かかりつけ薬剤師の算定要件|薬剤師・薬局・同意取得の条件を整理
「かかりつけ薬剤師として算定したいけれど、自分は要件を満たしているの?」と、届出の前に迷う薬剤師は少なくありません。
かかりつけ薬剤師の算定要件は、2026年度(令和8年度)の調剤報酬改定で大きく変わりました。2026年6月1日から「かかりつけ薬剤師指導料」は廃止され、「服薬管理指導料」の中の「かかりつけ薬剤師が行った場合」として算定する仕組みです。
この記事では、令和8年度改定の告示・通知・疑義解釈をもとに、かかりつけ薬剤師の算定要件を「薬剤師個人」「薬局」「患者さんの同意」の3つに分けて整理します。
お申し込みを受け付けました
以下からひな形と見本をダウンロードできます。
薬剤師個人に求められる要件

かかりつけ薬剤師として服薬管理指導料「1のイ」「2のイ」を算定するには、担当する薬剤師本人が5つの要件をすべて満たしている必要があります。 勤務経験・在籍期間・勤務時間の3つは「施設基準の届出時点」で判断されるため、届出のタイミングも大切です。
- 保険薬局での勤務経験が3年以上
- 当該薬局に継続して6か月以上在籍
- 当該薬局で週31時間以上勤務
- 研修認定を取得している
- 医療に係る地域活動に参画している
保険薬剤師としての勤務経験年数
届出時点で、保険薬剤師として3年以上の保険薬局勤務経験が必要です。 病院やクリニックなど保険医療機関で薬剤師として1年以上働いた経験がある場合は、1年を上限として薬局勤務経験に含められます。
病院勤務が長くても、算入できるのは1年分だけです。 病院から薬局に転職した人は、薬局での勤務が2年を超えたあたりで要件を満たすかどうか確認しておきましょう。
当該薬局での在籍期間
届出時点で、その薬局に継続して6か月以上在籍していることが条件です。 転職や異動で別の薬局に移った場合は、新しい薬局で改めて6か月の在籍が必要になります。
産前産後休業・育児休業・介護休業から同じ薬局に復職した場合は、休業前の在籍期間を合算できます。 復職先が休業前と別の薬局だと合算できない点に気をつけましょう。
薬剤師の求人を探す週あたりの勤務時間
その薬局で週31時間以上勤務していることが原則です。 育児・介護休業法にもとづく短時間勤務の措置を受けている場合は、条件つきで基準が緩和されます。
短時間勤務の基準は、同じ薬局に週31時間以上勤務する他のかかりつけ薬剤師を届け出ている場合に使えるものです。 短時間勤務の薬剤師だけでは届出できません。
研修認定の取得
「薬剤師認定制度認証機構が認証している研修認定制度等の研修認定」を取得していることが要件です。 学会の専門・認定薬剤師であっても、この機構の認証を受けた制度にあたるかどうかで扱いが変わります。
届出には、研修認定を取得していることが分かる文書を添付します。 届出書には認定の有効期間(認定期限)を書く欄があるため、更新時期が近い人は期限切れに注意しましょう。
- 薬剤師求人1,450件のうち正社員は932件
- 時短勤務OKと明記された求人は149件(約1割)
- 研修補助ありの明記は31件と少なめ
地域活動への参画
「医療に係る地域活動の取組に参画していること」も要件の1つです。 届出書には、届出までの過去1年間に地域活動へ主体的に参加していることが分かる文書を添付します。
- 事業の概要
- 参加人数
- 場所と日時
- その活動への関わり方
参加しただけで記録を残していないと、届出の段階で書類をそろえられません。 活動のたびに案内文や記録を保管しておくと、届出がスムーズです。
在籍が1年から6か月に短くなったのは大きいね!
参考:厚生労働省「特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」 / 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定の概要【調剤】」
薬局に求められる施設基準

かかりつけ薬剤師の算定は、薬剤師個人の要件に加えて、薬局としての施設基準を満たし、地方厚生(支)局に届け出ていることが前提です。 令和8年度改定では、薬局側に「薬剤師の定着」を示す要件が新たに加わりました。
プライバシーに配慮した設備
薬局には、患者さんとの会話が他の患者さんに聞こえないよう、パーテーション等で区切られた独立したカウンターを設けるなど、プライバシーへの配慮が求められます。 服薬状況や残薬、他院の受診状況など、かかりつけ薬剤師が聞き取る内容は踏み込んだものが多いためです。
届出書では、この設備の有無を「該当・非該当」で申告します。 カウンターの一部だけを仕切る場合も、実際に会話が漏れ聞こえないかを確認しておくと安心です。
勤務薬剤師の在籍状況に関する要件
届出時点で、次のアかイのどちらかを満たす必要があります。
| 薬剤師A | 24か月 |
| 薬剤師B | 12か月 |
| 薬剤師C | 4か月 |
アの平均在籍期間を計算するときは、週31時間以上勤務した期間だけを通算します。 週31時間未満で働いていた期間は含めません。
一方、育児・介護休業法による短時間勤務の措置を受けている薬剤師は、週24時間以上かつ週4日以上勤務している期間を計算に含めてよいとされています。 ただし、この期間を計上しない選択をした場合、その薬剤師はかかりつけ薬剤師の業務を行えません。
2026年5月31日時点でかかりつけ薬剤師指導料・包括管理料を届け出ていた薬局は、2026年11月30日までに限り、在籍状況の要件(アまたはイ)を満たすものとみなされます。12月以降も算定を続けるには、それまでに要件を満たしているか確認しましょう。
今のあなたの状況は?
届出の手続き
届出は「服薬管理指導料の注1の施設基準に係る届出書添付書類(様式90)」を使い、薬局を管轄する地方厚生(支)局に提出します。 様式90には、かかりつけ薬剤師として算定する薬剤師を1人ずつ記入します。
かかりつけ薬剤師として算定できるのは、様式90に記載して届け出た薬剤師です。 あらかじめ届け出た薬局でなければ算定できないため、新しく担当者を増やすときは、6か月の在籍を満たす月を逆算して届出の準備を進めておきましょう。
薬局の要件は、アかイのどちらかを満たせばいいんだね
参考:厚生労働省「疑義解釈資料の送付について(その2)」 / 厚生労働省「疑義解釈資料の送付について(その7)」
患者の同意を取得する手順

かかりつけ薬剤師の算定は、患者さん(またはその家族等)が特定の薬剤師を選び、同意したことが出発点です。 同意の取り方と記録の残し方は、令和8年度改定で「同意書」中心から「お薬手帳への記入」中心に変わりました。
同意を取得できる患者の条件
同意を取得できるのは、その薬局に複数回来局している患者さんです。 初めて来局した患者さんからは、その場で同意を得ることはできません。
同意を得る前に、算定しようとする薬剤師本人が次の内容を説明する必要があります。
- かかりつけ薬剤師の業務内容
- かかりつけ薬剤師を持つことの意義・役割
1人の患者さんについて、かかりつけ薬剤師として算定できるのは1か所の薬局の1人の薬剤師だけです。 他の薬局にかかりつけ薬剤師がいる患者さんには、手帳の記載を確認してから話を進めましょう。
同意書の記載事項と保管
同意を得たら、次の3つを行います。
- 患者さんのお薬手帳に必要事項と薬剤師の氏名を記入し、氏名の近くに「かかりつけ」と書く
- 記入したページのコピー等を薬局で保管する
- 薬剤服用歴等に同意を得た旨を記載する
改定前は、別紙様式を参考にした同意書に患者さんの署名をもらい、薬局で保管するルールでした。 改定後は、署名入りの同意書を保管していても、原則としてお薬手帳への記入が必要です。
コピーは紙で保管しなくてもよく、スキャンデータや写真などの電子データでもかまいません。 電子版お薬手帳の場合は、画面のスクリーンショットや撮影した写真、必要事項を転記した文書などで保管できます。
2026年5月31日以前に取得した同意は引き続き有効ですが、お薬手帳への記入がまだの患者さんには、次の来局時に記入しておきましょう。
算定を開始できるタイミング
令和8年度改定後は、同意を得た際の処方箋受付時から算定できます。 改定前の「同意を得た後、次回の処方箋受付時以降に算定」というルールから変わった点です。
| 1回目の来局 | 2回目の来局ここで同意を取得 | 3回目の来局 | |
|---|---|---|---|
| 改定前 | 同意取得不可 | 算定不可 | ここから算定 |
| 改定後 | 同意取得不可 | この受付から算定 | 算定可 |
同意取得の当日から算定できるようになった一方、手帳への記入・コピーの保管・薬歴への記載は、その日のうちに済ませておく必要があります。 記録がそろっていないと、個別指導などで算定の根拠を示せません。
薬剤師の求人を探す担当薬剤師を変更する場合
かかりつけ薬剤師の離職や患者さんの希望で担当を変える場合は、お薬手帳に上書きし、変更した旨と日付を薬剤服用歴に明記します。 一方、別の薬局のかかりつけ薬剤師の氏名が書かれた手帳には、原則として上書きしてはいけません。
また、同じ月のうちは同じ薬局の同じ薬剤師で算定するルールがあります。 その月にすでに前の担当者で算定している場合、新しい担当者では同じ月に「1のイ」「2のイ」を算定できないため、変更は月の変わり目に合わせるのが無難です。
同意書がなくなって、手帳の記入を忘れないか心配になるよね
患者さん側から見たかかりつけ薬剤師の費用や断り方は、以下の記事で紹介しています。
参考:厚生労働省「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(通知)別添3 調剤点数表」 / 厚生労働省「疑義解釈資料の送付について(その2)」
2026年度改定での変更点

令和8年度改定では、かかりつけ薬剤師の評価が「指導料を毎回算定する包括的な評価」から「実際に行った業務を評価する仕組み」に切り替わりました。 2026年6月1日から適用されています。
算定項目の再編
かかりつけ薬剤師指導料(76点)とかかりつけ薬剤師包括管理料(291点)は廃止されました。 代わりに、服薬管理指導料の中に「かかりつけ薬剤師が行った場合」の区分が設けられています。
服薬管理指導料の「イ(かかりつけ薬剤師)」と「ロ(それ以外)」は同じ点数です。 かかりつけ薬剤師であることによる上乗せは、後述する加算や、薬局の体制加算の実績として評価される形になりました。
要件の見直し
薬剤師個人と薬局の要件、同意の取り方も見直されています。
| 項目 | 改定前(令和6年度) | 改定後(令和8年度) |
|---|---|---|
| 保険薬局の勤務経験 | 3年以上 | 3年以上(変更なし) |
| 週の勤務時間 | 32時間以上 | 31時間以上 |
| 当該薬局の在籍期間 | 1年以上 | 6か月以上 |
| 薬局の在籍状況 | 要件なし | 平均在籍1年以上 または 管理薬剤師3年以上 |
| 同意の記録 | 署名入りの同意書を保管 | お薬手帳に記入し、コピー等を保管 |
| 算定の開始 | 同意の次回受付から | 同意した受付から |
薬剤師個人の要件は、勤務時間・在籍期間ともに緩和されました。 その代わり、薬局側に「週31時間以上勤務する薬剤師の平均在籍1年以上」か「管理薬剤師の在籍3年以上」の要件が加わり、薬剤師が短期間で入れ替わる薬局では届出しにくくなっています。
お探しの求人は?
新設された加算
かかりつけ薬剤師が行った業務を評価する加算として、服薬管理指導料に2つの加算が新設されました。 どちらも「1のイ」か「2のイ」を算定している患者さんが対象です。
かかりつけ薬剤師フォローアップ加算は、直近6か月以内に外来服薬支援料1、服用薬剤調整支援料1・2、調剤時残薬調整加算、薬学的有害事象等防止加算のいずれかを算定した患者さんが対象です。 電話等で個別に確認・指導したことが条件で、一律の内容のメールを送るだけ、アプリの定型的な入力だけで終わる対応は認められません。
このほか、服用薬剤調整支援料2は、研修を修了したかかりつけ薬剤師が行うことを要件に1,000点へ見直されました(2027年6月1日から適用)。 調剤時残薬調整加算・薬学的有害事象等防止加算でも、かかりつけ薬剤師による場合は50点(それ以外は30点)で評価されます。
点数は同じでも、加算や体制加算の実績で差がつく仕組みだよ
参考:厚生労働省「令和8年度診療報酬改定の概要【調剤】」 / 厚生労働省「個別改定項目について(令和8年2月13日)」
算定できないケースと併算定の可否

要件を満たしていても、担当の組み方や他の算定項目との組み合わせによっては「1のイ」「2のイ」や新設加算を算定できない場面があります。 返戻を防ぐために、よくあるケースを押さえておきましょう。
同一月内に複数の薬剤師が担当した場合
かかりつけ薬剤師が休みの日に、同じ薬局の別の薬剤師が服薬指導することは認められています。 ただしその場合は、「1のロ」または「2のロ」で算定し、得た情報をかかりつけ薬剤師と共有します。
フォローアップ加算や訪問加算を「1のロ」「2のロ」とあわせて算定するときは、実施した内容に加えて、かかりつけ薬剤師の氏名を薬剤服用歴等に記載します。
他の薬学管理料との併算定
在宅患者訪問薬剤管理指導料を算定している患者さんには、原則として服薬管理指導料そのものを算定しません。 新設の2つの加算にも、同じ患者さんに算定できない組み合わせがあります。
-
かかりつけ薬剤師フォローアップ加算調剤後薬剤管理指導料、在宅患者訪問薬剤管理指導料、居宅療養管理指導費を算定している患者さんは同じ月に算定不可
-
かかりつけ薬剤師訪問加算外来服薬支援料1、施設連携加算、在宅患者訪問薬剤管理指導料、服薬情報等提供料、居宅療養管理指導費を算定している患者さんは算定不可
複数の薬局で「1のイ」「2のイ」が算定されていた場合は、どの薬局もフォローアップ加算と訪問加算を算定できません。 また、特別調剤基本料Bを算定している薬局は、服薬管理指導料や2つの加算を算定できません。
同意を得た当日の取り扱い
前述のとおり、改定後は同意を得たその日の処方箋受付から「1のイ」「2のイ」を算定できます。 改定前のルールに合わせて「同意の翌回から算定」とレセコンや薬局内のマニュアルを設定している場合は、見直しておきましょう。
当日から算定できるなら、説明の準備をしておけば安心だね
加算には、当日の扱いに別のルールがあります。
- フォローアップ加算の電話等は、前回の調剤日当日と、次に処方箋を持参した当日は期間に含まれない
- 訪問加算は、患家を訪問した後、次に処方箋を受け付けたときに算定する
参考:厚生労働省「診療報酬の算定方法の一部を改正する件(令和8年厚生労働省告示第69号)調剤点数表」 / 厚生労働省「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(通知)別添3 調剤点数表」
まとめ
令和8年度改定で、かかりつけ薬剤師指導料は廃止され、服薬管理指導料の「1のイ」「2のイ」として算定する仕組みに変わりました。 算定できないときは、薬剤師個人・薬局・患者さんの同意のどこが足りないのかを切り分けると、対応が見えてきます。
この記事のポイント
- 薬剤師は薬局経験3年・在籍6か月・週31時間が基準
- 研修認定と地域活動の参加記録も届出に必要
- 薬局は平均在籍1年以上か管理薬剤師在籍3年以上
- 同意は手帳に記入し、コピーと薬歴で記録を残す
- 同意を得た当日の処方箋受付から算定できる
- 新設の2加算は「イ」を算定する患者さんが対象
届出の前に、まずは自分と薬局が要件のどこまで満たしているかを確認してみましょう。 かかりつけ薬剤師として経験を積める職場を探したいときは、転職エージェントに相談すると、求人票だけでは分からない届出状況や在籍年数も確認してもらえます。


