柔道整復師はなぜ柔道と付く?名前の由来と柔道経験の要否を解説
柔道整復師という資格名を見て、”柔道”と付いているんだろうと感じた方は少なくないはずです。骨折や脱臼の施術をする国家資格なのに、なぜ武道の名前が入っているのか、疑問に思うのは自然なことといえます。
結論からいえば、「柔道」が付いているのは施術の技術が柔術から受け継がれた歴史によるもので、柔道整復師になるために柔道経験は必要ありません。
この記事では、柔道整復師に柔道が付いている理由を歴史と法律の両面から整理し、柔道整復術が実際に何をする技術なのかを解説します。そのうえで、入学・国家試験・段位という3つの局面に分けて、柔道経験がどこまで不要なのかを公的な資料で確認できる範囲で確かめていきます。
お申し込みを受け付けました
以下からひな形と見本をダウンロードできます。
柔道整復師に「柔道」が付いている理由

柔道整復師の「柔道」は、施術で柔道の技を使うという意味ではありません。この名称には、技術の源流・公認までの経緯・法律上の呼び名という3つの背景があります。
柔術の「活法」が柔道整復のルーツだから
武術には、相手を制する「殺法」と、傷ついた人の心と身体を蘇生させる「活法」があります。柔道整復術は、このうち柔術の活法を基本とした医術です。
稽古では負傷がつきものだったため、骨折や脱臼を手当てする技術が活法として磨かれ、狭い師弟関係のなかで秘伝的に受け継がれてきました。相手を倒すための体系が競技としての柔道へ、傷を治すための体系が柔道整復へと分かれたと捉えると、名前と仕事内容のずれが理解しやすくなります。
明治以降、この活法に東洋や西洋の医学技術が織り込まれて発展したものが、現在の柔道整復術です。骨・関節・筋・腱・靭帯といった運動器の外傷に対し、手術をしない「非観血的療法」で施術を行います。
つまり「柔道」は施術の中身を指しているのではなく、技術がどこから来たのかを示す言葉だといえます。
明治期に柔道家が接骨術の公認を求めて動いたから
明治維新以降、日本の医療制度は西洋医学を基本とし、西洋医学を学んだ者だけを医師として認める仕組みに変わりました。長く親しまれてきたほねつぎの技術は、この時点で制度の外に置かれます。
明治44年には按摩術と鍼灸の営業取締規則が定められましたが、接骨術はそこに含まれませんでした。翌明治45年から柔道整骨を担う人々による復活運動が始まり、大正2年7月15日には「柔道接骨術公認期成会」が発足します。
この運動が実を結び、大正9年4月21日、内務省令によって「柔道整復術」という名称で公認されました。
公認までの年表
公認を求めて動いたのが柔道を修めた人たちであったことから、「柔道」を冠した名称が公式な呼び名として登場しました。ここが、現在の資格名の直接の出発点にあたります。
法律上の名称として「柔道整復」が定着したから
公認から50年を経た昭和45年4月14日、法律第19号として柔道整復師法が単行法で制定されました。按摩・鍼灸などと同じ法律のなかに置かれていた柔道整復が、独立した法律を持つことになった転機です。
柔道整復師法第2条は、柔道整復師を「厚生労働大臣の免許を受けて、柔道整復を業とする者」と定めています。条文そのものに「柔道整復」という語が使われているため、名称を変える余地がありません。
昭和63年5月31日には法律第72号による改正が公布され、都道府県知事試験から厚生大臣試験へ、知事免許から厚生大臣免許へと移行しました。全国共通の国家資格としての形が固まったのも、この改正です。
なお、「接骨院」「整骨院」「ほねつぎ」は施術所の呼び名であり、法律上の職名はあくまで「柔道整復師」です。
参考:公益社団法人日本柔道整復師会「日本柔道整復師会とは」 / 公益社団法人大阪府柔道整復師会「歴史・沿革」 / 公益社団法人東京都柔道整復師会「柔道整復師とは?」 / 公益社団法人静岡県柔道整復師会「柔道整復師とは」 / e-Gov法令検索「柔道整復師法」
30秒でかんたん登録!
無料で応募書類テンプレをプレゼント
柔道整復術とは何をする技術か

活法から受け継がれた技術は、現在の柔道整復術のなかに整復法・固定法・後療法という3つの柱として残っています。対象となるのは骨折・脱臼・打撲・捻挫・挫傷といった外傷性の損傷で、自然治癒能力を最大限に引き出すことを狙いとしています。
手術や薬に頼らないのは、方針としてそうしているだけではありません。柔道整復師法第16条が、外科手術を行うこと、薬品を投与すること、その指示をすることを禁じているためです。
柔道整復術の施術の流れ
整復法
整復法は、骨折や脱臼でずれてしまった骨や関節を、手技で元の状態に戻す施術です。手術によらず術者の手の感覚で位置を戻すところに、柔道整復術の特徴があります。
ただし、脱臼または骨折の患部への施術には医師の同意が必要です。柔道整復師法第17条が同意のない施術を禁じており、違反した場合は同法第30条で30万円以下の罰金と定められています。応急手当をする場合だけが例外です。
打撲や捻挫には同意の規定がないため、実務では負傷が骨折・脱臼にあたるかどうかの見極めが重要になります。医療機関と連携しながら判断する場面も少なくありません。
柔道整復師の求人を探す固定法
固定法は、整復した患部が動かないように保持し、回復を図る施術です。金属副子やギプスなどの副子、包帯を損傷に合わせて使い分けます。
固定の狙いは、患部を安静に保って治癒の過程を妨げないことにあります。強すぎれば血行や関節の動きを損ない、弱すぎれば整復した位置がずれてしまうため、部位や損傷の程度に応じた加減が求められます。
包帯や副子の扱いは養成校の実技で繰り返し練習する内容であり、柔道整復師の基本技術のひとつに位置づけられています。
固定は、強さの加減を言葉で説明しにくい技術です。入学前に予習しておく必要はなく、実技の授業で手を動かしながら覚えていくのが基本になります。学校見学に行く機会があれば、実習室の広さや器具の数もあわせて見ておくと、実技の充実度が判断しやすくなります。
後療法
後療法は、整復と固定のあとに患部の機能回復を早めるために行う施術で、手技療法・物理療法・運動療法の3つで構成されます。
外傷は骨がつけば終わりではなく、固定していた期間に落ちた筋力や関節の動きを戻す過程が欠かせません。自然治癒能力を最大限に発揮させるという柔道整復術の考え方が、最もよく表れる部分だといえます。
なお、これらの施術は国家資格を前提とした行為であり、民間資格である整体師が行える範囲とは制度上はっきり分かれています。
参考:公益社団法人全国柔道整復学校協会「柔道整復師について」 / 公益社団法人静岡県柔道整復師会「柔道整復師とは」 / e-Gov法令検索「柔道整復師法」
柔道整復師になるのに柔道経験は必要か

柔道整復師を目指すうえで、柔道の経験は必要ありません。とはいえ「経験がなくても大丈夫」の一言では、どこまでが不要なのかが分からないままです。入学・国家試験・段位の3つの局面に分けて確認します。
30秒でかんたん登録!
無料で応募書類テンプレをプレゼント
入学時に柔道経験は問われない
柔道整復師の受験資格は、大学に入学できる者が3年以上、文部科学大臣の指定した学校または都道府県知事の指定した養成施設で必要な知識・技能を修得することと定められています。柔道の経験や段位を条件とする規定はありません。
柔道整復師学校養成施設指定規則も、入学資格を「大学に入学することができる者」、修業年限を3年以上とするだけです。教育内容を定めた別表第一にも「柔道」という教育内容は掲げられていません。
一方で全国柔道整復学校協会は、柔道はカリキュラムのなかで必修としつつ、入学して初めて体験する人も少なくないと説明しています。国が全国共通で決めているのは修業年限と教育内容の単位数までで、柔道をどの授業でどれだけ扱うかは学校ごとに異なります。柔道の扱いが気になる場合は、志望校の説明会などで直接確認するのが確実です。
国家試験に柔道の実技はない
厚生労働省が公示する柔道整復師国家試験の試験科目は、解剖学や生理学、整形外科学などの11科目です。柔道は試験科目に含まれていません。
試験方法についても「筆記試験により行う」と明記されており、実技試験はありません。柔道の技や受け身の出来で合否が決まる場面は、制度上存在しないということです。
科目名の「柔道整復理論」を柔道の理論と受け取ってしまう方もいますが、これは整復・固定・後療といった柔道整復術そのものの理論を指します。ちなみに試験地は北海道・宮城県・東京都・愛知県・大阪府・広島県・香川県・福岡県・沖縄県の9か所、受験手数料は23,900円です。
資格取得に段位は必要ない
免許は柔道整復師国家試験に合格した者に対して厚生労働大臣が与えると、柔道整復師法第3条が定めています。免許を与えないことがある欠格事由を並べた第4条にも、段位に関する記載はありません。
初段を持っていないと免許が取れないという決まりはなく、免許は国家試験の合格と柔道整復師名簿への登録によって成立します。
就職の場面でも、段位の有無を資格要件とする制度上の定めはありません。スポーツ現場での勤務を希望する場合に武道の経験が話題になることはありますが、それは資格を取れるかどうかとは別の話です。養成課程の柔道は、礼節や身体の使い方を学ぶ機会として置かれているものと捉えておくと分かりやすいです。
参考:厚生労働省「柔道整復師国家試験の施行」 / e-Gov法令検索「柔道整復師学校養成施設指定規則」 / e-Gov法令検索「柔道整復師法」 / 公益社団法人全国柔道整復学校協会「柔道整復師について」
まとめ
柔道整復師に「柔道」が付いているのは、施術で柔道を使うからではなく、技術の源流が柔術の活法にあるためです。明治末から大正にかけて柔道家たちが公認を求めて動き、大正9年に「柔道整復術」という名称で公認されたことで、この呼び名が定着しました。昭和45年の柔道整復師法によって、法律上の職名としても固定されています。
そして、柔道整復師になるのに柔道経験は必要ありません。入学の要件に柔道はなく、国家試験は筆記のみで実技はなく、免許取得に段位も求められません。養成校では柔道が必修とされていますが、扱いは学校ごとに異なるため、気になる場合は志望校に確認しておくと安心です。
まずは学校の情報を集めるところから、始めてみてください。


