看護師がキャリアコンサルタントの資格を取る方法|受験資格・費用・活かし方
後輩の相談に乗ったり、新人の悩みを聞いたりするうちに、「キャリアの相談をきちんと学びたい」と感じる看護師は少なくありません。 キャリアコンサルタントは、働く人の職業選択やキャリアづくりを支援する国家資格で、看護師が取ることもできます。 この記事では、看護師がキャリアコンサルタントの資格を取るための受験ルート、試験の内容と合格率、費用と期間、更新手続き、取得後に活かせる場面を紹介します。
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キャリアコンサルタントとは?

キャリアコンサルタントは、職業能力開発促進法にもとづく国家資格で、2016年に創設されました。 法律では、キャリアコンサルティングを「労働者の職業の選択、職業生活設計又は職業能力の開発及び向上に関する相談に応じ、助言及び指導を行うこと」と定めています。
キャリアコンサルタントは名称独占資格です。 試験に合格し、キャリアコンサルタント名簿に登録した人だけが「キャリアコンサルタント」を名乗れます。 登録していない人が「キャリアコンサルタント」や「キャリア・コンサルタント」などの紛らわしい名称を使うと、30万円以下の罰金の対象です。
一方で、キャリア相談の仕事そのものは資格がなくてもできます。 人材紹介会社などでよく見る「キャリアアドバイザー」は職種の呼び名で、資格がなくても名乗れます。
| キャリアコンサルタント | キャリアアドバイザー | |
|---|---|---|
| 位置づけ | 国家資格(名称独占) | 職種・役職の呼び名 |
| 根拠 | 職業能力開発促進法 | 法律上の定めはない |
| 名乗る条件 | 試験に合格し、名簿に登録 | 資格は不要 |
| 更新 | 5年ごとに更新講習と更新申請 | なし |
| 主な活動先 | 企業、学校、ハローワーク、人材紹介会社など | 人材紹介会社、転職支援サービスなど |
相談の仕事は誰でもできるのに、資格を取る意味ってあるの?
国家資格を持っていると、キャリア理論や面談の技法を体系的に学んだことを、職場や相談相手に示せるのが強みです。
企業で働く人の相談を受けるときに似た資格として挙がる産業カウンセラーは、日本産業カウンセラー協会が試験を実施する資格で、国家資格のキャリアコンサルタントとは位置づけが異なります。 2つの資格の違いや、産業カウンセラーを企業で活かせるかどうかは、以下の記事で紹介しています。
参考:厚生労働省「キャリアコンサルタント名称独占について」 / e-Gov法令検索「職業能力開発促進法」
看護師が受験するためのルート

キャリアコンサルタント試験は、次のいずれかを満たすと受験できます。
- 厚生労働大臣が認定する養成講習を修了している
- 労働者の職業選択などに関する相談の実務経験が3年以上ある
- 技能検定キャリアコンサルティング職種の学科試験か実技試験に合格している
看護師として働いているだけでは、どのルートにも当てはまりません。 自分がどのルートで受験するかは、これまでの相談業務の中身によって決まります。
厚生労働大臣が認定する養成講習を修了する
臨床で働いてきた看護師の多くは、この養成講習ルートで受験することになります。 養成講習は、厚生労働大臣の認定を受けた民間の機関などが開いている講座で、合計150時間のカリキュラムです。
講習では、キャリア理論・カウンセリング理論・労働市場や労働関係法令の知識のほか、面談のロールプレイなどの演習に多くの時間をかけます。 全体の半分以上は通学(オンラインのリアルタイム授業を含む)で受ける決まりのため、通信だけでは修了できません。
修了による受験資格に有効期限はないため、講習を終えてから少し間を空けて受験することもできます。
実務経験3年のルートに該当するか
実務経験ルートの「経験」に当たるかどうかは、次の3つをすべて満たすかで個別に判断されます。
-
相談する相手現在働いている人や仕事を探している人など「労働者」であること
-
相談の内容職業の選択、職業生活設計、職業能力の開発や向上に関する相談であること
-
相談の形一対一、またはおおむね6名以内の少人数グループワークなどであること
看護師の仕事に当てはめると、患者さんへの療養指導や退院支援は、相談の内容が「職業の選択」などではないため、実務経験にはなりにくいと考えられます。
病棟で行う新人や後輩との面談も、定型的な評価面談や人事考課の面談は実務経験に含まれないとされています。
実務経験ルートで申請する場合は、相談業務の内容を直属の上長が証明する「実務経験証明書」と「誓約書」の提出が必要です。
相談に3年以上、継続的・反復的に携わっていることが条件のため、臨床の看護師が条件を満たすケースは限られます。
看護師の求人を探す技能検定の合格によるルート
キャリアコンサルティング技能検定(1級・2級)の学科試験か実技試験のどちらかに合格していれば、キャリアコンサルタント試験を受験できます。 技能検定の1級・2級の学科と実技の両方に合格した人は、キャリアコンサルタント試験に合格した人と同じ扱いになり、そのまま登録へ進めます。
ただし、技能検定は「熟練レベル(2級)」「指導者レベル(1級)」の位置づけで、2級でも原則5年以上の実務経験が受検資格です。 キャリア相談の経験がない看護師が、最初に選ぶルートではありません。
臨床一筋の看護師は、養成講習から始めるのが近道だね
参考:厚生労働省「キャリアコンサルタントになりたい方へ」 / キャリアコンサルティング協議会「受験要件(受験資格や実務経験)について」
試験の内容と合格率

キャリアコンサルタント試験は、学科試験と実技試験(論述・面接)に分かれています。
試験は年3回(3月・7月・11月ごろ)で、厚生労働大臣の登録を受けた「キャリアコンサルティング協議会」と「日本キャリア開発協会」の2つの機関が実施しています。
| 学科試験 | 実技試験 | ||
|---|---|---|---|
| 論述 | 面接 | ||
| 形式 | 四肢択一マークシート・50問 | 記述式事例記録を読んで解答 | ロールプレイ+口頭試問 |
| 時間 | 100分 | 50分 | 20分ロールプレイ15分・口頭試問5分 |
| 合格基準 | 100点満点で70点以上 | 150点満点で90点以上論述と面接の評価区分ごとに満点の40%以上も必要 | |
学科と実技は別々に受験でき、片方だけ合格した場合は次回以降その試験が免除されます。 登録するには両方の合格が必要です。
学科試験
学科試験は2つの機関で同じ日に同じ問題が出題され、四肢択一のマークシート方式で解答します。 出題範囲は、キャリアコンサルティングの社会的意義、理論、実務、関係法令、倫理と行動の5科目です。
看護師にとってなじみが薄いのは、労働関係法令・労働市場・社会保障制度の分野です。 試験の問題は、年度ごとに決められた法令基準日の時点で施行されている法令をもとに出題されるため、テキストは最新版を使いましょう。 反対に、メンタルヘルスやライフステージの発達課題は、看護の知識と重なる部分があります。
実技試験の論述と面接
論述試験は、相談の事例記録(逐語記録)を読み、相談者の問題をどう捉え、どう支援するかを記述する試験です。 面接試験は、受験者がキャリアコンサルタント役になって相談者役と15分間のロールプレイを行い、そのあと試験官からの質問に答えます。
面接の評価区分は機関によって異なり、キャリアコンサルティング協議会は「態度」「展開」「自己評価」、日本キャリア開発協会は「主訴・問題の把握」「具体的展開」「傾聴」です。 患者さんの話を聴く経験は活きますが、病状を聞き取る問診とは違い、相談者自身が気づくのを支える関わり方が求められます。
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合格率の目安
厚生労働省が公表している最新の第32回試験(令和8年7月)の合格率は、学科試験が54.8%、実技試験が61.7%でした。 学科と実技を同時に受けた人のうち両方に合格したのは45.8%です。
学科試験は回によって合格率が大きく変わり、直前の第31回(令和8年3月)は80.6%でした。 実技試験は60%台で推移しています。
合格率は機関ごとにも差があります。 第32回の実技試験は、キャリアコンサルティング協議会が60.3%、日本キャリア開発協会が66.5%でした。 学科試験は同じ問題のため、54.6%と55.6%で大きな差はありません。
第32回の学科試験の受験者3,804人のうち、約9割(3,425人)が養成講習の修了者で、看護師と同じく養成講習から受験する人が大半です。
合格率が回ごとに変わると、ちょっと不安になるよね
参考:厚生労働省「第32回キャリアコンサルタント試験結果の概要」 / キャリアコンサルティング協議会「受験概要」
取得にかかる費用と期間

キャリアコンサルタントになるまでにかかるお金は、養成講習の受講料、試験の受験料、登録のための手数料と税の3つです。 このうち受験料と登録の費用は全国共通で、差が出るのは養成講習の受講料です。
養成講習の費用
厚生労働省の養成講習一覧(令和8年4月〜)を見ると、22の講習の基本料金は19万8,000円〜43万7,800円と、講習によって2倍以上の差があります。 基本料金は会員価格や割引を除いた料金で、実際の支払額は講習実施機関のサイトで確認しましょう。
金額だけで決めず、次の点も比べておくと、働きながらでも続けやすい講習を選べます。
- 通学やオンライン授業の曜日・時間帯が勤務シフトと合うか
- 教育訓練給付金の指定講座かどうか
- 修了後の試験対策(論述・面接の練習)があるか
- 欠席したときの振替や補講の仕組みがあるか
受験料と登録料
受験料は2つの機関で共通で、学科試験8,900円、実技試験29,900円です。 片方だけ不合格になった場合は、その試験の受験料をもう一度払って受け直します。
両方に合格したら、キャリアコンサルティング協議会の登録センターに登録を申請します。 登録には登録手数料8,000円と登録免許税9,000円がかかり、登録を終えてはじめて「キャリアコンサルタント」を名乗れます。
看護師の求人を探す教育訓練給付金の対象になるか
キャリアコンサルタントの養成講習は、教育訓練給付金の対象になる講座があります。
ただし、専門実践教育訓練・特定一般教育訓練・一般教育訓練のどれに指定されているか、そもそも指定されているかは講座ごとに異なるため、厚生労働省の「教育訓練講座検索システム」で確認しましょう。
給付を受けるには、雇用保険の加入期間などの条件があります。 はじめて利用する場合、専門実践教育訓練は加入期間2年以上、特定一般・一般教育訓練は1年以上が必要です。
専門実践・特定一般教育訓練の講座を受ける場合は、次の順に手続きします。
- ハローワークなどで訓練前キャリアコンサルティングを受ける
- 受講開始日の2週間前までに、ハローワークで受給資格を確認する
- 受講を始め、専門実践は6か月ごと、特定一般は修了後にハローワークへ支給申請する
手続きは受講開始より前に始まるため、申し込む講座が決まったら早めにハローワークに相談しておくと安心です。
働きながら受講する場合の期間
養成講習は150時間のうち半分以上が通学(オンラインを含む)なので、夜勤や土日勤務がある看護師は、授業日に休みを確保できるかが最初の確認ポイントです。 開講時期や授業日程は講習ごとに違い、厚生労働省の「キャリアコンサルタント講習検索サイト」で開講年月から探せます。
講習を修了したあとは、年3回の試験のうち、受験申請の締め切りに間に合う回を受けます。 申請から登録までの流れは次のとおりです。
-
申請前まで養成講習(150時間)を修了
-
2026年12/9〜12/23受験申請
-
2027年3/7学科試験・実技試験(論述)
-
3/13〜3/21実技試験(面接)土日の4日間のうち1日
-
4/20(予定)合格発表
-
合格後登録センターに登録申請し、名簿に登録
シフトの希望休を早めに出しておけば、働きながらでも大丈夫!
参考:厚生労働省「キャリアコンサルタントになりたい方へ」 / 厚生労働省「教育訓練給付金」
資格取得後に必要な更新手続き

キャリアコンサルタントの登録は、5年ごとに更新しなければ効力を失います。 看護師免許のように一度取れば終わりではなく、更新講習を受けて知識と技能を保つことが条件です。
更新講習の内容
更新には、5年の間に次の2種類の講習を受ける必要があります。
-
知識講習(8時間以上)労働関係法令や労働市場、メンタルヘルスなど、変化する知識を学び直す
-
技能講習(30時間以上)カウンセリングや面談の進め方など、自分に必要な分野を選んで受ける
技能講習は、キャリアコンサルティングの実務に従事した時間などを、10時間を上限に講習を受けた時間とみなす仕組みがあります。 看護部での面談などが実務に当たるかは、資格取得前の受験資格と同じ3つの基準で判断されます。
更新の申請期間は、登録の有効期間が満了する日の90日前から30日前までです。 講習は計画的に受けておかないと、申請期間に間に合わなくなります。
更新にかかる費用
更新の申請には、更新手数料8,000円がかかります。 これに加えて、知識講習と技能講習の受講料が必要です。
厚生労働省の知識講習一覧(令和8年4月〜)では、21講習の基本料金は6,000円〜26,000円で、多くが通信で受講できます。 技能講習は時間数や内容がさまざまで、30時間を複数の講習で組み合わせることもあるため、5年間でどの講習を受けるかを早めに考えておくと費用の見通しが立ちます。
講習を毎年少しずつ受けておくと、更新の年に慌てずに済むよ
参考:厚生労働省「キャリアコンサルタントとして活動している方へ」 / 厚生労働省「更新講習の受講について」
看護師がキャリアコンサルタント資格を活かせる場面

キャリアコンサルタントの資格は、転職しなければ使えないものではありません。 今の病院や看護学校に残りながら活かす方法もあれば、企業や人材紹介会社へ移って活かす方法もあります。
- 相談相手
- 新人・中堅・復職した看護師
- 役割の例
- キャリア面談、離職の相談
- 相談相手
- 転職を考える看護師
- 役割の例
- 求人紹介、面接や条件の調整
- 相談相手
- 企業で働く社員
- 役割の例
- 復職や両立の相談、キャリア研修
- 相談相手
- 就職先を考える看護学生
- 役割の例
- 進路面談、就職先選びの支援
今の職場に残っても、資格を活かせる場面はあるんだね
病院の看護部での人材育成
看護部では、新人や中堅看護師の面談、異動や部署選びの相談、育児や介護との両立の相談など、キャリアに関わる相談を受ける場面が多くあります。 傾聴や面談の進め方を体系的に学んでいると、評価のための面談とは別に、本人の希望を引き出す相談ができるようになります。
教育担当や看護管理者を目指す人にとっては、離職を考えているスタッフへの関わり方を学べる点もメリットです。 資格を持っていることを看護部に伝えておくと、キャリア面談や教育委員会の役割を任されるきっかけにもなります。
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看護師向け人材紹介会社のキャリアアドバイザー
看護師の転職を支援する人材紹介会社では、看護師経験のあるキャリアアドバイザーが働いていることがあります。 臨床を知っていることで、求職者の悩みや職場の違いを具体的に理解できるのは強みです。
ただし、キャリアアドバイザーの求人は資格を必須としていないことも多く、求められるのは営業経験や目標を追う働き方への適性であるケースも少なくありません。 資格は相談の質を支える土台になりますが、資格があるだけで採用されるわけではない点は知っておきましょう。
- 求人は資格より営業経験や適性を見ることが多い
- 臨床経験は求職者の悩みを理解する強みになる
- 応募前に仕事内容と評価の仕組みを確かめよう
企業の産業保健・人事部門
企業で働く看護師や保健師は、社員の健康管理やメンタルヘルス対応を担っています。 体調や働き方の相談はキャリアの悩みとつながっていることが多く、キャリアコンサルタントの知識があると、休職からの復帰や治療と仕事の両立の相談にも幅広く対応できます。
人事部門では、社員のキャリア面談や研修の企画に関わる仕事もあります。 病院以外の職場の選択肢は、以下の記事も参考にしてください。
看護学校での進路支援
看護学校の教員や実習指導者は、学生の就職先選びや進路の相談を受ける立場にあります。 病院の機能や働き方の違いを知っている看護師が、相談の技法も身につけていれば、学生が自分の希望に合った就職先を考えられるよう支援できます。
専門学校で就職を希望する学生の相談は、キャリアコンサルティングの実務経験の例としても挙げられています。 資格取得後に実務を積めば、技能検定などさらに上のステップを目指す道も開けます。
まとめ
看護師がキャリアコンサルタントの資格を取るには、多くの場合、養成講習を修了して国家試験を受け、名簿に登録する流れになります。
この記事のポイント
- キャリアコンサルタントは名称独占の国家資格
- 臨床の看護業務は実務経験ルートに当たりにくい
- 養成講習は150時間で半分以上が通学かオンライン
- 最新の第32回は学科54.8%・実技61.7%の合格率
- 登録は5年ごとの更新と更新講習が必要
まずはキャリアコンサルタント講習検索サイトで、勤務シフトと両立できる講習と給付金の対象かどうかを確認してみましょう。 キャリアコンサルタント以外に、看護師が取れる資格を比べてから決めたい場合は、以下の記事が参考になります。


