日病薬病院薬学認定薬剤師の役割とは?求められる5領域と取得要件

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日病薬病院薬学認定薬剤師の役割は、日本病院薬剤師会が定める研修カリキュラムの5領域16項目として制度上はっきり決まっています。医療倫理と法令の順守、基本的業務、チーム医療、医療安全、ファーマシューティカルケアの5つが到達目標で、認定試験の出題範囲もこの5領域です。

役割の中身と院内で任される業務、3年度50単位という取得要件、そして他の認定資格との位置関係をまとめました。

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    日病薬病院薬学認定薬剤師とは?

    調剤室でバインダーを持ち薬を指さす女性薬剤師

    一般社団法人日本病院薬剤師会(日病薬)が認定する生涯研修の資格です。3年度で50単位以上の研修と認定試験の合格が条件で、2025年7月1日現在の認定者は11,330名。6年ごとの更新制で、更新のたびに試験を受け直します。

    日本病院薬剤師会が認定する資格

    高度化・複雑化する薬物療法に薬剤師が主体的に参加するという社会的要請に応え、臨床現場での実践力を持つ薬剤師を養成することです。資格名に「病院薬学」と入っているのは、薬剤部内や病棟で必要になる基本的臨床能力を対象にしているためで、特定の疾患領域に絞った資格ではありません。

    この制度は薬剤師認定制度認証機構(CPC)の認証を受けています。CPCは薬剤師の生涯学習と認定制度を第三者の立場で評価する機関で、認証された制度は「生涯研修認定制度」と「特定領域認定制度」に分けて公表されています。

    日病薬病院薬学認定薬剤師制度は後者の特定領域認定制度に入っていて、幅広い職域を対象にした生涯研修認定制度とは区分が違います。

    新規認定者数の推移(年度別)
    2,028 1,996 1,674 1,869 1,995 1,768 2020 2021 2022 2023 2024 2025
    11,330名 累計認定者
    4,242名 更新者
    ※2025年7月1日現在

    病院薬学って、結局どこまでが範囲なの?

    認定の対象になる勤務先

    規程では「病院・診療所・介護保険施設等の医療現場において活躍しうる薬剤師」を認定するとしています。病棟業務が中心の制度ではありますが、認定要件は勤務先そのものではなく日病薬の正会員または特別会員であることで定められています。

    特別会員には保険薬局勤務の薬剤師や大学教員が含まれるため、病院に勤めていなくても対象から外れるわけではありません。病院から薬局へ移った後も、会員資格を維持していれば研修と更新を続けられます。

    認定期間と更新の仕組み

    認定期間は6年で、7月1日から6年後の6月30日までが1期です。2025年度の認定者であれば2025年7月1日〜2031年6月30日となります。更新は書類審査だけでは済まず、新規と同じように認定試験に合格する必要があります。

    6年サイクルの流れ
    単位取得期間
    認定年の4月1日〜更新予定年の3月31日
    更新に使う単位は、この期間に積んだものが対象になる
    事前登録
    3月2日〜4月3日
    令和8年度の例。認定試験を受けるための事前登録期間
    申請
    3月2日〜5月8日必着
    令和8年度の例。新規・更新とも同じ時期に申請する
    認定試験
    Web試験・選択形式
    原則年1回実施。受験期間は原則3日間
    合格発表
    7月下旬
    令和8年度の例
    認定開始
    7月1日〜6年後の6月30日
    例:2025年7月1日〜2031年6月30日。この6年間が1期で、6年後の7月1日が次の期の認定開始日になる

    研修の途中で単位を取れない時期があっても、すぐに振り出しに戻るわけではありません。出産・育児、病気・介護、海外留学などの事情があれば、年度単位で研修を中断でき、中断できる期間は原則として最長3年間です。

    • 保留期間中は日病薬病院薬学認定薬剤師と名乗れない
    • 中断を申請するには中断証明書と所属長の証明が必要
    • 認定を更新しなかった場合は認定を喪失する

    参考:日本病院薬剤師会「日病薬病院薬学認定薬剤師認定者の公表について」 / 薬剤師認定制度認証機構「生涯研修プロバイダー」

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    日病薬病院薬学認定薬剤師に求められる役割

    医師と並んで正面を向く男女の薬剤師

    求められる役割は、日病薬が「行動目標」として5領域16項目に整理しています。しかも各カリキュラム項目はそのまま認定試験の出題範囲に指定されていて、取得後に何ができる薬剤師を想定しているかが制度の側から示されています。

    5領域16項目の構成

    領域行動目標の要点配下の項目項目数
    Ⅰ医療倫理と法令の順守 制度・法律を理解し、全人的視点で患者さんの薬物療法を支援する 薬剤師の使命と責任医療制度法令順守 3項目
    Ⅱ基本的業務の質の向上 最新の医薬品情報をもとに処方監査・調剤・医薬品管理などの基本業務を推進する 調剤製剤医薬品情報医薬品管理マネジメント教育・研究 6項目
    Ⅲチーム医療の実践 専門性を踏まえて多職種と協働し、個々の患者さんに最適な薬物療法を支援する 病棟・外来業務(医療コミュニケーション)連携 2項目
    Ⅳ医療安全の推進 安全管理の方策を身に付け、患者さんと医療スタッフにとって安全な医療を遂行する リスクマネジメント(医薬品安全管理)感染制御・管理 2項目
    Ⅴファーマシューティカルケアの実践 疾病を理解し、個々の病態に応じた適切な薬物療法を提供する 医薬品(製剤)特性疾病・薬物療法患者特性 3項目

    医療倫理と法令の順守

    1つ目の領域は、医療専門職として制度と法律を理解し、全人的な視点で患者さんの薬物療法を支えることを目標にしています。内訳は「薬剤師の使命と責任」「医療制度」「法令順守」の3項目です。

    出題基準を見ると、薬剤師法に定められた使命と責任、終末期医療の倫理、インフォームドコンセントに加えて、薬剤師に関する診療報酬の算定要件・施設基準や地域包括ケアシステム、第8次医療計画まで含まれます。

    麻薬及び向精神薬取締法や医薬品医療機器等法の概要も対象に入ります。

    基本的業務の質の向上

    16項目のうち最も多い6項目を占めるのがこの領域です。「調剤」「製剤」「医薬品情報」「医薬品管理」「マネジメント」「教育・研究」が内訳です。

    注目したいのは後ろの2項目です。マネジメントは経営的視野を含めたマネジメント力を養うこととされ、出題基準には臨床指標や病院経営管理の指標・手法、PDCAサイクルが入っています。

    教育・研究は実務実習の支援と研究マインドを持つことが目標で、人を対象とした医学系研究の倫理指針や臨床研究法、研究デザインと統計解析手法まで範囲です。

    調剤や製剤の技術だけでなく、薬剤部という組織を回す力と後進を育てる力も基本的業務に含めている点が、この制度の特徴です。

    Ⅱ領域 6項目の到達目標

    Ⅱ-1 調剤
    患者情報を収集し、薬歴に基づいた処方監査、疑義照会を経て調剤し交付する
    Ⅱ-2 製剤
    ガイドライン等に準拠し、必要な院内手続を経て、品質を保証した製剤を供給する
    Ⅱ-3 医薬品情報
    適正使用のための医薬品情報を収集・評価し、適切に情報提供する
    Ⅱ-4 医薬品管理
    品質の確保など法に則り適正な医薬品等の管理・供給の役割を担う
    Ⅱ-5 マネジメント
    業務の適正化、職能拡大のために経営的視野を含めたマネジメント力を養成する
    Ⅱ-6 教育・研究
    実務実習を支援し、医療の高度化・多様化に対応できる研究マインドをもつ

    チーム医療の実践

    「病棟・外来業務(医療コミュニケーション)」と「連携」の2項目で構成されます。項目数は少ないものの、新規認定では2項目の両方を履修したうえで計4単位が必要で、どちらか一方で済ませることはできません。

    病棟・外来業務の出題基準には、厚生労働省の医政局長通知(医政発0430第1号)に基づく薬剤師業務と、プロトコールに基づく薬物治療管理(PBPM)が明記されています。連携のほうは、病院横断的なチーム医療、地域医療連携のツール、災害時の医療従事者の役割、在宅医療における薬剤師の役割までが対象です。

    医療安全の推進

    「リスクマネジメント(医薬品安全管理)」と「感染制御・管理」の2項目で、こちらも両方の履修が必須です。

    リスクマネジメントでは、医療法施行規則と医療事故調査制度、医薬品安全管理責任者の責務、医薬品の安全使用のための業務手順書、日病薬のプレアボイド報告制度が出題基準に挙がっています。抗がん剤の曝露対策も対象です。

    インシデントが起きてから対応する力ではなく、起きない仕組みを院内に作る側の知識を問う構成です。

    ファーマシューティカルケアの実践

    項目数は3つですが、新規認定で必要な単位は計6単位と5領域で最も多い領域です。「医薬品(製剤)特性」「疾病・薬物療法」「患者特性」に分かれます。

    疾病・薬物療法では、糖尿病、循環器疾患、悪性腫瘍・疼痛管理、肝炎、呼吸器疾患、腎臓病、認知症など20を超える疾患の病態と薬物療法が対象になります。患者特性では、高齢者・妊婦授乳婦・小児・腎機能低下者・肝機能低下者について、生理機能や薬物動態を踏まえた薬物療法が問われます。

    患者特性の5区分と確認する観点
    高齢者
    生理機能 薬物動態 アドヒアランス 薬物療法
    妊婦・授乳婦
    生理機能 禁忌 催奇形性 合併症 薬物療法
    小児
    生理機能 禁忌 薬物動態 薬物療法
    腎機能低下者
    腎機能評価 生理機能 薬物動態 薬物療法
    肝機能低下者
    肝機能評価 生理機能 薬物動態 薬物療法

    参考:日本病院薬剤師会「病院薬学認定薬剤師」

    院内で期待される具体的な業務

    ベッドサイドで処方箋を見せながら患者に説明する薬剤師

    5領域の行動目標は、院内では病棟・教育・医療安全・多職種連携という4つの場面に落ちてきます。どれも認定の有無にかかわらず病院薬剤師の仕事ですが、この資格はそれぞれの根拠となる制度や通知を体系的に押さえていることの証明になります。

    病棟での薬物療法への関与

    病棟での薬剤業務は診療報酬にも位置づけられています。病棟薬剤業務実施加算1は週1回300点、加算2は週1回120点、集中治療室などを対象にした加算3は1日あたり100点です。算定には病棟ごとに専任の薬剤師を配置し、病院勤務医の負担軽減と薬物療法の有効性・安全性に資するだけの時間を確保していることが求められます。

    個々の患者さんに対しては薬剤管理指導料があり、特に安全管理が必要な医薬品が使われている場合は380点、それ以外は325点を週1回・月4回まで算定できます。麻薬の使用に関する指導を行った場合は麻薬管理指導加算50点が付きます。

    カリキュラムのⅢ−1「病棟・外来業務」とⅤ「ファーマシューティカルケア」が、そのままこの業務に対応しています。

    病棟の薬剤業務に関する診療報酬

    0100点200点300点400点
    病棟薬剤業務実施加算1週1回
    300点
    病棟薬剤業務実施加算2週1回
    120点
    病棟薬剤業務実施加算31日につき
    100点
    薬剤業務向上加算週1回(上乗せ)
    100点
    薬剤管理指導料1週1回(月4回まで)
    380点
    薬剤管理指導料2週1回(月4回まで)
    325点
    麻薬管理指導加算1回につき
    50点

    ※週1回・1日につき・1回につきが混在。算定頻度が違うため単純比較はできない

    後輩薬剤師への指導と院内教育

    カリキュラムのⅡ−6に「教育・研究」が置かれているとおり、人を育てる側の業務も役割に含まれます。実務実習生の受け入れ支援だけでなく、新人薬剤師が病棟に出られるようになるまでの院内研修の設計も対象です。

    診療報酬にもこの発想は入っています。病棟薬剤業務実施加算に上乗せできる薬剤業務向上加算は、免許取得直後の薬剤師に向けた病棟業務の研修が院内で動いているかを見る加算です。

    新人が入るたびに同じことを口頭で伝えるのではなく、研修として形にしておけるかが問われます。

    研修を受ける側から、研修を組み立てる側へ回るのが、認定後に期待される変化です。実務実習生に対しては、薬剤部の業務を学生が理解できる順番に並べ直す作業も加わります。

    インシデント対応と医薬品安全管理

    医薬品の安全管理は、医療法施行規則で病院の管理者に課された体制確保の一部です。

    同規則は医薬品安全管理責任者を配置し、従業者に対する医薬品の安全使用のための研修の実施、業務手順書の作成とそれに基づく業務の実施、未承認・適応外・禁忌に該当する医薬品の使用情報の収集などを行わせることを定めています。

    • 従業者研修
      医薬品の安全使用について院内の全職種に向けて実施する
    • 業務手順書
      作成するだけでなく、手順どおりに運用されているかまで担保する
    • 情報収集
      未承認薬・適応外使用・禁忌投与の使用情報を把握して改善策につなげる

    インシデント報告が上がってきたときに、個人の注意不足として処理せず手順書や院内ルールの側を見直せるかが、この領域で問われる力です。

    報告を受ける側ではなく、研修を実施し手順書を作る側に回る業務だと考えると、カリキュラムのⅣ−1が求めている中身が見えてきます。

    多職種カンファレンスでの処方提案

    処方提案の根拠になるのが、カリキュラムにも明記されている厚生労働省の通知「医療スタッフの協働・連携によるチーム医療の推進について」です。

    この通知は、現行制度のもとで薬剤師が実施できる業務として9つを挙げ、積極的な活用を促しています。

    代表的なのは、医師・薬剤師が事前に合意したプロトコールに基づいて薬剤の種類・投与量・投与方法・投与期間の変更や検査オーダを行うこと、薬剤選択や投与量について医師に対し積極的に処方を提案すること、血中濃度や副作用のモニタリングをもとに薬剤の変更を提案することです。

    入院患者さんの持参薬を確認して服薬計画を提案することも含まれます。

    薬剤師を活用できる業務 全9項目

    1
    プロトコールに基づく薬剤変更・検査オーダ
    薬剤の種類・投与量・投与方法・投与期間等の変更や検査のオーダを、医師・薬剤師等が事前に作成・合意したプロトコールに基づき医師等と協働して実施する
    2
    処方の提案
    薬剤選択・投与量・投与方法・投与期間等について、医師に対し積極的に処方を提案する
    3
    薬物療法中の患者への薬学的管理
    薬物療法を受けている患者さん(在宅を含む)に対し、副作用の状況の把握や服薬指導などの薬学的管理を行う
    4
    モニタリングに基づく薬剤変更の提案
    血中濃度や副作用のモニタリング等に基づき副作用の発現状況や有効性を確認し、医師に薬剤の変更等を提案する
    5
    同一処方の提案
    薬物療法の経過等を確認した上で、医師に前回と同一内容の処方を提案する
    6
    外来化学療法のインフォームドコンセント
    外来化学療法を受けている患者さんに対し、医師等と協働してインフォームドコンセントを実施し薬学的管理を行う
    7
    持参薬確認と服薬計画の提案
    入院患者さんの持参薬の内容を確認した上で、医師に服薬計画を提案するなどの薬学的管理を行う
    8
    処方内容を分割した調剤
    定期的に副作用の発現状況の確認等を行うため、処方内容を分割して調剤する
    9
    抗がん剤等の無菌調製
    抗がん剤等の適切な無菌調製を行う

    カンファレンスで発言するために必要なのは、薬の知識だけではありません。どこまでが薬剤師の裁量で、どこから医師の指示が必要かという線引きを通知レベルで理解していることが、提案の説得力につながります。

    参考:厚生労働省「医療スタッフの協働・連携によるチーム医療の推進について」 / e-Gov法令検索「医療法施行規則」

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    他の認定資格との関係

    ペンを持ってメモを取りながら研修を受ける薬剤師

    薬剤師の認定資格は数が多く、どれとどれが重なるのかが分かりにくくなっています。日病薬病院薬学認定薬剤師は、研修認定薬剤師とは制度の区分が違い、日病薬の専門薬剤師とは別系統の資格です。単位の使い回しにも制限があります。

    研修認定薬剤師との違い

    研修認定薬剤師は日本薬剤師研修センターの制度で、全職域の薬剤師を対象にしています。新規認定は申請日から遡って4年以内に40単位以上を取得すればよく、認定試験はありません。

    更新は認定開始日から1年ごとに区切って各年5単位以上、3年間で30単位以上です。

    観点別の比較

    観点研修認定薬剤師日病薬病院薬学認定薬剤師
    運営団体日本薬剤師研修センター日本病院薬剤師会
    対象全職域の薬剤師(会員要件なし)日病薬の正会員または特別会員(研修期間中は継続して会員)
    新規の単位要件申請日から遡って4年以内に40単位以上過去3年度を通算して50単位以上+5領域の内訳要件
    年ごとの最低単位定めなし毎年度10単位以上(更新は5単位以上)
    認定試験なしあり(新規・更新とも合格が必要。Web・選択形式、合否基準は受験者の成績上位10%の平均点の70%)
    認定期間・更新3年ごと、各年5単位以上かつ3年間で30単位以上6年ごと、過去6年度を通算して60単位以上
    他プロバイダー単位の上限新規40単位中20単位、更新30単位中15単位新規50単位中10単位、更新60単位中12単位

    対して日病薬病院薬学認定薬剤師は、3年度で50単位、毎年度10単位以上という年ごとのノルマがあり、そのうえで認定試験に合格しなければなりません。日病薬の会員であることも条件です。

    単位を積めば認定される仕組みと、積んだうえで到達度を試験で確認する仕組みという違いがあり、研修認定薬剤師を持っていればこちらは不要という関係ではありません。

    専門薬剤師・認定薬剤師との関係

    日病薬には、がん・感染制御・精神科・妊婦授乳婦・HIV感染症の5領域を対象にした専門薬剤師・認定薬剤師制度が別にあります。こちらは5年ごとの更新制で、専門薬剤師の認定試験を受けるには同じ領域の認定薬剤師であることが受験資格になります。領域の認定薬剤師から専門薬剤師へ上がる階段構造です。

    ここで誤解されやすいのが、日病薬病院薬学認定薬剤師がこの階段の1段目かどうかという点です。規程上、専門薬剤師の受験資格は同部門の認定薬剤師とだけ定められていて、日病薬病院薬学認定薬剤師は前提資格に入っていません。

    病院薬剤師としての基本的臨床能力を示す資格と、特定領域を深める資格は、並列に存在する別系統と考えるのが正確です。

    3つの認定の位置関係
    日病薬病院薬学認定薬剤師
    病院薬剤師の基本的臨床能力(5領域16項目)
    6年ごとの更新
    専門薬剤師の受験資格には含まれない
    認定薬剤師(領域別)
    がん・感染制御・精神科・妊婦授乳婦・HIV感染症
    5年ごとの更新
    受験資格
    専門薬剤師(領域別)
    受験資格は同じ領域の認定薬剤師であること
    5年ごとの更新
    1つの研修単位を複数の制度に使うことはできない(HOPESSで使用先を選ぶと元に戻せない)

    どっちが上とかじゃなくて、軸が違うってことだね!

    他プロバイダーの単位が使える範囲

    CPC認証を受けたほかのプロバイダーの研修で取った単位も、日病薬病院薬学認定薬剤師の単位として使えます。ただし上限があり、新規申請は50単位のうち10単位まで、更新申請は60単位のうち12単位までです。いずれも全体の2割が上限で、本制度のカリキュラムに沿った内容であること、研修会のプログラムを添付することが条件になります。

    この2割という水準は、ほかの制度と比べると厳しめです。研修認定薬剤師は新規40単位のうち20単位、更新30単位のうち15単位まで他プロバイダーの単位を使えるため、半分まで外部で賄えます。

    日病薬病院薬学認定薬剤師で単位を揃えるには、日病薬や都道府県病薬の研修会、日病薬のe-ラーニングを主軸に置く前提で計画を立てることになります。

    申請区分ごとの利用上限

    他プロバイダー枠 自制度で取る分
    日病薬
    (新規)
    10
    40
    2割
    日病薬
    (更新)
    12
    48
    2割
    研修認定
    (新規)
    20
    20
    5割
    研修認定
    (更新)
    15
    15
    5割

    ※バーの長さ=必要単位数(60単位を基準に表示)

    もう一つ注意したいのが単位の二重使用です。1つの研修単位を複数の制度に使うことはできず、日病薬の研修管理システム(HOPESS)で使用先を選ぶとあとから元に戻せません。

    学術大会で領域の単位も取れる研修会に出たときは、どの制度に充てるかを先に決めておくのが無難です。

    参考:日本薬剤師研修センター「研修認定薬剤師になるには」 / 日本病院薬剤師会「専門薬剤師・認定薬剤師 制度」

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    取得の要件と単位

    勉強会でメモを取りながら話を聞く薬剤師たち

    認定要件は「会員資格」「3年度で50単位」「領域ごとの内訳」「毎年度の最低単位」「認定試験の合格」の5つで、どれか1つでも欠けると認定されません。単位の総数は足りているのに内訳や年度配分で落ちるケースがあるため、計画の立て方が重要になります。

    日本病院薬剤師会の会員であること

    要件の筆頭は、日病薬の正会員または特別会員であることです。特別会員は保険薬局勤務や大学教員などの薬剤師を指します。日病薬の正会員は令和7年度で47,805名です。

    ここで見落としやすいのが、会員であるべき期間です。日病薬のQ&Aは、申請時に会員であるだけでは条件を満たさないとはっきり書いています。研修期間中は継続して会員でなければならず、研修を中断している年度についても会員資格が必要です。転職や休職のタイミングで会費の支払いが途切れると、積み上げた単位が使えなくなります。

    3年度で50単位以上という条件

    新規認定は、過去3年度を通算して50単位以上の取得が必要です。単位の数え方は研修時間に連動し、日病薬が認定する研修会と日病薬のe-ラーニングは45分で0.5単位、他プロバイダーの研修は90分1単位を基本にその団体の基準に従います。

    期間についても決まりがあります。2年間で50単位とカリキュラムの履修を満たしても、認定申請はできません。3年の研修期間そのものが要件で、更新申請も同じ考え方で6年間が必要です。

    年度の途中から制度に参加することはできますが、参加した年度の取得単位が10単位に届かなければ、その年度は研修開始年度として数えられません。

    カテゴリごとに必要な単位

    50単位を自由に集めればよいわけではなく、5領域それぞれに最低単位と履修項目数の条件が付きます。新規認定では、Ⅰが1項目以上で2単位、Ⅱが2項目以上で4単位、Ⅲ・Ⅳが全項目で各4単位、Ⅴが全項目で6単位という内訳です。

    新規認定と更新認定の必要単位

    領域新規認定更新認定
    Ⅰ 医療倫理と法令全3項目 1項目以上を履修2単位 1項目以上を履修0.5単位
    Ⅱ 基本的業務全6項目 2項目以上を履修4単位 2項目以上を履修1単位
    Ⅲ チーム医療全2項目 2項目すべてを履修4単位 2項目すべてを履修1単位
    Ⅳ 医療安全全2項目 2項目すべてを履修4単位 2項目すべてを履修1単位
    Ⅴ ファーマシューティカルケア全3項目 3項目すべてを履修6単位 3項目すべてを履修1.5単位
    領域指定の単位合計 20単位 5単位
    通算の必要単位 3年度で50単位以上 6年度で60単位以上

    ⅢからⅤは「各項目を履修」と書かれているため、取りこぼしが許されません。領域指定のある20単位を先に埋めてから残りを自由枠で積むほうが、年度末に慌てずに済みます。

    日病薬は、研修会実施機関が案内している領域・単位数と日病薬が最終的に承認した領域・単位数が異なる場合があるとも注意していて、申請前に承認済みの内容を確認する必要があります。

    年間の最低取得単位

    毎年度(4月1日から翌年3月31日まで)10単位以上の取得が条件です。3年度で50単位という総数を満たしていても、1年度でも10単位を割ると認定されません。

    更新側はこの条件が令和7年4月5日の規程細則改正で緩和され、令和8年度の更新申請から新しい基準で運用されています。6年度の通算は100単位から60単位へ、毎年度の最低単位は10単位から5単位へ下がりました。領域ごとの必要単位もⅠが0.5単位、Ⅱ・Ⅲ・Ⅳが各1単位、Ⅴが1.5単位という水準です。

    更新要件の改正前後(令和7年4月5日 細則改正)
    改正前
    6年度の通算単位100単位以上
    毎年度の最低単位10単位以上
    他プロバイダー単位100単位中20単位まで
    改正後(令和8年度の更新申請から)
    6年度の通算単位60単位以上
    毎年度の最低単位5単位以上
    他プロバイダー単位60単位中12単位まで
    新規認定の要件(3年度50単位・毎年度10単位)は改正なし。対象は更新のみ
    • 申請後に単位を追加・修正することはできない
    • 申請期限を過ぎた申請は受け付けられない
    • 認定料・更新料を期日までに納めないと認定されない

    参考:日本病院薬剤師会「日病薬病院薬学認定薬剤師認定・更新申請時の留意点について」 / 日本病院薬剤師会「会員数の推移」

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    取得が評価される場面

    調剤室で笑顔を見せるベテランの管理薬剤師

    この資格には、持っていないと算定できない診療報酬がありません。施設基準や算定要件に資格名が書き込まれている認定とは、立ち位置が違います。

    そのぶん評価のされ方は、院内の人事制度と薬剤部の体制づくり、そして転職時の選考に表れます。

    院内の人事評価と役職

    認定が直接の昇格条件になっている病院は多くありませんが、評価の材料としては使いやすい資格です。

    認定試験という外部の判定を通っていること、5領域の履修記録で何を学んだかが残ること、6年ごとに更新しているため知識の鮮度が担保されることの3点が理由です。

    編集部アドバイス
    • 昇格条件かどうかは病院ごと。就業規則で確認
    • 資格手当の有無は求人票に載らないこともある
    • 異動や休職でも会員資格は切らさない
    キャリアパートナー

    主任や副薬剤部長の候補を選ぶ場面では、調剤や病棟の実務に加えてマネジメントと教育の素養が見られます。カリキュラムのⅡ−5「マネジメント」とⅡ−6「教育・研究」を履修していることは、薬剤部を運営する側の知識を持っている説明になります。

    転職時の選考

    病院薬剤師の採用では、どの病棟で何年働いたかという経歴が中心に見られます。ただし経歴だけでは、その病院のやり方に慣れているだけなのか、制度や通知を理解したうえで判断しているのかが読み取れません。この資格は後者を示す材料になります。

    書類では、認定の有無だけでなくどの領域に単位を積んだかまで伝えられると説明が具体的になります。感染制御・管理に厚く単位を取ってきたならASTへの参加、Ⅴ−3「患者特性」を重ねてきたなら高齢者の多剤併用への関与といった形で、志望先の体制と結び付けて話せます。

    一方で、薬局やドラッグストアへの転職では評価が読みにくくなるため、求人票や面接で手当の扱いを確認しておくのが無難です。

    薬剤部の体制づくり

    薬剤部の側から見ると、この資格は点数の要件ではなく人材育成の軸として機能します。病棟薬剤業務実施加算の施設基準に認定資格の指定はなく、求められているのは専任の薬剤師の配置と業務時間の確保、そして医薬品の安全性情報を把握して速やかに措置を講じる体制です。

    病棟薬剤業務実施加算1の施設基準
    1. 病棟ごとに専任の薬剤師を配置
    2. 病院勤務医等の負担軽減と薬物療法の有効性・安全性に資する十分な時間の確保
    3. 医薬品情報の収集・伝達を行う専用施設
    4. 医薬品の使用状況の把握と、安全性に係る重要な情報を把握した際に速やかに措置を講じる体制
    5. 薬剤管理指導料の施設基準の届出
    6. 薬剤総合評価調整業務および退院時薬剤情報管理指導の十分な実績
    薬剤業務向上加算の施設基準
    1. 免許取得直後の薬剤師を対象とした病棟業務等に係る総合的な研修の実施
    2. 都道府県との協力の下で、自院の薬剤師が一定期間別の保険医療機関に勤務し、地域医療に係る業務を実践的に修得する体制の整備
    いずれの施設基準にも、認定資格名の指定はない

    資格そのものが点数になるわけじゃないんだね!

    言い換えれば、資格ではなく体制が問われているということです。新人を病棟に出すまでの研修を誰が設計し、誰が指導するのかという問いに答えるとき、5領域を一通り履修した薬剤師が部内にいることは説明しやすい材料になります。

    認定者を何人置くかではなく、その人に何を任せるかを決めておくほうが、届出の実務では役に立ちます。

    参考:厚生労働省「診療報酬の算定方法」 / 厚生労働省「基本診療料の施設基準等」

    まとめ

    日病薬病院薬学認定薬剤師に求められる役割は、思いつきの業務リストではなく、日病薬が定める研修カリキュラムの5領域16項目として決まっています。

    医療倫理と法令、基本的業務、チーム医療、医療安全、ファーマシューティカルケアの5つで、各項目はそのまま認定試験の出題範囲です。領域別の必要単位を見ると、ファーマシューティカルケアに最も比重が置かれ、チーム医療と医療安全は配下の項目すべての履修が必須になっています。

    取得要件は、日病薬の正会員または特別会員であることを前提に、3年度で50単位以上、領域ごとの内訳、毎年度10単位以上、そして認定試験の合格です。

    更新は令和8年度の申請から6年度で60単位・毎年度5単位に緩和されました。研修認定薬剤師とは試験の有無と他プロバイダー単位の上限が違い、日病薬の専門薬剤師とは別系統の資格です。

    まずは自分の病院の評価制度と手当の扱いを確認し、そのうえで足りない領域から単位を積んでいくと、6年後の更新まで無理なく続けられます。

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    医療キャリアナビ編集部

    医療キャリアナビ編集部

    記事の執筆・編集は、医療業界に精通した編集スタッフが担当しています。日々の転職支援業務で得た現場のリアルな情報と、厚生労働省をはじめとする公的機関のデータに基づき、信頼性の高いコンテンツをお届けしています。

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