理学療法士の昇給額はいくら?年1回の上がり幅と勤務先別の傾向・増やす方法
「今年の昇給、また数千円だった」と給与明細を見てため息をついたことはありませんか? 理学療法士の昇給額は職場の規程で決まり、全国共通の相場を示す公的な統計はありません。
この記事では、公的データから読み取れる理学療法士の昇給の目安と、昇給が小さくなりやすい理由、勤務先別の傾向、昇給額を増やす方法を紹介します。
昇給が止まったと感じたときに確認したい社内制度もまとめているので、今の職場に残るか転職するかを考える材料にしてください。
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理学療法士の昇給額の目安

理学療法士の昇給額そのものを調べた公的統計はありません。 そのため、目安は「賃上げ全体の調査」と「年齢・経験年数ごとの給与データ」、そして求人票の記載から読み取ることになります。
定期昇給で上がる月額
定期昇給(定昇)は、勤続年数や評価に応じて毎年決まった時期に基本給が上がる仕組みです。 金額は職場の賃金表や評価制度で決まるため、同じ理学療法士でも職場によって差があります。
参考になるのが、厚生労働省の「賃金引上げ等の実態に関する調査」です。 2025年の調査では、医療・福祉の会社で1人あたりの賃金の改定額は月5,589円(改定率2.3%)でした。 全産業の平均は13,601円なので、医療・福祉は半分以下にとどまります。
この金額は、定期昇給とベースアップ(賃金表そのものの引き上げ)を合わせた平均です。また、調査の対象は常用労働者100人以上の会社組織の民間企業で、医療法人や公立病院は含まれません。
理学療法士に限った定期昇給の額は、自分の職場の賃金表を見るのがいちばん確実です。 確認のしかたは、後半の「昇給が止まったと感じたときの確認点」で紹介します。
年齢が上がるにつれて増える年収
賃金構造基本統計調査では、理学療法士は「理学療法士,作業療法士,言語聴覚士,視能訓練士」としてまとめて集計されています。 2025年の結果では、平均年齢36.2歳で所定内給与額(残業代などを除く月給)は29万8,200円でした。
年齢階級別に見ると、推計年収は20代前半の約338万円から、50代前半の約549万円まで上がります。
ただし、これは年齢層ごとの平均値の差であり、1人の理学療法士が毎年昇給した結果ではありません。 50代には管理職や勤続の長い人が多く含まれるため、平均を押し上げています。 同じ人が20代から50代まで勤めても、このとおりに年収が伸びるとは限りません。
年齢別の年収って、自分の昇給額とは別の話なんだね
経験年数で区切ったデータを見ると、所定内給与額は経験0年の24万5,000円から、15年以上で34万1,000円まで上がります。 企業規模別では、小さい職場ほど経験の浅いうちの給与が高めで、その後の伸びが緩やかです。
| 企業規模 | 0年 | 1〜4年 | 5〜9年 | 10〜14年 | 15年以上 |
|---|---|---|---|---|---|
| 全体 | 245.0 | 259.2 | 287.7 | 303.9 | 341.0 |
| 1,000人以上 | 234.4 | 259.7 | 292.2 | 311.9 | 346.4 |
| 10〜99人 | 258.2 | 269.5 | 313.0 | 313.6 | 328.1 |
求人票の「昇給あり」の読み方
転職先を探すときに目にする「昇給あり」「昇給年1回」は、昇給の仕組みがあることを示すだけで、金額までは分かりません。 「昇給あり」でも、評価によっては据え置きになる職場もあります。
前年度の昇給実績を金額や率で書いている求人票なら、入職後の上がり幅をイメージしやすくなります。 記載がない場合は、面接や転職エージェントを通して「昨年度の実績」「何年目で頭打ちになるか」を確認しておくと安心です。
理学療法士の求人を探す参考:厚生労働省「賃金構造基本統計調査」 / 厚生労働省「令和7年賃金引上げ等の実態に関する調査の概況」
理学療法士の昇給が小さくなりやすい理由

理学療法士の昇給が小さくなりやすいのは、本人の努力不足ではなく、職場の収入の仕組みや職種の需給によるところが大きいです。 理由を知っておくと、「今の職場でどこまで上がるか」「どこを変えれば上がるか」を判断しやすくなります。
収入源が診療報酬・介護報酬に限られるため
病院やクリニックのリハビリは診療報酬、老健や通所リハ・訪問リハは介護報酬が主な収入です。 どちらも国が単価を決めていて、職場が自由に値上げすることはできません。
さらに、リハビリは提供した時間(単位)に応じて算定するため、理学療法士1人が生み出せる収入には上限があります。 収入の伸びが報酬改定に左右されるため、一般企業のように業績で大きく昇給させるのは難しい構造です。
一方で、国は医療従事者の賃上げを後押ししています。 令和8年度の診療報酬改定では、ベースアップ評価料などを通じて、医療機関の対象職員に令和8年度・9年度それぞれ+3.2%のベースアップを実現する方針が示されました。 報酬改定のタイミングで給与が上がるかどうかは、職場がこうした評価料を届け出ているかによっても変わります。
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有資格者が増えて代替が利きやすいため
理学療法士の国家試験では、毎年1万人前後が合格しています。 日本理学療法士協会の集計では、合格者の累計は24万7,546人で、10年前(平成28年度時点)の13万9,203人から大きく増えました。
人材が増えると、職場は「辞められても次を採用できる」と考えやすくなり、昇給で引き止める必要性が下がります。 特に都市部は理学療法士が集まりやすく、経験年数だけでは給与交渉の材料になりにくい面があります。
昇給につながる役職ポストが少ないため
多くの職場では、昇給の大きな区切りは主任・係長・科長といった役職に就くタイミングです。 ところが、リハビリ部門は1部署に役職が数人しかおらず、上の世代が長く在籍しているとポストが空きません。
頑張っていても役職が空かないと、なかなか給料が上がらないよね
年代別の平均年収や、年収が伸びにくい理由をさらに詳しく知りたい場合は、以下の記事も参考になります。
参考:厚生労働省「令和8年度診療報酬改定 1. 賃上げ対応」 / 日本理学療法士協会「統計情報」
【勤務先別】昇給の傾向

昇給の仕組みは、勤務先の規模や運営母体、収入源によって変わります。 ここで紹介するのは一般的な傾向で、実際の昇給額は同じ業態でも職場ごとに異なります。
| 勤務先 | 主な収入源 | 昇給の決まり方 | 上がり方の傾向 |
|---|---|---|---|
| 病院 | 診療報酬 | 等級・号俸などの賃金表 | 小幅でも毎年上がりやすい |
| クリニック | 診療報酬 | 院長の裁量・面談 | 職場による差が大きい |
| 介護老人保健施設 | 介護報酬 | 法人の規程+処遇改善加算の配分 | 加算の配分方法で変わる |
| 訪問リハビリ | 介護報酬・診療報酬 | 基本給+件数インセンティブ | 件数や手当で増えやすい |
| 自費リハビリ・一般企業 | 利用料金・売上 | 業績・人事評価 | 上がり幅の振れが大きい |
病院
病院は職員数が多く、職能等級や号俸などの賃金表が整っていることが多い職場です。 毎年の昇給額は大きくなくても、勤続に応じて少しずつ確実に上がりやすいのが特徴です。
公立病院は地方公務員として給料表に沿って昇給し、医療法人の病院は法人独自の規程に沿って昇給します。 リハビリ部門の人数が多い病院では、主任・科長といった役職ポストの数も比較的多くなります。
安定して上がるか、成果で大きく上がるか、職場で考え方が違うんだね!
クリニック
整形外科クリニックなどは、院長の裁量で給与が決まることが多く、賃金表がない職場も少なくありません。 入職時の月給は病院より高めに設定されることがある一方、昇給は院長との面談や業績しだいです。
リハビリ職の人数が少なく、役職が「リハビリ主任」1つだけということもあります。 入職前に「過去に何年目の人がいくら上がったか」を聞いておくと、将来の給与をイメージしやすくなります。
理学療法士の求人を探す介護老人保健施設
老健は介護報酬が主な収入で、給与は社会福祉法人や医療法人の規程に沿って決まります。 令和8年6月からは、介護職員等処遇改善加算の対象が介護職員から介護従事者に広がりました。
加算をどの職種にどう配分するかは事業所が決めるため、理学療法士の給与にどの程度反映されるかは職場によって異なります。
訪問リハビリ
訪問リハビリは、1件あたりの訪問で収入が決まるため、訪問件数に応じたインセンティブを設けている職場があります。 基本給の昇給よりも、件数や手当で収入が増える仕組みになりやすいのが特徴です。
これまで訪問リハビリは処遇改善加算の対象外でしたが、令和8年度の改定で訪問リハビリにも処遇改善加算が新設されました。 訪問リハビリの年収水準については、以下の記事で詳しく紹介しています。
自費リハビリ・一般企業
自費リハビリ施設は保険制度の単価に縛られないため、料金設定や集客しだいで給与を上げられる可能性があります。 一方で、業績が悪いと昇給が見送られることもあり、上がり幅の振れが大きい働き方です。
医療機器メーカーや福祉用具の会社などの一般企業は、会社の人事制度に沿って昇給します。 評価制度が明確な会社が多い反面、臨床から離れる働き方になる点は考えておきたいところです。
- 訪問リハビリ求人の平均月給は約30.5万円
- クリニックは約28.7万円、老健は約26.4万円
- 病院求人の平均月給は約25.7万円
昇給額を増やす方法

毎年の定期昇給だけで給与を大きく伸ばすのは難しいため、昇給額を増やすには「等級を上げる」「手当を増やす」「給与水準の高い職場に移る」のいずれかが必要です。
今の職場で上げられるものと、職場を変えないと上げにくいものを分けて考えましょう。
| 方法 | 上がり幅 | 効果が出るまで | 今の職場で可能か |
|---|---|---|---|
| 役職に就く | ◎手当+等級 | △ポストしだい | ◯ |
| 認定・専門理学療法士 | △手当は職場しだい | △数年単位 | ◯ |
| 加算・管理業務に関わる | ◯評価・昇格に反映 | ◯次の評価から | ◯ |
| 給与水準の高い職場へ移る | ◎入職時に反映 | ◎転職後すぐ | ✕ |
役職に就く
主任や科長などの役職に就くと、役職手当が付くうえ、等級が上がって基本給の昇給幅も大きくなるのが一般的です。 ポストが空くのを待つだけでなく、新人教育や部門の業務改善を担当して、役職候補として認識してもらうことが近道です。
役職に就くと、スタッフの勤怠管理や他部署との調整など臨床以外の仕事が増えます。 給与だけでなく、自分に合う働き方かどうかもあわせて考えておきましょう。
認定理学療法士・専門理学療法士を取得する
日本理学療法士協会の生涯学習制度では、「登録理学療法士」を基盤として、専門性を高めたい人向けに「認定理学療法士」「専門理学療法士」が設けられています。 2026年3月31日時点の取得者は、認定理学療法士が1万6,473名、専門理学療法士が1,855名(いずれも実数)です。
資格手当の有無や金額は職場ごとに異なり、手当がない職場もあります。 取得を昇給につなげたい場合は、今の職場の給与規程や評価制度で資格がどう扱われるかを先に確認しておきましょう。 手当がなくても、役職の選考や転職時のアピール材料として役立つことがあります。
ほかにも理学療法士のスキルアップにつながる資格を知りたい場合は、以下の記事が参考になります。
加算の算定や管理業務に関わる
リハビリ部門の収入は、算定できる加算や施設基準によって変わります。 加算の算定要件を満たすための書類整備や多職種カンファレンスの運営、実績管理などを担えると、部門の収入に直接貢献した実績として評価されやすくなります。
臨床の件数を増やすのには限界がありますが、管理業務は件数とは別の形で評価される仕事です。 評価面談では「担当した業務で部門の収入がどう変わったか」を具体的に伝えると、昇給や昇格の根拠になります。
給与水準の高い職場へ移る
今の職場の賃金表で上限が見えている場合は、給与水準の高い職場へ移るのが最も早く年収を上げる方法です。 転職では、入職時の月給だけでなく、その後の昇給の仕組みまで比べることが大切です。
今の職場で上げるか、職場を変えるか、選べる道は1つじゃないよ
入職時の月給が高くても昇給がほとんどない職場だと、数年後には今の職場と差がなくなることもあります。 経験年数をどう評価して初任給を決めるのか、前年度の昇給実績はどうかを、応募前に確認しておきましょう。
今のあなたの状況は?
参考:日本理学療法士協会「各資格の取得状況」 / 日本理学療法士協会「生涯学習制度について」
昇給が止まったと感じたときの確認点

「数年前から昇給がほとんどない」と感じたら、転職を考える前に、まず自分の職場の給与制度を確認しましょう。 昇給が止まった理由が「評価」なのか「制度上の上限」なのかで、取るべき行動が変わります。
就業規則の昇給規定
常時10人以上の労働者がいる職場は、就業規則に昇給に関する事項を必ず書かなければなりません。
就業規則は、職員がいつでも見られる状態にしておくことが法律で決められています。 昇給規定を開いたら、次の項目を確認しましょう。
- 昇給の時期と回数(年1回・4月など)
- 昇給の基準(勤続・評価・資格など)
- 評価によって昇給しない場合があるか
- 昇給額を決める賃金表や号俸表があるか
前述のベースアップ評価料を届け出ている医療機関では、評価料による収入を基本給などの引き上げに充てることになっています。 「職場全体の賃上げがあったか」を上司や事務に確認するのも一つの方法です。
等級制度と上限の有無
病院や法人の多くは、「等級(グレード)」と「号俸(等級の中の段階)」を組み合わせた賃金表を使っています。 同じ等級の中で号俸が上がっていくのが定期昇給で、等級ごとに号俸の上限があるため、上限に達すると昇給が止まります。
上限に達している場合、次の等級に上がる(昇格する)までは基本給がほとんど増えません。 昇格の条件(役職・評価・勤続年数など)を確認し、条件を満たせる見込みがあるかどうかで、残るか移るかを判断しましょう。
賞与を含めた年収の推移
昇給額が小さくても、賞与の支給月数が増えていれば、年収は上がっていることもあります。 反対に、基本給が上がっても賞与の月数が減れば、年収は横ばいになります。
基本給だけじゃなく、賞与と手当もセットで見るのがコツだよ
年収の推移を確認する手順
- 過去3年分の源泉徴収票を並べる
- 支払金額の合計で年収の増減を見る
- 給与明細で基本給と手当の内訳を比べる
- 賞与が基本給の何か月分かを確認する
基本給・手当・賞与のどこが増えてどこが減ったのかを分けて見ると、昇給が止まった原因をつかみやすくなります。
まとめ
理学療法士の昇給額は職場の規程で決まり、全国共通の相場はありません。 年齢別のデータで年収が上がって見えるのは年齢層ごとの平均の差で、毎年の定期昇給とは別物です。
この記事のポイント
- 医療・福祉の賃上げ額は全産業平均の半分以下
- 年齢別の年収差は定期昇給の額とは別物
- 「昇給あり」の求人票では金額まで分からない
- 昇給が小さいのは報酬の仕組みとポスト不足が原因
- 止まったら昇給規定と等級の上限を確認する
まずは今の職場の昇給規定と賃金表を確認し、上限が見えているなら役職を目指すか、昇給の仕組みが整った職場を探すかを考えてみましょう。
求人票だけでは分からない昇給実績は、転職エージェントを通して確認してもらうこともできます。


