保健師助産師看護師法とは?職種の定義と業務独占・名称独占・守秘義務
「この処置、医師の指示がなくてもやっていいのかな?」
その判断のよりどころになるのが保健師助産師看護師法(保助看法)です。
この記事では、保健師助産師看護師法が定める4つの職種の定義、業務独占と名称独占の規定、第37条にもとづく医師の指示が必要な業務の範囲、守秘義務や罰則、国家試験での出題例まで、条文番号つきで紹介します。
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保健師助産師看護師法とは?

保健師助産師看護師法は、保健師・助産師・看護師・准看護師の資格と業務を定めた法律です。 法令番号は昭和23年法律第203号で、看護職の免許・試験・業務・罰則がこの1本にまとまっています。
制定の経緯と目的
保健師助産師看護師法は、昭和23年(1948年)7月30日に「保健婦助産婦看護婦法」として公布されました。 それまで別々の規則で定められていた保健婦・助産婦・看護婦を、1つの法律で規定したのが始まりです。
第1条は、この法律の目的を「保健師、助産師及び看護師の資質を向上し、もつて医療及び公衆衛生の普及向上を図ること」と定めています。
- 1948昭和23年「保健婦助産婦看護婦法」として公布昭和23年法律第203号
- 1951昭和26年准看護婦制度を新設
- 2001平成13年資格名を「保健師・助産師・看護師・准看護師」に統一法律名も現在の名称に。平成14年施行
- 2006平成18年看護師・助産師・准看護師の名称独占、戒告・再教育研修を創設名称独占は平成19年4月、再教育研修は平成20年4月施行
- 2014平成26年特定行為研修制度を創設平成27年10月施行
- 2025令和7年罰則の「懲役」が「拘禁刑」に刑法等の改正に伴い6月1日施行
法律の構成
保健師助産師看護師法は、第1章から第5章までに「第4章の2」を加えた6つの章と附則で構成されています。
| 章 | 条文 | 主な内容 |
|---|---|---|
| 第1章 総則重要 | 1〜6条 | 目的、4職種の定義 |
| 第2章 免許 | 7〜16条 | 免許の要件、欠格事由、行政処分、再教育研修 |
| 第3章 試験 | 17〜28条の2 | 国家試験・准看護師試験の受験資格、免許取得後の研修の努力義務 |
| 第4章 業務重要 | 29〜42条の3 | 業務独占、業務従事者届、医師の指示、特定行為研修、守秘義務、名称独占 |
| 第4章の2 雑則 | 42条の4〜42条の6 | 指定研修機関への報告徴収・立入検査など |
| 第5章 罰則 | 43〜45条の3 | 無資格業務・守秘義務違反などへの罰則 |
看護職が日々の仕事で関わるのは、主に第1章(定義)と第4章(業務)です。 第4章には、業務独占・名称独占・医師の指示・守秘義務・業務従事者届など、現場のルールの大半が入っています。
医師法との関係
医師法第17条は「医師でなければ、医業をなしてはならない」と定めています。 診療や治療は本来医師の業務で、看護師が行う「診療の補助」は、医師の指示のもとでその一部を担う位置づけです。
保健師助産師看護師法には、医師法とのつながりを示す規定がいくつかあります。
-
第30条ただし書医師は、医師法にもとづいて助産を行える
-
第31条第1項ただし書医師・歯科医師は、医師法・歯科医師法にもとづいて看護師の業務を行える
-
第37条看護職は、主治の医師・歯科医師の指示がなければ一定の行為をしてはならない
看護師の仕事の範囲は、医師法とセットで見ると分かりやすいよ!
医師は医師法にもとづいて看護師の業務を行えますが、看護師が医師の業務の一部を担えるのは指示がある範囲に限られます。 この「指示」がどこまで必要かは、第37条が定めています。
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参考:e-Gov法令検索「保健師助産師看護師法」 / e-Gov法令検索「医師法」
法律が定める4つの職種の定義

保健師助産師看護師法は、第2条・第3条・第5条・第6条で4つの職種を定義しています(第4条は削除)。 免許を与える者と合格が必要な試験は、職種によって異なります。
| 職種 | 定義の条文 | 免許を与える者 | 合格が必要な試験 |
|---|---|---|---|
| 保健師 | 第2条 | 厚生労働大臣 | 保健師国家試験と看護師国家試験 |
| 助産師 | 第3条 | 厚生労働大臣 | 助産師国家試験と看護師国家試験 |
| 看護師 | 第5条 | 厚生労働大臣 | 看護師国家試験 |
| 准看護師 | 第6条 | 都道府県知事 | 准看護師試験(都道府県知事が実施) |
保健師の定義
第2条は、保健師を「保健師の名称を用いて、保健指導に従事することを業とする者」と定めています。 定義の中に「名称を用いて」という言葉が入っているのが、ほかの3職種との大きな違いです。
保健指導の対象は、地域の住民や企業で働く人などさまざまです。 病気の予防や健康づくりを支えるのが、保健師の業務の中心です。
助産師の定義
第3条は、助産師を「助産又は妊婦、じよく婦若しくは新生児の保健指導を行うことを業とする女子」と定めています。
助産師には、ほかの職種にない固有の義務もあります。
- 異常があるときは医師の診療を求めさせる(第38条)
- 正当な事由なく助産や保健指導の求めを拒まない(第39条)
- 分べんの介助をしたら助産録に記載する(保存期間は5年、第42条)
看護師の定義
第5条は、看護師を「傷病者若しくはじよく婦に対する療養上の世話又は診療の補助を行うことを業とする者」と定めています。 看護師の業務は「療養上の世話」と「診療の補助」の2本柱です。
療養上の世話は、食事・清潔・排泄の援助や観察など、看護師が自ら判断して行う業務です。 診療の補助は、採血や注射など医師の診療を補う業務で、医師の指示が前提になります。
准看護師の定義
第6条は、准看護師を「医師、歯科医師又は看護師の指示を受けて、前条に規定することを行うことを業とする者」と定めています。 業務の内容は看護師と同じですが、医師・歯科医師・看護師の指示を受けて行う点が異なります。
看護師と准看護師って、同じ業務なのに指示の有無が違うんだね
就業者数は、第33条の業務従事者届をもとに集計されています。 准看護師は平成26年末の340,153人から、10年で約11万人減りました。
看護師の求人を探す参考:e-Gov法令検索「保健師助産師看護師法」 / 厚生労働省「令和6年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」
業務独占と名称独占の規定

業務独占は「資格がない人はその業務を行えない」、名称独占は「資格がない人はその名称を使えない」という規定です。 保健師助産師看護師法では、看護師・助産師・准看護師は業務独占と名称独占の両方、保健師は名称独占の性質をもつ資格です。
| 職種 | 業務独占 | 名称独占 |
|---|---|---|
| 保健師 | △第29条(名称を用いた保健指導のみ) | ○第42条の3第1項 |
| 助産師 | ○第30条 | ○第42条の3第2項 |
| 看護師 | ○第31条 | ○第42条の3第3項 |
| 准看護師 | ○第32条 | ○第42条の3第4項 |
業務独占にあたる職種
業務独占を定めているのは、第30条(助産師)・第31条(看護師)・第32条(准看護師)です。
-
第30条助産師でない者は、第3条に規定する業をしてはならない
-
第31条看護師でない者は、第5条に規定する業をしてはならない
-
第32条准看護師でない者は、第6条に規定する業をしてはならない
いずれも医師(第31条・第32条は歯科医師も)が法律にもとづいて行う場合は例外です。 また、保健師と助産師は第31条第2項により看護師の業務を行えます。
名称独占にあたる職種
名称独占は第42条の3にまとめて定められていて、第1項から第4項で4職種すべてが対象です。
看護師・助産師・准看護師の名称独占は、平成18年の法改正(平成19年4月施行)で加わった規定です。 それ以前は業務独占だけだったため、「保健師は名称独占、看護師は業務独占」という説明が今も残っていますが、現行法では看護師も名称独占の資格です。
「看護師は業務独占の資格」という説明だけでは不十分です。国家試験やレポートでは、看護師・助産師・准看護師が業務独占と名称独占の両方をもつ点まで押さえておきましょう。
ほかの医療・介護職の独占規定と比べたいときは、以下の記事で一覧を確認できます。
保健師が業務独占にならない理由
保健師が業務独占にならないのは、第29条の書き方に理由があります。
第29条が禁じているのは、保健師でない人が「保健師の名称を用いて」保健指導を業とすることです。 名称を使わない保健指導までは禁じていないため、健康相談や生活習慣の助言は、医師や管理栄養士なども行えます。
保健師は「名前」で守られている資格なんだね!
参考:e-Gov法令検索「保健師助産師看護師法」 / 厚生労働省「平成19年版厚生労働白書 資料編」
医師の指示が必要な業務の範囲

看護職が「どこまで自分の判断でできるか」を決めているのが第37条です。 療養上の世話は看護職の判断で行えますが、診療の補助の中でも危険を伴う行為には、主治の医師・歯科医師の指示が必要です。
第37条が禁じている行為
第37条が指示なしで禁じている行為は、次の4つに分けられます。
-
診療機械の使用人工呼吸器や輸液ポンプなどの医療機器を使うこと
-
医薬品の授与患者さんに薬を渡すこと
-
医薬品についての指示服薬方法や量を患者さんに指示すること
-
その他衛生上危害を生ずるおそれのある行為医師が行わなければ危害が生じるおそれのある行為全般
例外は、臨時応急の手当と、助産師がへその緒を切る・浣腸を施すなど助産師の業務に当然付随する行為です。 第37条に違反した場合の罰則は、次の章の罰則一覧で紹介します。
診療の補助として認められる範囲
医師の指示があれば、看護師は診療の補助として幅広い行為を担えます。 ただし、どの行為が診療の補助に含まれるかは、条文ではなく厚生労働省の通知などの行政解釈で示されてきました。
その代表例が静脈注射です。 昭和26年の厚生省医務局長通知では、静脈注射は「看護師等の業務範囲を超えている」とされていました。 平成14年9月30日の厚生労働省医政局通知(医政発第0930002号)で解釈が改められ、医師・歯科医師の指示のもとで看護師等が行う静脈注射は第5条の「診療の補助行為の範疇」として扱われるようになりました。
同じ通知では、医療機関に対して看護師等への研修の実施や、施設内基準・看護手順の作成も求めています。 法律上は診療の補助でも、実際にどこまで任せるかは施設の基準と個々の看護師の能力で決まります。
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特定行為研修を修了した看護師の扱い
特定行為は、第37条の2で定められた診療の補助で、看護師が手順書により行う場合に高度な知識と技能が特に必要とされる行為です。
手順書は、医師・歯科医師が指示として作成する文書で、患者さんの病状の範囲や診療の補助の内容が書かれています。
第37条の2第1項は、特定行為を手順書により行う看護師に、指定研修機関での特定行為研修の受講を義務づけています。 研修を修了すると、手順書で示された病状の範囲内であれば、医師の判断を待たずに特定行為を行えます。
一方、医師の指示のもとで手順書によらずに特定行為を行うことは、研修を受けていない看護師にも制限されていません。
- 薬剤・量・時間があいまいならその場で確認
- 院内の看護手順と施設内基準を確かめる
- 受けた指示の内容は記録に残す
参考:厚生労働省「新たな看護のあり方に関する検討会 中間まとめについて」 / 厚生労働省「特定行為に係る看護師の研修制度の概要」
看護職に課される義務と処分の規定

保健師助産師看護師法は、看護職に守秘義務や届出義務を課し、違反や不正には罰則と行政処分を定めています。
守秘義務
第42条の2は、保健師・看護師・准看護師に対し、正当な理由なく業務上知り得た人の秘密を漏らすことを禁じています。 この義務は資格者でなくなった後も続きます。
助産師が第42条の2に含まれていないのは、刑法第134条の秘密漏示罪で、医師や薬剤師とともに守秘義務の対象になっているためです。
退職した後も守秘義務が続くのは、意外と知らない人が多いよね
違反した場合の罰則
罰則は第5章(第43条〜第45条の3)にまとめられています。 刑法改正にあわせて、令和7年6月1日からは「懲役」が「拘禁刑」に改められました。
| 違反の内容 | 罰則の条文 | 罰則 |
|---|---|---|
| 無資格で業務を行う(第29〜32条違反)、虚偽・不正で免許を受ける | 第43条第1項 | 2年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金(併科あり) |
| 無資格業務で助産師・看護師・准看護師などの名称を用いる | 第43条第2項 | 2年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金(併科あり) |
| 業務停止中に業務を行う、医師の指示などに関する規定(第35〜38条)に違反する | 第44条の3 | 6月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金(併科あり) |
| 守秘義務(第42条の2)に違反する | 第44条の4 | 6月以下の拘禁刑または10万円以下の罰金 |
| 業務従事者届(第33条)をしない、再教育研修の命令に従わない | 第45条 | 50万円以下の罰金 |
| 名称独占(第42条の3)に違反する | 第45条の2 | 30万円以下の罰金 |
見落としやすいのが、第33条の業務従事者届です。 業務に従事する看護職は、2年ごとの年の12月31日現在の氏名・住所などを、翌年1月15日までに就業地の都道府県知事へ届け出なければなりません。
届出の年は昭和57年を初年とする2年ごとで、直近では令和8年12月31日現在の状況を令和9年1月15日までに届け出ます。
免許の欠格事由と行政処分
第9条は、次のいずれかにあたる人には「免許を与えないことがある」と定めています。
- 罰金以上の刑に処せられた者
- 看護職の業務に関し犯罪又は不正の行為があった者
- 心身の障害により業務を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定めるもの
- 麻薬、大麻又はあへんの中毒者
「与えないことがある」なので、該当しても必ず免許を受けられないわけではありません。 第3号の対象は施行規則第1条で、視覚・聴覚・音声機能・言語機能・精神の機能の障害により、業務に必要な認知・判断・意思疎通を適切に行えない者とされています。
免許を受けた後に欠格事由にあたったときや、品位を損なう行為があったときは、第14条により次の処分を受けることがあります。
-
戒告業務停止を伴わない処分
-
3年以内の業務の停止期間中に業務を行うと罰則の対象
-
免許の取消し一定の場合、取消しの日から5年を経過しないと再免許を受けられない
保健師・助産師・看護師への処分は厚生労働大臣が医道審議会の意見を聴いて、准看護師への処分は都道府県知事が准看護師試験委員の意見を聴いて行います(第15条)。
戒告や業務停止の処分を受けた人は、第15条の2により再教育研修の受講を命じられることがあります。
看護師の求人を探す参考:e-Gov法令検索「保健師助産師看護師法」 / 厚生労働省「看護師等免許保持者の業務従事者届の届出制度(2年に1度)について」
看護師国家試験での出題

看護師国家試験では、必修問題などで保健師助産師看護師法の条文が問われています。 条文番号そのものより、「誰が」「どこに」「何を」定めているかが問われる傾向があります。
頻出の条文
厚生労働省が公表している第113回・第114回の問題では、第9条・第33条・第37条の2が出題されています。 あわせて押さえておきたい条文は、次のとおりです。
-
第5条・第6条看護師・准看護師の定義と指示の有無
-
第9条免許の欠格事由(第114回)
-
第33条業務従事者届の届出先(第113回)
-
第37条の2特定行為の位置づけ(第114回)
-
第42条の2・第42条の3守秘義務と名称独占の対象職種
制定年(昭和23年)と看護師籍の登録事項は、毎回の問題冊子にある解答方法の例題にも使われています。
出題例
実際に出題された問題と、厚生労働省が公表した正答です。
- 1保健所長
- 2厚生労働大臣
- 3都道府県知事正答
- 4都道府県ナースセンターの長
- 1離職時の届出
- 2免許付与時の欠格事由正答
- 3定期健康診断の実施義務
- 4都道府県ナースセンターの指定
- 1都道府県が指定する研修機関で研修を行う。
- 2手順書は看護師が作成する。
- 3医師法に基づいている。
- 4診療の補助である。正答
条文の「主語」と「届出先」を押さえれば、得点源にできそう!
参考:厚生労働省「第111回保健師国家試験、第108回助産師国家試験、第114回看護師国家試験の問題および正答について」 / 厚生労働省「第110回保健師国家試験、第107回助産師国家試験、第113回看護師国家試験の問題および正答について」
まとめ
保健師助産師看護師法は、看護職の定義から業務の範囲、義務、罰則までを定めた、看護職にとって最も身近な法律です。
この記事のポイント
- 4職種の定義は第2条・第3条・第5条・第6条
- 看護師・助産師・准看護師は業務独占かつ名称独占
- 保健師は名称を用いた保健指導を独占
- 第37条で危険を伴う行為には医師の指示が必要
- 手順書で特定行為を行うには特定行為研修が必要
- 罰則は令和7年6月から拘禁刑の表記
現場で判断に迷ったときは、条文と施設の基準の両方を確認するのが確実です。 自分の職場で任されている業務の範囲に不安があるなら、院内の看護手順や指示の出し方を見直すきっかけにしてみましょう。


