕事を軽くしたいならカードって覚えておこう
主治医の診断書を用意する
体調の悪化で休業が必要になったときや、カードの書式では伝えきれない事情があるときは、主治医の診断書を求められることがあります。
診断書の要否や書式は職場の規程によって異なるため、提出が必要かを人事や上司に確認しておきましょう。
看護師の求人を探す参考:働く女性の心とからだの応援サイト(厚生労働省)「母健連絡カードについて」 / 働く女性の心とからだの応援サイト(厚生労働省)「妊娠中の通勤や職場での過ごし方」
夜勤以外に制限を請求できる業務

妊娠中に負担を減らせるのは夜勤だけではありません。 労働基準法第64条の3と女性労働基準規則は、妊産婦に有害な業務への就業を制限しています。 法律で直接禁止されていない業務も、軽易業務への転換(第65条第3項)や母健連絡カードで負担を減らすよう求められます。
| 看護業務の例 | 主な根拠 | 医師の指導 |
|---|---|---|
| 夜勤・残業・休日出勤 | 労基法66条(請求すれば免除) | 不要 |
| 重い物品の運搬 | 労基法64条の3・女性労働基準規則(基準以上は禁止) | 不要 |
| 移乗介助・長時間の立ち仕事 | 労基法65条3項(軽易業務への転換)・均等法18条 | 転換は不要/措置は必要 |
| レントゲン・透視下処置の介助 | 電離放射線障害防止規則(被ばく限度) | 不要 |
| 抗がん剤の調製・投与 | 直接の規定なし。労基法65条3項で転換を請求 | 主治医に相談 |
重量物の取り扱い
女性労働基準規則では、満18歳以上の妊娠中の女性に、断続作業で30kg以上、継続作業で20kg以上の重量物を扱わせることを禁止しています。 ただ、この基準は妊娠していない女性にも同じく適用されるもので、看護の現場ではこの基準だけで負担を減らすのは難しいです。
患者さんの移乗や体位変換、入浴介助がつらい場合は、軽易業務への転換を請求するか、主治医に「腰に負担のかかる作業」の制限を母健連絡カードに書いてもらいましょう。 スライディングシートやリフトの使用、2人介助への切り替えなど、具体的な方法まで提案すると話が進みやすくなります。
放射線を扱う業務
管理区域で働く放射線業務従事者として登録されている看護師は、妊娠と診断されると被ばく限度が厳しくなります。 電離放射線障害防止規則では、妊娠と診断されたときから出産までの間について次の限度が決められています。
血管造影や透視下の処置、ポータブル撮影の介助などを担当している場合は、妊娠の報告とあわせて担当から外れたいか相談しましょう。 線量計の数値が気になる場合は、放射線部門の担当者に確認してもらうと安心です。
抗がん剤などの薬剤を扱う業務
抗がん剤の調製・投与・廃棄について、妊娠中の看護師を一律に外すよう定めた法律の規定はありません。 厚生労働省は、看護師などの抗がん剤へのばく露を防ぐため、安全キャビネットや閉鎖式接続器具の使用、防護具の着用などを医療機関に求めています。
妊娠中に担当を続けてよいかは、薬剤の種類や扱う頻度、職場の防護体制によって変わります。 不安がある場合は主治医に相談し、軽易業務への転換として担当の変更を申し出るのも一つの方法です。
時間外労働と休日労働
労働基準法第66条は、深夜業と同じく、妊産婦が請求すれば時間外労働(残業)と休日労働もさせてはならないと定めています。 変形労働時間制の職場でも、請求すれば1日8時間・週40時間を超えて働かせることはできません。
日勤のみになっても、残業が続けば負担は残ります。 夜勤免除と一緒に「残業も控えたい」と請求しておきましょう。
夜勤だけじゃなく、移乗介助やレントゲン介助も相談できるんだね
参考:e-Gov法令検索「女性労働基準規則」 / e-Gov法令検索「電離放射線障害防止規則」
夜勤免除を断られたときの対処

夜勤免除を請求したのに「人がいないから無理」と言われた場合でも、あきらめる必要はありません。 まずは職場の中で働き続ける方法を探し、それでも解決しないときに外部の窓口を使いましょう。
日勤のみの部署への異動を願い出る
病棟で夜勤のない勤務表を組むのが難しい場合は、外来や健診センターなど日勤のみの部署への異動を相談する方法があります。 妊娠中の女性が請求すれば、職場は他の軽易な業務に転換させなければなりません(労働基準法第65条第3項)。
具体的な異動先は職場の事情で異なるため、看護部長や人事も交えて話し合うのがおすすめです。 産後に元の部署へ戻れるかどうかも、このタイミングで確認しておきましょう。
まずは今の職場で制度を使って、それでもダメなら外の窓口に頼ろう
都道府県労働局に相談する
職場が夜勤免除に応じない、請求したら降格や減給をほのめかされた、上司や同僚から嫌がらせを受けた、という場合の相談先は都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)です。
均等法は、事業主に対して妊娠・出産に関するハラスメントの防止措置を義務づけています。 ただし、業務分担や安全への配慮から、客観的にみて業務上必要な言動はハラスメントに当たりません。 相談するときは、請求した日付や言われた内容のメモを持っていくと話が伝わりやすくなります。
休職を検討する

体調が悪く、夜勤を外しても働くのがつらいときは、主治医の指導に基づいて休業する方法があります。 母健連絡カードに「休業(自宅療養)」と書いてもらえば、職場はその措置を講じなければなりません。
休んだ期間の給与の扱いは職場の規程によって異なります。 給与が出ない場合でも、主治医が仕事に就けない状態と判断すれば、健康保険の傷病手当金を受けられることがあります。 協会けんぽの場合、休み始めた日から連続3日間の待期期間を除いて4日目から支給の対象です。
転職して働き方を変える
制度を使っても職場が応じてくれず、働き続けるのがつらい場合は、出産後の働き方を見据えて転職を考える人もいます。 妊娠中の転職活動は体への負担も大きいため、体調と相談しながら、産後の復職先として日勤のみの職場を探しておく方法もあります。
転職先を選ぶときは、産休・育休の取得実績や、子育て中の看護師が夜勤をどう免除されているかを確認しておくと安心です。
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参考:働く女性の心とからだの応援サイト(厚生労働省)「不利益取扱いとハラスメントについて」 / 協会けんぽ「病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)」
産休までの働き方と産後の選択肢

夜勤を外したあとも、妊娠週数が進むにつれて体の負担は変わります。 産休までの働き方と、産後に夜勤へ戻るかどうかを早めに考えておくと、職場との調整がしやすくなります。
業務の軽減や時短勤務
妊娠中の時短勤務は、主治医の指導があれば母健連絡カードを通じて求められます。 始業を遅らせる、終業を早める、休憩時間を長くするなどの方法で、1日の勤務時間を短くしてもらえます。
通勤ラッシュがつらい場合は、時差出勤などの通勤緩和も主治医の指導に基づいて申し出られます。 休憩の回数を増やしたり時間を延ばしたりする措置もあるため、体調に合わせて組み合わせましょう。
産前休業に入る時期
産前休業は、出産予定日の6週間前(双子以上は14週間前)から、本人が請求すれば取得できます。 産後は8週間就業できず、産後6週間を過ぎて本人が請求し、医師が認めた業務に限って働けます。
職場によっては6週間より前から産前休業を認めている場合があるため、就業規則を確認しましょう。 産休・育休中の収入については、以下の記事で育休手当の計算方法を紹介しています。
復帰後に夜勤をするかどうか
産後1年までは労働基準法第66条で夜勤を断れますが、その後も子育てを理由に夜勤を控えたい場合は、育児・介護休業法の深夜業の制限を使えます。
- 使える期間
- 妊娠中〜産後1年
- 請求の時期
- 定めなし
- 職場の例外
- なし
- 使える期間
- 子が小学校に入学するまで。1回の請求で1か月以上6か月以内
- 請求の時期
- 開始予定日の1か月前まで
- 職場の例外
- 事業の正常な運営を妨げる場合。勤続1年未満の人なども対象外
3歳未満の子を育てる看護師は、職場の短時間勤務制度も利用できます。 日勤のみや時短で働ける職場は、転職先の候補としても探せます。
- 託児所・保育所完備の求人は1,033件(約11%)
- 時短勤務OKの求人は473件(約5%)
- 17時退社の求人は1,810件(約19%)
夜勤を減らすと夜勤手当がなくなり、月収が下がる点も考えておきましょう。 夜勤手当の相場や仕組みは、以下の記事で詳しく紹介しています。
復帰後の働き方は、育休中に看護師長と面談して決めておくと、勤務表に反映してもらいやすくなります。
参考:働く女性の心とからだの応援サイト(厚生労働省)「産前・産後休業を取るときは」 / e-Gov法令検索「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」
まとめ
妊娠中の看護師は、労働基準法第66条にもとづいて請求すれば夜勤を免除してもらえます。 診断書は不要で、請求したことを理由に不利な扱いをすることは男女雇用機会均等法で禁止されています。
この記事のポイント
- 夜勤免除は妊娠中から産後1年まで請求できる
- 夜勤免除の請求に医師の指導や診断書は不要
- 業務の軽減は母健連絡カードで主治医の指導を伝える
- 移乗介助や放射線業務、残業も負担軽減を相談できる
- 断られたら都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)へ
まずは出産予定日と夜勤を外してほしい時期を整理し、勤務表が組まれる前に看護師長へ伝えましょう。 体調に不安があるときは、妊婦健診で主治医に仕事の内容を具体的に話し、必要な措置を母健連絡カードに書いてもらうと安心です。


