薬剤師の退職金はいくら?業態別・勤続年数別の相場と損しない転職タイミング
「今辞めたら退職金はいくらもらえるんだろう?」と、転職を考え始めたときに気になる薬剤師は多いはずです。 薬剤師の退職金は、職場の業態や勤続年数、辞め方によって数十万円から2,000万円超まで大きく変わります。
この記事では、薬剤師の退職金の相場を業態別・勤続年数別に整理したうえで、自分の退職金を確認する方法と、退職金で損をしない転職タイミングの見極め方を紹介します。
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薬剤師の退職金の相場|業態別・勤続年数別の目安

薬剤師だけを対象にした公的な退職金統計はないため、相場は「勤め先の規模・業態」に近いデータから読み取ります。 調剤薬局やドラッグストアは中小〜大手企業、病院は医療法人や自治体、製薬企業は大企業のデータが目安になります。
勤続10年・20年・30年の目安
東京都の中小企業調査(大学卒のモデル退職金)を見ると、自己都合で辞めた場合、勤続10年で約113万円、20年で約347万円、30年で約751万円が目安です。
勤続10年と20年で金額は約3倍、20年と30年で約2倍に増えます。 退職金は勤続年数に比例せず、長く勤めるほど加速度的に増えるのが特徴です。 同じ年数でも会社都合で辞めた場合は金額が上がり、その差は次の章で詳しく紹介します。
調剤薬局・ドラッグストアの目安
調剤薬局は中小規模の会社が多く、退職金制度そのものがない薬局もあります。 退職金制度は法律で義務づけられたものではないため、「あるかないか」から確認が必要です。
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中小の調剤薬局国の中小企業退職金共済(中退共)や社内積立の一時金が中心。金額は会社の掛金や規程しだい
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大手チェーン・ドラッグストア一時金に企業年金(確定給付企業年金・確定拠出年金)を組み合わせる会社が多い
中退共の退職金は、会社が払う掛金の額と加入期間で決まるため、同じ勤続年数でも薬局によって差が出ます。 大手は中小の薬局より水準が高めですが、管理薬剤師手当などが基本給に含まれないと、給与の設計しだいで退職金の計算に使う基本給が低くなることもあります。
薬剤師の求人を探す病院・公務員薬剤師の目安
病院の退職金は、運営母体によって大きく3つに分かれます。
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公立病院(自治体)地方公務員として、国家公務員に準じた退職手当条例で支給
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国立病院機構・大学病院など法人独自の退職金規程で支給
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医療法人の民間病院法人ごとの規程。中退共を使う中小病院もある
公立病院の薬剤師は地方公務員なので、退職手当は国家公務員の制度に準じて決まります。 国家公務員(常勤職員)の実績では、定年退職の平均は約2,147万円です。
| 勤続年数 | 自己都合 | 定年 |
|---|---|---|
| 10〜14年 | 281万円 | 855万円 |
| 20〜24年 | 922万円 | 1,258万円 |
| 25〜29年 | 1,372万円 | 1,599万円 |
| 30〜34年 | 1,677万円 | 2,002万円 |
| 35〜39年 | 1,973万円 | 2,389万円 |
同じ勤続年数でも自己都合と定年で数百万円の差があるため、途中で辞めるときは退職時期の見極めがより大切です。
製薬企業の目安
製薬企業は大企業が多く、退職一時金に加えて確定給付企業年金(DB)や確定拠出年金(DC)を組み合わせる会社が一般的です。 そのため、退職金の一部を「年金」や「DCの積立残高」として受け取る形になり、一時金の額だけでは比べられません。
DCは本人名義で積み立てられるので、転職しても自分の資産として持ち運べます。 一方で、DBや一時金には「勤続〇年以上」の条件がある場合もあり、若手のうちに辞めると受け取れる額は小さくなります。
同じ薬剤師でも、職場によってこんなに違うの?
退職金にかかる税金や、退職金がない薬局での対処法は以下の記事で紹介しています。
参考:東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情(令和6年版)」 / 内閣官房内閣人事局「退職手当の支給状況」
薬剤師の退職金額を左右する要素

退職金の額は、おもに「勤続年数」「基本給」「辞め方」「制度の種類」の4つで決まります。 自分の退職金が相場より多いか少ないかを判断するには、この4つを順に当てはめてみましょう。
勤続年数と支給率
多くの会社は、「退職時の基本給 × 勤続年数ごとの支給率」で退職金を計算します。 支給率は、規程の中で「勤続5年は〇か月分、10年は〇か月分」のように決められています。
支給率は勤続が短いうちはほとんど増えず、10年を超えたあたりから伸び方が大きくなるのが一般的です。 「あと数年いれば大きく増える」という区切りがある一方、勤続1〜3年で辞めるとほとんど出ないか、支給対象外になることもあります。
基本給と役職
退職金の計算に使うのは、多くの場合「月給の総額」ではなく「基本給」です。 薬剤師手当・管理薬剤師手当・地域手当などの手当が厚い職場では、月給が高くても基本給が低いと退職金は少なくなります。
役職も影響します。 会社によっては、役職ごとのポイントを積み上げる「ポイント制」を採用していて、管理薬剤師やエリアマネージャーの期間が長いほど退職金が増えます。
転職先の月給が今より高くても、基本給の割合が小さいと将来の退職金は減ることがあります。求人を比べるときは月給の内訳まで確認しましょう。
自己都合退職と会社都合退職の差
転職で辞める場合、ほとんどは「自己都合退職」の扱いになります。 自己都合退職は、会社都合や定年に比べて支給率が低く設定されているのが一般的です。
勤続20年以上・45歳以上で辞めた大学卒の場合、定年退職の平均は1,896万円、自己都合退職は1,441万円で、約450万円の差があります。 勤続年数が短いほど自己都合の減額率は大きくなりやすく、規程によっては「自己都合は勤続〇年未満は支給しない」と決めている会社もあります。
今のあなたの状況は?
退職金制度の種類
退職金制度は、大きく分けて次の4つです。 どの制度かによって、受け取り方や転職したときの扱いが変わります。
| 制度 | 受け取り方 | 金額の決まり方 | 転職するとき |
|---|---|---|---|
| 退職一時金社内制度 | 退職時にまとめて受け取る | 基本給×支給率、ポイント制など会社の規程 | その会社で精算。持ち運べない |
| 中退共中小企業退職金共済 | 退職時に中退共から直接受け取る | 会社が払う掛金月額と納付月数 | 条件を満たせば転職先と通算できる |
| DB確定給付企業年金 | 年金または一時金 | 規約で給付額があらかじめ決まっている | 脱退一時金で受け取るか、条件により移換 |
| DC企業型確定拠出年金 | 原則60歳以降に年金または一時金 | 掛金と自分の運用成績で変わる | 転職先のDCやiDeCoへ移して続けられる |
医療・福祉の分野で退職金制度がある企業のうち、86.9%は退職一時金のみの制度です。 一方、大企業ほど企業年金を組み合わせる割合が高く、大学卒の定年退職者では、一時金と年金を併用している会社の平均(2,261万円)が一時金のみの会社(1,623万円)を大きく上回ります。
同じ「退職金あり」でも中身はバラバラなんだね
参考:厚生労働省「令和5年就労条件総合調査 結果の概況」 / 東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情(令和6年版)」
自分の退職金を確認する方法

相場はあくまで目安で、実際の金額は勤め先の規程で決まります。 転職を考え始めたら、まず今の職場で「いま辞めたらいくらか」を確かめておきましょう。
退職金規程で支給条件を確認する
退職金制度がある会社は、その内容を就業規則か退職金規程に書いておく必要があります。 規程は従業員が見られる状態にしておくルールなので、事務所の共有フォルダや社内ポータルで確認できます。
規程を開いたら、次の項目を確認しましょう。
- 支給対象になる最低勤続年数
- 自己都合退職のときの支給率(減額率)
- 計算に使う基本給の範囲(手当を含むか)
- 勤続年数の数え方(試用期間・休職期間の扱い)
- 支払時期(退職後〇か月以内など)
人事・総務に見込額を問い合わせる
規程を読んでも計算が難しい場合は、人事・総務に見込額を問い合わせる方法があります。 転職を疑われたくない場合は、「将来の資金計画を立てたい」「住宅ローンの相談で必要になった」など、理由を添えると自然です。
退職金のこと、職場に聞くのはちょっと気まずいよね
中退共に加入している職場なら、掛金月額と加入期間が分かれば、中退共の基本退職金額表から自分で概算できます。 企業年金(DC)がある場合は、運営管理機関のWebサイトで現在の積立残高を確認しましょう。
求人票で転職先の退職金制度を確認する
転職先の退職金は、求人票の「退職金」欄で確認します。 ただ、「退職金あり」の一言だけでは、条件や金額の水準までは分かりません。
表記があいまいな場合は、面接や転職エージェント経由で「勤続何年から出るか」「制度の種類は何か」を確認しておくと安心です。
- 薬剤師求人1,450件中、退職金制度ありは827件
- 割合は約57%。4割強の求人は記載なし
- 面接前に制度の中身まで確認するのが安心
退職金以外の待遇も含めて職場ごとの違いを比べたい場合は、以下の記事が参考になります。
退職金で損をしない転職タイミングの見極め方

退職金で損をしないポイントは、「支給対象になるか」「支給率が上がる直前ではないか」「転職後の年収と合わせてプラスか」の3つです。
支給対象になる最低勤続年数
多くの退職金規程には、「勤続〇年以上の者に支給する」という最低条件があります。 「勤続3年以上」と決めている会社なら、勤続2年11か月で辞めると退職金はゼロです。
中退共の場合は、掛金を納めた月数によって受け取れる額のルールが決まっています。
中退共に加入している薬局から、同じく中退共に加入している薬局に移る場合は、退職後3年以内に新しい職場で加入し、前の職場の退職金を請求していなければ、納付月数を通算できます。 転職先も中退共に加入しているなら、すぐに請求せず通算を検討しましょう。
転職活動するなら?
支給率が上がる勤続年数の区切り
最低勤続年数をクリアしていても、規程によっては「勤続10年」「勤続20年」などの区切りで支給率が大きく上がります。 区切りの直前で辞めると、数か月の差で数十万円単位の違いが出ることがあります。
区切りまであと数か月なら、退職日を後ろにずらす価値があります。 転職先の入社日を調整できるかどうかは、内定前の段階で相談しておくとスムーズです。 転職時期の決め方は、ボーナスや求人が増える時期との兼ね合いも大切です。
退職金と転職後の年収を合算して比較する
「退職金の区切りまで待つか、今すぐ転職するか」は、退職金の増える額だけでは判断できません。 待つ期間に得られたはずの年収アップ分と合わせて比べるのがポイントです。
数字で比べれば、辞めどきに迷わなくなるよ
待つことで増える退職金より、転職後の年収アップの合計が大きいなら、今動くほうが有利です。 反対に、年収がほぼ変わらない転職なら、区切りまで待ってから動くほうが手元に残るお金は増えます。 転職先に退職金制度があるかどうかも、この比較に含めておきましょう。
参考:中小企業退職金共済事業本部「退職金計算の方法・考え方について」 / 中小企業退職金共済事業本部「通算制度」
まとめ
薬剤師の退職金は、業態・勤続年数・辞め方によって大きく変わります。 相場よりも、自分の職場の規程で「いま辞めたらいくらか」を知ることが、損をしない転職の第一歩です。
この記事のポイント
- 退職金は勤続10年を過ぎると大きく増える
- 自己都合退職は定年や会社都合より少なめ
- 計算に使うのは月給ではなく基本給が多い
- 最低勤続年数と支給率の区切りを規程で確認
- 待つ場合の退職金増と転職後の年収増を比べる
まずは退職金規程を確認し、転職先の候補とあわせて比較してみましょう。 退職金を含めた条件で職場を比べたいときは、転職エージェントに相談すると、求人票に載っていない制度の中身まで確認してもらえます。


