ケアマネジャーは副業できる?人員基準の確認点と資格を活かせる副業
「ケアマネジャーの給料だけでは少し心もとない」「空いた時間で資格を活かしたい」と、副業を考え始めるケアマネジャーは少なくありません。
ケアマネジャーの副業は法律で一律に禁止されてはいませんが、勤務先の就業規則に加えて、居宅介護支援事業所の人員基準にも影響する点がほかの介護職と違います。
この記事では、副業を始める前に確認することと、資格を活かせる副業・資格を使わない副業、税と社会保険の手続き、続けるうえでの注意点を紹介します。
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ケアマネジャーは副業してもいい?

民間の事業所で働くケアマネジャーなら、副業は原則として本人の自由です。 厚生労働省のガイドラインでも、勤務時間外の過ごし方は基本的に労働者の自由とされ、会社が副業を制限できるのは一部のケースに限られています。
ただし、勤務先のルールと公務員かどうかで、確認することや手続きが変わります。
就業規則で確認すること
最初に確認したいのは、勤務先の就業規則にある副業・兼業の規定です。 厚生労働省のモデル就業規則は、2018年の改定で「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」という規定を削除し、勤務時間外に他の会社等の業務に従事できるという内容に変わりました。
一方で、ガイドラインでは会社が副業を禁止・制限できる場合も示されています。
ケアマネジャーの場合、利用者さんの情報を扱う立場上、「秘密の漏えい」と「競業」に当たらないかは特に見られやすいポイントです。 就業規則を開いたら、次の点を確認しておきましょう。
- 副業が「届出制」か「許可制」か
- 禁止・制限される副業の具体例
- 届け出る内容(勤務先・業務内容・労働時間など)
公務員として働いている場合の制限
市町村が直営する地域包括支援センターなどで、公務員として働くケアマネジャーもいます。 公務員の副業は法律で制限されていて、民間の就業規則よりも厳しいルールです。
地方公務員の場合、報酬を受け取る講師や執筆も許可が必要になる場合があるため、「ケアマネの知識を活かした単発の仕事だから大丈夫」とは言い切れません。 なお、地方公務員法第38条のただし書きにより、パートタイムの会計年度任用職員など一部の非常勤職員は許可制の対象外です。
許可の基準は自治体ごとに定められているので、人事担当の部署に確認しましょう。
届出や許可が必要になるケース
副業の手続きは、雇用形態と副業の内容によって変わります。
-
民間で届出制の職場副業を始める前に、所定の様式で勤務先に届け出る
-
民間で許可制の職場許可を得てから始める。許可前に始めると懲戒の対象になりうる
-
公務員(常勤・フルタイム)任命権者の許可が必要。報酬を得ない活動は原則対象外(営利企業の役員等を除く)
-
雇用される副業副業先でも労働時間を申告し、本業と通算して管理される
アルバイトなど雇用される形の副業は、本業と副業の労働時間が通算されます。 一方、業務委託の執筆や講師など雇用ではない働き方は、労働時間の通算の対象外です。 休職中に副業を考えている場合は、傷病手当金との関係など別の注意点があります。
職場のルールしだいで、必要な手続きが変わるんだね
参考:厚生労働省「副業・兼業」 / e-Gov法令検索「地方公務員法」
副業の前に確認する人員基準

居宅介護支援事業所で働くケアマネジャーは、本人の就業規則だけでなく、事業所の人員基準も確認しておく必要があります。
人員基準は「指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準」(厚生労働省令)で定められていて、満たせなくなると事業所の指定に影響するためです。
常勤専従の原則
省令第2条では、居宅介護支援事業所ごとに常勤の介護支援専門員を1人以上置くことが決められています。 利用者さんの数に応じて必要な人数も決まっていて、ケアマネジャーと管理者で求められる条件は異なります。
| 項目 | 介護支援専門員 | 管理者 |
|---|---|---|
| 人数 | 利用者44人ごとに1人(条件を満たせば49人ごと) | 事業所ごとに1人 |
| 資格 | 介護支援専門員 | 原則、主任介護支援専門員 |
| 常勤 | 1人以上は常勤が必要 | 常勤 |
| 専従 | 条文上の要件なし。他の業務との兼務も可 | 専ら管理者の職務に従事(例外あり) |
「常勤」は、事業所が決めた常勤職員の勤務時間(週32時間を下回る場合は週32時間が基本)を満たしていることを指します。 ケアマネジャー本人については、解釈通知で他の業務との兼務が認められていて、管理者のように「専従」が条文で求められているわけではありません。
ただし、常勤のケアマネジャーが1人しかいない事業所で、その人が勤務時間を減らして副業に回すと、事業所が人員基準を満たせなくなるおそれがあります。
管理者を兼ねている場合
居宅介護支援事業所の管理者は、原則として主任介護支援専門員で、常勤かつ専ら管理者の職務に従事することが求められます。 例外として兼務できるのは、次の2つです。
- その事業所のケアマネジャーとして働く
- 他の事業所の職務に従事する(事業所の管理に支障がない場合に限る)
「他の事業所」は介護サービスの事業所に限らず、病院や診療所なども含まれます。 ただ、管理者は営業時間中に利用者さんからの相談へ対応できる体制を整えておく必要があるため、勤務時間中に別の職場で働く副業は、管理に支障があると判断されやすいです。
勤務時間の外でする副業なら大丈夫なのかな?
勤務時間外の副業が基準に影響するか
常勤の要件は、事業所で決められた勤務時間を満たしているかで判断します。 そのため、所定の勤務時間を減らさず、夜や休日に行う副業であれば、人員基準の上では問題になりにくいと考えられます。
人員基準の解釈は細かい運用が自治体ごとに異なることもあるため、判断に迷うときは管理者を通じて、指定権者である市町村の介護保険担当課に確認してもらうのが確実です。
今のあなたの状況は?
参考:e-Gov法令検索「指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準」 / 厚生労働省「指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準について(平成11年7月29日老企第22号)(抄)」
資格を活かせる副業

ケアマネジャーの資格や実務経験は、介護保険制度の知識が求められる仕事でそのまま活かせます。 代表的なものは、認定調査員、研修・講座の講師、他事業所での非常勤ケアマネジャー、介護分野の執筆・監修の4つです。
| 副業 | 主な契約の形 | 本業との労働時間の通算 | 本業と調整したいこと |
|---|---|---|---|
| 認定調査員 | 市町村の非常勤職員、受託事業所での雇用 | あり | 利用者さん宅を訪ねる調査日時 |
| 研修・講座の講師 | 業務委託・謝礼が多い | 委託ならなし | 依頼日に合わせた休みの確保 |
| 非常勤ケアマネ | パートなどの雇用 | あり | 担当件数と訪問の日程 |
| 執筆・監修 | 業務委託 | なし | 納期と本業の繁忙期 |
要介護認定調査員
要介護認定の調査は、市町村の職員が行うのが原則です。 介護保険法では、更新認定などの調査を指定居宅介護支援事業者などの事業者や、一定の要件を満たす介護支援専門員に委託できると定められています(第28条第5項)。
ただし、個人のケアマネジャーが市町村から直接調査を受託できるかどうかは、自治体によって異なります。 副業として関わる場合は、次のような形が一般的です。
- 市町村の会計年度任用職員(非常勤)として認定調査員の募集に応募する
- 調査を受託している事業所で、非常勤の調査員として働く
委託を受けて調査をする人は、刑法などの罰則の適用では公務員とみなされ、調査で知った秘密を漏らさない義務も負います。 本業で担当している利用者さんの調査をどう扱うかなど、自治体ごとのルールも募集要項で確認しておきましょう。
研修・講座の講師
介護職員向けの研修や、介護資格スクールの講座で講師を務める方法もあります。 ケアプランの作り方や介護保険制度の説明など、現場での実務経験がそのまま教える内容になるのが強みです。
単発の依頼が多く、本業の勤務時間外や休日に合わせやすい仕事です。 一方で、依頼が安定するまでは知人の紹介や職能団体のつながりが入り口になりやすく、始めてすぐに収入が安定するとは限りません。
他事業所での非常勤ケアマネジャー
本業とは別の居宅介護支援事業所で、非常勤のケアマネジャーとして働く方法もあります。 資格をそのまま使えて、時給制の求人も見つけやすい副業です。
ただし、解釈通知で兼務の条件が示されていて、本業の勤務先によっては兼務が認められません。
また、非常勤のケアマネジャーも勤務先の事業所の管理者の管理下で働くため、兼務先を拠点にして利用者さんの台帳を別に保管するといった働き方は認められていません。
介護分野の執筆・監修
介護系のWebメディアや書籍で、記事の執筆や内容の監修をする仕事もあります。 在宅で進めやすく、介護保険制度や現場の実態を正確に書ける人材はメディア側からも求められています。
事例を書くときは、担当した利用者さんが特定されない内容にすることが前提です。 業務委託での契約が多いため、報酬の支払い条件や納期は、始める前に書面で確認しておきましょう。
- 雇用か業務委託かで必要な手続きが変わる
- まずは勤務時間外にできる仕事から始めると安心
- 本業の利用者さんと関わらない副業先を選ぶ
受験資格など、ケアマネジャー資格そのものについては以下の記事で紹介しています。
資格を活かせる仕事、思ったより幅広いんだね!
資格を使わずにできる副業

資格を使わない副業は、介護業界との利害関係が少ない分、利益相反や守秘義務の問題が起こりにくいのが特徴です。
ケアマネジャーの仕事で身につくパソコン操作や調整力、相談対応のスキルを活かせるものを選ぶと、始めやすくなります。
| 副業 | 時間の自由度 | ケアマネ経験の活用 | 労働時間の通算 | 利益相反の心配 |
|---|---|---|---|---|
| 在宅の事務作業 | ◎好きな時間に作業 | △文書作成に慣れている | 委託ならなし | ◎ほぼない |
| 単発・スポット | ○働く日を選べる | ×介護と無関係が多い | 雇用ならあり | ◎ほぼない |
| オンライン相談 | ○予約制が多い | ◎制度の知識が役立つ | 契約形態による | △特定サービスを勧めない |
在宅でできる事務作業
データ入力や書類作成、文字起こしなどの事務作業は、在宅で好きな時間に進められる副業です。 ケアマネジャーは日常的に記録やケアプランを作成しているため、パソコンでの文書作成には慣れている人が多いはずです。
クラウドソーシングなどで業務委託として受ける場合は、労働時間の通算の対象になりません。 その分、作業時間の上限は自分で決めておかないと、本業の疲れが抜けないまま働き続けることになります。
単発・スポットの仕事
イベントスタッフや軽作業など、1日単位で働ける単発の仕事もあります。 シフトを組まなくてよいので、本業の休みに合わせて働く日を選べます。
ただし、アルバイトとして雇用される場合は、本業との労働時間の通算が必要です。 副業先に本業の勤務時間を申告する必要があるほか、本業の就業規則で届け出が求められている場合は、単発の仕事でも届け出ておきましょう。
条件にあった求人を探してもらうオンラインでの相談業務
介護に悩む家族向けのオンライン相談や、介護に関する質問に答えるサービスで働く方法もあります。 介護保険の仕組みを分かりやすく説明できるケアマネジャーの経験が、そのまま役立つ仕事です。
気をつけたいのは、相談の中で特定の事業所やサービスを勧めないことです。 介護保険のケアプラン作成は指定を受けた居宅介護支援事業所の業務で、個人の副業として請け負うものではありません。 相談の範囲を一般的な情報提供にとどめておくと、本業との線引きもしやすくなります。
資格を使わない仕事のほうが気楽に始められそう
副業にともなう税と社会保険の手続き

副業で収入が増えると、所得税の確定申告や住民税の申告、社会保険の手続きが必要になる場合があります。 所得税の基準と住民税の基準は別なので、分けて確認しておきましょう。
確定申告が必要になる基準
会社員として働くケアマネジャーが副業をした場合、所得税の確定申告が必要かどうかの目安は20万円です。 ただし、副業の収入を「給与」で受け取るか「報酬」で受け取るかで、20万円に含める金額が変わります。
「所得」は収入から経費を差し引いた金額です。 業務委託の執筆や講師の報酬なら、報酬から資料代や交通費などの経費を引いた金額で判断します。 確定申告の流れや必要書類は、以下の記事で詳しく紹介しています。
住民税の申告
所得税の確定申告が不要な20万円以下の副業所得でも、住民税の申告は別に必要です。 住民税には「20万円以下なら申告不要」という基準がないため、確定申告をしない場合は、お住まいの市区町村に住民税の申告をします。
確定申告をした場合は、その内容が市区町村に送られるので、住民税の申告を別にする必要はありません。 確定申告書の住民税に関する欄では、副業分の住民税を給与から天引きする「特別徴収」か、自分で納める「普通徴収」かを選べます。
アルバイトなど給与所得の副業は、原則として本業の給与とまとめて住民税が計算され、本業の勤務先で天引きされます。副業分だけ自分で納める扱いにできるかは、市区町村に確認しましょう。
20万円以下でも住民税の申告はいるから気をつけてね!
社会保険の加入要件
雇用される副業では、条件を満たすと副業先でも健康保険・厚生年金保険に加入します。 パート・アルバイトなどの短時間労働者の場合、加入の対象になるのは次のすべてに当てはまる人です。
所定内賃金が月額8.8万円以上という要件は、2026年10月に撤廃される予定です。 また、2027年10月からは企業規模の要件が36人以上の企業等に広がります。
本業と副業の両方で加入要件を満たした場合は、事実発生から10日以内に本人が「健康保険・厚生年金保険 被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」を日本年金機構へ提出します。 保険料は、両方の報酬を合算した額をもとに決まり、それぞれの事業所の報酬に応じて按分されます。
転職活動するなら?
参考:国税庁「No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人」 / 日本年金機構「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大」
副業を続けるうえでの注意点

副業を始めたあとも、本業のケアマネジャーとしての義務は変わりません。 特に、本業への支障、個人情報の扱い、利益相反の3つは、トラブルになると本業の立場にも影響します。
本業の業務に支障を出さない
ケアマネジャーの仕事は、毎月のモニタリングやサービス担当者会議、急な入退院の調整など、予定外の対応も多い仕事です。 副業の予定を詰め込みすぎると、利用者さんからの急な連絡に対応できないといった形で本業に影響が出ます。
長時間労働で本業に支障が出ることは、会社が副業を制限できる理由の1つです。 副業の時間は週単位で上限を決め、繁忙期には減らせる仕事を選んでおくと、両立しやすくなります。
利用者の個人情報を持ち出さない
介護保険法では、ケアマネジャーに業務で知った人の秘密を漏らさない義務があり、ケアマネジャーでなくなったあとも続きます。 副業で特に気をつけたいのは、次のような場面です。
- 執筆や講師の事例に、担当利用者さんのエピソードを使う
- 本業のパソコンや記録を副業の資料作りに使う
- 副業先で本業の利用者さんの話をする
事例を使う場合は、年齢や家族構成、地域などを変えて、誰のことか特定できない形にしましょう。 本業の記録や資料は、副業のために持ち出さないのが原則です。
利益相反になる副業を避ける
ケアマネジャーは、利用者さんが受けるサービスが特定の事業者に不当に偏らないよう、公正かつ誠実に業務を行うことが法律で求められています。 運営基準でも、ケアプランの作成に関して特定の事業者のサービスを利用するよう指示することや、その見返りとして事業者から金品などを受け取ることが禁止されています。
副業先を選ぶ段階で、本業の利用者さんと利害関係が生まれないかを判断基準にしておくと安心です。
公正中立を守るのって、副業選びでも大事なんだね
参考:e-Gov法令検索「介護保険法」 / e-Gov法令検索「指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準」
まとめ
ケアマネジャーの副業は禁止されていませんが、就業規則や公務員の制限に加えて、居宅介護支援事業所の人員基準も確認しておく必要があります。 勤務時間を減らさない形で、本業の利用者さんと利害関係が生まれない副業を選ぶのが、長く続けるコツです。
この記事のポイント
- 就業規則で届出制か許可制かを確認する
- 公務員は任命権者の許可が必要になる
- 常勤の勤務時間を減らす副業は人員基準に注意
- 副業の所得20万円超が確定申告の目安
- 住民税の申告は20万円以下でも必要
- 利用者さんを副業先に誘導しない
まずは就業規則を確認し、迷う点は管理者や勤務先の人事担当に相談してみましょう。 副業ではなく、勤務時間や給与の条件が合う職場への転職を考える場合は、転職エージェントに相談すると、非常勤やパートの求人も含めて条件に合う職場を探してもらえます。


