柔道整復師とあん摩マッサージ指圧師の違いは?法律・制度の違いや業務範囲の違いを解説
柔道整復師とあん摩マッサージ指圧師は、どちらも手技を用いて施術する国家資格です。街なかでは整骨院とマッサージの施術所が並んでいることもあり、外から見ると区別しにくい2つの資格といえます。
ただし制度上は、根拠となる法律から業務の対象、健康保険の取り扱い、資格を取るまでの道のりまで、それぞれ別の枠組みで組み立てられています。
この記事では、柔道整復師とあん摩マッサージ指圧師の違いを、根拠法・業務の範囲・療養費・養成課程・働く場所という同じ軸で並べて整理します。
気になることを
キャリアパートナーに相談できます
気になる内容をお選びください(複数選択可)
2つの資格の基本的な違い

柔道整復師とあん摩マッサージ指圧師は、根拠となる法律が別々に存在し、免許の種類も業務の対象も分かれています。一方で、厚生労働大臣の免許を受けて業を行う点、施術所を開設できる点は共通しています。
根拠となる法律が異なること
柔道整復師の根拠法は柔道整復師法(昭和45年法律第19号)、あん摩マッサージ指圧師の根拠法はあん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律(昭和22年法律第217号、通称あはき法)です。
あはき法は「あん摩」「マッサージ」「指圧」という手技の名称そのものを免許の対象にしているのに対し、柔道整復師法には「柔道整復」の内容を定義した規定が置かれていません。柔道整復として何を行うのかは、後述する療養費の通知など、別の資料から読み取ることになります。
業務の対象が異なること
あん摩マッサージ指圧師が業として行えるのは、あはき法第1条に挙げられたあん摩、マッサージ、指圧です。手技の種類が免許の単位になっているため、業務の対象は手技そのもので線が引かれます。
柔道整復師の場合、法律に定義規定がない代わりに、療養費の対象となる負傷の範囲が厚生労働省から示されています。整骨院や接骨院で骨折、脱臼、打撲及び捻挫(いわゆる肉ばなれを含む)の施術を受けた場合に保険の対象になる、というのがその内容です。
つまり柔道整復は、手技の種類ではなく対象となる負傷で範囲が示される資格だといえます。
施術所の名称
施術所に付けられる名称も、それぞれの法律の広告規制に従います。あはき法第7条は広告できる事項を5つに限定し、その第2号で「第一条に規定する業務の種類」を挙げています。あん摩・マッサージ・指圧という業務の種類そのものを名称に使えるのは、この規定によるものです。
一方、柔道整復師法第24条には業務の種類にあたる号がなく、厚生労働大臣が指定する事項として「ほねつぎ(又は接骨)」が定められています。接骨院という名称が広く使われているのは、この告示が根拠です。
施術所の名称 広告できる例・できない例
広告できる名称の例
| 区分 | 名称例 |
|---|---|
| 施術業態を特定しない表記 | ○○施術所(院) |
| 施術業態+治療院(所)・療院(所) | ○○鍼灸治療院、○○鍼灸療院、○○鍼灸治療所 |
| 業務の種類のみの表記 | ○○マッサージ、はり・きゅう○○ |
| 併設施術所の併記 | ○○接骨院・鍼灸院 |
広告できない名称の例
| できない理由 | 名称例 |
|---|---|
| 病院や診療所と誤解される | ○○診療所、○○治療室、メディカル、クリニック、リハビリ、ドック |
| あはき・柔整以外の業態と紛らわしい | カイロプラクティック、整体、リラクゼーション、リフレクソロジー |
| 提供する施術業態が混ざっている | ○○鍼灸接骨院、○○マッサージ接骨院 |
| 対象者を限定する | ○○女性専門療院、スポーツ、美容、交通事故専門 |
| 施術内容や技能・方法を含む | 東洋医学、美容鍼灸、中国鍼灸、電気療法 |
| 効能や優良さを示す | 姿勢改善、小顔矯正、骨盤矯正 |
| 施術所と分かりにくい | ○○堂、○○館、○○センター、サロン、ほぐし処 |
広告できる事項の解釈は、令和7年2月18日付の「あはき・柔整広告ガイドライン」に整理されています。
ガイドラインでは、あはきと柔整の業態が混ざった名称や、医療機関と紛らわしい名称は広告できない例として挙げられています。開業を考える段階で目を通しておきたい資料です。
どちらも国家資格であること
分かれている部分ばかりを見てきましたが、制度の骨格には共通点も多くあります。
- どちらも厚生労働大臣の免許を受けて業を行う国家資格
- 免許がなければその業務を行えない業務独占の資格
- 施術所を開設したときは10日以内に都道府県知事へ届出が必要
- 広告できる事項が法律で限定されている
施術所の開設届は柔道整復師法第19条、あはき法第9条の2にそれぞれ定めがあり、どちらも開設後10日以内、届出先も同じです。休止・廃止・再開のときも10日以内に届け出ます。
参考:e-Gov法令検索「柔道整復師法」 / e-Gov法令検索「あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律」 / 厚生労働省「あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師及び柔道整復師等の広告に関する検討会」 / 厚生労働省「柔道整復師等の施術にかかる療養費の取扱いについて」
今のあなたの状況は?
業務の範囲を比較する

柔道整復師法とあはき法は、それぞれ業務独占と禁止行為を定めており、どこまでが自分の免許で行える範囲なのかが決まっています。
柔道整復師が行えること
柔道整復師法は、柔道整復の業務について3つの規定を置いています。業務独占(第15条)、外科手術や薬品投与等の禁止(第16条)、そして脱臼・骨折の患部への施術の制限(第17条)です。
柔道整復師法が定める3つの規定
このうち実務でとくに判断が求められるのが第17条です。医師の同意を得た場合のほか、脱臼又は骨折の患部に施術をしてはならないとされ、ただし書きで応急手当をする場合は除くと定められています。目の前の対応が応急手当にあたるのか、それとも医師の同意が要る施術なのか。その線引きが現場では問われます。
第16条の禁止行為とあわせて読むと、柔道整復師の業務が手技による施術に限られていることが分かります。この点はあん摩マッサージ指圧師にも共通します。
あん摩マッサージ指圧師が行えること
あん摩マッサージ指圧師は、あはき法第1条に基づき、あん摩、マッサージ、指圧を業として行える立場です。免許を受けずにこれらを業として行った場合は50万円以下の罰金と定められています。
働き方の面では、施術所を開設または勤務する形のほかに、専ら出張のみによって業務に従事するという選択肢が法律上用意されています。柔道整復師法には、これに対応する規定がありません。
重ならない部分
2つの免許の関係でもっとも誤解されやすいのが、片方の免許でもう片方の業務ができるかどうかです。結論としては、どちらの方向にも認められていません。
業として行える範囲の比較
| 行為 | 柔道整復師 | あん摩マッサージ指圧師 |
|---|---|---|
| 骨折・脱臼の患部への施術 | ◯医師の同意が必要(応急手当は例外) | ✕ |
| 打撲・捻挫に対する柔道整復の施術 | ◯ | ✕ |
| あん摩・マッサージ・指圧 | ✕ | ◯ |
| はり・きゅう | ✕ | ✕はり師・きゅう師免許が別に必要 |
| 外科手術、薬品の投与 | ✕ | ✕ |
柔道整復師の免許を持っていても、あん摩・マッサージ・指圧を業として行うにはあはき法第1条の免許が必要です。逆に、あん摩マッサージ指圧師の免許で骨折・脱臼・捻挫等に対する柔道整復を業として行うことは、柔道整復師法第15条の業務独占に触れます。
なお、あはき法第12条は「何人も、第一条に掲げるものを除く外、医業類似行為を業としてはならない」としたうえで、ただし書きで「柔道整復を業とする場合については、柔道整復師法の定めるところによる」と定めています。
判断が分かれる領域があること
条文で線が引かれているとはいえ、実際の現場では判断が難しい場面もあります。施術に付随して行う手技をどう扱うか、といった論点がその典型です。
施術の目的、内容、料金の設定、患者さんへの説明の仕方など、事実関係によって評価が変わる領域があります。一般論として整理された情報だけで自己判断せず、都道府県の担当課や所属する職能団体に確認するのが確実です。広告や施術メニューの表示についても、あはき・柔整広告ガイドラインと自治体の指導内容の両方を確認しておくと安心です。
参考:e-Gov法令検索「柔道整復師法」 / e-Gov法令検索「あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律」
柔道整復師の求人を探す保険の取り扱いの違い

柔道整復とあん摩マッサージ指圧は、どちらも健康保険から療養費が支給される場合がありますが、対象となる状態も、医師がどう関わるかも、支払いの仕組みも異なります。
柔道整復とあん摩マッサージ指圧の療養費比較
柔道整復の療養費
柔道整復で健康保険の対象になるのは、骨折、脱臼、打撲及び捻挫(いわゆる肉ばなれを含む)の施術を受けた場合です。このうち骨折及び脱臼については、緊急の場合を除き、あらかじめ医師の同意を得ることが必要とされています。
支払いの仕組みにも特徴があります。療養費は本来、患者さんが費用の全額をいったん支払い、自ら保険者へ請求して支給を受ける償還払いが原則です。
ところが柔道整復については例外的な取り扱いとして、患者さんが自己負担分だけを柔道整復師に支払い、残りを柔道整復師が患者さんに代わって保険者に請求する受領委任が認められています。整骨院や接骨院の窓口で医療機関と同じように自己負担分だけを支払えるのは、この仕組みによるものです。
あん摩マッサージ指圧の療養費
マッサージの施術で健康保険の対象になるのは、筋麻痺や関節拘縮等であって、医療上マッサージを必要とする症例について施術を受けたときです。診断名で一律に決まるものではなく、状態から必要性が判断されます。
そして、あらかじめ医師の発行した同意書又は診断書が必要です。柔道整復では骨折・脱臼という限られた場面で医師の同意が求められるのに対し、あん摩マッサージ指圧では療養費の対象となる施術そのものに医師の同意書が前提になっています。
同意書に基づいて支給を受けられる期間にも定めがあります。初療または再同意の日から数えて6か月が上限で、変形徒手矯正術のみを行う場合は1か月です。
期間が切れる前に医師の再同意を得る流れになるため、施術者側にも期日の管理が求められます。
なお、はり・きゅうの療養費は対象がさらに異なり、神経痛、リウマチ、頸腕症候群、五十肩、腰痛症及び頸椎捻挫後遺症等の慢性的な疼痛を主症とする疾患が対象とされています。あん摩マッサージ指圧の対象と混同されやすいので、区別して覚えておきたいところです。
対象にならないもの
上位表示される記事のなかには「あん摩マッサージ指圧師は肩こりや腰痛に健康保険が使える」という趣旨の説明が見られますが、通知の内容とは一致しません。
-
柔道整復単なる肩こり、筋肉疲労などに対する施術は対象外。この場合は全額自己負担
-
あん摩マッサージ指圧単に疲労回復や慰安を目的としたもの、疾病予防のためのマッサージは対象外
-
共通保険医療機関で同じ負傷等の治療を受けている間は、施術を受けても保険の対象にならない
慰安や疲労回復を目的とした施術は、どちらの資格でも療養費の対象にはなりません。「国家資格だから保険が使える」という説明の仕方をすると、患者さんの理解と実際の取り扱いがずれてしまいます。
往療に関する取り扱い
訪問して施術を行う場合の取り扱いは、2つの資格で考え方が大きく分かれます。
柔道整復の往療料は、下肢の骨折や不全骨折、股関節脱臼、腰部捻挫等による歩行困難等、真に安静を必要とするやむを得ない理由により患家の求めに応じて赴いた場合に算定できるものとされています。そして、単に患者さんの希望のみによる場合や、定期的・計画的に患家へ赴いて施術した場合には算定できないと明記されています。
往療料の算定可否フロー
一方、あん摩マッサージ指圧の療養費には、定期的ないし計画的に訪問して施術する場合の訪問施術料という区分があり、突発的に生じた往療は往療料として別に扱われます。訪問マッサージという働き方が事業として成り立っているのは、この制度の違いによるところが大きいといえます。
なお、片道16kmを超える往療については、その施術所からの往療を必要とする絶対的な理由がある場合に限って認められ、理由なく患家の希望で16kmを超えた場合は全額患者さん負担となります。
患者への説明が必要になること
療養費の取り扱いを誤って説明すると、患者さんの負担額に直接影響します。窓口での説明は施術者の責任範囲であり、思い込みで話すことはできません。
説明のときに押さえておきたい点
- 柔道整復は対象となる負傷が限られ、慢性的な肩こりや筋肉疲労は自費になること
- あん摩マッサージ指圧は医師の同意書が前提で、同意の期間にも期限があること
- どちらも慰安や疲労回復を目的とした施術は療養費の対象外であること
- 通知は改定されるため、そのつど最新の内容を確認して説明すること
なお、この記事に記載した療養費の取り扱いは2026年9月時点で公表されている通知に基づくものです。改定の頻度が高い分野のため、実務では最新の通知にあたるようにしましょう。
参考:厚生労働省「柔道整復師等の施術にかかる療養費の取扱いについて」 / 厚生労働省「はり、きゅう及びあん摩マッサージ指圧の同意書の取扱い(保険医療機関及び保険医の皆様へ)」
資格を取得するまでの違い

進路を検討するうえで、もっとも実際的に効いてくるのが資格取得までの違いです。修業年限は同じでも、学ぶ内容の量、試験を実施する機関、そして通える学校の数には差があります。
養成施設と修業年限
どちらの資格も、大学に入学できる学歴を持つ人が養成課程で3年以上学ぶことが受験資格です。修業年限そのものに違いはありません。
違いは学校の認定・指定を誰が行うかにあります。柔道整復師は文部科学大臣が指定した学校、または都道府県知事が指定した柔道整復師養成施設。あん摩マッサージ指圧師は文部科学大臣が認定した学校、または厚生労働大臣が認定した養成施設です。
年限が同じでも、学ぶ量には差があります。また認定規則では、臨床実習の3単位以上を附属の実習施設または施術所で行うこととされており、通信教育や独学だけで取得することはできません。
国家試験
試験を実施する機関が異なります。柔道整復師国家試験の事務は公益財団法人柔道整復研修試験財団、あん摩マッサージ指圧師国家試験の事務は公益財団法人東洋療法研修試験財団が、それぞれ指定試験機関として行います。
第35回試験の施行内容を並べると、条件の違いが見えてきます。
-
柔道整復師令和9年3月7日実施。試験科目11科目。受験手数料23,900円
-
あん摩マッサージ指圧師令和9年2月27日実施。試験科目12科目。受験手数料19,500円
どちらも筆記試験のみで、実技試験はありません。
養成施設の数の違い
養成施設の数について全国を網羅した公表資料は見当たりませんでした。
一方で、国家試験の受験地には差があります。柔道整復師国家試験の試験地は北海道、宮城県、東京都、愛知県、大阪府、広島県、香川県、福岡県及び沖縄県の9か所です。これに対しあん摩マッサージ指圧師国家試験は、晴眼者の試験地が宮城県、東京都、愛知県、大阪府、香川県及び鹿児島県の6か所に限られています。
第34回国家試験 受験者数比較
受験者数にも差があります。第34回国家試験では、あん摩マッサージ指圧師の受験者数が柔道整復師の4分の1程度にとどまりました。合格率はあん摩マッサージ指圧師のほうが高く出ていますが、これは受験者の母数と養成の規模が違うことの反映でもあります。
養成施設の新設に関する規定
受験者数の差の背景には、あはき法に固有の規定があります。あはき法附則第19条です。
この規定は、あん摩マッサージ指圧師の総数のうち視覚障害者以外の者が占める割合などを勘案し、視覚障害のあるあん摩マッサージ指圧師の生計の維持が著しく困難とならないようにするため必要があると認めるときは、視覚障害者以外の者を教育・養成する学校や養成施設について、認定や定員増の承認をしないことができる、というものです。
視覚障害のある方の職業機会を確保するという趣旨に基づくもので、はり師・きゅう師には同じ規定がありません。あん摩マッサージ指圧師の養成の門戸が限られている制度的な理由がここにあります。
なお、視覚障害のある方については附則第18条の2に別のルートが定められており、高等学校に入学できる者があん摩マッサージ指圧師の養成課程で3年以上(3資格の課程では5年以上)学べば受験できます。
学費と通学の負担
学費については、養成施設ごとの金額を全国的にまとめた公的な調査が見当たりません。この記事では特定の学校の金額は示しませんが、確認の手順は共通しています。
- 志望する学校の募集要項で、入学金・授業料・実習費・教材費を分けて確認する
- 昼間部と夜間部で年限や納入金が異なる場合があるため、両方を比較する
- 働きながら通う場合は、実習期間中の勤務調整が可能かを学校に確認する
- 専門実践教育訓練給付の対象講座かどうかを、講座検索システムで確認する
養成課程には臨床実習が組み込まれており、通学が前提です。3年間まとまった時間を確保できるかどうかが、費用と並ぶ現実的な検討材料になります。
参考:厚生労働省「柔道整復師国家試験の施行」 / 厚生労働省「あん摩マッサージ指圧師国家試験の施行」 / 厚生労働省「第34回柔道整復師国家試験の合格発表について」
お探しの求人は?
働く場所と働き方

免許で行える業務が違えば、働ける場所と働き方も変わります。令和6年の衛生行政報告例によると、就業柔道整復師は78,666人、就業あん摩マッサージ指圧師は119,703人です。一方、施術所の数は柔道整復の施術所が50,924か所、あん摩マッサージ指圧師等の施術所が17,531か所となっています。
施術所を開設する場合
どちらの資格でも施術所を開設できます。開設後10日以内に都道府県知事へ届け出る点、広告できる事項が限られる点は前述のとおりです。
違いが出るのは、開設後の収入の組み立て方です。柔道整復では受領委任の仕組みがあるため、療養費の対象になる負傷を扱う限り、患者さんは窓口で自己負担分だけを支払います。あん摩マッサージ指圧では医師の同意書がなければ療養費の対象にならないため、同意書のない施術は全額自費になります。
なお、あん摩マッサージ指圧師には施術所を持たず出張のみで業務を行うという選択肢もあり、この場合はあはき法第9条の3に基づいて住所地の都道府県知事へ届け出ます。
医療機関で働く場合
医療機関での位置づけは、診療報酬の施設基準に定めがあります。運動器リハビリテーション料(Ⅱ)の施設基準では、当分の間、適切な運動器リハビリテーションに係る研修を修了した看護師、准看護師、あん摩マッサージ指圧師又は柔道整復師が専従の常勤職員として勤務している場合であって、運動器リハビリテーションの経験を有する医師の監督下に当該療法を実施する体制が確保されている場合に限り、理学療法士が勤務しているものとして届け出ることができるとされています。
これは施設基準上の届出の取り扱いであり、理学療法士と同じ業務ができるという意味ではありません。研修の修了と、医師の監督下という体制の確保が条件になっています。柔道整復師とあん摩マッサージ指圧師のどちらも対象に含まれており、この点は共通です。
介護保険サービスで働く場合
介護保険では、機能訓練指導員として働く道があります。指定通所介護では機能訓練指導員を1以上配置することとされ、同じ事業所の他の職務との兼務も認められています。
機能訓練指導員になれる7つの資格区分
対象となる資格は7区分で、柔道整復師とあん摩マッサージ指圧師はどちらも実務経験なしで該当します。これに対し、はり師・きゅう師は平成30年度の介護報酬改定で対象に加えられた際に、機能訓練指導員を配置している事業所で6か月以上機能訓練指導に従事した経験が要件とされました。
なお、介護老人保健施設には機能訓練指導員の配置の定めがなく、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士を入所者100人あたり1人以上(常勤換算)配置することとされています。介護分野で働く場合、施設の種類によって求人の出方が変わる理由のひとつです。
機能訓練指導員として働けるかどうかは、資格だけでなく施設の種類でも変わります。介護老人保健施設には機能訓練指導員の配置の定めがないため、同じ「介護施設の求人」でも募集される職種が違います。応募前に配置基準を確認しておくと、条件のミスマッチを防げます。
訪問して施術を行う場合
在宅で施術を行う働き方は、療養費の取り扱いの違いがそのまま求人の分布に表れています。
就業先別 求人件数の構成比
柔道整復師
あん摩マッサージ指圧師
※比率は上記の就業先区分の合計を100%として算出
医療キャリアナビ掲載求人データ(2026年時点)で見ると、あん摩マッサージ指圧師の求人2,706件のうち訪問マッサージが589件を占め、就業先の区分としては整・接骨院に次ぐ規模です。柔道整復師の求人3,737件では訪問マッサージが227件で、整・接骨院2,075件、デイケア・デイサービス759件に続く位置づけになります。
定期的・計画的な訪問が制度として想定されているかどうかが、この差の背景にあります。在宅の現場で長く関わる働き方を考えるなら、あん摩マッサージ指圧師のほうが選択肢は広いといえます。
参考:厚生労働省「令和6年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」 / 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」 / 厚生労働省「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準について」 / 厚生労働省「平成30年度介護報酬改定について」 / e-Gov法令検索「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」
あん摩マッサージ指圧師の求人を探すどちらを目指すか考えるとき

ここまで見てきた違いは、どちらが優れているかを示すものではありません。担える業務の範囲が違うので、自分が何に関わりたいかとどこで学べるかの2つで考えると整理しやすくなります。
扱いたい対象から考える
もっとも分かりやすい分かれ目は、急性の負傷に関わりたいのか、慢性的な症状や身体機能の維持に関わりたいのかという点です。
関心の方向から選ぶ
- 対象は骨折、脱臼、打撲、捻挫
- 応急手当として関わる場面がある
- 骨折・脱臼の患部への施術には医師の同意が必要
- 療養費の対象は筋麻痺や関節拘縮等
- 医師の同意書が前提になる
- 定期的・計画的に訪問して継続的に関わる働き方がある
柔道整復は骨折・脱臼・打撲・捻挫といった負傷が対象で、応急手当や医師の同意を前提とした施術など、発生してすぐの場面に関わる比重が大きくなります。あん摩マッサージ指圧は筋麻痺や関節拘縮等が療養費の対象とされており、状態が続いている方に継続して関わる場面が中心です。
スポーツ現場や外傷に関心があるなら柔道整復師、高齢者の在宅や機能の維持に関心があるならあん摩マッサージ指圧師、という見方が一つの目安になります。
学べる場所から考える
関心だけで決められないのが、進学できる学校の問題です。あん摩マッサージ指圧師の養成の門戸が限られていることは前述のとおりで、住んでいる地域から通える範囲に養成施設があるかどうかが、そのまま選択肢を左右します。
学校を調べるときの順番
- 自宅または勤務先から通える範囲に、それぞれの養成施設があるかを確認する
- 昼間部・夜間部の設置状況と、募集人数を確認する
- 臨床実習の時期と場所を確認し、生活との両立が可能かを見る
- 募集要項の納入金と、教育訓練給付の対象講座かどうかを確認する
一方の資格しか通える範囲に学校がない場合、実際の選択肢は一つに絞られます。関心の方向と通学の可否は、同時に確認しておくのが無難です。
両方の資格を取得する場合
2つの資格を両方持つことも可能です。ただし、それぞれ別の養成課程で3年以上学ぶ必要があるため、取得の順序や履修の免除がどう扱われるかで負担が変わります。
履修の免除は養成施設ごとに取り扱いが異なります。すでに一方の資格を持っている人がもう一方の課程に進む際、既修得科目をどこまで認めるかは学校の判断によるため、募集要項だけで判断せず、志望校に直接確認するのが確実です。
資格の優劣で判断しないこと
どちらが稼げるか、どちらが将来性があるかという比較は、根拠を示せる形にはなりません。医療キャリアナビ掲載求人データ(2026年時点)でも、正社員求人の月給中央値は柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師ともに265,000円で、資格の違いによる差は見られませんでした。
- 整・接骨院の月給中央値は271,500円で、2資格とも同じ水準
- デイケア・デイサービスは2資格とも250,000円
- 差は資格より就業先で生まれる
条件の差は資格そのものではなく、働く場所や地域、経験によって生まれます。資格を選ぶ段階では、優劣ではなく担える業務の範囲が違うという前提で考えるほうが、後の進路の検討がしやすくなります。
転職活動するなら?
混同されやすい他の職種

柔道整復師とあん摩マッサージ指圧師の違いを整理するうえで、隣接する職種との関係も確認しておくと、免許の境界がはっきりします。
4資格の基本情報の違い
| 根拠法 | 柔道整復師法(昭和45年法律第19号) |
|---|---|
| 免許を与える者 | 厚生労働大臣 |
| 医師の関与 | 脱臼又は骨折の患部への施術は医師の同意が必要(応急手当は除く) |
| その他 | 施術所を開設したときは10日以内に都道府県知事へ届出 |
| 根拠法 | あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律 |
|---|---|
| 免許を与える者 | 厚生労働大臣 |
| 医師の関与 | 療養費を受けるには医師の同意書又は診断書が必要 |
| その他 | 施術所の届出は10日以内。専ら出張のみで業務を行う場合は住所地の都道府県知事へ届出 |
| 根拠法 | あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律 |
|---|---|
| 免許を与える者 | 厚生労働大臣(あん摩マッサージ指圧師とは別の免許) |
| 医師の関与 | 療養費を受けるには医師の同意書又は診断書が必要 |
| その他 | はり師・きゅう師の養成施設の認定は都道府県知事が行う |
| 根拠法 | 理学療法士及び作業療法士法(昭和40年法律第137号) |
|---|---|
| 免許を与える者 | 厚生労働大臣 |
| 医師の関与 | 医師の指示の下に理学療法を行う |
| その他 | 名称独占(第17条により理学療法士でない者は紛らわしい名称を使えない) |
はり師・きゅう師
はり師ときゅう師は、あん摩マッサージ指圧師と同じあはき法に基づく資格ですが、免許は別です。あはき法第1条は、あん摩マッサージ指圧師免許、はり師免許、きゅう師免許をそれぞれ独立した免許として定めています。
したがって、はり師・きゅう師の免許であん摩・マッサージ・指圧を業として行うことはできません。鍼灸院でマッサージを受けられる場合、施術者があん摩マッサージ指圧師の免許も併せて持っているか、あるいは別の免許者が担当していることになります。
理学療法士
理学療法士は理学療法士及び作業療法士法(昭和40年法律第137号)に基づく資格で、同法第2条第3項は「厚生労働大臣の免許を受けて、理学療法士の名称を用いて、医師の指示の下に、理学療法を行なうことを業とする者」と定めています。
医師の指示が業務の前提になっている点が、柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師との最も大きな違いです。
同法第15条第2項には、理学療法士が病院・診療所において、または医師の具体的な指示を受けて理学療法として行うマッサージについては、あはき法第1条の規定を適用しないという定めがあります。免許の境界がどう調整されているかが分かる条文です。
整体師・カイロプラクターと呼ばれる業態
整体師やカイロプラクターと呼ばれる業態には、国家資格の制度がありません。名称の使用を制限する法律もないため、民間の講習を修了した方がこれらの名称を用いている場合があります。
あはき法第12条は、何人も同法第1条に掲げるものを除くほか医業類似行為を業としてはならないと定めており、柔道整復については柔道整復師法の定めによるとされています。ただし、個別の業態が違法かどうかは、実際に行われている行為の内容によって判断される事柄です。
名称の使い分けに注意すること
自分の免許で何ができるかを正確に説明することは、患者さんや利用者さんの誤解を防ぐことにつながります。
- 自分の免許の種類と、業として行える範囲を説明できるようにしておく
- 施術所の名称や広告は、あはき・柔整広告ガイドラインの範囲に収まっているかを確認する
- 療養費の対象になるかどうかを、施術の前に正確に伝える
- 他資格の名称や、紛らわしい肩書きを使わない
免許の範囲を超えた説明は、患者さんの費用負担や、施術者自身の行政処分にもつながりかねません。説明できる範囲で正確に伝えることが、結果的に信頼につながります。
参考:e-Gov法令検索「あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律」 / e-Gov法令検索「柔道整復師法」 / e-Gov法令検索「理学療法士及び作業療法士法」 / 厚生労働省「あん摩マッサージ指圧師、はり師及びきゅう師と無資格者との判別について」
まとめ
柔道整復師とあん摩マッサージ指圧師は、根拠となる法律が別々にあり、業務の対象も療養費の取り扱いも分かれています。柔道整復は骨折・脱臼・打撲・捻挫という負傷が対象で、受領委任という例外的な支払いの仕組みが認められています。あん摩マッサージ指圧は手技そのものが免許の対象で、療養費を受けるには医師の同意書が前提になります。
資格取得の入口にも差があります。修業年限はどちらも3年以上ですが、あん摩マッサージ指圧師はあはき法附則第19条により養成施設の新設が抑制されてきた経緯があり、国家試験の受験者数は柔道整復師の4分の1程度にとどまります。通える範囲に学校があるかどうかが、進路の現実的な条件になります。
働く場所では、施術所、医療機関、介護保険サービス、訪問という選択肢が重なる部分もあれば、訪問して施術する働き方のように制度の違いがそのまま求人の分布に表れる部分もあります。
どちらが有利かではなく、担える業務の範囲が違うという前提で、扱いたい対象と学べる場所の2つから検討してみてください。判断に迷うときは、都道府県の担当課や志望する養成施設に直接確認すると、条件がはっきりします。





