乳がん看護認定看護師になるには?実務要件と教育課程・費用の目安を解説
乳腺外科や外来化学療法室で働くうちに、「乳がん看護をもっと専門的に学びたい」と考え始めた看護師もいるのではないでしょうか?
乳がん看護認定看護師になるには、5年以上の実務経験を積んだうえで認定看護師教育課程を修了し、日本看護協会の認定審査に合格する必要があります。
この記事では、乳がん看護認定看護師の役割から、資格取得までの流れ、教育課程で学ぶ内容、期間と費用、働きながら目指すときに確認しておきたい資金面の条件まで紹介します。
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乳がん看護認定看護師とは?

乳がん看護認定看護師は、日本看護協会が認定する「認定看護師」のうち、乳がん看護分野の資格を持つ看護師です。
認定されている役割
認定看護師には、「実践」「指導」「相談」の3つの役割があります。 乳がん看護分野では、この3つを次のような場面で担います。
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実践手術・薬物療法・放射線療法を受ける患者さんへのケア、治療方針の意思決定支援、リンパ浮腫の予防とセルフケア支援
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指導病棟や外来の看護師への勉強会、乳がん看護のケア手順づくり
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相談ほかの看護職や多職種からのケースの相談に応じる
B課程で資格を取った場合は、特定行為研修も修了しているため、医師が作成した手順書にもとづいて創部ドレーンの抜去などを看護師の判断で実施できます。 B課程の認定看護師は「特定認定看護師」と名乗ることもできます。
対象となる患者と病期
乳がん看護認定看護師がかかわるのは、乳がんと診断された患者さんだけではありません。 日本看護協会の教育基準では、予防・検診から診断、治療、再発・転移、エンドオブライフまでを通したケアが求められています。
- 乳房自己検診の指導
- 市民向けの啓発・健康教育
- 組織診など検査時の看護
- 告知後の心理的支援
- 術式・治療方針の意思決定支援
- 周術期ケア・創部ドレーン管理
- 薬物療法・放射線療法・ホルモン療法の症状マネジメント
- リンパ浮腫の予防とボディイメージ支援
- 仕事・育児・妊よう性の相談
- 遺伝性乳がんの家族への支援
- 再発・転移治療中の症状緩和
- 自壊創のケア
- エンドオブライフケア
乳がんの患者さんは働く世代や子育て世代の女性も多く、治療と仕事・育児・妊娠の希望との両立が課題になりやすい病気です。
脱毛や乳房の喪失などボディイメージの変化、遺伝性乳がんに関する家族への支援など、心理・社会的な支援の比重が大きいことも、ほかのがん関連分野との違いです。
緩和ケアやがん薬物療法看護の認定看護師が「症状」や「治療法」を軸に幅広いがん種にかかわるのに対し、乳がん看護は「乳がん」という疾患を軸に、病期をまたいで継続してかかわります。
自分の経験がどの分野に近いか、病期で考えると分かりやすいね
専門性を発揮できる職場
2025年12月末時点で、乳がん看護認定看護師の登録者はA課程331人・B課程68人の計399人です。 このうち9割(359人)が病院で働いており、病院の中では外来に所属する人がもっとも多くなっています。
乳腺外来やブレストセンター、外来化学療法室、放射線治療部門など、通院治療を続ける患者さんと継続してかかわれる部署が活動の中心です。
がん診療連携拠点病院のように乳がんの手術件数が多い病院では、看護外来(リンパ浮腫外来など)を担当する例もあります。
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認定看護師制度そのものの仕組みや、ほかの分野の一覧は以下の記事で紹介しています。
参考:日本看護協会「認定看護師」 / 日本看護協会「認定看護師教育基準カリキュラム(B課程認定看護師教育機関)」
乳がん看護認定看護師になるまでの流れ

乳がん看護認定看護師になるには、「実務経験を積む」「教育機関に入学・修了する」「認定審査に合格する」「登録する」の順に進みます。
これから目指す場合はB課程(特定行為研修を組み込んだ課程)が前提です。
看護師としての実務経験の要件
教育機関への入学と認定審査の受験には、次の実務経験が必要です。
- 看護師免許を取得後、通算5年以上の実務経験がある
- そのうち通算3年以上は乳がん患者の多い病棟または外来などでの看護実績
- 乳がん患者の看護を5例以上担当した実績がある
このほか、「現在、乳がん患者の看護に携わっていることが望ましい」とされています。 静岡がんセンターの募集要項では、フルタイム勤務でない期間は勤務時間1,800時間以上で1年分とみなします。
乳腺外科病棟だけでなく、外来化学療法室や放射線治療部門での経験も対象になりえますが、どの部署の経験を何年と数えるかは出願先の募集要項で確認しておきましょう。
教育機関への出願と選考
B課程の乳がん看護分野を開講している教育機関は全国でもごくわずかです。 たとえば静岡県立静岡がんセンターの認定看護師教育課程は、2027年度入学の乳がん看護分野で12人を募集しました。
静岡がんセンターでは、特定行為研修の臨地実習を受講生の所属施設(自施設)で行うため、出願時に所属施設の実施同意書が必要です。
自施設で実習するには、実習指導を担える医師がいることや、出願分野の特定行為について前年度に1症例以上の実績があることが条件になっています。
願書の締め切りは入学の7か月ほど前です。勤務証明書や実習の実施同意書は職場の協力がないとそろわないので、出願を考えた時点で早めに所属長に相談しておきましょう。
認定看護師教育課程の修了
B課程の教育期間は1年以内・約800時間です。 講義・演習・臨地実習をすべて修了すると修了証が交付され、認定審査の受験資格がそろいます。
看護師の求人を探す認定審査の受験
認定審査は日本看護協会が年1回実施しています。 2026年(第34回)の審査は、7月にWeb申請、10月に筆記試験、12月に合否発表という日程です。
合格には、合計105点以上に加えて、一般問題と状況設定問題のそれぞれで7割以上の得点が必要です。
どちらか一方でも基準を下回ると不合格になるため、共通科目と乳がん看護の専門科目の両方をまんべんなく復習しておきましょう。
修了した年の秋に受験するのが一般的な流れだよ!
認定登録と更新
合格後に認定料を振り込み、登録手続きを済ませると、認定証が交付されます。 B課程を修了して合格した人は、B課程認定看護師名簿に登録されます。
資格の有効期間は5年間で、登録年から5年後の12月31日までです。 資格を続けるには、5年ごとに書類による更新審査を受ける必要があります。
参考:日本看護協会「第34回(2026年) 認定看護師(CN)認定審査 審査・申請の手引き」 / 静岡県立静岡がんセンター「2027年度 認定看護師教育課程(B課程)募集要項」
教育課程で学ぶ内容

乳がん看護分野のB課程は、日本看護協会の教育基準カリキュラムにもとづいて組み立てられています。 合計799時間(45分を1時間とする「みなし時間」)で、そのうち約半分が全分野共通の科目です。
がん看護領域の共通科目
最初に学ぶのは、全分野に共通する「共通科目」です。 臨床推論、フィジカルアセスメント、臨床薬理学、医療安全、指導・相談など17科目・380時間で、特定行為研修の共通科目もここに含まれます。
さらに、緩和ケア・がん薬物療法看護・がん放射線療法看護・乳がん看護の4分野では、次の3科目を「がん領域共通学習内容」として同じ内容で学びます。
- がん看護学総論
- 腫瘍学概論
- がんの医療サービスと社会資源
この3科目は分野をまたいだ合同講義が認められているため、教育機関によってはほかのがん関連分野の研修生と一緒に受講します。
乳がん看護の専門科目
乳がん看護に特化した科目は7科目です。 手術・薬物療法・放射線療法・ホルモン療法を組み合わせた治療を受ける患者さんの看護から、ボディイメージの変化への援助、リンパ浮腫の看護技術まで幅広く学びます。
| 科目 | 時間 |
|---|---|
| 乳腺腫瘍学概論乳がんの病態・診断・治療、乳房再建術 | 45 |
| 集学的治療を受ける乳がん患者の看護周術期、薬物・放射線療法、再発・転移治療、EOLケア | 45 |
| 乳がん看護概論女性のライフサイクル、市民への啓発教育 | 15 |
| 乳がんサバイバーとその家族への支援遺伝情報を受け継ぐ家族への継続支援など | 15 |
| 乳がん患者の意思決定を支える看護技術 | 15 |
| 乳がん患者のボディイメージ変容への援助技術セクシュアリティへの対応、自壊創のケア | 15 |
| 乳がん患者のリンパ浮腫の看護技術 | 15 |
| がん領域共通学習内容(3科目) | 60 |
乳房再建術、遺伝性乳がんに関する家族への支援、再発・転移後の治療とエンドオブライフケアも学習内容に含まれます。 乳房自己検診の指導やリンパ浮腫ケアは演習で実技を身につけます。
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特定行為研修に含まれる内容
乳がん看護分野のB課程には、2つの特定行為区分が組み込まれています。
- 創部ドレーンの抜去
- 持続点滴中の高カロリー輸液の投与量の調整
- 脱水症状に対する輸液による補正
特定行為は、医師の指示のもと、手順書にもとづいて看護師が病状を判断して行う行為です。 講義と演習のあと、筆記試験と実習での観察評価(一部は実技試験)に合格すると、その区分の特定行為研修を修了したことになります。
乳がんの術後管理に直結する行為を学べるのがB課程の特徴だよ!
実習の内容
臨地実習は150時間で、実際に乳がんの患者さんを受け持ちながら、認定看護師としての実践・指導・相談を経験します。
- 病棟または外来で2事例以上を受け持ち、看護過程を展開する(周術期と集学的治療の症状マネジメントを各1事例以上)
- 外来でリンパ浮腫、外来化学療法、外来放射線療法、ホルモン療法、組織診の看護を各1例以上実践する
- 看護職への指導案を作成して指導し、コンサルテーションを実践する
周術期の受け持ちでは、乳房切除術か乳房温存術を受ける患者さんを最低1例担当し、術式を決める段階から術後の継続看護までかかわります。 遺伝カウンセリングや患者会は、実習施設の特徴に合わせて可能な範囲で見学します。
参考:日本看護協会「認定看護師教育基準カリキュラム 乳がん看護(B課程教育機関)」 / 日本看護協会「合同講義の実施基準(B課程)」
取得までにかかる期間と費用

乳がん看護認定看護師になるまでには、実務経験の5年を除いても、出願から登録までに約2年半かかります。 費用は、教育課程の学費と日本看護協会の審査料・認定料をあわせて、130万円台が目安です。
教育課程の受講期間
B課程の開講期間は1年以内と決められています。 静岡県立静岡がんセンターの2027年度課程は、2027年4月から2028年3月までの1年間です。
日本看護協会が公表している乳がん看護分野の入試情報では、開講形態は「集中型」です。 講義・演習と臨地実習が1年間続くため、1年間は通常勤務を離れて受講する前提で計画を立てる必要があります。
入学金と授業料
静岡県立静岡がんセンターの2027年度募集要項では、入学検定料と入学後の納付金は次のとおりです。
学費には、書籍などの教材費、パソコン、実習のための宿泊費・交通費は含まれていません。 遠方から通う場合は、1年分の住居費や生活費も別に必要になります。
認定審査と登録の費用
教育課程を修了したあとは、日本看護協会に次の費用を支払います。
-
審査料51,700円(税込)
-
認定料51,700円(税込)。合格後に振り込む
不合格で翌年に再受験する場合も、審査料51,700円がもう一度かかります。
看護師の求人を探す5年ごとの更新にかかる費用
資格を更新するたびに、審査料30,800円と認定料20,900円の計51,700円がかかります。 更新審査は書類審査で、過去5年間に50点以上の自己研鑽などの実績があることが申請の条件です。
2028年度の更新審査からは、申請に使える研修や実績の条件が変わると公表されているため、資格を取ったあとも日本看護協会の案内を確認しておきましょう。
学費だけじゃなく、1年間の生活費まで考えると大きな決断だよね
参考:静岡県立静岡がんセンター「募集概要」 / 日本看護協会「資格認定者の方へ 認定看護師」
乳がん看護認定看護師を目指すときに確認しておくこと

1年間職場を離れて学ぶには、学費だけでなく受講中の収入をどう確保するかが大きな課題です。 出願を決める前に、勤務先の制度と資金計画をセットで確認しておきましょう。
| 研修派遣 | 休職 | 退職 | |
|---|---|---|---|
| 受講中の収入 | ◯給与あり(支給額は規程しだい) | △無給〜一部支給。規程しだい | ×なし |
| 学費の負担 | 全額〜一部を病院が負担することがある | 自己負担が中心 | 全額自己負担 |
| 社会保険 | 職場の保険を継続 | 職場の保険を継続(保険料は発生) | 国民健康保険・国民年金に切り替え |
| 特定行為の実習先 | 自施設で受け入れやすい | 自施設の同意が必要 | 所属施設がないため出願前に教育機関へ要確認 |
| 修了後の条件 | 一定期間の勤務義務の有無を要確認 | 復職が前提 | 転職先を自由に選べる |
勤務先の研修派遣・費用補助の制度
認定看護師の育成に力を入れている病院では、「研修派遣」として在籍したまま受講でき、学費の全部または一部を病院が負担する制度を設けていることがあります。 ただし、対象分野や人数、選考方法は病院ごとに異なります。
制度を使う場合は、次の点を就業規則や研修規程で確認しておくと安心です。
- 乳がん看護分野が派遣の対象になっているか
- 特定行為研修の臨地実習を自施設で受け入れられるか
- 学費のうちどこまで補助されるか(教材費・交通費・宿泊費を含むか)
- 修了後に一定期間勤務する義務があるか
- 途中で退職した場合に補助金の返還が必要か
勤務先に制度がない場合は、日本看護協会の「認定看護師教育課程奨学金」が選択肢になります。 年額120万円以内を一括で貸与する制度で、学費だけでなく生活費にも使え、地域・年齢・所得の制限はありません。
修了後、保健医療分野で2年以上働く意思があることが応募条件で、返還が必要な貸与型の奨学金です。
受講期間中の勤務形態と収入
受講中の立場は、大きく「研修派遣(出張扱い)」「休職」「退職」の3つに分かれます。 研修派遣で給与が支払われる場合でも、夜勤手当などの手当がなくなるため、普段より手取りが下がることは想定しておきましょう。
休職の場合、無給になるか一部支給になるかは病院の規程しだいです。 退職して受講する場合は収入がなくなるうえ、社会保険料や住民税も自分で払う必要があるため、学費とは別に1年分の生活費を準備しておくのが無難です。
1年間無収入になるかもと思うと、踏み出すのが怖いよね
資格手当や処遇の反映の有無
資格を取ったあとの処遇も、職場によって差があります。 資格手当として毎月一定額を支給する病院もあれば、手当はなく役割や配置で評価する病院もあります。
乳がん看護は、手術・薬物療法・長期のフォローアップまで患者に寄り添う専門性が求められる分野のため、がん診療に力を入れる病院ほど配置のニーズが高い傾向があります。
現在の職場で資格が評価されにくい場合は、修了後にがん診療連携拠点病院などへ転職して専門性を活かす人もいます。
- 出願前に研修派遣と自施設実習の可否を確認
- 受講中の手取り減と1年分の生活費を試算
- 支援制度のある病院への転職も選択肢
資格手当の相場や支給の実態は、以下の記事で詳しく紹介しています。
まとめ
乳がん看護認定看護師になるには、看護師として通算5年以上(うち乳がん看護3年以上・5例以上)の経験を積み、B課程の教育機関で1年間学んだうえで、日本看護協会の認定審査に合格する必要があります。
開講している教育機関と定員が限られているため、早めに情報を集めて職場と相談しておくことが大切です。
この記事のポイント
- 分野名はA課程・B課程とも「乳がん看護」
- これから目指すなら特定行為研修を含むB課程
- 教育課程は1年・約800時間で、臨地実習は150時間
- 学費と審査・認定料で130万円台が目安
- 受講中の収入は研修派遣・休職・退職で大きく変わる
日本看護協会では認定看護師教育の見直しを進めているため、出願する年度の募集要項と日本看護協会の最新情報を必ず確認しておきましょう。
今の職場で研修派遣の制度がない場合は、認定看護師の育成を支援している病院への転職も一つの選択肢です。


