薬剤師がうつで休職することになったら?診断書から傷病手当金までの流れ
調剤室で手が止まる、休みの日も処方内容が頭から離れない、朝になると出勤がつらい。そうした状態が続いていても、「代わりがいない」「自分が休めば薬局が回らない」と考えて受診を先延ばしにしてしまう薬剤師の方は少なくありません。
うつで休職するときには、受診から診断書の取得、職場への申し出、傷病手当金の申請まで段階があります。進め方が分からないまま一人で抱えていると、動き出すこと自体が難しくなります。管理薬剤師の場合は、本人だけでなく勤務先側にも届出が生じます。
この記事では、薬剤師がうつで休職するまでの流れ、休職中の収入と社会保険の扱い、うつ病と薬剤師免許の関係を、法令と公的機関の情報にもとづいて整理します。
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薬剤師がうつ状態になりやすい背景

はじめに確認しておきたいのは、「薬剤師はうつになりやすい」と言い切れる統計は確認できないということです。職種別の有病率を示す信頼できる公的データは公表されていません。
一方で、薬剤師の勤務環境には特有の負荷が生じやすい構造があります。厚生労働省の令和7年労働安全衛生調査によると、過去1年間にメンタルヘルス不調で連続1か月以上休業した労働者、または退職した労働者がいた事業所の割合は全産業で13.5%、医療・福祉では16.8%でした。前年の全産業12.8%からわずかに増えています。
ここで押さえておきたいのは、これが「事業所の割合」であって、働く人の発症率ではないという点です。ただし、休職する人が一定数いる職場は珍しくないということは読み取れます。
この章では、薬剤師の働き方に紐づく負荷を5つに分けて整理します。ご自身の状況がどれに当てはまるかを確かめる材料としてお読みください。
一人薬剤師や少人数体制で働くため
薬局には、開店時間内は常時薬剤師が勤務していることという体制上の基準があります。これは薬局並びに店舗販売業及び配置販売業の業務を行う体制を定める省令で定められたもので、薬剤師が調剤室にいない時間(薬剤師不在時間)は1日4時間、または開店時間の2分の1のうち短いほうまでと上限が設けられています。
この基準があるため、薬剤師が1人しかいない薬局では、その1人が抜けられない時間が生まれます。昼休みをずらして取る、体調が悪くても代わりを呼べない、急な休みを申し出にくいといった状態が日常化しやすくなります。
さらに、1日平均取扱処方箋数を40で割った数以上の薬剤師を置くという基準もあります。処方箋の枚数が増えれば人員も増やす前提の仕組みですが、基準を満たす最小限の人数で運営されている薬局では、1人あたりの負荷が下がりにくいのが実情です。
代わりがいない状態が続くこと自体が、休むという選択肢を思い浮かべにくくさせます。
調剤過誤への緊張が続くため
調剤過誤を起こしてはいけないという緊張は、勤務時間中ずっと続きます。この緊張が個人の性格の問題ではないことは、公的な事例収集事業のデータから読み取れます。
薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業の2024年年報では、調剤に関するヒヤリ・ハット19,304件について発生要因が集計されています(複数回答・計68,623件)。上位には判断誤り9,407件、繁忙であった9,037件、慣れ・慢心8,322件が並びます。
注目したいのは、薬局内のルールや管理の体制・仕方3,627件、教育訓練のなされ方1,484件、風土・雰囲気450件といった、職場側の項目が並んでいることです。ミスの背景には、個人の注意力だけでは説明できない要素が含まれています。
経験年数別の集計も同じ方向を示します。件数が最も多いのは経験20年の層で2,556件であり、経験の浅い層を上回っています。年数を重ねれば緊張から解放されるわけではありません。
経験年数別 ヒヤリ・ハット件数
調剤に関するヒヤリ・ハット19,304件(当事者の経験年数別)
患者さんからの申し出やクレームに一人で対応するため
薬剤師法では、調剤した薬剤の適正な使用のために必要な情報提供と、薬学的知見にもとづく指導を行うことが薬剤師の義務とされています。窓口での説明は、サービスではなく法律上の職務です。
そのため、待ち時間への苦情、後発医薬品への変更に対する不満、在庫がない場合の説明といった場面で、薬剤師が対応を引き受けることになります。少人数の薬局では、その場に相談できる同僚がいないまま一人で受け止める形になりがちです。
対応が難しかった場面を振り返る時間も取りにくく、気持ちの整理がつかないまま次の患者さんの応対に移るという状態が積み重なります。
処方内容や制度の変更に常に対応し続けるため
薬剤師の業務は、覚えた知識をそのまま使い続けられる仕事ではありません。新しい医薬品の追加、供給不安による代替品の選定、診療報酬・調剤報酬の改定に伴う算定要件の変更に、その都度対応する必要があります。
制度改定は2年に一度行われ、加算の要件や点数が見直されます。改定のたびに、算定の可否を判断しながら日常業務をこなすことになります。
こうした更新作業は、勤務時間内に収まるとは限りません。休日に資料を読む、閉店後に確認するといった形で業務外に持ち出されると、仕事から切り離された時間が確保しにくくなります。
店舗のノルマや売上目標が課される場合があるため
ドラッグストアや一部の調剤薬局では、要指導医薬品や一般用医薬品、健康食品などの販売目標が設定される場合があります。調剤業務と並行して数値を求められることが、負担として重なることがあります。
こうした負荷を早い段階でつかむ仕組みがストレスチェック制度です。ただし、実施が義務づけられているのは常時50人以上の労働者を使用する事業場に限られます。薬局は50人未満の事業場が多く、義務の対象外となっているケースが少なくありません。
令和7年労働安全衛生調査では、メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所は全体で63.0%である一方、労働者10〜29人の事業所では54.6%にとどまっています。規模が小さい職場ほど、負荷を早く見つける仕組みが整いにくい状況です。
なお、2025年に公布された改正労働安全衛生法により、令和10年4月1日から労働者数50人未満の事業場にもストレスチェックの実施が義務化されます。
薬剤師の求人を探す参考:厚生労働省「令和7年 労働安全衛生調査(実態調査) 結果の概況」 / 厚生労働省「ストレスチェック制度・メンタルヘルス対策」 / 薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業「薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業 年報」 / e-Gov法令検索「薬局並びに店舗販売業及び配置販売業の業務を行う体制を定める省令」 / e-Gov法令検索「薬剤師法」
薬剤師が受診を先延ばしにしやすい理由

つらさを感じていても受診に至らない理由は、単なる先延ばしではありません。薬剤師という職業だからこそ生じる事情があります。
ここでは3つの構造を取り上げます。いずれも、自分では気づきにくいまま受診が遅れる原因になるものです。当てはまるものがあれば、それは受診をためらう理由としては十分ではないと考えてください。
薬の知識があるため自己判断しやすい
薬剤師は、抗うつ薬の作用機序も、睡眠導入薬の使い分けも知っています。その知識があるために、自分の状態を自分で評価してしまうことがあります。
市販の睡眠改善薬やサプリメントで対処する、知人に処方された薬の内容を参考にする、症状が軽いうちは様子を見ると判断する。いずれも知識があるからこそ選びやすい対処ですが、診断は医師が行うものであり、自分自身の状態は最も評価が難しい対象です。
うつ病では、意欲や集中力の低下そのものが症状として現れます。判断力が落ちている状態で自分の判断力を評価しようとすること自体に無理があります。
厚生労働省の令和5年患者調査では、精神及び行動の障害で継続的に医療を受けている人は約489万6千人と推計されています。受診は特別な選択ではありません。
職場に処方内容を知られたくないと感じる
勤務先の薬局や近隣の薬局で調剤を受けることに抵抗を感じ、そのために受診自体を見送ってしまうことがあります。同僚に処方内容を見られるかもしれないという不安は、薬剤師以外の職種には生じにくい事情です。
ここで確認しておきたいのは、薬剤師には法律上の守秘義務があることです。刑法第134条第1項では、薬剤師が正当な理由なく業務上知り得た人の秘密を漏らした場合、6月以下の拘禁刑または10万円以下の罰金と定められています。同法第135条により、この罪は告訴がなければ起訴されない親告罪とされています。
とはいえ、気持ちの問題は制度だけでは解消しません。現実的な選択肢としては、次のような方法があります。
- 勤務先とは別の系列・別の地域の薬局で調剤を受ける
- 勤務先から離れた地域の医療機関を受診する
- オンライン診療に対応している医療機関を選ぶ
受診先や調剤を受ける薬局は自分で選べます。知られたくないという理由で受診そのものを止める必要はありません。
自分が休むと店舗が回らないと考えてしまう
一人薬剤師や少人数体制で働いていると、自分が抜けたときに薬局が開けられなくなるのではないかと考えてしまいます。しかし、人員体制を整える責任は、法律上は勤務先にあります。
医薬品医療機器等法第7条では、薬局開設者が薬剤師でないときは、その薬局で実務に従事する薬剤師のうちから管理者を指定して実地に管理させなければならないと定めています。義務を負っているのは薬局開設者であり、個々の従業員ではありません。
前述の体制省令が定める薬剤師の人数や不在時間の基準も、名宛人は薬局開設者です。基準を満たせるだけの人員を確保しておくことは、開設者の側の責任範囲にあたります。
体調が悪い状態で無理に勤務を続けることは、調剤過誤のリスクを高めることにもつながります。自分が抜けられないという前提そのものを、一度置いてみてください。
参考:厚生労働省「令和5年(2023)患者調査の概況」 / こころの耳「ご存知ですか?うつ病」 / e-Gov法令検索「刑法」 / e-Gov法令検索「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」
薬剤師がうつで休職するまでの流れ

休職は、体調が悪いと申し出れば認められるものではありません。起点になるのは医師の診断です。症状の重さにかかわらず、この順番は変わりません。
この章では、受診から休職の開始までを5つの段階に分けて説明します。手続きの全体像が見えていれば、どこから動けばよいかが分かります。
心療内科・精神科を受診する
最初の一歩は、心療内科または精神科の受診です。かかりつけの内科から紹介を受ける方法もあります。
受診を考える目安として、一般的に次のようなサインが挙げられます。ただし、これらは自己診断のためのチェックリストではありません。当てはまるかどうかで判断せず、気になる状態が続いていること自体を医師に伝えてください。
- 2週間以上、気分の落ち込みや興味の減退が続いている
- 眠れない、または朝早く目が覚める状態が続いている
- 食欲や体重に変化がある
- これまでできていた業務に時間がかかるようになった
予約が取りにくい場合は、まず相談窓口を使う方法もあります。厚生労働省が運営するこころの耳では、電話・メール・SNSでの相談を無料で受け付けています。
診断書を受け取る
医師が療養を要すると判断した場合、診断書が発行されます。診断書には病名と、療養に必要と見込まれる期間が記載されます。休職の申請には、この書類を勤務先に提出することになります。
ここで混同しやすいのが、診断書と傷病手当金の申請書類の違いです。傷病手当金の申請書には療養担当者が記入する欄があり、勤務先に提出する診断書とは別の書類です。両方が必要になることを、受診の時点で医師に伝えておくとやり取りが少なく済みます。
なお、診断書の発行には文書料がかかります。金額は医療機関によって異なるため、受診時に確認しておくと安心です。
診断書 と 傷病手当金支給申請書 の違い
| 項目 | 診断書 | 健康保険傷病手当金支給申請書 |
|---|---|---|
| 記入する人 | 主治医 | 被保険者・事業主・医師(療養担当者)がそれぞれの欄を記入する |
| 提出先 | 勤務先 | 加入している健康保険 |
| 何のために使うか | 休職の申し出と休職期間の確認 | 傷病手当金の請求 |
| 主な記載内容 | 病名、療養に必要と見込まれる期間 | 労務不能と認められた期間、給与の支払い状況 |
| 費用 | 文書料がかかる(金額は医療機関により異なる) | 医療機関により異なる |
| 出すタイミング | 休職を申し出るとき | 給与の締切日ごとに1か月単位で出すことがすすめられている |
上司と人事に伝える
診断書を受け取ったら、勤務先に休職を申し出ます。伝える相手は直属の上司が基本ですが、薬局の場合はエリアマネージャーや本部の人事部門が窓口になることもあります。
伝える内容は、診断書に書かれている事実と、今後の連絡方法に絞って構いません。症状の詳細や原因の分析を求められても、診断に関する説明は医師の領域です。
このとき、次の点を確認しておくと後の手続きが進めやすくなります。
- 休職の開始日と、必要な提出書類
- 休職期間中の連絡方法と連絡頻度
- 傷病手当金の申請書の受け渡し方法
- 社会保険料の自己負担分の納め方
体調によっては対面での説明が難しい場合もあります。メールや書面での申し出でも差し支えありません。
就業規則の休職規定を確認する
休職制度は法律で一律に定められた制度ではなく、内容は勤務先の就業規則によって異なります。同じ調剤薬局チェーンでも、規定が違うことがあります。
確認すべき項目は次のとおりです。休職を申し出る前に、就業規則の該当箇所を読んでおくと見通しが立てやすくなります。
-
休職できる期間勤続年数によって上限が変わる場合がある
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期間満了時の扱い復職できない場合の退職・解雇の規定
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休職中の給与支給の有無と、支給される場合の割合
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休職期間の通算復職後に再度休職した場合の期間の数え方
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復職の要件主治医の診断書のみか、産業医の面談も必要か
就業規則は、事業場に備え付けるか、労働者がいつでも確認できる状態にしておくことが求められています。手元にない場合は人事部門に開示を求めてください。
産業医や主治医と連携する
産業医が選任されている職場では、休職の前後で面談を受ける場合があります。ただし、産業医の選任義務があるのは常時50人以上の労働者を使用する事業場です。労働安全衛生法施行令第5条にそう定められています。
薬局は50人未満の事業場が多く、産業医がいないケースが少なくありません。その場合の相談先として、次の2つが用意されています。
-
地域産業保健センター労働者数50人未満の事業場と、そこで働く方が無料で利用できる
-
産業保健総合支援センター各都道府県に設置。事業者や産業保健スタッフ向けの支援を行う
相談先を選ぶフロー
もう一点、知っておきたいのが職場復帰支援の整備状況です。令和7年労働安全衛生調査によると、メンタルヘルス対策として職場復帰における支援に取り組んでいる事業所は全体で23.5%、労働者10〜29人の事業所では17.6%にとどまります。1,000人以上の事業所の90.1%とは大きな差があります。
つまり、小規模な職場では復帰の手順が用意されていない前提で、自分から確認していく必要があるということです。産業医がいない場合は、主治医の意見をもとに勤務先と話し合う形になります。
今のあなたの状況は?
参考:厚生労働省「令和7年 労働安全衛生調査(実態調査) 結果の概況」 / e-Gov法令検索「労働安全衛生法施行令」 / こころの耳「地域産業保健センター(地さんぽ)」 / こころの耳「産業保健総合支援センター(さんぽセンター)」 / こころの耳「こころの耳の相談窓口」
管理薬剤師が休職する場合の手続き

管理薬剤師が休職する場合、本人の手続きに加えて勤務先側にも届出が生じます。管理薬剤師は薬局開設の許可に関わる事項だからです。
この仕組みを知らないと、自分が休むと薬局が営業できなくなると思い込み、休職の申し出をさらにためらうことになります。結論から言えば、手続きの主体は薬局開設者であり、休職する本人が抱える問題ではありません。
管理薬剤師の変更に伴う届出
医薬品医療機器等法第10条第1項では、薬局開設者は、その薬局の管理者その他厚生労働省令で定める事項を変更したときは、30日以内に薬局の所在地の都道府県知事に届け出なければならないと定めています。届出の義務を負っているのは薬局開設者です。
同法施行規則第16条第1項では、届出が必要な事項として次のものが挙げられています。管理者に関する項目は第4号です。
- 薬局開設者の氏名または住所
- 薬局の構造設備の主要部分
- 通常の営業日および営業時間
- 薬局の管理者の氏名、住所または週当たり勤務時間数
- 管理者以外の薬剤師・登録販売者の氏名または週当たり勤務時間数
届出は様式第六による届書で行い、新たに管理者となった方については雇用契約書の写しなど、薬局開設者との使用関係を証する書類を添えることとされています。
いずれも開設者が行う手続きです。休職する本人が届出書を作成したり、都道府県に出向いたりする必要はありません。
管理薬剤師変更の届出手続きの流れ
後任が決まらない場合の扱い
後任の管理薬剤師が決まらない場合でも、確保するのは薬局開設者の責任です。医薬品医療機器等法第7条第2項は、薬局開設者が薬剤師でないときは、その薬局で薬事に関する実務に従事する薬剤師のうちから管理者を指定して実地に管理させなければならないと定めています。
ここで重要なのが「実地に管理」という文言です。勤務していない人を管理薬剤師として届け出ておく形は認められません。休職中に名前だけ残してほしいと求められた場合は、この点が問題になります。
同法第73条では、都道府県知事は、薬局の管理者に法令違反行為があったとき、または管理者として不適当であると認めるときは、薬局開設者に対して管理者の変更を命ずることができるとされています。さらに同法第75条第1項では、薬局開設者に法令違反行為があった場合、許可の取消しまたは業務の全部もしくは一部の停止を命ずることができると定められています。
名義だけを残す扱いは、勤務先にも本人にもリスクが及びます。求められた場合は、開設者側の責任で後任を指定する必要があることを伝えてください。
名義だけの管理薬剤師が認められない根拠
休職中の在籍と復職後の役職
休職は退職ではないため、管理薬剤師を外れても薬局の従業員としての在籍は続きます。管理者の指定が変わることと、雇用契約が終わることは別の話です。
復職後に管理薬剤師へ戻るかどうかは、勤務先と相談できる事項です。法律上、一度管理薬剤師を外れた人が再び指定を受けられないという制限はありません。管理者は必要な能力および経験を有する者であることが求められますが、経験年数の具体的な定めは条文に置かれていません。
復帰直後は一般薬剤師として勤務し、体調が安定してから管理薬剤師に戻るという段階を踏む形も選べます。復職の面談では、役職を含めた働き方の希望を伝えておくとよいでしょう。
参考:e-Gov法令検索「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」 / e-Gov法令検索「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則」
休職中の収入と社会保険

休職中の生活を見通すには、入ってくるお金と出ていくお金の両方を把握する必要があります。傷病手当金の額だけを見て計画を立てると、社会保険料の負担が続くことで想定と食い違います。
この章の内容は2026年8月時点の制度にもとづいています。制度改正があるため、実際に申請する際は加入している健康保険の案内で最新の情報を確認してください。健康保険組合によっては、法定の給付に上乗せの給付を行っている場合もあります。
傷病手当金の仕組み
傷病手当金は、健康保険の被保険者が病気やケガで働けないときに支給される給付です。全国健康保険協会の場合、次の4つの条件をすべて満たすことが必要です。
- 業務外の病気やケガで療養中であること
- 療養のため労務不能であること
- 4日以上仕事を休んでいること
- 給与の支払いがないこと
3つ目の条件について補足します。休み始めた日から連続した3日間は待期期間となり、支給の対象は4日目からです。
4つ目の条件については、給与が一部だけ支給されている場合、傷病手当金から給与支給分を差し引いた額が支給されます。休職中も給与の一部が出る規定の職場では、この調整が行われます。
なお、業務が原因の場合は労災保険の対象となり、傷病手当金ではありません。判断に迷う場合は労働基準監督署に相談してください。
申請書は被保険者・事業主・医師がそれぞれの欄を記入する形式です。事業主の証明が必要になるため、全国健康保険協会は給与の締切日ごとに1か月単位で申請することをすすめています。
支給される期間と金額
支給期間は、同一の傷病について支給を開始した日から通算して1年6か月です。通算であるため、途中で出勤した期間があれば、その分だけ受給できる期間が先に延びます。
1日あたりの金額は、支給開始日以前12か月間の各標準報酬月額を平均した額を30日で割り、3分の2を掛けて求めます。
たとえば標準報酬月額の平均が30万円であれば、1日あたりおよそ6,667円、30日分でおよそ20万円になります。
支給開始日以前の被保険者期間が12か月に満たない場合は、次のいずれか低い額を使って計算します。
- 支給開始日の属する月以前の継続した各月の標準報酬月額の平均額
- 支給開始日が令和7年4月1日以降の場合は32万円
退職後の扱いも確認しておきましょう。退職日までに継続して1年以上の被保険者期間があり、資格喪失時に傷病手当金を受けているか受ける条件を満たしていれば、退職後も残りの期間について受給できます。これを資格喪失後の継続給付といいます。
ただし注意点があります。退職日に出勤すると、この継続給付の条件を満たさなくなります。挨拶や私物の整理のために出社する場合も、扱いを事前に確認してください。
社会保険料と住民税の扱い
休職中も健康保険と厚生年金保険の被保険者資格は続きます。つまり、給与が支払われていなくても社会保険料は発生し続けます。
保険料が免除されるのは産前産後休業と育児休業等の期間に限られます。日本年金機構の案内も「保険料の免除等(産休・育休関係)」として整理されており、私傷病による休職は免除の対象に含まれていません。
厚生年金保険の保険料率は18.3%で、事業主と被保険者が半分ずつ負担するため本人負担は9.15%です。健康保険料率は都道府県ごとに設定され、令和8年度は3月分から改定されています。
通常は給与から天引きされている本人負担分を、休職中は別の方法で納めることになります。振込での納付、傷病手当金からの相殺、復職後にまとめて精算といった扱いは勤務先によって異なるため、休職の申し出の際に確認してください。
傷病手当金30日分と社会保険料の本人負担
標準報酬月額30万円・東京都・40歳未満・令和8年度の保険料率で試算
合計 200,010円
40歳以上は介護保険料が加わる。保険料率は加入する健康保険や年度によって異なる
住民税は前年の所得に応じて別途かかる
住民税にも注意が必要です。住民税は前年の所得に対して課税され、翌年6月から翌々年5月にかけて納めます。休職して収入が下がっても、その年に納める住民税は前年の所得をもとに計算された額です。
給与天引きの特別徴収が続けられない場合は、自分で納める普通徴収に切り替わり、納付書が自宅に届きます。まとまった額を年4回に分けて納めることになるため、資金の見通しに入れておいてください。
年次有給休暇との使い分け
休職に入る前に年次有給休暇を使うかどうかは、判断が分かれるところです。それぞれの性質を整理しておきます。
年次有給休暇は労働基準法にもとづく制度で、取得した日については通常の賃金が支払われます。一方、傷病手当金は標準報酬月額の平均の3分の2が目安です。金額だけを見れば、有給休暇を使うほうが手取りは多くなります。
ただし、有給休暇を先に使い切ると、その後の体調によっては使える休暇が残らないという状況が起こり得ます。復職後の通院や、体調が揺れたときの短期の休みに備えて、一定日数を残しておく考え方もあります。
待期期間の3日間については、有給休暇を充てても待期は成立します。この3日間には傷病手当金が支給されないため、有給休暇を使う実益があります。
年次有給休暇の付与日数や時効の扱いは労働基準法で定められており、就業規則でこれを下回る条件にすることはできません。残日数は給与明細や人事部門で確認できます。
転職活動するなら?
参考:全国健康保険協会「病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)」 / 全国健康保険協会「傷病手当金」 / 日本年金機構「保険料の免除等(産休・育休関係)」 / 日本年金機構「厚生年金保険の保険料」 / 全国健康保険協会「令和8年度の協会けんぽの保険料率は3月分(4月納付分)から改定されます」 / 総務省「個人住民税」 / e-Gov法令検索「労働基準法」
うつ病と薬剤師免許の関係

通院歴が残ると免許に影響するのではないか。この不安から受診をためらう方がいます。ここでは薬剤師法と同法施行規則の規定を確認し、条文の範囲内で整理します。
なお、個別の事案がどう扱われるかは行政の判断事項です。以下は条文が何を定めているかの説明であり、特定のケースへの結論ではありません。
薬剤師法の欠格事由の内容
薬剤師法第5条は相対的欠格事由を定めています。相対的とは、該当すれば必ず免許が与えられないのではなく、与えないことがあるという意味です。条文には次の4つが挙げられています。
- 心身の障害により薬剤師の業務を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定めるもの
- 麻薬、大麻またはあへんの中毒者
- 罰金以上の刑に処せられた者
- 薬事に関し犯罪または不正の行為があった者
このうち第1号の「厚生労働省令で定めるもの」の中身は、薬剤師法施行規則第1条の2に書かれています。視覚または精神の機能の障害により薬剤師の業務を適正に行うに当たって必要な認知、判断および意思疎通を適切に行うことができない者、というのが条文の文言です。
条文が対象としているのは、業務に必要な認知・判断・意思疎通ができない状態です。通院している、休職しているという事実そのものを対象とする規定ではありません。
さらに施行規則第1条の3では、厚生労働大臣が免許を与えるかどうかを決定するときは、その人が現に利用している障害を補う手段、または現に受けている治療等により障害が補われ、もしくは障害の程度が軽減している状況を考慮しなければならないと定められています。治療を受けていることは、考慮すべき事情として条文に位置づけられています。
免許の申請者が第5条第1号に該当すると認められる場合の手続きも用意されています。薬剤師法第7条の2により、厚生労働大臣はあらかじめ本人に通知し、求めがあれば意見を聴取しなければなりません。
勤務や届出への影響
すでに免許を持っている方の処分については、薬剤師法第8条第1項に規定があります。薬剤師が第5条各号のいずれかに該当し、または薬剤師としての品位を損するような行為があったときに、厚生労働大臣が戒告・3年以内の業務の停止・免許の取消しのいずれかの処分をすることができるという内容です。
処分の前提となるのは、あくまで第5条各号への該当か、品位を損する行為です。診療を受けたことや休職したことを届け出る仕組みは、薬剤師法には置かれていません。
薬剤師に課されている届出は、同法第9条の届出です。厚生労働省令で定める2年ごとの年の12月31日現在における氏名、住所その他の事項を、翌年1月15日までに届け出るというものです。届け出る内容に病歴は含まれません。
不安が残る場合の相談先としては、都道府県の薬務主管課や、所属する都道府県薬剤師会の相談窓口があります。自己判断で結論を出さず、根拠のある情報にあたってください。
薬剤師の求人を探す参考:e-Gov法令検索「薬剤師法」 / e-Gov法令検索「薬剤師法施行規則」 / 日本薬剤師会「日本薬剤師会オフィシャルWebサイト」
薬剤師が復職・転職を進めるときのポイント

休職の目的は休むことであり、復帰の時期を先に決めるものではありません。ここでは、体調が回復してきた段階で検討する内容を整理します。
読む時点で回復の途中であれば、この章は今すぐ実行する項目としてではなく、そういう選択肢があるという情報として受け取ってください。
復職の判断
復職の可否は、主治医の意見と、産業医が選任されている職場では産業医の意見をもとに判断されます。本人が働けると感じていることと、業務に耐えられる状態であることは別に評価されます。
段階を踏む選択肢として、リワークプログラムがあります。独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が各都道府県に設置する地域障害者職業センターでは、休職中の方を対象に職場復帰支援を実施しています。生活リズムの回復、集中力の確認、職場で必要になるやり取りの練習などを、復帰前に段階的に行う仕組みです。
医療機関が実施するリワークプログラムもあります。主治医に選択肢を確認してください。
復職判断までの流れ
かかる期間は人によって異なる。
復職の要件は勤務先の就業規則によって異なる。
前述のとおり、職場復帰支援に取り組んでいる事業所は小規模なほど少なくなります。勤務先に決まった手順がない場合は、主治医の意見をもとに、勤務時間や業務内容を具体的に提案する形が現実的です。
職場環境の調整
復職にあたっては、休職前と同じ条件に戻ることが前提ではありません。相談できる調整の例を挙げます。
-
勤務時間時短勤務から始め、段階的に通常勤務へ戻す
-
配置一人薬剤師の店舗から、複数名が勤務する店舗へ変更する
-
業務範囲管理薬剤師の業務や在宅業務を一時的に外す
-
店舗の異動通勤時間の短い店舗、処方箋枚数の少ない店舗へ移る
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夜間・休日遅番や休日出勤の免除
こうした調整が難しい職場であれば、転職も選択肢に入ります。実際の求人でどの程度の条件が出ているかを見ておくと、判断の材料になります。
- 医療キャリアナビ掲載求人データ(2026年時点)では、薬剤師の求人1,450件のうち時短勤務OKは149件(10%)
- ブランクOKは145件(10%)、残業ほぼなしは127件(9%)
- 件数は限られるので、条件を絞って探すか、相談しながら進めるのが現実的です
転職時の伝え方
休職経験を隠して転職することはおすすめできません。入社後に体調が揺れたときに配慮を求めにくくなり、結果として自分が不利になるためです。
一方で、応募者に既往歴の告知義務が一律にあるわけでもありません。採用選考では、本人の適性と能力に関係のない事項で採否を決めないことが求められています。
現実的なのは、次の3点を中心に伝える方法です。過去の症状の詳細ではなく、今の状態と働ける条件に話の重心を置きます。
- 現在の状態(通院の有無、主治医からどう言われているか)
- 働ける条件(勤務時間、勤務日数、対応できる業務の範囲)
- 必要な配慮(あれば具体的に、なければその旨)
休職期間について問われた場合は、体調を整えるための期間だったと事実を述べれば十分です。面接で説明しづらい場合は、転職エージェントを通じて事前に企業側へ伝えてもらう方法もあります。
相談できる窓口
一人で判断しなくてよい場面では、公的な窓口を使ってください。無料で利用できるものが揃っています。
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こころの耳厚生労働省の働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト。電話・メール・SNSで相談できる
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地域産業保健センター労働者数50人未満の事業場で働く方が無料で健康相談を利用できる
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産業保健総合支援センター各都道府県に設置。産業保健に関する相談に対応
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精神保健福祉センター都道府県・指定都市に設置。こころの健康に関する相談を受け付ける
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総合労働相談コーナー労働条件や職場のトラブルに関する相談窓口
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都道府県薬剤師会会員向けの相談窓口を設けている場合がある
窓口によって扱う内容が違います。体調に関することはこころの耳や精神保健福祉センター、休職の扱いや退職をめぐるトラブルは総合労働相談コーナー、と目的で選んでください。
参考:厚生労働省「令和7年 労働安全衛生調査(実態調査) 結果の概況」 / 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構「地域障害者職業センター」 / こころの耳「こころの耳の相談窓口」 / 厚生労働省「総合労働相談コーナーのご案内」
まとめ
薬剤師がうつで休職するまでの流れは、受診、診断書の取得、勤務先への申し出、就業規則の確認、産業医や主治医との連携という順に進みます。起点になるのは自己判断ではなく医師の診断です。
休職中の収入は傷病手当金が中心になります。支給は待期期間の3日間を除く4日目からで、期間は同一の傷病について通算1年6か月です。ただし社会保険料の負担は続き、住民税も前年の所得をもとに課税されます。手取りの見通しは、この2つを差し引いて立ててください。
管理薬剤師の変更に伴う届出は、薬局開設者が30日以内に行うものです。後任の確保も開設者の責任であり、休職する本人が抱える問題ではありません。
うつ病と薬剤師免許の関係については、薬剤師法施行規則が治療によって障害が補われ、または程度が軽減している状況を考慮しなければならないと定めています。通院や休職の事実が直ちに欠格事由にあたるわけではありません。
まずは受診の予約を取ることから始めてください。予約が取りにくい場合や、誰に相談すればよいか分からない場合は、こころの耳の相談窓口や地域産業保健センターを使うことができます。





