ノーマライゼーションとは?8つの原理と医療・介護現場での実践、よくある誤解

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ノーマライゼーションとは、障害のある人が、障害のない人と同じように地域で当たり前の生活を送れるよう、社会の側の条件を整えていく考え方です。

福祉の授業や研修で一度は聞いた言葉でも、「結局、現場で何をすればいいの?」と聞かれると答えに詰まる人は少なくありません。

この記事では、ノーマライゼーションの意味と歴史、ニィリエの8つの原理を整理したうえで、各原理が医療・介護の現場のどんな行動につながるのかを紹介します。

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    ノーマライゼーションとは?

    車いすの患者さんの手を握る医療者

    ノーマライゼーション(normalization)は、デンマークで生まれ、北欧から世界に広がった障害福祉の基本理念です。 日本でも障害者施策の土台になっている考え方で、医療・介護職にとっては患者さんや利用者さんとの関わり方そのものに関わります。

    言葉の意味

    ノーマライゼーションは、「障害のある人の生活の状態を、障害のない人の生活の状態と同じにする」という考え方です。 朝起きて、日中は仕事や学校に出かけ、休日には好きなことをして過ごす。 そうした社会で一般的な暮らし方を、障害があっても同じように選べる状態を目指します。

    ノーマライゼーションの思想運動が起こった背景には、障害のある人が大規模な施設に集められ、地域から切り離されて暮らしていた状況がありました。 「ノーマル」とは、障害のある人自身を指す言葉ではなく、その人が置かれている生活条件を指す言葉です。

    日本の福祉政策における位置づけ

    日本では、厚生労働省が障害福祉施策の考え方として「ノーマライゼーション」の理念を掲げています。 厚生労働省の障害福祉のページでは、障害のある人もない人も、互いに支え合い、地域で生き生きと明るく豊かに暮らしていける社会を目指す理念として紹介されています。

    ノーマライゼーションという言葉そのものは法律の条文には出てきませんが、その考え方は現行の法律に組み込まれています。

    関連法令
    障害者基本法 第3条第2号
    全て障害者は、可能な限り、どこで誰と生活するかについての選択の機会が確保され、地域社会において他の人々と共生することを妨げられないこと。
    関連法令
    障害者総合支援法 第1条の2(基本理念)
    全ての障害者及び障害児が可能な限りその身近な場所において必要な支援を受けられ、社会的障壁の除去に資することを旨として行う。

    どちらの法律も、「どこで誰と生活するかについての選択の機会」を障害のある人に保障すると定めています。 施設か自宅か、誰と暮らすかを本人が選べることが、法律上の基本原則になっているということです。

    よくある誤解

    ノーマライゼーションで特に多い誤解は、「障害のある人を訓練して、健常者に近づけること」という取り違えです。 英語の「normalize(正常化する)」という語感から、障害のある人を“普通”に直すことだと受け取られやすいのが原因です。

    よくある誤解
    本人を“普通”に近づける
    変えるもの障害のある本人
    方法訓練・矯正が中心
    地域生活できるようになってから
    →
    本来の意味
    生活条件を“普通”にする
    変えるもの社会・環境・制度
    方法障壁の除去と必要な支援
    地域生活支援を受けながら今から

    本来の意味で変わるべきなのは、本人ではなく社会の側です。 段差のある建物、障害のある人を想定していない制度、「障害者は施設で暮らすもの」という思い込みなど、生活を妨げている環境を変えていくことがノーマライゼーションの中心にあります。

    「普通にする」って、本人を変えることじゃなかったんだ!

    リハビリテーションで機能を回復することは大切ですが、それは本人が望む生活を実現する手段の一つです。 訓練の成果が出なければ地域で暮らせない、という考え方はノーマライゼーションとは逆向きです。

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    参考:厚生労働省「障害福祉施策の考え方」 / 内閣府「障害者基本法」

    ノーマライゼーションの歴史

    テキストを開いて自己学習をしている手元

    ノーマライゼーションは、知的障害のある人の親たちの運動から生まれ、デンマーク、スウェーデン、北米へと広がり、国連の取り組みを通じて日本にも定着しました。

    理念の形成に関わった3人の人物と、日本への広がりを順に押さえておきましょう。

    ノーマライゼーションの主なできごと
    1951
    デンマーク知的障害者の親の会が発足
    1959
    デンマーク「1959年法」でノーマライゼーションの語が初めて法律に
    1969
    スウェーデンニィリエが原理として定義し、8つの原理を示す
    1971
    国連知的障害者の権利宣言
    1975
    国連障害者の権利宣言
    1981
    国連・日本国際障害者年。日本で言葉が広まる
    1983
    北米ヴォルフェンスベルガーがソーシャル・ロール・バロリゼーションを提唱
    1995
    日本障害者プラン~ノーマライゼーション7か年戦略~
    2014
    日本障害者権利条約を批准
    海外・国連日本

    バンク=ミケルセンによる提唱

    ノーマライゼーションを世界で初めて提唱したのは、デンマーク社会省の担当官だったニルス・エリク・バンク=ミケルセンです。 当時のデンマークでは、知的障害のある人が、隔離的で劣悪な環境の巨大施設に収容されていました。

    バンク=ミケルセンは、1951年に発足した知的障害者の親の会の活動に共鳴し、親たちの願いが法律として実現するよう尽力します。

    こうしてできた1959年法は、ノーマライゼーションという言葉が世界で初めて用いられた法律になりました。 バンク=ミケルセンが「ノーマライゼーションの父」と呼ばれるのはこのためです。

    親たちの「普通の暮らしを」という願いが出発点なんだよ!

    ニィリエによる8つの原理の成文化

    スウェーデン知的障害児者連盟で活動していたベンクト・ニィリエは、1963年、デンマークの1959年法の前文にある「知的障害者ができるだけノーマルな生活を送れるようにする」という言葉に出会います。

    ニィリエはこの考え方を整理し、1969年に、知的障害のある人が社会の主流となっている規範や形態にできるだけ近い日常生活の条件を得られるようにすること、と定義しました。

    そのうえで、実現すべき具体的な中身を8つの原理としてまとめています。 理念を「何を満たせばノーマルな生活といえるか」という基準にまで落とし込んだ点で、ニィリエは「ノーマライゼーションの育ての親」と呼ばれています。

    ヴォルフェンスベルガーによる北米への普及

    ニィリエによってアメリカに紹介されたノーマライゼーションを、北米で独自に理論化・体系化したのがヴォルフ・ヴォルフェンスベルガーです。 アメリカやカナダで考え方を広め、ネブラスカ州などで政策に導入しました。

    ヴォルフェンスベルガーは、障害のある人が保護や哀れみの対象として下に見られるのではなく、社会の中で価値ある役割を持つことを重視しました。 1983年には、ノーマライゼーションに代わる用語として「ソーシャル・ロール・バロリゼーション(Social Role Valorization)」を提唱しています。 生活条件の改善を重視した北欧の考え方に比べ、本人の能力や社会的イメージを高めることにも目を向けている点が特徴です。

    国際障害者年を経た日本への広がり

    ノーマライゼーションの考え方は、1971年の国連「知的障害者の権利宣言」、1975年の「障害者の権利宣言」の土台になりました。 さらに国連は1981年を「完全参加と平等」をテーマとする国際障害者年と定めます。

    日本でノーマライゼーションという言葉が広く使われるようになったのは、この国際障害者年の頃です。 厚生白書(昭和56年版)は、国際障害者年行動計画の「障害者などを閉めだす社会は弱くもろい社会である」という一文を引き、ノーマライゼーションの思想を表したものとして紹介しています。

    その後、1982年に障害者施策で初めての長期計画である「障害者対策に関する長期計画」が策定され、1995年には「障害者プラン~ノーマライゼーション7か年戦略~」が打ち出されました。 2003年度には、行政がサービスを決める措置制度から、利用者自らがサービスを選んで契約する支援費制度へ移行しています。

    今のあなたの状況は?

    参考:日本障害者リハビリテーション協会 情報センター「ノーマライゼーション」 / 厚生労働省「厚生白書(昭和56年版)総論 序章 国際障害者年に当たって」

    ノーマライゼーションの8つの原理

    カレンダーと赤鉛筆

    ニィリエの8つの原理は、「障害のない人が当たり前に送っている生活」を8つの側面に分けたものです。

    暮らしのリズム
    11日のノーマルなリズム
    21週間のノーマルなリズム
    31年間のノーマルなリズム
    人としての権利と関係
    4ライフサイクルにおけるノーマルな発達経験
    5ノーマルな個人の尊厳と自己決定権
    6ノーマルな性的関係
    生活の基盤
    7ノーマルな経済水準
    8ノーマルな環境形態と水準

    1日のノーマルなリズム

    朝起きて着替え、食事をとり、日中は活動し、夜は自分の時間を過ごしてから眠る。 障害のない人にとって当たり前のこの1日の流れを、障害があっても同じように送れることを指します。

    業務中心の1日と本人中心の1日(例)
    場面業務の都合で決まる本人のリズムに合わせる
    起床早番の出勤に合わせて全員を起こす起きたい時間に起き、着替えも自分で選ぶ
    食事決まった時間に一斉に配膳時間に幅を持たせ、食べたいときに食べる
    入浴日中の空いた時間に順番で夕方〜夜など、慣れた時間帯に入る
    就寝夜勤の人数に合わせて早めに消灯好きな番組を見てから眠る

    起床・食事・入浴・就寝の時間が、職員の勤務シフトや業務の都合で決まっていないかが問われる原理です。

    1週間のノーマルなリズム

    1週間のリズムとは、住む場所と、日中に働いたり学んだりする場所が分かれていて、平日と休日のメリハリがある生活のことです。 寝る場所も日中を過ごす場所も同じ建物の中で、毎日が同じように過ぎていく生活は、この原理から外れます。

    1年間のノーマルなリズム

    1年の中には、季節の行事や休暇、旅行、家族との記念日など、変化のある時間があります。 障害があっても、季節に合わせた服装や食事、休暇や行事を楽しめることを指します。

    ライフサイクルにおけるノーマルな発達経験

    子ども時代、思春期、成人期、高齢期と、年齢に応じた経験を積めることを指す原理です。 成人した人を子ども扱いしない、年齢にふさわしい呼び方や活動を選ぶといった点も含まれます。

    ノーマルな個人の尊厳と自己決定権

    本人の願いや要求が尊重され、自分の生活に関わることを自分で決められることを指します。 食べたいもの、着たい服、過ごし方など、日常の小さな選択を本人ができるかどうかが出発点です。

    ノーマルな性的関係

    その文化の中で一般的な形で、異性との交流や恋愛、結婚などを経験できることを指します。 施設の生活で男女を一律に分けて管理するのではなく、本人の人間関係を尊重することが求められます。

    ノーマルな経済水準

    その社会で一般的な経済水準で暮らせること、そして年金や給与などの収入を得て、自分のお金を自分の判断で使えることを指します。 本人のお金を職員がすべて管理し、使い道を本人が知らないという状態は、この原理から外れます。

    ノーマルな環境形態と水準

    住まいや施設の規模・立地・設備が、その地域の一般的な住宅と同じ水準であることを指します。 地域から離れた場所に大規模な施設を建て、多くの人を集団で暮らさせる形は、この原理に反します。

    8つとも「自分の暮らしと比べてどうか」で考えると分かりやすいね!

    参考:東北福祉大学 通信教育部「[社会福祉キーワード] ノーマライゼーション」

    混同しやすい用語との違い

    玄関の前に置かれた車いす

    ノーマライゼーションと一緒に出てくることが多いのが、バリアフリー、ユニバーサルデザイン、インクルージョンです。 どれも障害のある人の暮らしに関わる言葉ですが、「何を目指す言葉か」と「どの段階の話か」が違います。

    用語ひとことで主な対象考え方の向き
    ノーマライゼーション理念当たり前の生活条件をそろえる暮らし全体(住まい・日課・権利)目指す社会の姿
    バリアフリー手段今ある障壁を取り除く建物・制度・情報・意識後から直す
    ユニバーサルデザイン手段最初から誰もが使える形に建物・製品・サービスはじめから作らない
    インクルージョン理念最初から分けずに包み込む教育・地域社会・職場分けない社会

    バリアフリーとの違い

    バリアフリーは、障害のある人や高齢の人の生活を妨げている障壁(バリア)を取り除くことです。 段差の解消やスロープ、手すりの設置などの物理的なバリアのほか、制度や情報、意識のバリアも対象になります。

    ノーマライゼーションが「目指す社会の姿」を表す理念なのに対し、バリアフリーはそれを実現するための具体的な手段の一つという関係です。 住環境の整備に関わる資格については、以下の記事で紹介しています。

    ユニバーサルデザインとの違い

    ユニバーサルデザインは、障害の有無や年齢、性別、国籍などにかかわらず、最初から誰もが使いやすいように建物や製品、サービスを設計する考え方です。 バリアフリーが「今あるバリアを後から取り除く」のに対し、ユニバーサルデザインは「はじめからバリアを作らない」という発想に立っています。

    ノーマライゼーションとの関係では、ユニバーサルデザインも理念を実現するための手段の一つです。

    インクルージョンとの違い

    インクルージョン(包摂)は、障害のある人を含め、すべての人を社会の一員として最初から包み込み、ともに支え合う考え方です。 障害者権利条約でも、地域社会への「包容」として重視されています。

    ノーマライゼーションが「障害のある人の生活条件を一般の人と同じにする」ことに力点を置くのに対し、インクルージョンは「最初から分けない」ことに力点を置きます。 ノーマライゼーションを土台に、より発展させた考え方として使われることが多い言葉です。

    似た言葉が多くて、ごちゃごちゃになりやすいよね

    医療・介護の現場での実践

    ベッドと車いす、洗面台がある介護施設の居室

    ここでは、8つの原理のどれに対応するかを示しながら、明日からの業務で変えられる行動を紹介します。

    現場での行動11日21週間31年間4発達経験5尊厳・自己決定6性的関係7経済水準8環境
    生活リズムを本人の希望に合わせる●●●
    居室に私物を持ち込める環境を整える●
    ケアの選択肢を本人が選べるようにする●
    地域の店や行事を利用する機会をつくる●●●

    生活リズムを本人の希望に合わせる

    対応する原理は、1日・1週間・1年間のノーマルなリズムです。 起床や就寝、食事、入浴の時間を、業務の都合ではなく本人のこれまでの生活習慣に合わせることが基本になります。

    • 入浴の曜日・時間帯を希望で選べるようにする
    • 朝食の時間に幅を持たせ、遅く起きる人にも温かい食事を出す
    • 寝る前にテレビを見る、晩酌をするなどの習慣を可能な範囲で続けられるようにする
    • 季節の行事や外出を、本人の好みを聞いたうえで企画する

    日中の過ごし方にも目を向けましょう。 厚生労働省の調査研究(令和6年度)で障害者支援施設に日中活動の状況を聞いたところ、「居住する建物内」で実施している日中活動サービスの利用が80.3%と最も多く、生活の場と日中の活動の場が同じ建物の中で完結しているケースが大半でした。

    施設の外に通う、外部のサービスを利用するといった選択肢を広げることも、1週間のリズムを取り戻す実践になります。

    居室に私物を持ち込める環境を整える

    対応する原理は、ノーマルな環境形態と水準です。 使い慣れた家具や写真、趣味の道具がある部屋は、その人らしい生活の土台になります。

    障害者支援施設の居室の状況
    26.8%
    58.6%
    14.5%
    個室のみ 多床室と個室の両方 多床室のみ
    ※回答した1,173施設の割合。多床室がある施設の64.1%は個室化の予定なし

    個室化が進んでいない施設でも、ベッド周りに私物を置けるスペースを確保する、カーテンや仕切りでプライバシーを守るといった工夫はできます。

    入院や入所のときに「持ち込めるもの」を一律に制限するのではなく、安全面を確認したうえで本人が大切にしているものを持ち込めるよう相談する姿勢が大切です。

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    ケアの選択肢を本人が選べるようにする

    対応する原理は、ノーマルな個人の尊厳と自己決定権です。 厚生労働省の「障害福祉サービスの利用等にあたっての意思決定支援ガイドライン」(2017年)では、食事や衣服の選択、外出、入浴などの日常生活の場面を、意思決定支援が必要な場面として挙げています。

    • 「どうしますか?」と聞く前に、選べる選択肢を2〜3個用意しているか
    • 言葉で答えにくい人には、写真や実物を見せて選んでもらっているか
    • 本人が選んだ内容を記録し、職員間で共有しているか
    • 本人ではなく家族や職員の希望で決めていないか

    小さな「選べる」を増やすことから始めてみよう!

    日常の小さな選択を積み重ねることで、本人が自分の意思を伝えようとする意欲も育ちます。 同じガイドラインでは、施設から地域生活への移行など住まいを選ぶ場面も、意思決定支援の重要な場面とされています。

    地域の店や行事を利用する機会をつくる

    対応する原理は、1年間のノーマルなリズム、ライフサイクルにおけるノーマルな発達経験、ノーマルな経済水準です。 施設の中で完結させず、地域の店で買い物をする、地域の祭りや行事に参加することは、地域の一員として暮らす実感につながります。

    自分のお金で、自分で選んだものを買う経験は、経済水準の原理にも関わります。 地域の人にとっても、障害のある人と日常的に接する機会が増えることで、理解が深まるきっかけになります。

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    参考:厚生労働省「障害者の地域生活支援も踏まえた障害者支援施設の在り方に関するこれまでの議論のまとめ」 / 厚生労働省「障害福祉サービスの利用等にあたっての意思決定支援ガイドラインについて」

    ノーマライゼーション実現に向けた課題

    青空の下に広がる住宅街の街並み

    ノーマライゼーションが理念として広く知られるようになった一方で、実際の暮らしにはまだ多くの課題が残っています。 特に大きいのが、地域生活への移行、差別や偏見、現場への理念の浸透の3つです。

    地域生活への移行の遅れ

    国は障害福祉計画で、入所施設から地域生活への移行に数値目標を設けています。 第7期(2024〜2026年度)の基本指針では、2022年度末の施設入所者の6%以上が地域生活へ移行し、入所者数を5%以上減らすことが基本とされています。

    地域生活への移行率
    国の基本指針
    6.0%
    都道府県計画の合計
    5.6%
    施設入所者の削減率
    国の基本指針
    5.0%
    都道府県計画の合計
    3.8%

    各都道府県の計画を合計すると、地域生活移行率は5.6%、削減率は3.8%で、どちらも国の基本指針を下回っています。 2022年度の1年間に施設から地域生活へ移行した人は1,433人で、そのうち約半数はグループホームへの移行でした。

    入所施設からの地域移行者は2006年度からの累計で延べ約5.2万人にのぼるものの、年間の移行者数は減少傾向です。 施設入所者の重度化・高齢化や、地域で重度の障害がある人を受け入れる体制が十分に整っていないことが要因として挙げられています。

    医療の分野でも、退院後の在宅生活を支える仕組みが地域移行を左右します。 在宅復帰を支援する病棟については、以下の記事で紹介しています。

    差別や偏見の残存

    2024年4月には改正障害者差別解消法が施行され、事業者による合理的配慮の提供が義務になりました。

    内閣府が2023年10月から試行的に設けている障害を理由とする差別の相談窓口「つなぐ窓口」には、2025年3月までに約4,600件の相談が寄せられています。

    相談件数(2023年10月〜2025年3月)
    約4,600件
    障害種別の内訳(上位)
    精神障害
    1,266件
    肢体不自由
    516件
    発達障害
    477件
    視覚障害
    314件
    聴覚・言語障害
    235件
    知的障害
    190件

    相談の分野は、行政、医療・福祉、教育・学習支援が多くなっています。 医療・福祉は障害のある人を支える立場でありながら、差別の相談が寄せられる分野でもあるという点は、現場で働く人にとって見過ごせません。

    現場への理念の浸透不足

    ノーマライゼーションは養成校で必ず学ぶ理念ですが、忙しい現場では「安全」「効率」が優先され、気づかないうちに本人の選択を狭めていることがあります。

    編集部アドバイス
    • 業務の都合で決めたルールを1つ見直す
    • 迷ったら「自分ならどうしたいか」で考える
    • 職場選びでは日課の決め方や外出支援も確認
    キャリアパートナー

    「転倒が心配だから外出は控えてもらう」「全員同じ時間に入浴してもらう」といった判断は、本人の希望を聞かずに決めると、ノーマライゼーションから遠ざかります。リスクを本人と一緒に確認し、できる方法を探しましょう。

    忙しいと、つい業務の都合を優先しちゃうんだよね…

    理念を「知っている」ことと、日々のケアで「実践できている」ことの間には距離があります。 まずはチームで、前の章で紹介した行動のうちどれができていて、どれができていないかを話し合ってみることがおすすめです。

    参考:厚生労働省「障害者の地域生活支援も踏まえた障害者支援施設の在り方について」 / 内閣府「令和7年版障害者白書(概要)」

    まとめ

    ノーマライゼーションとは、障害のある人が障害のない人と同じように地域で当たり前の生活を送れるよう、社会の側の条件を整えていく考え方です。 本人を“普通”に近づけることではなく、生活を妨げている環境を変えることが中心にあります。

    この記事のポイント


    • 変わるべきは本人ではなく社会や環境の側
    • デンマークのバンク=ミケルセンが提唱し、1959年法で初めて法律に
    • ニィリエが8つの原理として成文化した
    • 障害者基本法・障害者総合支援法に考え方が組み込まれている
    • 現場では生活リズム・私物・選択・地域とのつながりから実践できる

    8つの原理は、患者さんや利用者さんの生活を「自分の暮らしと比べてどうか」で見直すための物差しになります。 本人の希望を大切にしたケアに取り組める職場で働きたいと考えたときは、施設の方針や日々のケアの進め方まで確認して職場を選んでみましょう。

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