感染制御専門薬剤師を取得するメリット|認定薬剤師との違いと取得の要件
感染制御認定薬剤師を取ったあと、「次は専門薬剤師まで目指すべき?」と迷ったことはないですか?
感染制御専門薬剤師を取得するメリットは、院内外で感染領域の専門家として認められ、研究や後進の育成まで任される立場になれることです。
この記事では、感染制御専門薬剤師のメリットと認定薬剤師との違い、認定から専門へ進むための要件・更新条件を、日本病院薬剤師会(日病薬)の公表資料をもとに紹介します。
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感染制御専門薬剤師を取得するメリット

感染制御専門薬剤師は、日病薬が認定する感染制御領域の上位資格です。 日病薬は理念として、感染制御に関する高度な知識・技術・実践能力で、患者さんが安心・安全に治療を受けられる環境づくりに貢献することを掲げています。
院内で感染領域の専門家として扱われる
日病薬の公表では、令和8年4月1日現在の感染制御専門薬剤師は381名(うち更新者244名)です。 感染制御認定薬剤師(令和7年10月1日現在1,070名)と比べても、およそ3分の1の人数にとどまります。
人数が少ない分、院内で「感染のことはこの人に聞けばいい」と頼られる場面が増えます。 医師から抗菌薬の選択や投与設計の相談を受けるなど、処方の判断に関わる機会が広がりやすくなります。
ICTやASTの責任者を任されやすい
専門薬剤師の更新条件には、施設内・地域・学会などで指導的役割を果たしてきたことの証明が含まれています。 資格を持つことで、ICT(感染制御チーム)やAST(抗菌薬適正使用支援チーム)の薬剤師側のまとめ役を任されることもあります。
ただし、令和8年度診療報酬改定後の感染対策向上加算でも、チームの薬剤師に求められるのは「3年以上の病院勤務経験」で、専門薬剤師の資格そのものは施設基準の要件ではありません。 役職やチーム内の立場は、資格だけでなく施設の方針や実務の実績で決まります。
院外や地域の連携で窓口になれる
日病薬は専門薬剤師の定義の一つに、感染制御に関する情報を地域の他施設と共有し、ネットワーク化できることを挙げています。 地域の合同カンファレンスや中小病院からの相談で、薬剤部の代表として対応する役割を担いやすくなります。
研究や後進の育成に関われる
日病薬の制度では、専門薬剤師の研修施設として認められる条件に、原則として日病薬認定の専門薬剤師が1名以上在籍することが含まれています。 専門薬剤師は、施設として後輩を育てる体制の中心になる立場です。
学会発表や論文の経験を生かして、後輩の研究テーマの相談に乗ったり、共同演者として発表を指導したりする機会も増えます。 専門薬剤師の種類やほかの領域で取得するメリットは、以下の記事でも紹介しています。
転職や処遇で評価されやすい
日病薬は認定者の氏名と所属施設を公表しているため、専門性を第三者が確認できる形で示せます。 感染対策に力を入れている病院へ転職するときは、ICT・ASTでの実績とあわせて具体的にアピールしやすくなります。
一方で、資格手当の有無や金額は施設ごとに異なり、取得すれば必ず給与が上がるわけではありません。
資格手当がつくかどうかは、職場しだいなんだね
処遇を重視するなら、求人票や面接で資格の評価方法を確認しておくと安心です。
薬剤師の求人を探す参考:日本病院薬剤師会「感染制御専門薬剤師認定者の公表について」 / 厚生労働省「基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて(令和8年3月5日保医発0305第7号)」
感染制御認定薬剤師との違い

感染制御認定薬剤師と専門薬剤師は、どちらも日病薬が認定する資格です。 専門薬剤師は認定薬剤師の上に位置づけられ、実践力に加えて研究能力と指導力まで求められます。
| 感染制御認定薬剤師 | 感染制御専門薬剤師 | |
|---|---|---|
| 前提となる資格 | 日病薬病院薬学認定薬剤師など | 感染制御認定薬剤師 |
| 経験年数 | 実務3年以上・感染制御活動3年以上 | 定めなし |
| 症例報告 | 20例以上 | 定めなし |
| 講習の履修 | 20時間・10単位以上 | 定めなし |
| 学会発表 | 不要 | 2回以上(1回以上は発表者) |
| 学術論文 | 不要 | 1編以上(1編以上は筆頭著者) |
| 所属学会 | 医療薬学会・薬学会など指定学会のいずれか | ICD制度協議会の加盟学会・研究会 |
| 認定試験(令和8年度) | 5月 | 12月または1月 |
求められる水準の違い
認定薬剤師は、ICTやASTの一員として感染対策を現場で実践できることを示す資格です。 申請では、施設内での感染制御活動の年数や、薬学的介入の症例報告が中心になります。
専門薬剤師では、日病薬の定義に「感染制御領域に関する研究能力を有すること」が加わります。 日々の介入を積み重ねるだけでなく、その成果をデータにまとめて発信できるかどうかが問われます。
学会発表と論文の要件
認定薬剤師の新規申請には、学会発表や論文の条件はありません(更新時には発表または論文が1件以上必要)。 専門薬剤師は新規申請の時点で、学会発表2回以上と学術論文1編以上が必要です。
しかも、発表のうち1回以上は自分が発表者、論文のうち1編以上は筆頭著者であることが条件です。 共同演者や共著者として名前が載っているだけでは、要件を満たせません。
筆頭著者の論文って、ハードルが高く感じるよね
認定が前提条件になること
専門薬剤師の申請時には、感染制御認定薬剤師の資格を持っていることが必要です。 いきなり専門薬剤師を目指すことはできず、認定を取ってから専門に進む順番になります。
以前はICD(インフェクションコントロールドクター)の資格でも代えられる経過措置がありましたが、令和5年度までの申請で終了しています。
認定の更新期限が切れると申請資格を失うため、専門の準備中も認定の更新を忘れないようにしましょう。
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参考:日本病院薬剤師会「感染制御専門薬剤師認定申請資格」 / 日本病院薬剤師会「感染制御認定薬剤師認定申請資格」
取得後に担う業務

専門薬剤師になっても、ICT・ASTでの日常業務の中身が大きく変わるわけではありません。 変わるのは、業務を「担当する」立場から「企画し、まとめる」立場へ移ることです。
- エビデンスに基づいた感染対策を理解している
- 施設内の感染制御を評価し、医療関係者に情報提供できる
- 患者さんに合った薬物療法や感染対策を他職種に提案できる
- 臨床経験を生かして薬学的管理ができる
- 院内感染対策チームの一員として貢献している
- 感染制御領域の研究能力がある
- 感染制御の情報を地域の他施設と共有し、ネットワーク化できる
感染対策の企画と立案
院内のサーベイランスデータや耐性菌の動向をもとに、感染対策の方針を医師・看護師と一緒に組み立てます。 消毒薬の採用や院内マニュアルの改訂でも、エビデンスを示して提案する役割が中心になります。
抗菌薬の適正使用の推進
特定抗菌薬の使用状況の評価や、TDM(薬物血中濃度モニタリング)に基づく投与設計の提案は、専門薬剤師になっても中心業務の一つです。 患者さん一人ひとりの状態に合った薬物療法を他職種に提案できることも、日病薬の定義に含まれています。
院内教育と後進の指導
職員向けの感染対策研修で講師を務めるほか、認定薬剤師を目指す後輩の症例報告や学会発表の指導も受け持ちます。 自分が発表者・筆頭著者として経験した手順を伝えられるのは、専門薬剤師ならではの強みです。
自分が成果を出すだけじゃなく、後輩を育てる側に回るんだね!
地域の医療機関への支援
連携する中小病院やクリニックから、抗菌薬の選び方や消毒薬の使い分けについて相談を受けることがあります。 新興感染症の流行時など、地域全体で情報をそろえる必要がある場面でも、薬の情報をまとめて共有する役割を担います。
認定を受けるための要件

感染制御専門薬剤師の認定申請資格は、令和5年4月8日改定の内容が最新です(2026年10月19日確認)。 以下の4つをすべて満たす必要があります。
- 感染制御認定薬剤師であり、ICD制度協議会に加盟する学会・研究会の会員であること
- 感染制御領域の学会発表2回以上・学術論文1編以上
- 病院長・施設長などの推薦
- 日病薬の感染制御専門薬剤師認定試験に合格
認定薬剤師の申請資格にあった「実務経験〇年以上」「症例〇例以上」のような年数・件数の条件は、専門薬剤師の申請資格には書かれていません。
感染制御認定薬剤師であること
申請時に、有効な感染制御認定薬剤師の資格を持っていることが条件です。 認定薬剤師の取得には、薬剤師としての実務経験3年以上や、病院・診療所での感染制御活動3年以上などが必要です。
所属が必要な学会
専門薬剤師の申請では、ICD制度協議会に加盟している学会・研究会のいずれかの会員であることが求められます。
認定薬剤師のときは日本医療薬学会や日本薬学会などの会員でも条件を満たせましたが、専門薬剤師ではICD制度協議会の加盟学会に限られます。
加盟学会は追加・変更されることがあるため、入会前にICD制度協議会の最新の加盟学会一覧で確認しましょう。
学会発表の回数
感染制御領域に関する学会発表が2回以上(うち1回以上は発表者)必要です。 対象になるのは、日本医療薬学会・日本薬学会・日本臨床薬理学会・日本TDM学会・ICD制度協議会の加盟学会、日本薬剤師会学術大会、関連する国際学会・全国レベルの学会、日病薬ブロック学術大会です。
日病薬のQ&Aでは、学会発表のうちポスター発表と口頭発表が対象です。 申請締め切り後に行う発表は使えないため、締め切りまでに発表を終えておく必要があります。
薬剤師の求人を探す学術論文の要件
論文は、複数査読制のある国際的または全国的な学会誌・学術雑誌に掲載された、感染制御領域のものが対象です。 1編以上が必要で、そのうち1編以上は筆頭著者でなければなりません。
| 専門薬剤師の新規申請 | 更新申請 | |
|---|---|---|
| 論文の対象期間 | 掲載年から10年以内 | 認定期間開始後、掲載年から5年以内 |
| 論文1編を使える人数 | 筆頭〜第5著者のうち3名まで | 3名まで(著者順は問わない) |
| 発表の対象期間 | 発表年から10年以内 | 認定期間開始後、発表年から5年以内 |
| 発表1回を使える人数 | 発表者〜第5共同発表者のうち3名まで | 1名のみ |
日病薬のQ&Aでは、論文の内容が感染制御専門薬剤師の論文として妥当かどうかは、認定審査で個別に判断するとしています。 査読付きの雑誌に載っていても、内容によっては認められない場合がある点に気をつけましょう。
施設長の推薦と認定試験
申請には、病院長や施設長などの推薦が必要です。 認定試験は原則年1回で、令和8年度の感染制御専門薬剤師認定試験は12月または1月の日曜日に東京で実施予定と公表されています(2026年10月19日確認時点で日程・会場は未定)。
認定申請・更新申請の締め切りは2月初旬で、認定期間は4月1日から始まります。 日病薬のQ&Aでは、認定試験の合格は合格した年度と翌年度の2回の申請に有効です。
参考:日本病院薬剤師会「感染制御専門薬剤師認定申請資格」 / 日本病院薬剤師会「令和8年度各領域の専門薬剤師・認定薬剤師に係る研修・講習会・認定試験等の予定について」
認定後の更新

感染制御専門薬剤師の認定期間は5年間で、更新しないと専門薬剤師を名乗れなくなります。 更新対象者には、満期の約1年前に日病薬から更新手続きの案内が届きます。
取得時だけでなく更新のたびにも審査料と更新料がかかるため、5年ごとの費用として見込んでおきましょう。
更新の周期と必要な単位
現在の更新条件(令和6年6月1日施行)では、更新申請までの5年間に感染制御に関する講習単位30単位以上が必要です。
特段の理由がない限り毎年3単位以上を取り、30単位のうち12単位以上は日病薬の感染制御に関する講習会で取得します。
令和8年度までに更新申請する人は、講習単位について従前の条件で申請することも認められています。
このほか、認定期間中ずっと日病薬(または日本薬剤師会・日本女性薬剤師会)の会員であることと、更新申請時に日本薬学会・日本医療薬学会・日本臨床薬理学会のいずれかと、日本TDM学会・ICD制度協議会加盟学会のいずれかの会員であることが必要です。
論文と学会発表の要件
更新申請までの5年間に、感染制御に関する学会発表1回以上、または学術論文1編以上が必要です。 更新では共同発表者・共著者でも認められ、新規申請より条件は緩やかです。
ただし、日病薬のQ&Aでは、専門薬剤師の新規申請に使った論文・発表を更新申請で再び使うことは認められていません。 認定期間が始まってからも、新しい発表や論文を積み重ねていく必要があります。
更新は共同発表でもOKだから、チームで取り組めるね!
活動報告の提出
更新時には、認定期間中に施設内で感染制御の専門的業務に従事していたことと、施設内・地域・学会などで指導的役割を果たしてきたことを証明する必要があります。
認定薬剤師の更新では「症例10例以上の報告」が求められるのに対し、専門薬剤師の更新では指導的役割の証明が求められる点が違いです。 研修の講師や後輩の発表指導などは、日付と内容を記録しておくと証明書類をまとめやすくなります。
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参考:日本病院薬剤師会「感染制御専門薬剤師認定の更新条件」 / 日本病院薬剤師会「専門薬剤師・認定薬剤師認定制度規程細則」
取得前に確認したいこと

感染制御専門薬剤師は、本人の努力だけでは満たしにくい要件を含む資格です。 特に筆頭著者の論文は、研究に使えるデータや時間、指導者の有無など、所属施設の環境に大きく左右されます。
論文執筆の環境があるか
論文を書くには、症例やサーベイランスのデータを研究として使うための倫理審査の手続きや、統計解析の知識が必要になります。
院内に倫理審査委員会があるか、過去に薬剤部から論文を出した実績があるかを確認しておくと、準備の見通しが立てやすくなります。
論文と学会発表の条件がある専門薬剤師は感染制御だけではなく、日本医療薬学会の医療薬学専門薬剤師なども同様です。
所属施設の支援体制
学会の参加費・旅費の補助や、研修日を勤務扱いにできるかどうかは、施設ごとに異なります。 院内に感染制御専門薬剤師がいれば、研究テーマの選び方から投稿までを相談しやすくなります。
先輩の専門薬剤師がいる職場なら、心強いね!
日病薬が公表している認定者一覧には所属施設も載っているため、どの病院に専門薬剤師がいるかを調べる手がかりになります。 今の職場で研究に取り組むのが難しい場合は、支援体制のある病院への転職も選択肢の一つです。
- 面接で学会参加費・旅費の補助の有無を確認
- 院内に感染制御専門薬剤師がいるかを確認
- ICT・ASTに薬剤師が専任で入る体制かを確認
認定から専門までにかかる年数
専門薬剤師の申請資格には、認定取得後の年数の条件は書かれていません。 ただし、認定薬剤師になるまでに実務経験や感染制御活動で最低3年かかり、そのうえで発表2回と筆頭論文1編をそろえる必要があります。
前述のとおり、専門薬剤師の新規申請に使える論文・発表は掲載・発表から10年以内のものです。 認定を目指している段階から学会発表を始めておくと、認定取得後に専門へ進むまでの期間を短くできます。
参考:日本病院薬剤師会「専門薬剤師・認定薬剤師の認定審査・更新審査に係る取扱いについて(Q&A)」 / 日本病院薬剤師会「感染制御専門薬剤師認定者の公表について」
まとめ
感染制御専門薬剤師を取得するメリットは、院内外で感染領域の専門家として頼られ、研究や後進の育成まで任される立場になれることです。 一方で、筆頭著者の論文など、所属施設の研究環境に左右される要件もあります。
この記事のポイント
- 専門薬剤師は381名(令和8年4月1日現在)と少数
- 申請には感染制御認定薬剤師の資格が前提
- 発表2回以上・論文1編以上(筆頭著者を含む)が必要
- 試験は12月か1月、申請締め切りは2月初旬
- 認定期間は5年で、更新には30単位と指導的役割の証明
まずは認定薬剤師の段階から学会発表を始め、論文に取り組める環境が今の職場にあるかを確かめてみましょう。
研究の支援体制がある病院で経験を積みたい場合は、感染対策に力を入れている病院の求人を探してみるのも一つの方法です。


