助産師の大変なこととは?避けられない負担と職場で変わる負担
助産師の仕事は大変だと言われます。母子2つの命を預かる責任、時間の読めない分娩、夜勤や呼び出し。理由を並べた記事は多く見つかりますが、そこに挙がる負担は性質がばらばらです。職場を変えても残るものと、施設の体制次第で軽くも重くもなるものが、同じリストに混ざっています。
この記事では、助産師の大変なことを「仕事の性質上避けられないもの」と「職場の体制によって変わるもの」に切り分けたうえで、勤務先別・キャリアの段階別に負担の中身を整理します。あわせて、つらい場面に向き合ったときに使える施設内の仕組みや相談先もまとめました。
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助産師の仕事が大変といわれる理由

助産師の負担としてよく挙がるものは、責任の重さ・勤務の不規則さ・学び続ける必要性の3つに大きく分かれます。
いずれも法律や制度に裏づけがあり、感覚だけで語られている「きつさ」ではありません。
母子2つの命を預かる責任
助産師は保健師助産師看護師法第3条で、助産と、妊婦・じょく婦・新生児の保健指導を業とする資格と定められています。経過が正常であれば、分娩の介助を自分の判断で行えます。
一方で同法第38条は、妊婦・産婦・じょく婦・胎児・新生児に異常があると認めたときは医師の診療を求めさせることを要し、自ら処置してはならないと定めています(臨時応急の手当は除きます)。つまり助産師は、正常か異常かを見極める判断そのものを任されている立場です。この見極めの責任が、プレッシャーの中身にあたります。
分娩に伴うリスクには、制度の枠組みも用意されています。産科医療補償制度は、分娩に関連して発症した重度脳性まひのお子さんとご家族への補償と、原因分析・再発防止を行う仕組みです。分娩機関は1分娩あたり12,000円の掛金を負担し、補償対象と認定されると準備一時金600万円と、補償分割金120万円が20回支払われます。
原因分析では、分娩機関から提出された診療録・助産録・検査データなどをもとに、医学的な観点から検証が行われます。日々書いている助産録が、後から検証の材料になるということです。
分娩の時間が読めない
分娩がいつ始まり、いつ終わるかは予測できません。令和6年の出生数は686,173人、令和5年時点で分娩を取り扱う施設は一般病院909施設・一般診療所949施設です。単純に割ると1施設あたり年約369件、月30件前後になります。おおむね1日1件前後の分娩が、曜日や時間帯と無関係に起こる計算です。
陣痛の開始から分娩、その後の観察までを1人の助産師が通して担当することも多く、勤務時間の区切りと分娩の進行は一致しません。予定が立てにくいという負担は、ここから生まれます。
不規則な勤務と呼び出し
日本看護協会の2025年看護職員実態調査によると、看護職員の夜勤・交代制勤務の状況は2交代制(16時間以上の夜勤)が25.2%で最も多く、オンコールも4.9%を占めています。助産師を含む看護職全体の数値です。
同じ調査では、夜勤中の休憩について規程と実態のずれも示されました。規程上の休憩時間は3交代制で「60〜90分未満」が57.3%と最も多いのに対し、実際に取った休憩は「60分未満」が62.6%。2交代制では規程「120〜150分未満」45.7%に対し、実際は「90〜120分未満」32.9%が最多でした。規程どおりの休憩や仮眠が取れていない職場は少なくありません。
望まない結果に向き合う場面がある
分娩は必ずしも喜びだけで終わるわけではありません。流産・死産、重篤な合併症、新生児の急変といった場面に立ち会う可能性があります。令和6年の死産数は15,323胎、死産率(出産千対)は21.8でした。
こうした結果は、助産師個人の力量とは別のところで起こります。それでも、立ち会った側に残る負担はあります。この負担をどう扱うかは、記事の後半で制度と窓口の面から取り上げます。
知識と技術を更新し続ける必要がある
保健師助産師看護師法第28条の2は、免許を受けた後も研修を受け、資質の向上を図るよう努めなければならないと定めています。周産期の領域では、新生児蘇生法(NCPR)の講習のように、認定に有効期限があり定期的な更新を前提とするものもあります。
学び続けること自体は資格職に共通します。助産師の場合は、勤務が不規則な中で研修の時間を確保するという点が、負担として語られる理由です。
助産業務以外の看護業務も担う
保健師助産師看護師法第31条第2項により、助産師は看護師の業務も行えます。産科が混合病棟になっている施設では、産科以外の患者さんの看護も担当します。分娩がない日でも手が空くわけではない、という状況が生まれます。
記録の負担も重なります。助産師が分娩の介助をしたときは助産録への記載が義務づけられ(同法第42条)、記載事項は施行規則第34条で12項目が定められています。病院・診療所・助産所で行った助産に関する助産録は、管理者が5年間保存します。
参考:e-Gov法令検索「保健師助産師看護師法」 / 公益財団法人日本医療機能評価機構「産科医療補償制度の概要|産科医療補償制度の仕組み」 / 厚生労働省「令和5(2023)年医療施設(静態・動態)調査・病院報告の概況」 / 公益社団法人日本看護協会「2025年 看護職員実態調査 結果」
大変さは「避けられないもの」と「職場で変わるもの」に分かれる

ここまで挙げた負担は、性質が2つに分かれます。助産師という仕事に付いて回るものと、勤務先の体制によって重さが変わるものです。
この2つを混ぜたまま考えると、職場を変えれば軽くなる負担まで「自分には向いていない」と受け取ってしまいます。
- 分娩の時間が読めないこと
- 正常か異常かを見極める責任
- 望まない結果に向き合う可能性
- 分娩を担当する助産師の人数
- 夜勤・オンコールの回数と手当
- 教育体制
- 記録や事務の負担
- 助産師と看護師の業務分担
仕事の性質上避けられないもの
分娩を扱う限り、陣痛はシフト表に従いません。第38条が求める正常か異常かの見極めも、勤務先にかかわらず助産師本人に課されます。望まない結果に向き合う可能性も同じで、施設を選んで避けられるものではありません。
これらは「なくす」対象ではなく、支える体制があるかどうかで耐えられる範囲が変わる負担です。辞めるかどうかを決める材料としては、この側面だけを見ても答えが出にくい部分だといえます。
職場の体制によって変わるもの
一方、体制の側は施設ごとに大きく異なります。なかでも差が出やすいのが人員配置です。
令和5年の医療施設調査では、分娩を取り扱う一般病院1施設あたりの分娩対応助産師は常勤換算20.2人、一般診療所は6.5人でした。担当医師は一般病院7.6人・一般診療所2.1人です。同じ助産師という職種でも、何人で分娩を回すかがまったく違います。
助産師が主体的に関わる院内助産所を持つ施設の割合も、分娩を取り扱う一般病院で16.9%、一般診療所で4.2%と差があります。
分娩を取り扱う1施設あたりの人員体制
| 項目(常勤換算) | 一般病院 | 一般診療所 |
|---|---|---|
| 分娩対応の助産師 | 20.2人 | 6.5人 |
| 担当医師 | 7.6人 | 2.1人 |
| 院内助産所ありの割合 | 16.9% | 4.2% |
切り分けると何が判断できるか
2つに分けると、「助産師という仕事が合わない」のか「今の職場の条件が合わない」のかを区別できます。
たとえば夜勤の回数がつらい場合、それは職場で変わるものにあたります。
日本看護協会の調査では、夜勤を担い続けることを可能にする条件として「納得感のある夜勤手当が支給される」41.4%、「夜勤明けの翌日が必ず休日のシフトとなる」39.7%、「夜勤中に十分な休憩・仮眠が確保できる」35.6%が上位に挙がりました。いずれも施設の運用で動く条件です。
夜勤を続けられる条件
3つまで回答・回答者4,430名
一方、分娩そのものに向き合えないと感じる場合は、勤務先を変えても同じ状況が続きます。
迷ったときの分け方
- その負担は、別の施設に移っても同じように起こるか
- その負担は、人員・シフト・分担を変えれば軽くなるか
- 軽くなる側なら、辞める前に条件の交渉や部署異動を検討できる
- 残る側なら、支える体制がある職場かどうかで見比べる
参考:厚生労働省「令和5(2023)年医療施設(静態・動態)調査・病院報告の概況」 / 公益社団法人日本看護協会「2025年 看護職員実態調査 結果」
今のあなたの状況は?
【勤務先別】負担の性質の違い

令和6年の就業助産師は38,721人で、その約6割が病院で働いています。
ただし助産師が働く場は病院だけではなく、診療所、助産所、市区町村、養成所・研究機関にも分かれています。勤務先が変われば、同じ「大変」でも中身が変わります。
助産師の勤務先の内訳
総合病院・周産期母子医療センター
ハイリスクな妊娠・分娩を引き受ける施設です。周産期母子医療センターは令和7年4月1日現在、総合が112か所、地域が297か所あります。
緊急帝王切開や新生児の蘇生に立ち会う場面が多く、急変対応の頻度は高くなります。一方で、産科医・新生児科医・麻酔科医・NICUといった体制が整っており、判断を1人で抱える場面は相対的に少なくなります。症例は重いが、支える人は多い。この組み合わせが特徴です。
産科クリニック
1施設あたりの分娩対応助産師6.5人・担当医師2.1人という規模から分かるとおり、少人数で運営されます。妊婦健診、保健指導、分娩介助、産後の支援、母乳外来まで、1人が担う範囲が広くなりやすい環境です。
オンコールの比重も大きくなります。呼び出しに備える日が続くと、勤務時間そのものより生活のリズムへの影響が負担になります。オンコールの回数、待機手当の有無、呼び出し後の勤務の扱いは施設によって差が大きい部分です。
- 医療キャリアナビ掲載求人データ(2026年時点)では、助産師の求人44件のうちクリニックが31件
- 月給の中央値は全体34.0万円、クリニックは35.0万円
- 寮・社宅あり6件、託児所・保育所完備4件と、生活面の条件がついた求人もあり
助産所
医療法第2条第2項により、助産所は妊婦・産婦・じょく婦を10人以上入所させる施設を有してはならないとされています。小規模であることが制度上の前提です。
開設者は、嘱託する医師と嘱託する病院または診療所を定めなければなりません(第19条第1項)。出張のみで業務を行う助産師も、異常時に対応する病院・診療所を定めます(同条第2項)。
異常があれば医師に委ねるという第38条の枠組みは病院と同じです。ただし医師が常時いない環境で、正常からの逸脱を最初に判断するのは助産師になります。責任の現れ方が病院とは異なります。
市区町村・保健センター
就業助産師のうち1,689人(4.4%)が市区町村で働いています。分娩の介助ではなく、母子保健法に基づく業務が中心です。妊産婦訪問指導(第17条)、新生児訪問指導(第11条)、産後ケア事業(第17条の2)などが該当します。
夜勤や呼び出しは基本的にありません。その代わり、支援が必要な家庭への継続的な関わりや、医療機関・福祉との調整といった、分娩とは別の重さがあります。分娩の緊張から離れたい場合の選択肢になる一方、分娩介助の技術からは離れる点は先に確認しておきたいところです。
勤務先タイプ別の負担の性質
| 総合病院・周産期母子医療センター | 産科クリニック | 助産所 | 市区町村 | |
|---|---|---|---|---|
| 分娩の扱い | ハイリスクな妊娠・分娩に対応。周産期母子医療センターは総合112か所・地域297か所(令和7年4月1日現在) | 正常分娩が中心。ハイリスク例は連携先へ搬送 | 正常分娩が対象。入所10人未満が制度上の前提 | 分娩の介助は行わない |
| 夜勤・オンコール | 交代制の夜勤がある | オンコールの比重が大きい | オンコール対応が中心 | 夜勤・呼び出しは基本的にない |
| 1人が担う範囲 | 複数の助産師・医師でチームとして対応 | 1施設あたり助産師6.5人・医師2.1人の少人数で運営 | 入所10人未満の小規模で幅広い業務を担う | 就業助産師1,689人で地域の母子保健を担当 |
| 医師の常在 | 産科医・新生児科医など複数の医師が勤務 | 1施設あたり担当医師2.1人 | 常在せず、嘱託医師・嘱託する病院/診療所を定める | 分娩を扱わないため配置なし |
| 主な根拠法 | 医療法(病院) | 医療法(診療所) | 医療法(助産所) | 母子保健法(妊産婦訪問指導・新生児訪問指導・産後ケア事業) |
参考:厚生労働省「令和6年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」 / 厚生労働省「小児・周産期医療」 / e-Gov法令検索「医療法」 / e-Gov法令検索「母子保健法」
助産師の求人を探す【段階別】大変さの中身の変化

同じ職場にいても、経験年数によって何がつらいかは入れ替わります。いま感じている大変さが一時的なものかどうかは、段階を分けて見ると判断しやすくなります。
新人の時期
負担の中心は、分娩介助の経験を積む段階で判断に自信が持てないことです。正常な経過かどうかの見極めは経験に支えられる部分が大きく、件数が積み上がるまでは確認と相談の連続になります。
保健師助産師看護師法第28条の2の努力義務を受けて、厚生労働省は新人看護職員研修ガイドラインを示しています。研修の枠組みが用意されているのは、新人期のつまずきを個人の資質の問題としない前提があるからです。
日本看護協会の2025年病院看護実態調査では、年度内に離職した新卒看護師がいた病院の看護管理者が考える主な退職理由として、「健康上の理由(精神的疾患)」が54.6%で最も高く、次いで適性や実践能力への不安が挙がりました(看護職全体の調査で、上位5つを選ぶ回答)。新人期の不安は、助産師に限らず広く共通するものだといえます。
看護管理者が考える新卒看護師の主な退職理由
※看護職全体を対象にした調査。助産師のみの集計ではない
中堅の時期
分娩介助に慣れてくると、負担の中心は1人で判断する場面の増加と、後輩の指導に移ります。自分の手が動くかどうかではなく、その場の判断に責任を持てるかが問われる段階です。
経験を形にする仕組みとしては、日本助産評価機構が認証するアドバンス助産師(CLoCMiPレベルⅢ)があります。
2026年1月6日現在の認証者は7,628名で、就業助産師38,721人に対して約2割です。申請には分娩介助100例以上などの実施例数と必須研修が求められ、5年ごとの更新もあります。日常業務をこなしながら要件を満たしていく負担が、この時期に重なります。
指導・管理を担う時期
就業助産師の年齢構成は、40歳以上が54.2%、50歳以上が29.9%を占めます。経験を重ねた層が現場を支えている一方、指導や管理の役割も同じ層に集まります。
就業助産師の年齢階級別人数分布
濃色は40歳以上の階級(単位:人)
日本看護協会の調査で、夜勤をしていない理由の第2位が「看護管理者の職位にあるため」19.9%であることからも、担う役割が入れ替わることが分かります。
参考:一般財団法人日本助産評価機構「アドバンス助産師について」 / 公益社団法人日本看護協会「CLoCMiPおよびCLoCMiPレベルⅢ認証制度(アドバンス助産師)」 / 独立行政法人労働政策研究・研修機構「正規雇用看護職員の離職率は11.0%/日本看護協会調査」 / 公益社団法人日本看護協会「2025年 看護職員実態調査 結果」
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望まない結果に向き合う場面への備え

前述のとおり、分娩は望まない結果で終わることがあります。そのとき何が行われるかは制度で決まっており、担当した助産師が1人で抱える前提にはなっていません。
施設内の振り返りの仕組み
医療法第6条の10は、医療機関の管理者に対し、提供した医療に起因すると疑われる死亡または死産のうち予期しなかったものを、医療事故調査・支援センターへ報告することを義務づけています。第6条の11では、その原因を明らかにするために必要な院内調査を行うことが定められています。死産が条文に明記されている点は、周産期に関わる職種にとって見落とせない部分です。
産科医療補償制度でも、補償対象と認定された事例はすべて原因分析の対象になります。分析は分娩機関の過失の有無を判断するものではなく、再発防止と産科医療の質の向上を目的としています。結果は「再発防止に関する報告書」として提言にまとめられ、公表されます。
医療法第6条の12は、医療安全を確保するための指針の策定と、従業者に対する研修の実施も管理者の義務としています。振り返りの場は個人の反省会ではなく、施設が負う義務として位置づけられています。
相談できる窓口
職場の上司や同僚のほかにも、次のような選択肢があります。
- 職場の産業医・衛生管理者
- 都道府県労働局の総合労働相談コーナー
- 厚生労働省のポータルサイト「こころの耳」の電話・メール・SNS相談
- 所属する職能団体の相談事業
ただし、窓口があることと使われることは別です。令和7年労働安全衛生調査では、仕事の不安・悩み・ストレスを相談できる人がいる労働者は94.8%にのぼる一方、相談先として産業医を挙げた人は7.1%、実際に産業医へ相談した人は2.0%にとどまりました。
身近な相手だけに相談している状態は珍しくありません。院内の相談先が使いにくいと感じるなら、外部の窓口を先に使う方法もあります。
相談先として挙げた割合と実際に相談した割合
令和7年労働安全衛生調査(全産業の労働者が対象で、助産師のみを対象とした調査ではありません)
なお、ストレスチェック制度は現在、労働者数50人以上の事業場に義務づけられています。
2025年5月に公布された改正労働安全衛生法により、令和10年4月1日からは50人未満の事業場にも義務化されます。小規模な産科クリニックや助産所も対象に入ります。
助産師の求人を探す自分の反応に気づく
負荷が積み重なったときのサインは、気分の落ち込みだけではありません。眠れない、眠っても疲れが取れない、食欲が落ちるか増える、以前は気にならなかったことにいらだつ、休みの日に何もする気になれない。こうした変化が続くようなら、体からの合図として受け取っておきたいところです。
自分で原因や病名を判断する必要はありません。産業医、かかりつけの医師、外部の相談窓口のいずれかに、起きている変化を事実として伝えれば十分です。
参考: 厚生労働省「令和7年 労働安全衛生調査(実態調査) 結果の概況」 /厚生労働省「こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト」 / 厚生労働省「総合労働相談コーナーのご案内」
負担を減らすためにできること

転職だけが選択肢ではありません。同じ職場のまま変えられること、勤務条件を変えること、働く場所を変えること。順に重さが違うので、軽いものから試す方法もあります。
職場に相談する
まず動かせる可能性があるのは、夜勤の回数、担当の割り振り、記録の運用といった運用面です。
日本看護協会の調査では、夜勤をしていない理由が「子どもの世話」だった人でも、「夜勤を行う曜日を選択できる」47.6%、「月あたりの夜勤回数を選択できる」39.4%という条件があれば夜勤を担えると回答しています。働き方は「できる・できない」の二択ではなく、条件次第で変わるということです。相談する際も、辞めるかどうかではなく条件の形で持ち出すほうが話が進みやすくなります。
同じ調査では、この1年間に就業先で暴力や暴言、ハラスメントを受けた経験がある看護職員が49.3%にのぼりました。相手は「患者・利用者」69.3%、「上司(看護職)」43.0%、「医師」31.7%の順です。ハラスメントは我慢する対象ではなく、事業主が防止措置を講じる義務を負う事柄です。
勤務条件を見直す
夜勤の免除、短時間勤務、部署異動といった条件の変更は、退職せずに負担を下げる方法です。産科から他病棟へ、あるいは外来へ移ることで、分娩の緊張から一時的に距離を取ることもできます。
日本看護協会の2025年調査では、看護職として働き続けたいと答えた人は62.9%で、2021年の67.6%から低下しました。20〜30代と病院勤務者で特に低くなっています。
年代別にみる看護職の就業継続意向(2025年)
看護職全体を対象とした調査であり、助産師単独のデータではありません。
2021年調査の全体値は67.6%(参考)
一方、20〜30代の正規雇用(フルタイム)では、超過勤務時間が短い人・有給休暇取得率が高い人ほど就業継続の意向が高いという結果でした。条件が変われば、続けられるかどうかの見え方も変わります。
転職活動するなら?
働く場所を変える
条件の調整で解決しない場合に、勤務先を変える選択肢があります。
助産業務から離れる選択も可能です。保健師助産師看護師法第31条第2項により、助産師は看護師の業務も行えます。助産業務を離れても、免許はそのまま看護師として働く裏づけになります。市区町村の母子保健や、養成所・研究機関のように、分娩から離れて周産期に関わり続ける道もあります。
分娩件数と助産師の人数は、片方だけ聞いても判断できません。「年間◯件を助産師◯人で」とセットで聞くと、1人あたりの負担が見えてきます。混合病棟かどうかも、病棟の名前ではなく実際の受け持ちの内訳を聞くのが確実ですよ。
一時的に離れるという選択もあります。休職や、期間を決めた勤務形態の変更を経て戻る人もいます。
免許は働いていない期間があっても失われないため、いま辞めるかどうかを一度で決める必要はありません。
参考:公益社団法人日本看護協会「2025年 看護職員実態調査 結果」 / 厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために(セクシュアルハラスメント/妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント/パワーハラスメント)」
まとめ
助産師の大変なことは、性質の違う2種類が混ざっています。分娩の時間が読めないこと、正常か異常かを見極める責任、望まない結果に向き合う可能性は、職場を変えても残ります。一方、助産師の人数、夜勤やオンコールの回数、教育体制、記録の負担、看護業務との分担は、施設によって大きく異なります。
「助産師という仕事が合わない」のか「今の職場の条件が合わない」のかを分けて考えます。勤務先別に見れば、周産期母子医療センターは症例が重い代わりに支える体制が厚く、産科クリニックは1人の担当範囲が広くなりやすいという違いがあります。段階別に見れば、新人期の判断への不安と、中堅以降の指導・調整の負担は別物です。
望まない結果に向き合う場面には、院内調査や産科医療補償制度の原因分析といった施設側の仕組みがあり、産業医や外部の相談窓口も使えます。負担が重いと感じたときは、まず条件の相談から始め、それでも合わなければ勤務条件の変更、勤務先の変更と段階を踏む方法があります。助産師を続けるかどうかを、一度で決める必要はありません。


