訪問リハビリとは?事業所の種別と療法士の業務・働き方を解説
訪問リハビリの求人を見ていると、病院の訪問部門もあれば訪問看護ステーションの募集もあり、どれも同じ仕事に見えて迷うことはありませんか?
訪問リハビリとは、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が利用者さんの自宅を訪ねてリハビリをするサービスですが、制度上は「訪問リハビリテーション事業所」からの訪問と「訪問看護ステーション」からの訪問の2種類があります。
この記事では、訪問リハビリの対象と条件、2つの違い、療法士の業務と1日の流れ、求人で確認したいポイントを紹介します。
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訪問リハビリの対象と提供できる条件

介護保険の「訪問リハビリテーション」は、病院・診療所・介護老人保健施設(老健)・介護医療院だけが提供できるサービスです。
利用者さんの自宅で、心身の機能の維持回復と日常生活の自立を目的に、理学療法・作業療法・言語聴覚療法をします。 提供には、医師の診療に基づく指示と、その指示をもとにした計画が必要です。
対象になる利用者
訪問リハビリの対象は、要介護認定を受けた人(要支援の人は「介護予防訪問リハビリテーション」)のうち、次の条件にあてはまる人です。
- 病状が安定期にある
- 自宅で、医師の診療に基づく計画的な医学的管理のもとでリハビリが必要
- 通院してリハビリを受けることが難しい
通所リハビリ(デイケア)は利用者さんが病院や老健に通って受けるサービスで、訪問リハビリは通院や通所が難しい人の自宅に療法士が出向く点が違います。
令和7年の受給者数は約15万人で、そのうち要介護の人が約12万人、要支援の人が約3.0万人です。 提供している事業所は年々増えていて、内訳を見ると病院・診療所が大半を占めます。
主治医の指示とリハビリテーション計画
訪問リハビリは、計画的な医学的管理をしている事業所の医師の指示のもとで提供します。 医師と療法士は、医師の診療をもとに、目標や具体的なサービス内容を書いた「訪問リハビリテーション計画」を作成し、利用者さんや家族に説明して同意を得たうえで交付します。
訪問リハビリ費は、事業所の医師の診療の日から3月以内に行った訪問で算定します。
事業所の医師がやむを得ず診療できない場合は、別の医療機関の医師から情報提供を受けて計画を作り、1回50単位を減算したうえで提供する仕組みもあります。
利用できる回数と1回の時間
介護保険の訪問リハビリは、20分以上を1回として、1週に6回が上限です。 退院・退所の日から3月以内の利用者さんに、医師の指示に基づいて続けてリハビリをする場合は、週12回まで算定できます。
訪問リハビリは「20分で1回」の数え方がベースなんだね!
実際の利用状況を見ると、1回あたりの利用時間は40分(2回分)が約8割を占めます。 1週あたりの利用回数は、要支援の人は週1回が中心で、要介護度が重いほど週2回の割合が増えます。
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参考:厚生労働省「訪問リハビリテーション(社保審-介護給付費分科会 第259回 資料4)」 / 千葉県「令和6年度介護保険事業者集団指導(介護予防)訪問リハビリテーション編」
訪問リハビリと訪問看護からのリハビリの違い

利用者さんの自宅でリハビリをする療法士は、所属先によって制度上の扱いが変わります。 訪問看護ステーションの理学療法士・作業療法士・言語聴覚士による訪問は、制度上は「訪問看護」の一部として提供されるサービスです。
事業所の種別の違い
訪問リハビリテーション事業所と訪問看護ステーションでは、指示を出す医師、人員基準、作成する書類がそれぞれ違います。
| 項目 | 訪問リハビリテーション事業所 | 訪問看護ステーション |
|---|---|---|
| 制度上のサービス | 訪問リハビリテーション | 訪問看護(理学療法士等による訪問) |
| 運営する施設 | 病院・診療所・介護老人保健施設・介護医療院 | 訪問看護ステーション |
| リハビリの指示 | 事業所の医師の診療と指示 | 主治医が交付する訪問看護指示書 |
| 医師の配置 | 常勤の医師1人以上 | 配置基準なし |
| 職員の配置 | PT・OT・STが1人以上 | 看護職員が常勤換算2.5人以上、PT・OT・STは実情に応じた人数 |
| 作成する計画 | 訪問リハビリテーション計画 | 訪問看護計画書・報告書 |
訪問リハビリテーション事業所は、医療機関や老健の一部門として運営されることが多く、同じ法人内の医師やリハビリ部門とつながりやすいのが特徴です。 訪問看護ステーションは看護職員が中心の事業所で、療法士は看護職員と連携しながら訪問します。
報酬上の扱いの違い
介護保険では、訪問リハビリは「訪問リハビリテーション費」、訪問看護ステーションの療法士の訪問は「訪問看護費」の一区分として報酬が決まっています。
20分以上を1回と数える点は同じですが、単位数や減算のルールが異なります。
病院・診療所・老健・介護医療院で同じ単位数
1日に2回を超えると90%で算定
週6単位まで(退院後3月以内は週12単位)
訪問看護ステーションの療法士の訪問では、令和6年度の改定で、前年度に療法士の訪問回数が看護職員の訪問回数を上回った事業所などに1回8単位の減算が設けられました。
医療保険の訪問リハビリは、介護保険とは別の仕組みです。 病院・診療所が、通院が難しい在宅患者さんに療法士を訪問させた場合は「在宅患者訪問リハビリテーション指導管理料」を算定し、訪問看護ステーションからは医療保険の訪問看護として提供されます。
要介護・要支援の認定を受けている人は、原則として介護保険のサービスが医療保険より優先されます。
同じ「訪問リハビリ」でも、お金の出どころがこんなに違うの?
求人票での見分け方
求人票では、どちらも「訪問リハビリ」とまとめて書かれていることがよくあります。 所属先の種別は、事業所名や法人名、仕事内容の書き方から見分けられます。
表記だけで判断できないときは、「訪問看護ステーションとしての募集か、医療機関(老健)の訪問リハビリ部門としての募集か」を応募前に確認しておくと安心です。
理学療法士の求人を探す参考:厚生労働省「訪問看護(社保審-介護給付費分科会 第259回 資料3)」 / 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」
訪問リハビリで療法士が行う業務

訪問リハビリの業務は、機能訓練だけでなく、自宅の環境や家族の介助方法まで含めて生活を整える仕事です。 国の調査では、筋力増強訓練・関節可動域訓練・平地の歩行訓練の実施割合が高く、家屋評価や家族への指導も業務に含まれます。
身体機能の評価と訓練
訪問のたびに、バイタルサインや前回からの体調の変化を確認し、その日のリハビリを実施できるかを判断します。 そのうえで、筋力・関節可動域・バランスなどを評価し、計画に沿って訓練します。
病院と違って機器がそろっていないため、ベッドや椅子、廊下、段差など自宅にあるものを使って訓練を組み立てるのが特徴です。 言語聴覚士の場合は、失語症や構音障害の訓練、摂食嚥下の評価・訓練が中心になります。
日常生活動作の練習
起き上がり、立ち上がり、トイレ、入浴、更衣など、利用者さんが実際に暮らしている環境で日常生活動作(ADL)を練習します。 訓練室ではできても自宅ではできない動作を、その場で確認して練習できるのが訪問リハビリの強みです。
買い物やバスの乗り降りなど、自宅からの一連の行為として外出の練習をする場合は、訪問リハビリテーション計画に目的や頻度を書いておく必要があります。
住環境の評価と福祉用具の提案
自宅の段差や手すりの位置、通路の幅を確認し、転倒しにくく動きやすい環境を提案します。 手すりの設置や福祉用具の導入はケアマネジャーや福祉用具専門相談員と相談しながら進めるため、療法士は「どこに・何が必要か」を専門的な立場から伝える役割です。
家族への指導
自宅での生活を支えるのは、訪問していない時間の過ごし方です。 家族には、安全な介助の方法や、毎日続けられる自主トレーニングを伝えます。
指導するときは、家族の体力や仕事の状況に合わせて、無理なく続けられる量に絞るのがコツです。 介助が負担になりすぎていないかを確認するのも、訪問リハビリの大切な役割です。
家族の様子まで気にかけるのって、思ったより気を使うよね
記録と報告書の作成
訪問リハビリでは、計画に沿った実施状況と評価を診療記録に残し、医師に報告することが基準で決められています。 訪問リハビリテーション計画や提供したサービスの記録は、基準では完結の日から2年間の保存が定められています。
ケアマネジャーや他のサービス事業所とは、リハビリテーション会議で利用者さんの状況や目標を共有します。 会議はテレビ電話装置などを使って開くこともできます。
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PT・OT・STそれぞれの専門性の違いは、以下の記事で紹介しています。
参考:e-Gov法令検索「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」
訪問リハビリの1日の流れ

訪問リハビリの1日は、事業所での準備と打ち合わせ、利用者さん宅への訪問、移動、記録の繰り返しです。
訪問件数や移動時間は事業所ごとの差が大きいため、ここで紹介する流れは一例として見てください。
訪問件数と移動
1日の訪問件数は、1件あたりの訪問時間と移動時間、担当エリアの広さで決まります。 同じ件数でも、訪問先が近い都市部と、移動に時間がかかる郊外では負担が大きく変わります。
雨の日や渋滞、駐車場所探しで予定どおりに移動できないこともあります。 訪問先の間に余裕を持たせたスケジュールかどうかで、1日の慌ただしさは変わります。
1件あたりの時間配分
前述のとおり訪問リハビリは40分(2回分)の利用が多く、その時間の中で体調確認から訓練、指導までをこなします。
訪問先で記録を済ませるか、事業所に戻ってまとめて書くかは事業所によって違います。 タブレットなどで訪問先から入力できる事業所なら、事業所に戻ってからの作業を減らせます。
作業療法士の求人を探す事業所での打ち合わせ
朝や夕方には、事業所でその日の予定や利用者さんの状態を共有します。 病院や老健の訪問リハビリ部門なら医師やリハビリ部門のスタッフと、訪問看護ステーションなら看護職員と、情報をすり合わせる時間です。
1日の流れが分かると、働くイメージがわいてくるね
訪問リハビリの給与や働き方の特徴は、以下の記事で詳しく紹介しています。
訪問リハビリで働く療法士に必要なこと

訪問リハビリは、病院のようにすぐ相談できる上司や同僚がそばにいない環境で働きます。 そのぶん、病院勤務とは違う力が求められます。
単独で判断する力
訪問先では、基本的に療法士が1人で利用者さんと向き合います。 体調の変化に気づいたとき、リハビリを続けるか中止するか、誰に連絡するかをその場で自分で判断しなければなりません。
| 場面 | その場で決めること | 連絡・相談する相手 |
|---|---|---|
| 血圧や脈がいつもと違う | 実施・軽めの内容に変更・中止 | 事業所、医師(訪問看護なら看護職員) |
| 訪問したら転倒していた | けがの確認、救急要請が必要か | 家族、事業所、ケアマネジャー |
| 家族の介護疲れが目立つ | 状況の聞き取り、介助方法の見直し | ケアマネジャー |
| 福祉用具が体に合っていない | そのまま使ってよいか | ケアマネジャー、福祉用具の担当者 |
判断を誤ると利用者さんの体調悪化につながるため、1人で抱える責任は病院勤務より重く感じやすい部分です。 経験が浅いうちは、同行訪問の期間や、訪問中に電話で相談できる体制があるかを確認しておくと安心です。
多職種との連携
訪問リハビリでは、医師、看護職員、ケアマネジャー、ヘルパー、福祉用具の担当者など、事業所の外の人と連携する場面が多くあります。 療法士が見た自宅での様子を、ケアマネジャーやほかのサービスに分かりやすく伝えることで、ケアプラン全体がうまく回ります。
連携先は医療職ばかりではないため、相手の職種に合わせて専門用語をかみ砕いて伝える力が役立ちます。
自宅での生活を一番近くで見られるのは訪問リハビリならではだよ!
移動手段と運転
訪問の移動手段は、車・バイク・自転車のどれかが多く、地域によって変わります。 車で訪問する事業所では運転免許が応募条件になっていることもあり、運転に慣れていないと移動そのものが負担になります。
社用車か自家用車か、自家用車ならガソリン代や車両の維持費の補助があるかも確認しておきましょう。 運転に不安がある場合は、自転車で回れる狭いエリアを担当する事業所を選ぶ方法もあります。
求人を探すときに確認したいこと

訪問リハビリの働きやすさは、事業所の種別と、1日の訪問件数、移動時間の扱いで大きく変わります。 求人票に書かれていないことも多いため、応募前や面接で確認しましょう。
- PT求人6,409件のうち訪問リハビリが1,983件で最多
- OT・STも訪問リハビリが最多(1,727件・939件)
- 訪問リハビリ求人の月給中央値は30万円(PT・OT・ST)
事業所の種別
まず、病院・老健などの訪問リハビリ部門か、訪問看護ステーションかを確認します。 訪問看護ステーションの場合、療法士の訪問は「看護業務の一環としてのリハビリ」という位置づけで、次のようなルールがあります。
- 訪問看護計画書・報告書は看護職員と療法士が連携して作成する
- 利用開始時や状態の変化に合わせて、看護職員も定期的に訪問する
- 毎回の訪問記録で、看護職員と利用者さんの状況を共有する
看護職員と一緒に動く場面が多いため、看護職員との情報共有のしかたや、療法士の人数も聞いておくと働く姿をイメージしやすくなります。
1日の訪問件数
1日の訪問件数は、働く負担を測るいちばん分かりやすい目安です。 求人票に「1日〇件程度」と書かれていても、それが平均なのか、達成すべき件数(ノルマ)なのかで意味が変わります。
- 1日の平均件数と、多い日の件数
- 件数の目標やノルマがあるか
- 件数に応じたインセンティブ(歩合)があるか
- キャンセルが出たときの扱い(給与が減るか)
インセンティブがある事業所では、件数を増やすほど収入が上がる一方、件数が減ると給与も下がる仕組みのこともあります。
移動時間の扱い
訪問系の仕事では、移動時間が労働時間に含まれるかどうかが大切です。 訪問介護の働き方について国が示した通達では、事業所と利用者宅、利用者宅どうしの移動時間は、使用者の指揮監督のもとにあれば労働時間にあたるとされています。
求人票の「実働時間」に移動時間が含まれているか、直行直帰ができるかもあわせて確認しましょう。
オンコールの有無
訪問看護ステーションでは、24時間の連絡・訪問体制をとる事業所が多くあります。 療法士がオンコール当番に入るかどうかは事業所によって違い、看護職員だけで対応しているところもあります。
オンコールがある場合は、月の回数、手当の金額、実際に呼び出されたときの対応内容を確認しておきましょう。 病院や老健の訪問リハビリ部門でも体制は事業所ごとに違うため、応募前に確認しておくと安心です。
参考:千葉市「訪問看護におけるリハビリテーションについて」 / 厚生労働省「訪問介護労働者の法定労働条件の確保について」
まとめ
訪問リハビリとは、療法士が利用者さんの自宅で生活に直結したリハビリをするサービスです。 同じ「訪問リハビリ」の求人でも、所属先が訪問リハビリテーション事業所か訪問看護ステーションかで、指示系統や報酬、連携相手が変わります。
この記事のポイント
- 訪問リハビリ事業所は病院・診療所・老健・介護医療院だけ
- 訪問看護ステーションの療法士の訪問は訪問看護の一部
- 介護保険の訪問リハビリは20分で1回、週6回が上限
- 単独での判断や多職種との連携が求められる
- 求人では訪問件数と移動時間の扱いを確認する
まずは気になる求人がどちらの種別かを確かめ、1日の訪問件数と移動時間の扱いを比べてみましょう。 求人票だけで分からない点は、転職エージェントに確認してもらうと、応募前に働き方のイメージをつかめます。


