柔道整復師が行う物理療法とは?種類・効果・注意点を解説
柔道整復師として働くうえで、電気療法や温熱療法といった物理療法は日々の施術に欠かせない手技です。とはいえ「種類が多くて使い分けが曖昧」と感じる方も少なくありません。
この記事では、柔道整復師が行う物理療法とは何かという位置づけから、電気・温熱・冷却・光線・超音波・水療法といった主な種類、得られる効果、施術時の注意点までをまとめて解説します。
これから現場に立つ方も、知識を整理し直したい方も、物理療法の全体像を把握することができます。
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柔道整復師の物理療法の位置づけ

物理療法とは、電気・温熱・冷却・光線・超音波・水などの物理的なエネルギーを身体に加え、痛みの緩和や治癒の促進を図る治療法です。柔道整復師にとっては、骨折や脱臼、打撲、捻挫、挫傷といったケガに対する施術の柱の一つになります。
まずは、柔道整復師の施術全体のなかで物理療法がどこに位置づけられるのかを整理します。
柔道整復師の数は年々増えており、活躍の場も接骨院だけにとどまりません。施術の質を支える基礎として、物理療法の理解は欠かせないものになっています。
参考:厚生労働省「令和4年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」
「後療法」の一つとして行われる
柔道整復師の施術は、大きく「整復法」「固定法」「後療法」の3つに分けられます。整復法はずれた骨や関節を元の位置に戻す手技、固定法は患部を安静に保つための処置です。そして物理療法は、最後の段階である後療法のなかで行われる中心的な手技にあたります。
後療法は、固定によって低下した機能を回復させ、損傷した組織の治癒を後押しする段階です。手技療法(マッサージや運動療法など)と並んで、物理療法はこの後療法を構成する重要な要素になります。
ケガの急性期から回復期まで、状態に応じて適切な物理療法を選ぶことが、スムーズな回復につながります。
後療法を構成する3つの療法
自然治癒力を高めることが目的
物理療法の根底にある考え方は、人がもともと備えている自然治癒力を引き出すことにあります。電気や温熱などの刺激は、それ自体が組織を治すわけではなく、血流の改善や痛みの軽減を通じて身体本来の回復力が働きやすい環境を整えるものです。
柔道整復師の施術が、薬や手術に頼らない非観血的な方法を基本とするのも、この自然治癒力を重視する考え方によります。物理療法は、痛みを和らげながら回復を後押しし、利用者さんが日常生活へ戻る過程を支えます。
目的を正しく理解しておくことで、利用者さんへの説明にも説得力が生まれます。
物理療法の主な種類

物理療法は、用いるエネルギーの種類によっていくつかに分類されます。柔道整復師の現場で使われる代表的なものは、電気療法・温熱療法・冷却療法・光線療法・超音波療法・水療法の6つです。それぞれ作用する仕組みや適した場面が異なるため、まずは全体像をつかんでおきましょう。
以下の表で、6種類の物理療法の特徴を整理します。ケガの状態や目的に応じて、これらを組み合わせて用いるのが実際の施術です。
| 種類 | 主なエネルギー | 代表的な作用 |
|---|---|---|
| 電気療法 | 電流 | 痛みの緩和・筋肉への刺激 |
| 温熱療法 | 熱 | 血流促進・筋緊張の緩和 |
| 冷却療法 | 冷却 | 炎症・腫れ・痛みの抑制 |
| 光線療法 | 光(赤外線・レーザー等) | 温熱・組織修復のサポート |
| 超音波療法 | 音波(振動) | 深部の温熱・組織への刺激 |
| 水療法 | 水(温度・水流・浮力) | 温熱・血流促進・負担の軽減 |
電気療法
電気療法は、微弱な電流を身体に流し、痛みの緩和や筋肉への刺激を行う方法です。流す電流の周波数によって作用する深さや目的が変わり、表層の痛みを抑えるものから、深部の組織にアプローチするものまで幅広く存在します。
接骨院でもっとも目にする機会が多い物理療法の一つで、急性期の痛みから慢性的なコリまで対応範囲が広いのが特徴です。低周波・中周波・高周波・微弱電流・ハイボルテージなど種類が多く、それぞれの違いは後の見出しで詳しく解説します。
温熱療法
温熱療法は、患部を温めることで血流を促し、筋肉の緊張をやわらげる方法です。温められた組織は血管が広がり、酸素や栄養が運ばれやすくなるため、疲労物質の排出や組織の修復が進みやすくなります。
慢性的な痛みやこわばり、血行不良による不調に適しています。ただし、炎症が強い急性期に温めると症状が悪化する場合があるため、使うタイミングの見極めが大切です。ホットパックやパラフィン浴などが代表的な手段です。
冷却療法
冷却療法は、患部を冷やして炎症や腫れ、痛みを抑える方法です。受傷直後の急性期に用いられることが多く、冷やすことで血管が収縮し、内出血や腫れの広がりを抑える働きがあります。
捻挫や打撲などのケガの初期対応として欠かせない手技です。アイシングや冷却スプレーなどがあり、応急処置の基本である安静・冷却・圧迫・挙上の考え方とも深く結びついています。冷やしすぎると凍傷のリスクがあるため、時間や方法には注意が必要です。
光線療法
光線療法は、赤外線や紫外線、レーザーなどの光のエネルギーを患部に照射する方法です。光の波長によって身体への作用が異なり、温める目的のものから、組織の修復を促すものまであります。
赤外線は深部を温めて血流を促し、低出力レーザーは痛みの緩和や組織修復のサポートに用いられます。照射する距離や時間によって効果が変わるため、機器の特性を理解して使うことが求められます。
超音波療法
超音波療法は、人の耳には聞こえない高い周波数の音波を利用する方法です。音波の振動が組織に伝わり、深部を温める温熱作用と、細胞を刺激する非温熱作用の両方をもつのが特徴です。
深いところにある組織にもアプローチでき、温熱と機械的刺激を同時に与えられる点が他の物理療法との違いです。連続波とパルス波を切り替えることで、目的に応じた使い分けができます。
水療法
水療法は、水の温度や水流、浮力といった性質を利用して身体に働きかける方法です。お湯による温熱効果に加え、水中では関節への負担が軽くなるため、痛みを抑えながら動かしたい場面に向いています。
渦流浴や交代浴などがあり、温める・冷やすを組み合わせて血流を促すこともできます。専用の設備が必要なため、すべての施設で行われるわけではありませんが、リハビリの場面で活用されています。
電気療法の種類と特徴

電気療法は、流す電流の周波数によって性質が大きく変わります。周波数が低いほど表層に、高いほど深部に作用する傾向があり、目的に合わせて選ぶことが大切です。ここでは、柔道整復師の現場で使われる代表的な5つの電気療法を解説します。
それぞれ刺激の感じ方や適した症状が異なります。利用者さんの状態や好みも踏まえながら、適切な種類と強さを選ぶことが施術の質につながります。
低周波療法(TENS・EMS)
低周波療法は、1〜1,000ヘルツ程度の低い周波数の電流を流す方法です。代表的なものに、痛みの緩和を目的とするTENS(経皮的電気神経刺激)と、筋肉を収縮させて鍛えるEMS(電気的筋肉刺激)があります。
低周波は皮膚の抵抗を受けやすく、主に表層の組織に作用するのが特徴です。ピリピリとした刺激を感じやすいため、強さは利用者さんが心地よいと感じる範囲に調整します。慢性的な痛みのケアや、筋力の維持・回復を目的とした場面で使われます。
中周波療法(干渉波)
中周波療法は、1,000〜10,000ヘルツ程度の周波数を用いる方法です。なかでも干渉波は、異なる周波数の電流を交差させ、体内で低周波に近い刺激を生み出す仕組みになっています。
低周波に比べて皮膚の抵抗を受けにくく、深い部分まで刺激が届きやすいのが利点です。ピリピリ感が少なくやわらかい刺激のため、低周波が苦手な利用者さんにも使いやすい傾向があります。広い範囲の痛みや、深部の筋肉のコリに向いています。
高周波療法(マイクロ波)
高周波療法は、マイクロ波などの高い周波数のエネルギーを用いる方法です。電磁波が体内の水分を振動させることで熱を発生させ、深部を温める温熱効果を生み出します。
電気刺激というよりも、深いところを温めることを目的とした温熱療法に近い性質をもちます。血流を促して慢性的な痛みやこわばりをやわらげたいときに用いられます。金属を体内に持つ方には使えないなど、適用には注意が必要です。
微弱電流療法(マイクロカレント)
微弱電流療法は、マイクロアンペアという非常に弱い電流を流す方法です。私たちの身体が損傷を受けたときに自然に流れる電流(損傷電流)に近い微弱な刺激で、組織の回復を後押しすると考えられています。
刺激がほとんど感じられないほど弱いため、受傷直後の急性期にも使いやすい点が特徴です。痛みを与えずに組織修復のサポートを狙えることから、スポーツ現場でのケアなどにも取り入れられています。
ハイボルテージ療法(高電圧電流)
ハイボルテージ療法は、150ボルトを超える高い電圧をごく短い時間で流す方法です。高電圧をパルス状に短く加えることで、痛みを感じにくくしながら深部まで刺激を届けられます。
深い組織まで効率よくアプローチでき、急性期の強い痛みや深部の損傷に対応しやすいのが強みです。捻挫直後のケアやスポーツ外傷の現場でも活用されています。比較的新しい機器のため、扱いに慣れることで施術の幅が広がります。
周波数が低いほど表層、高いほど深部に作用しやすい
TENS・EMS
表層に作用。痛みの緩和(TENS)や筋肉の収縮(EMS)に用いる。ピリピリした刺激を感じやすい。
干渉波
皮膚抵抗を受けにくく深部まで届く。刺激がやわらかく、低周波が苦手な方にも使いやすい。
マイクロ波
水分を振動させ深部を温める。電気刺激より温熱療法に近い。体内に金属がある方は使用不可。
マイクロカレント
損傷電流に近い微弱な刺激で組織修復を後押し。刺激をほぼ感じず、急性期にも使いやすい。
ハイボルテージ
高電圧を短時間パルスで流し、深部まで刺激。急性期の強い痛みやスポーツ外傷に対応しやすい。
温熱療法の種類と特徴

温熱療法は、患部を温めて血流を促し、筋肉の緊張や慢性的な痛みをやわらげる方法です。温め方によって、体表から伝える方法と深部に直接働きかける方法があり、深達度や持続時間が異なります。ここでは代表的な3つを紹介します。
いずれも血行を促す点は共通していますが、温まる深さや使い勝手に違いがあります。患部の場所や目的に合わせて選ぶことが大切です。
ホットパック
ホットパックは、温めた保温材をタオルなどで包み、患部に当てて温める方法です。柔道整復師の現場でもっとも広く使われている温熱療法で、手軽に体表からじんわりと熱を伝えられます。
主に皮膚から比較的浅い部分を温めるのに適しており、首や肩、腰などの広い範囲を一度に温められます。心地よい温かさで筋肉の緊張をゆるめ、施術前の準備としても用いられます。やけどを防ぐため、当てる時間や温度の確認は欠かせません。
パラフィン浴
パラフィン浴は、溶かしたパラフィン(ろう)に手や足を浸し、表面にろうの膜を作って温める方法です。ろうは熱を保ちやすく、体表にぴったり密着するため、凹凸のある手指や足先までむらなく温められるのが特徴です。
手や足の関節のこわばり、慢性的な痛みのケアに向いています。じんわりと長く温かさが続くため、温熱の心地よさを感じやすい手段です。専用の装置が必要になりますが、手指の細かな部位を温めたい場面で力を発揮します。
ホットマグナー
ホットマグナーは、磁気と温熱を組み合わせた機器を用いる温熱療法です。温める作用に加えて磁気による刺激を与えることで、血行の促進をねらいます。患部に当てて使うタイプが多く、肩や腰などのこりや痛みのケアに用いられます。
体表を温めながら手軽に使える点が利点です。ホットパックと同じく、温めるタイミングを誤ると炎症を強めるおそれがあるため、急性期を避けて慢性期に用いるのが基本です。利用者さんの状態を確認しながら使いましょう。
温めた保温材を当てる定番の方法。首・肩・腰など広い範囲をじんわり温められる。
溶かしたろうに浸して温める。手指や足先など凹凸のある部位もむらなく温められる。
温熱と磁気を組み合わせた機器。手軽に当てて使え、肩や腰のこり・痛みのケアに用いる。
冷却療法の種類と特徴

冷却療法は、患部を冷やして炎症や腫れ、痛みを抑える方法です。とくに受傷直後の急性期に重要で、適切に冷やすことでその後の回復に差が出ることもあります。ここでは代表的な3つの方法を紹介します。
冷却は応急処置の基本である「安静・冷却・圧迫・挙上」の柱の一つです。冷やす方法や時間を理解し、凍傷などのリスクを避けながら使うことが大切です。
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アイシング氷や保冷剤を使い、患部を一定時間冷やす基本的な方法
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冷却スプレー瞬間的に表面を冷やし、痛みをすばやく抑える方法
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アイスマッサージ凍らせた氷で患部をなでるように冷やす方法
アイシング
アイシングは、氷のうや保冷剤を患部に当てて冷やす、もっとも基本的な冷却法です。捻挫や打撲などの受傷直後に行うことで、血管が収縮し、内出血や腫れの広がりを抑える効果が期待できます。痛みの感覚も鈍くなるため、急性期の痛みの軽減にもつながります。
ただし、長時間冷やし続けると凍傷を起こすおそれがあります。冷やす時間の目安や、感覚がなくなったら一度外すといった配慮が必要です。冷却の具体的なタイミングや時間については、以下の記事でも詳しく解説しています。
冷却スプレー
冷却スプレーは、患部に吹きかけることで表面を瞬間的に冷やすものです。気化熱を利用して素早く温度を下げるため、スポーツ現場での応急的な痛みの軽減などに使われます。手軽に短時間で冷やせる点が利点です。
一方で、冷やせるのは表面のみで、深部まで届くわけではありません。同じ場所に長く吹きかけると皮膚を傷めるおそれがあるため、距離や時間を守って使う必要があります。あくまで一時的な処置として、他の冷却法と組み合わせて使うのが基本です。
アイスマッサージ
アイスマッサージは、紙コップなどで凍らせた氷を使い、患部をなでるように動かしながら冷やす方法です。氷を動かすことで、狭い範囲をピンポイントで冷やせるのが特徴です。アキレス腱や肘など、限られた部位のケアに向いています。
動かしながら冷やすため、同じ場所を冷やし続けるアイシングよりも凍傷のリスクを抑えやすい面があります。ただし冷たさの感じ方には個人差があるため、利用者さんの様子を見ながら時間を調整します。
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光線療法の種類と特徴

光線療法は、光のエネルギーを患部に照射する方法です。光は波長によって身体への作用が変わり、温める目的のものから、痛みの緩和や組織の修復を促すものまであります。ここでは代表的な3つを紹介します。
それぞれ波長と目的が異なるため、混同しないよう整理しておきましょう。機器ごとに照射の距離や時間が決まっており、正しく扱うことが安全につながります。
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赤外線療法深部を温めて血流を促す。慢性的な痛みやこわばりに用いる
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紫外線療法殺菌作用などをもつ。皮膚への影響が大きく取り扱いに注意
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低出力レーザー療法痛みの緩和や組織修復をねらう。患部に直接照射する
赤外線療法
赤外線療法は、赤外線の熱エネルギーを患部に照射して温める方法です。光が体表から吸収されて熱に変わり、血流を促して筋肉の緊張をやわらげる効果が期待できます。温熱療法の一種として位置づけられます。
ランプから一定の距離を保って照射するのが一般的で、広い範囲を手軽に温められます。距離が近すぎるとやけどのおそれがあるため、照射する距離と時間の管理が大切です。慢性的な痛みや血行不良のケアに用いられます。
紫外線療法
紫外線療法は、紫外線のもつ殺菌作用などを利用する方法です。皮膚の状態を整える目的などで用いられることがありますが、照射量を誤ると皮膚や目に影響を及ぼすため、慎重な取り扱いが求められます。
赤外線が温めることを目的とするのに対し、紫外線は熱の作用がほとんどない点が異なります。柔道整復の現場で日常的に使う機会は多くありませんが、光線療法の一つとして特性を知っておくと、利用者さんからの質問にも答えやすくなります。
低出力レーザー療法
低出力レーザー療法は、弱い出力のレーザー光を患部に照射する方法です。発熱を抑えながら光のエネルギーを与えることで、痛みの緩和や組織修復のサポートをねらいます。低反応レベルレーザー療法とも呼ばれます。
照射部位を狭く絞れるため、ピンポイントでアプローチしたい痛みのケアに向いています。熱さをほとんど感じずに行えるのも利点です。レーザーは目に入ると危険なため、施術者・利用者さんともに保護への配慮が欠かせません。
超音波療法の種類と特徴

超音波療法は、人の耳に聞こえない高い周波数の音波を利用する方法です。音波の振動が深部の組織まで伝わり、温熱作用と非温熱作用の両方をもたらします。波の出し方を変えることで、温める目的にも、組織を刺激する目的にも使い分けられます。
ここでは、連続波・パルス波・フォノフォレシスという3つの使い方を紹介します。同じ機器でも設定によって作用が変わるのが、超音波療法の特徴です。
温熱作用
音波を途切れず出し、深部をしっかり温める。深い筋肉や腱のこわばり、慢性的な痛みに向く。
非温熱作用
音波を区切って出し、熱を抑えて組織を刺激。炎症を強めたくない急性期にも使いやすい。
フォノフォレシス…超音波の振動で塗布した薬剤を皮膚から浸透させやすくする応用的な使い方。針を使わずに薬剤を届けられる。
連続波超音波
連続波超音波は、音波を途切れさせずに連続して出す方法です。組織のなかで振動が熱に変わり、深部をしっかり温める温熱効果が得られます。深いところにある筋肉や腱のこわばり、慢性的な痛みのケアに向いています。
ホットパックなどでは届きにくい深部まで温められる点が強みです。一方で熱が生じるため、急性期の炎症がある部位や、感覚が鈍い方への使用には注意が必要です。プローブを動かしながら均一に照射することで、やけどを防ぎます。
パルス波超音波
パルス波超音波は、音波を断続的に区切って出す方法です。音波を休ませながら出すことで熱の発生を抑えられ、温めずに組織を刺激する非温熱作用を活かせます。熱を加えたくない受傷直後の患部にも使いやすいのが利点です。
細胞へのやさしい刺激によって、組織の修復を後押しすると考えられています。急性期から回復期まで幅広く対応でき、炎症を強めたくない場面で重宝します。連続波と切り替えながら、ケガの段階に応じて使い分けます。
フォノフォレシス
フォノフォレシスは、超音波の振動を利用して、塗布した薬剤を皮膚から浸透させやすくする方法です。消炎や鎮痛を目的とした薬剤と組み合わせることで、超音波の作用と薬剤の効果を同時にねらえるとされています。
針を使わずに薬剤を届けられる点が特徴です。ただし、用いる薬剤や適用については関係する法令やルールを踏まえる必要があります。超音波療法の応用的な使い方の一つとして、特性を理解しておくとよいでしょう。
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水療法の種類と特徴

水療法は、水の温度・水流・浮力といった性質を利用する物理療法です。お湯による温熱効果に加え、水中では身体が軽くなり関節への負担が減るため、痛みを抑えながら動かしたい場面に適しています。専用の設備が必要ですが、リハビリの現場で活用されています。
ここでは代表的な3つの方法を紹介します。温める・冷やす・水流で刺激するといった、水ならではの働きかけが特徴です。
渦流浴
お湯に渦状の水流を起こし、温めながら水流で患部をやさしく刺激する。手や足など部分的に行う。
交代浴
温水と冷水に交互に浸し、血管の伸縮を繰り返して血流を改善。むくみの軽減や疲労回復に用いる。
ハバード浴
専用の大きな浴槽に全身を浸す。浮力で関節の負担を減らし、温めながら水中で身体を動かせる。
渦流浴
渦流浴は、お湯に渦のような水流を起こし、その流れで患部を刺激しながら温める方法です。温熱効果で血流を促しつつ、水流が患部をやさしくマッサージするように働きます。手や足など、部分的に行うものが一般的です。
温かさと水流の刺激を同時に得られるため、慢性的な痛みやこわばりのケアに向いています。水中では患部に直接触れずに刺激できるため、傷に配慮しながらアプローチしたい場面でも使われます。
交代浴
交代浴は、温かいお湯と冷たい水に交互に患部を浸す方法です。温めると血管が広がり、冷やすと縮むという反応を繰り返すことで、血管のポンプ作用を促して血流を改善することをねらいます。むくみの軽減や疲労回復に用いられます。
温・冷の温度差や浸す時間にはやり方の目安があり、最後を温・冷どちらで終えるかも目的によって変わります。急性期の炎症が強いときには向かないため、状態を見極めて行うことが大切です。
ハバード浴
ハバード浴は、専用の大きな浴槽に全身を浸して行う水療法です。蝶のような形をした浴槽が使われ、全身を温めながら水中で身体を動かせるのが特徴です。浮力で関節への負担が減るため、陸上では動かしにくい部位の運動にも適しています。
大がかりな設備を要するため、行える施設は限られます。温熱効果と水中運動を組み合わせられる点で、回復期のリハビリなどに活用されています。柔道整復の現場で日常的に使う機会は多くありませんが、水療法の一つとして知っておきましょう。
柔道整復師の求人を探す物理療法の効果

ここまで紹介してきた物理療法は、種類によって作用は異なりますが、得られる効果には共通する方向性があります。痛みをやわらげ、血流を促し、組織の回復を支えるといった働きです。ここでは、物理療法によって期待できる代表的な5つの効果を整理します。
これらの効果は単独ではなく、互いに関わり合って回復を後押しします。仕組みを理解しておくことで、利用者さんに目的を伝えながら施術を進められます。
疼痛の緩和
物理療法のもっとも大きな目的の一つが、痛みをやわらげることです。電気刺激は痛みを伝える神経の働きに作用し、温熱は筋肉の緊張をゆるめ、冷却は炎症を抑えることで、それぞれ異なる仕組みで痛みを軽減します。
痛みが続くと身体をかばう動きが生まれ、別の不調を招くこともあります。早い段階で痛みをやわらげることが、回復の遅れを防ぐことにつながります。利用者さんが安心して身体を動かせる状態に近づける点でも、疼痛の緩和は重要な役割を果たします。
血流の改善
温熱療法や電気療法には、血流を促す働きがあります。血流が良くなると、酸素や栄養が患部に届きやすくなり、組織の修復に必要な材料が供給されるとともに、疲労物質や老廃物の排出も進みます。
血行不良は、こりや慢性的な痛みの一因にもなります。物理療法で血流を整えることは、こうした不調をやわらげるうえでも有効です。冷却で一度血管を収縮させた後に温めるなど、目的に応じて血流をコントロールするのが施術の工夫どころです。
浮腫の軽減
ケガをすると、患部に余分な水分がたまってむくみ(浮腫)が生じることがあります。物理療法は、血流やリンパの流れを促すことで、たまった水分の排出を助け、腫れを引かせる働きをします。交代浴や水流を使った方法は、とくにこの点で力を発揮します。
むくみが残ると、関節の動きが制限されたり回復が遅れたりすることがあります。早めにむくみを軽くしておくことは、その後の機能回復をスムーズにするうえで役立ちます。
筋肉の緊張緩和
痛みやケガがあると、身体は無意識に筋肉をこわばらせて患部を守ろうとします。この緊張が続くと、血流が悪くなり、さらに痛みが強まるという悪循環に陥りがちです。温熱療法や電気療法は、こわばった筋肉をゆるめて悪循環を断ち切るのに役立ちます。
筋肉の緊張がやわらぐと、関節も動かしやすくなります。手技療法や運動療法を行う前に物理療法で筋肉をゆるめておくことで、その後の施術が進めやすくなるという利点もあります。
組織修復の促進
物理療法には、損傷した組織の修復を後押しする働きもあります。微弱電流やパルス波超音波などは、細胞への刺激を通じて回復の過程をサポートすると考えられています。血流改善による栄養供給とあわせて、治癒を内側から支えます。
物理療法はあくまで自然治癒力を引き出すものであり、効果の現れ方には個人差があります。柔道整復師がもたらす施術全体の効果について、より広い視点で知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
物理療法は自然治癒力が働きやすい環境を整え、回復を後押しする
疼痛の緩和
神経への作用や炎症の抑制で痛みを軽減。回復の遅れを防ぐ。
血流の改善
酸素や栄養を届け、疲労物質や老廃物の排出を促す。
浮腫の軽減
血流やリンパの流れを促し、たまった水分の排出を助ける。
筋緊張の緩和
こわばった筋肉をゆるめ、痛みの悪循環を断ち切る。
組織修復の促進
細胞への刺激と栄養供給で、損傷した組織の回復を支える。
物理療法を行う際の注意点

物理療法は身体にやさしい治療法というイメージがありますが、使い方を誤ると逆効果になったり、やけどなどのトラブルを招いたりすることがあります。安全に行うために、柔道整復師が押さえておくべき注意点を整理します。
とくに重要なのが、行ってはいけない状態(禁忌)の把握と、利用者さんごとの配慮です。一つずつ確認していきましょう。
禁忌を把握する
物理療法には、行ってはいけない状態である「禁忌」があります。たとえば、出血している部位への温熱や、急性の炎症が強い時期の加温、悪性腫瘍が疑われる部位への施術などです。禁忌を知らずに行うと、症状を悪化させる危険があるため、必ず事前に確認します。
禁忌は物理療法の種類ごとに異なります。たとえば、ペースメーカーを使用している方には電気療法が、体内に金属がある方には高周波療法が使えないことがあります。機器ごとの禁忌をしっかり頭に入れたうえで施術にあたることが、安全の土台になります。
禁忌の例行ってはいけない主な状態
- 出血している部位への温熱…加温で出血を助長するおそれがある
- 急性の炎症が強い時期の加温…腫れや痛みを悪化させることがある
- 悪性腫瘍が疑われる部位への施術…刺激が悪影響を及ぼす可能性がある
- ペースメーカー使用者への電気療法…機器の作動に影響するおそれ
- 体内に金属がある部位への高周波療法…金属が発熱する危険がある
注意が必要な方を把握する
禁忌にはあたらないものの、慎重な対応が求められる利用者さんもいます。たとえば、感覚が鈍くなっている方は、熱さや痛みに気づきにくく、やけどや凍傷に気づくのが遅れるおそれがあります。高齢の方や、糖尿病などの持病がある方も注意が必要です。
施術前には、持病や服薬の状況、皮膚の状態などを確認することが大切です。少しでも不安がある場合は、強さや時間を控えめにする、医療機関の受診をすすめるといった判断も求められます。利用者さん一人ひとりの状態に合わせた配慮が欠かせません。
火傷・皮膚障害のリスクを把握する
温熱療法や光線療法、超音波療法などは、熱によるやけどや皮膚障害のリスクがあります。とくに、長時間同じ場所に当て続けたり、機器を肌に近づけすぎたりすると危険です。施術中はこまめに皮膚の状態と利用者さんの様子を確認することが基本になります。
低温やけどは、それほど熱くない温度でも長く触れることで起こります。心地よい温かさだからと油断せず、当てる時間を守ることが大切です。施術後に赤みや痛みが残っていないかを確かめる習慣をつけておくと、トラブルの早期発見につながります。
機器の安全・衛生管理を行う
物理療法は機器を使うため、その安全管理と衛生管理も施術者の責任です。電気を扱う機器は、コードや本体の破損がないか、正しく作動するかを日頃から点検する必要があります。故障した機器の使用は事故につながるため、異常に気づいたら使用を止めて確認します。
また、肌に直接触れるパッドやプローブは、利用者さんごとに清潔に保つことが求められます。設定した出力や時間が適切かを確認しながら使うことも欠かせません。日々の点検と衛生の徹底が、安心して通える施術所づくりにつながります。
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柔道整復師と理学療法士の物理療法の違い

物理療法は、柔道整復師だけでなく理学療法士も行います。そのため「両者の物理療法は何が違うのか」と疑問に思う方や、利用者さんから質問を受ける方もいるでしょう。手技そのものは共通する部分が多いものの、法的な位置づけや働き方には違いがあります。
ここでは、法的に行える範囲・医師の指示の有無・保険適用の3つの観点から違いを整理します。なお、人数の面でも両者には差があり、それぞれの活躍の場の広がり方にも特徴があります。
法的に行える範囲の違い
柔道整復師は、柔道整復師法にもとづき、骨折・脱臼・打撲・捻挫・挫傷といった急性のケガに対する施術を行います。物理療法は、その施術を構成する後療法の一部として行われます。一方、理学療法士は理学療法士及び作業療法士法にもとづき、医師の指示のもとで幅広い疾患のリハビリを担う点が異なります。
対象とする範囲も、柔道整復師がケガを中心とするのに対し、理学療法士は脳血管疾患や呼吸器・循環器の疾患など、内科的な領域も含みます。同じ物理療法でも、それを行う土台となる資格の枠組みが違う点を押さえておきましょう。柔道整復師の仕事内容と理学療法士との違いは、以下の記事でも詳しく解説しています。
医師の指示の有無
両者の大きな違いの一つが、医師の指示の有無です。理学療法士が行うリハビリは、医師の指示が前提となります。医師の診断と指示にもとづいてリハビリ計画を立て、物理療法もその一環として実施します。
これに対して柔道整復師は、急性のケガに対する施術を、医師の指示がなくても自身の判断で行えます。患部の状態を見極め、どの物理療法をどう用いるかを自分で判断する点が特徴です。その分、状態を正しく評価する力と、必要に応じて医療機関へつなぐ判断が求められます。
保険適用の対象の違い
保険の扱いにも違いがあります。柔道整復師の施術は、骨折・脱臼・打撲・捻挫・挫傷といった一定のケガについて、療養費として健康保険の対象となる場合があるのが特徴です。ただし、慢性的な肩こりや疲労回復を目的とした施術は対象外です。
物理療法は施術の一部として行われるため、単独で保険が適用されるわけではなく、対象となるケガの施術全体のなかで扱われます。一方、理学療法士の物理療法は、医療機関での診療報酬の枠組みのなかで行われます。保険の仕組みの違いは、働く場や利用者さんへの説明にも関わる大切な知識です。
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柔道整復師が物理療法を実践する場は、接骨院をはじめ多岐にわたります。自分に合った職場を探したい方は、勤務先や雇用形態から求人を見てみるのもおすすめです。
まとめ
柔道整復師が行う物理療法は、電気・温熱・冷却・光線・超音波・水療法など多様で、それぞれ作用する仕組みや適した場面が異なります。これらは整復法・固定法と並ぶ後療法の中心であり、痛みの緩和や血流の改善、組織修復の促進を通じて、利用者さんの自然治癒力を引き出す役割を担います。
- 物理療法は後療法の中心で、ケガの段階に合わせて種類を使い分ける
- 電気・温熱・冷却・光線・超音波・水療法それぞれに適した場面がある
- 禁忌や火傷のリスクを踏まえ、利用者さんごとに配慮して行う
- 理学療法士とは法的範囲・医師の指示・保険の扱いに違いがある
施術にあたっては、ケガの段階に合わせて種類を使い分けることと、禁忌や火傷のリスクといった注意点を踏まえることが欠かせません。また、同じ物理療法でも、理学療法士とは法的な範囲や医師の指示、保険の扱いに違いがある点も理解しておきたいところです。
物理療法の知識を整理し、根拠をもって使い分けられるようになることは、施術の質を高め、利用者さんからの信頼にもつながります。この記事を、日々の施術や知識の見直しに役立てていただければ幸いです。





