柔道整復師の不正請求にはどんな罰則がある?刑事処分・行政処分・実際の事例をわかりやすく解説

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「勤務先の請求内容に違和感がある」「不正請求をするとどうなるの?」

と不安を感じている柔道整復師の方は少なくありません。

柔道整復師の療養費の不正請求は、受領委任払い制度の特性から業界全体の課題となっており、会計検査院の調査でも多くの問題が指摘されています。不正が発覚すれば、刑事処分・行政処分・民事上の責任と、複数の方向から厳しいペナルティが科されます。

この記事では、不正請求の具体的な種類から各処分の内容、実際の事件事例、そして不正を見つけた場合の対応方法まで、柔道整復師が知っておくべき情報をわかりやすく解説します。

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目次

柔道整復師の不正請求とは?

柔道整復師がカルテを記録している様子

柔道整復師の不正請求とは、療養費を不正に請求する行為全般を指します。柔道整復師の施術は健康保険の対象となりますが、医科の診療報酬とは異なり「受領委任払い」という独自の仕組みで運用されています。

受領委任払いとは、患者さんが窓口で自己負担分のみを支払い、残りの費用を柔道整復師が患者さんに代わって保険者に請求する制度です。患者さんが施術内容を詳しく確認しにくい構造があるため、この仕組みが不正請求の温床になっていると指摘されています。

柔道整復師の不正請求に関するデータ

約1.3億円
年間返納金額
66%
申告と実態の不一致率
5年間
受領委任の再登録制限

厚生労働省の報告によると、不正請求による返納金額は年間約1億円を超える水準で推移しています。

また、会計検査院の調査では、調査対象となった施術所の約66%で施術所の申告と患者さんへの聞き取り内容に相違が見られたという深刻な結果も出ています。

参考:厚生労働省「柔道整復師等の施術にかかる療養費の取扱いについて」

不正請求にあたる代表的な行為

手でバツのジェスチャーをする女性

柔道整復師の不正請求にはいくつかの典型的なパターンがあります。いずれも保険者や患者さんを欺いて療養費を不正に受け取る行為であり、発覚すれば厳しい処分の対象となります。

ここでは代表的な5つの不正行為について解説します。

  • 架空請求(施術していないのに療養費を請求する)
  • 水増し請求(施術回数を実際より多く申告する)
  • 付け増し請求(実際より長い施術期間を記載する)
  • 症状の偽装(慢性症状を急性外傷に偽って請求する)
  • 適用外施術の請求(保険対象外の施術を保険請求する)

架空請求

架空請求とは、実際には施術を行っていないにもかかわらず、施術を行ったかのように療養費を請求する行為です。たとえば、来院していない患者さんの名前でレセプトを作成したり、無資格のスタッフが施術したにもかかわらず柔道整復師本人が施術したと偽って請求するケースがあります。

架空請求は不正請求の中でもっとも悪質とされ、発覚すれば詐欺罪で刑事告訴される可能性が高い行為です。実際に、2025年には無資格従業員に施術させて虚偽の証明書を作成し、共済金をだまし取ったとして柔道整復師が逮捕されています。

水増し請求

水増し請求は、実際の施術回数よりも多い回数を申告して療養費を請求する行為です。たとえば、月に5回しか施術していない患者さんに対して「10回施術した」と申告するケースが該当します。

患者さん一人あたりの金額は少額でも、複数の患者さんに対して長期間行えば被害総額は数千万円に達することもあります。和歌山県の事例では、3年半にわたる水増し請求の被害総額が約2,810万円にのぼりました。

参考:厚生労働省「あはき療養費の不正対策(案)」

付け増し請求

付け増し請求とは、実際の施術期間よりも長い期間を記載して請求する行為です。すでに施術が終了している患者さんについて、まだ通院中であるかのようにレセプトを作成します。

実態として通院が終わっているにもかかわらず請求を続ける行為は、架空請求と同様に詐欺罪に問われる可能性があります。保険者からの患者照会で「もう通っていません」と回答されることで発覚するケースが多く見られます。

症状の偽装

症状の偽装とは、保険適用外の慢性症状を急性の外傷に偽って請求する行為です。柔道整復師が保険請求できるのは、骨折・脱臼・打撲・捻挫(肉ばなれを含む)に限られています。

会計検査院の調査では、調査対象の約50.7%で、患者さんの負傷原因が肩こりなど日常生活に起因するもの(外傷性ではないもの)であったと報告されています。慢性的な肩こりや腰痛を「捻挫」として請求するのは不正行為にあたります。

保険適用外の施術を保険請求する

健康保険の対象外である施術を、保険適用の施術として請求する行為です。具体的には、美容目的のマッサージや単なるリラクゼーション、整体など柔道整復の範囲外の施術を「捻挫の施術」として請求するケースがあります。

保険適用の範囲は柔道整復師法と療養費の支給基準で明確に定められています。この範囲を逸脱した請求は、たとえ患者さんに施術を行っていたとしても不正請求となります。

不正請求が発覚するきっかけ

チェックと書かれた文字と虫眼鏡

不正請求は、さまざまなルートから発覚します。「バレないだろう」と考えて不正に手を染めても、保険制度には複数のチェック機能が組み込まれているため、いずれは露見する可能性が高いといえます。

会計検査院調査:不正請求の内訳

0500万円1,000万円1,500万円2,000万円2,500万円
架空・水増し請求
2,269万円
内科的疾患の請求
1,736万円
鍼灸を柔整として請求
180万円

※会計検査院 検査報告より(調査対象62施術所・返還総額5,161万円)

保険者による患者照会

もっとも一般的な発覚経路が、保険者(健康保険組合や協会けんぽなど)から被保険者への照会です。

保険者は柔道整復師から請求されたレセプトの内容について、患者さん本人に「本当にこの日に通院しましたか?」「この部位を負傷しましたか?」と確認の文書を送ります。

患者さんの回答と施術所の申告内容に食い違いがあれば、不正の疑いとして調査が開始されます。厚生労働省も保険者に対して積極的な患者照会を推奨しています。

内部告発・スタッフからの通報

施術所のスタッフや元従業員からの通報も、有力な発覚経路のひとつです。日常的に不正行為を目にしていた受付スタッフや施術補助者が、退職後に通報するケースが見られます。

公益通報者保護法により、内部告発を行った従業員は解雇や不利益な取扱いから法的に保護されます。不正を黙認し続けることは、自身も共犯と見なされるリスクがあるため注意が必要です。

交通事故関連の捜査

交通事故に関連した保険金請求では、損害保険会社や警察の捜査を通じて不正が発覚することがあります。事故の規模に見合わない高額な施術費や、不自然に長い通院期間が疑惑の端緒となります。

交通事故の偽装と組み合わせた不正請求は、保険金詐欺として警察の捜査対象となり、より重い処分が下される傾向があります。

厚生局による集団指導・個別指導

各地方の厚生局は、柔道整復師に対して集団指導や個別指導を実施しています。レセプトの請求傾向に異常値が見られる施術所は、個別指導の対象として選定される可能性が高くなります。

個別指導では、施術録とレセプトの突合せ、来院簿の確認、患者さんへの直接聞き取りなどが行われます。指導の結果、不正が確認されれば監査に移行し、受領委任の取扱い中止や療養費の返還が求められます。

保険会社からの調査

民間の損害保険会社も、独自の調査部門を通じて不正請求の発見に取り組んでいます。特に交通事故に関連した施術費の請求では、保険会社が患者さんの通院実態を調査するケースがあります。

保険会社は全国の請求データを集約しており、特定の施術所で請求額が突出している場合や、同一の交通事故で複数の施術所に通院している場合などに調査が開始されます。

参考:厚生労働省「医療保険について知りたい方へ」

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不正請求に対する刑事処分

ストップと書かれた札を持つ手元

不正請求が悪質と判断された場合、刑事事件として立件される可能性があります。ここでは、柔道整復師の不正請求に適用される刑事罰と実際の判決事例を解説します。

詐欺罪

柔道整復師の不正請求がもっとも多く問われるのが、刑法第246条の詐欺罪です。療養費を不正に請求して保険者から金銭を受け取る行為は、「人を欺いて財物を交付させた」ことに該当します。

刑法 第246条

詐欺

人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の拘禁刑に処する。

柔道整復師法 第8条

行政処分

厚生労働大臣は、柔道整復師が罰金以上の刑に処せられた場合等において、その免許を取り消し、又は期間を定めてその業務の停止を命ずることができる。

詐欺罪の法定刑は10年以下の拘禁刑であり、罰金刑の選択肢がないため、起訴されれば必ず公判(裁判)となります。不正請求の金額が大きい場合や組織的に行われた場合は、実刑判決が下される可能性が高まります。

療養費の返還命令

刑事処分とは別に、不正に受け取った療養費の全額返還が命じられます。返還の対象は不正が確認された期間のすべての請求分であり、一部だけの返還では済みません。

保険者からの返還請求に応じない場合は、民事訴訟を提起される可能性もあります。返還額は数百万円から数千万円に達することもあり、経済的な負担は極めて大きくなります。

刑事処分で知っておくべきポイント
  • 詐欺罪は罰金刑がなく、起訴=裁判確定
  • 不正額が少額でも長期間なら実刑の可能性あり
  • 「院長に指示された」は刑事責任の免除にならない
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実刑判決を受けた過去の事例

実際に実刑判決を受けた事例として、大阪で発覚した架空請求事件があります。

この事件では、柔道整復師が組織的に架空のレセプトを作成して保険者から療養費をだまし取り、大阪地方裁判所で懲役2年10月の実刑判決が言い渡されました。

実刑判決となるケースでは、不正の期間が長期にわたっている、不正請求の金額が高額である、組織的に行われているなどの特徴が見られます。

執行猶予付き判決を受けた事例

一方、初犯であったり被害金額が比較的少額であったりする場合は、執行猶予付きの判決が下されることもあります。

ただし、執行猶予が付いたとしても有罪判決であることに変わりはなく、前科として記録に残ります。

執行猶予中に再び不正を行った場合は、猶予が取り消されて収監される可能性があります。通常、刑事罰を受けた場合は、後述する行政処分も併せて下されます。

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不正請求に対する行政処分

雇用契約書を持つスーツの男性

刑事処分に加えて、柔道整復師法に基づく行政処分や、受領委任制度上の措置が下されます。行政処分は柔道整復師としてのキャリアに直接影響するため、その内容を正確に理解しておくことが重要です。

行政処分・措置の比較一覧

処分の種類 施術可否 保険請求 再取得 氏名公表
免許取り消し
業務停止
戒告
受領委任中止

免許取り消し

もっとも重い行政処分が、柔道整復師法第8条に基づく免許の取り消しです。免許を取り消された場合、柔道整復師としての業務は一切行えなくなります。

免許取り消しは、不正請求の金額が大きい場合、長期間にわたって不正が行われていた場合、過去にも処分歴がある場合などに適用されます。再取得には国家試験の受験からやり直す必要があります。

業務停止(3ヶ月〜5年)

免許取り消しに次ぐ処分が業務停止命令です。3ヶ月から5年の範囲で業務停止期間が定められ、その間は柔道整復師としての施術を行うことができません。

業務停止期間中に施術を行った場合は、柔道整復師法第30条により30万円以下の罰金が科されます。停止期間が長期にわたる場合、実質的に開業の継続が困難になるケースも少なくありません。

戒告

戒告は、将来を戒める処分です。業務の停止や免許の取り消しを伴わないものの、処分歴として記録に残ります。

不正の程度が比較的軽微であった場合や、自主的に不正分を返納した場合などに適用されることがあります。ただし、戒告を受けた後に再度不正が発覚した場合は、より重い処分が下されます。

受領委任払いの取扱い中止

行政処分とは別に、受領委任払いの取扱いが中止される措置があります。これは各地方厚生局が実施するもので、中止措置を受けると原則5年間は受領委任の再登録ができません。

事実上、保険を使った施術が行えなくなるため、整骨院・接骨院の経営は極めて困難になります。中止措置を受けた柔道整復師の氏名と施術所名は、厚生局のウェブサイトで公表されます。

参考:関東信越厚生局「保険医療機関等、訪問看護ステーション及び柔道整復師等において不正請求等が行われた場合の取扱いについて」

不正請求に対する民事上の責任

電卓とバインダーとペン

刑事処分・行政処分に加えて、不正請求を行った柔道整復師には民事上の責任も発生します。金銭的な賠償義務は長期にわたって生活に影響を及ぼします。

不正請求で発生する民事上の責任

責任の種類 内容
療養費の返還 不正期間の全額(正当分含む)を保険者に返還。数百万〜数千万円規模になることも
加算金 返還額の原則40%が加算。返還総額は不正額の約1.4倍に
延滞金 支払い遅延に対して発生。早期対応が重要
損害賠償請求 損害保険会社から調査費用・弁護士費用を含む賠償請求を受ける場合あり

保険者への療養費返還

不正に受給した療養費は、全額を保険者に返還しなければなりません。返還対象は不正が確認された期間のすべての請求分であり、正当な請求分と不正請求分を合わせた全額の返還を求められることもあります。

返還額は施術所の規模や不正期間によって大きく異なりますが、数百万円から数千万円に達するケースも珍しくありません。

加算金・延滞金の支払い

療養費の返還に加えて、加算金(原則として返還額の40%)や延滞金が課される場合があります。加算金を含めると、返還総額は不正請求額の1.4倍以上になることもあります。

支払いが遅延した場合は延滞金も加算されるため、早期の対応が重要です。分割払いの交渉が可能な場合もありますが、保険者によって対応は異なります。

保険会社からの損害賠償請求

交通事故に関連した不正請求の場合、損害保険会社から損害賠償請求を受けることがあります。保険会社は不正に支払った保険金の返還に加えて、調査費用や弁護士費用なども請求する場合があります。

損害保険会社との紛争は民事訴訟に発展するケースが多く、訴訟費用も含めた経済的負担は非常に大きくなります。

転職活動するなら?

不正請求が院や個人に与える影響

悩んでいる柔道整復師の様子

不正請求の影響は、法的な処分だけにとどまりません。社会的信用の喪失やキャリアへの打撃など、長期にわたって個人の生活に深刻な影響を及ぼします。

氏名・院名が公表される

受領委任の取扱い中止措置を受けた場合、柔道整復師の氏名、施術所名、所在地、不正の内容が各地方厚生局のウェブサイトで公表されます。

一度公表された情報はインターネット上に残り続けるため、半永久的に検索される可能性があります。

公表情報は業界関係者だけでなく、患者さんや地域住民も閲覧できるため、社会的な影響は極めて大きいものとなります。

不正請求がもたらす4つの影響

1

氏名・院名の公表

厚生局サイトで公表され、インターネット上に半永久的に残る

2

再就職が困難に

処分歴により同業界での再就職・再開業がほぼ不可能に

3

融資の停止

新規融資が困難に。既存ローンの一括返済を求められることも

4

地域の信用喪失

患者離れ、紹介元との関係断絶で経営再建が極めて困難

再就職・再開業が困難になる

免許取り消しや業務停止処分を受けた場合、柔道整復師としての再就職は非常に困難になります。採用時の身元確認で処分歴が判明するケースが多く、同業界での再就職はほぼ不可能と考えておく必要があります。

受領委任の取扱い中止の場合は原則5年間、再開業もできません。5年後に再開する場合でも、過去の処分歴を知る地域では信頼の回復が難しい現実があります。

金融機関からの融資が受けられなくなる

不正請求で処分を受けた柔道整復師は、金融機関からの新規融資を受けることが困難になります。開業資金の借入れや事業拡大のためのローンが組めなくなるため、キャリアの再構築が制限されます。

既存の事業ローンについても、処分を理由に一括返済を求められる可能性があります。経営破綻に追い込まれるケースも珍しくありません。

地域での信用を失う

整骨院・接骨院は地域密着型のビジネスです。不正請求が公表されれば、長年かけて築いた地域の信頼は一瞬で失われます。

患者さんの離反だけでなく、紹介元の医療機関や介護事業所との関係も断絶されるため、処分前の売上水準を取り戻すことは極めて難しいと考えるべきです。

過去に起きた不正請求の実例

ニュースを確認するスマートフォンの手元

ここでは、実際に起きた不正請求事件を紹介します。不正の手口や処分の内容を具体的に知ることで、どのような行為が問題となるのかを理解できます。

事例 1
和歌山県:水増し請求事件(2025年報道)
整骨院元経営者が2020年4月〜2023年10月の約3年半にわたり、自治体に44回の虚偽申請。当初96万円の被害が調査で約2,810万円に拡大し、詐欺罪で起訴。
事例 2
大阪:チェーン院の組織的架空請求事件
複数施術所を展開するチェーン院が組織的に架空レセプトを作成。主犯格の柔道整復師に懲役2年10月の実刑判決。有罪確定後に受領委任の取扱い中止相当の措置。
事例 3
暴力団関与の大規模不正請求事件(2015年)
指定暴力団関係者と共謀し、複数の整骨院で架空施術記録を作成。被害総額は数億円規模に達し、関係者が次々と逮捕。

①交通事故の偽装による水増し請求事件

和歌山県の事例では、整骨院を経営していた柔道整復師が、2020年4月から2023年10月までの約3年半にわたり、自治体に対して44回の虚偽申請を行いました。当初の被害額は約96万円とされていましたが、調査が進むにつれて被害総額は約2,810万円にまで膨れ上がりました。

この柔道整復師は詐欺罪で起訴され、刑事裁判の対象となっています。一件あたりの不正額が少額であっても、長期間にわたれば重大な犯罪として扱われることを示す事例です。

②架空請求を組織的に行ったチェーン院の事件

大阪では、複数の施術所を展開するチェーン院が組織的に架空請求を行っていた事件が発覚しました。代表者の指示のもと、各施術所の施術者が架空のレセプトを作成し、保険者から療養費をだまし取っていました。

主犯格の柔道整復師には懲役2年10月の実刑判決が下され、有罪確定後に受領委任の取扱いの中止相当の措置が取られました。組織的な不正は個人の不正よりも量刑が重くなる傾向があります。

③暴力団関係者と共謀した事件

2015年には、指定暴力団の関係者と共謀して複数の整骨院で不正請求を行っていた事件が発覚しました。暴力団関係者が患者を装って通院し、柔道整復師が架空の施術記録を作成して療養費を請求するという手口でした。

被害総額は数億円規模に達し、関係者は詐欺罪で次々と逮捕されました。反社会的勢力との関わりは、より厳しい刑事処分と社会的制裁を招くことになります。

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不正請求を疑われやすいケースと対策

バインダーを確認する柔道整復師

不正を行っていなくても、請求内容のパターンによっては不正を疑われる場合があります。正当な施術を行っているにもかかわらず指導の対象にならないよう、日頃から適切な請求管理と記録管理を徹底することが大切です。

負傷部位が多すぎる

1回の施術で3部位以上を請求するケースは、不正を疑われやすいポイントです。かつて全国平均の3部位以上請求率は50.5%と高水準でしたが、制度改正により2013年度には24.7%まで低下しています。

現在も3部位以上の請求が続いている場合は、厚生局の個別指導の対象に選定されるリスクが高まります。部位数は実際の負傷状況に基づいて正確に記載しましょう。

施術期間が長すぎる

同一の患者さんに対する施術が数ヶ月以上にわたって続く場合、保険者から照会が入りやすくなります。柔道整復師の施術は急性期の外傷に対するものであり、慢性化した症状に対して漫然と施術を続けることは、保険適用の要件を満たさない可能性があります。

施術の継続が必要な場合は、施術録に症状の経過と継続の理由を詳細に記録しておくことが重要です。

同じ患者の請求頻度が高すぎる

週に何度も同じ患者さんの施術を行い、その都度療養費を請求している場合も要注意です。医学的に妥当な通院頻度を超えていると判断されれば、水増し請求の疑いを持たれることがあります。

通院頻度が高い場合は、その必要性を施術録に明確に記録し、根拠を示せるようにしておきましょう。

不正請求を防ぐための日常チェックフロー

STEP 1
施術ごとに施術録を即日記録
STEP 2
レセプト作成時に施術録・来院簿と突合せ
チェックポイント
負傷原因は外傷性か?3部位以上ではないか?
問題なし そのまま請求手続きへ
疑義あり 施術内容を再確認し
記載を修正
STEP 3
月次で請求傾向を自己点検(部位数・回数・期間)

レセプトの記載ルールを徹底する

不正を疑われないための基本は、正確なレセプト作成です。負傷日時、負傷原因、負傷部位、施術内容、施術日を事実に基づいて正確に記載することが大前提です。

  • 負傷原因は具体的に記載する(「転倒して右足首を捻った」など)
  • 施術日と来院簿の日付を一致させる
  • 部位数は実際の負傷状況に合わせる
  • 長期施術の場合は定期的に症状の経過を記録する
不正を疑われないための3つの習慣
  • 施術録は施術当日中に記録し、後からの修正を避ける
  • 来院簿・施術録・レセプトの3点を定期的に突合せする
  • 長期施術の患者さんには定期的に症状の再評価を行う
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施術録を正確に残す

施術録は、正当な施術を証明するための最重要書類です。指導や監査の際には、施術録の内容とレセプトの記載が突合せされます。両者に矛盾があれば、不正の証拠と見なされる可能性があります。

患者さんの氏名・生年月日・住所

負傷日時・負傷原因(具体的な状況)

負傷部位と症状の程度

施術内容と施術日

経過観察の所見と次回の施術計画

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勤務先や同僚の不正請求を見つけたときの対応

屋外で話し合う柔道整復師の先輩と後輩

勤務先や同僚が不正請求を行っていることに気づいた場合、どのように対応すべきでしょうか。黙認することは自身にもリスクが及ぶため、適切な判断と行動が求められます。

保険者・厚生局への通報窓口

不正請求を発見した場合、以下の窓口に通報することができます。

不正請求を見つけたときの通報ステップ

1
証拠を記録

不正の内容・日時・関係者を可能な範囲でメモする

2
窓口に相談

地方厚生局の指導監査課または保険者に通報する

3
自身を守る

公益通報者保護法の適用を受け、必要に応じて転職を検討

  1. 施術所を管轄する地方厚生局の指導監査課に相談する
  2. 健康保険組合や協会けんぽなどの保険者に情報提供する
  3. 悪質な場合は警察署に相談する

通報は匿名でも受け付けられるケースが多く、実名での通報であっても通報者の情報が施術所側に伝わることはありません。

内部告発者の保護制度

公益通報者保護法により、内部告発を行った労働者は法的に保護されます。具体的には、通報を理由とする解雇は無効となり、降格・減給などの不利益な取扱いも禁止されています。

2022年の法改正により保護の対象が拡大され、退職後1年以内の元従業員も保護の対象に含まれるようになりました。通報をためらう必要はありません。

転職を検討すべき判断基準

勤務先の不正が組織的に行われている場合や、改善の見込みがない場合は、転職を真剣に検討すべきです。不正に加担し続ければ、たとえ指示されて行っていたとしても共犯として処罰される可能性があります。

「院長に指示されたから」という理由は、刑事責任を免れる根拠にはなりません。自分のキャリアと免許を守るためにも、不正が横行する職場からは早めに離れることが賢明です。

まとめ

柔道整復師の不正請求は、架空請求・水増し請求・付け増し請求・症状偽装・保険適用外施術の請求と多岐にわたります。

発覚すれば、詐欺罪による10年以下の拘禁刑、免許取り消しや業務停止、受領委任の取扱い中止(原則5年間)、そして療養費の全額返還と加算金という厳しい処分が待っています。

不正は保険者の患者照会、内部告発、厚生局の指導・監査などさまざまなルートで発覚します。「少額だからバレない」という考えは危険であり、過去の事例では少額の不正が積み重なって数千万円規模の被害に発展したケースもあります。

柔道整復師として長くキャリアを築いていくためには、正確なレセプト作成と施術録の記録を徹底し、コンプライアンスを最優先にすることが重要です。

勤務先で不正を発見した場合は、自身を守るためにも通報窓口に相談し、必要に応じて転職を検討してください。

よくある質問

柔道整復師の不正請求が発覚したらどうなりますか?

不正請求が発覚すると、刑事処分(詐欺罪で10年以下の拘禁刑)、行政処分(免許取り消し・業務停止・戒告)、民事上の責任(療養費の全額返還+加算金40%)の3つの処分が下される可能性があります。さらに受領委任の取扱い中止(原則5年間)により、保険を使った施術ができなくなります。

勤務先の不正請求に気づいた場合、通報しても大丈夫ですか?

公益通報者保護法により、通報を理由とする解雇は無効となり、降格・減給などの不利益な取扱いも禁止されています。2022年の法改正で退職後1年以内の元従業員も保護の対象になりました。地方厚生局の指導監査課や保険者に匿名で通報することも可能です。

院長に指示されて不正請求に加担した場合も罰せられますか?

はい、院長の指示であっても共犯として刑事責任を問われる可能性があります。「指示されたから」という理由は免責の根拠にはなりません。不正に気づいた場合は、通報するか転職を検討することが自身のキャリアと免許を守るうえで重要です。

受領委任の取扱いが中止されたら、いつから再開できますか?

原則として中止措置を受けてから5年間は受領委任の再登録ができません。ただし、不正請求の金額が比較的少額で自主的に返還した場合などは、2〜5年の範囲で短縮されることもあります。再開後も氏名・施術所名の公表情報はインターネット上に残り続ける可能性があります。

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この記事を書いた人
医療キャリアナビ編集部

医療キャリアナビ編集部

記事の執筆・編集は、医療業界に精通した編集スタッフが担当しています。日々の転職支援業務で得た現場のリアルな情報と、厚生労働省をはじめとする公的機関のデータに基づき、信頼性の高いコンテンツをお届けしています。

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