トリアージタグとは?看護師が知っておくべき完全ガイド

医療現場で使用されるトリアージタグ(トリアージタッグ)は、緊急時における患者の状態を迅速に識別し、適切な医療を提供するための重要なツールです。
本記事では、看護師として必要不可欠なトリアージタグの知識と実践的な使用方法を詳しく解説します。
トリアージタグの基本知識

トリアージタグの定義と目的
トリアージタグは、災害や救急医療の現場で患者さんの状態を迅速に判断し、適切な治療優先順位を決定するためのシステムです。
限られた医療資源を最大限に活用し、可能な限り多くの命を救うことを目的としています。
このシステムは、19世紀初頭のナポレオン戦争時にフランス軍の軍医によって考案されたと言われています。
戦場での負傷者治療を効率化するために生まれたこの考え方は、現代の医療現場に至るまで、その本質的な重要性を失っていません。
トリアージタグが果たす4つの重要な役割
治療優先順位の明確化
医療スタッフ全員が同じ基準で患者さんの状態を理解し、適切な順序で治療を行うことができます。
医療リソースの効率的な配分
限られた人員、設備、医療材料を最適に配分することで、より多くの患者さんに適切な医療を提供できます。
チーム間の円滑なコミュニケーション
統一された基準により、医師、看護師、その他の医療スタッフ間でスムーズな情報共有が可能になります。
救命率の向上
トリアージタグの導入により救命率が約35%向上したというデータもあります。
4種類のトリアージタグ

トリアージタグは4つの色で分類され、それぞれが患者さんの状態と必要な対応を表しています。
この色分けシステムにより、医療スタッフは一目で患者さんの状態を理解することができます。
赤タグ(最優先/重症)
重度の出血や呼吸困難、重篤なショック状態など、即座の医療介入が必要なケースが該当します。
これらの患者さんには、できる限り早期に医療処置を開始する必要があります。
黄タグ(準緊急/中等症)
骨折や中度の熱傷など、適切な処置が必要なケースが含まれます。
定期的な観察と状態の変化への迅速な対応が重要です。
緑タグ(低緊急/軽症)
擦り傷や軽度の捻挫など、深刻な症状のない場合が該当します。
これらの患者さんには、より緊急性の高い患者さんの治療が一段落してから対応します。
黒タグ(死亡確認済み)
この判断は必ず医師によって行われ、慎重な確認が必要です。
トリアージタグの実践的な使用方法

トリアージタグを効果的に活用するためには、システマティックな評価と適切な判断が必要です。
以下が実践的な使用手順です。
初期評価
患者さんに接触した際は、まず以下の項目を迅速に確認します。
これらの評価は30秒以内に完了することが望ましく、経験を積むことで正確かつ迅速な判断が可能になります。
バイタルサインの確認と記録
トリアージタグには、確認したバイタルサインを必ず記録します。
これにより、患者さんの状態の経時的な変化を追跡することができ、後続の医療スタッフへの重要な情報となります。
継続的な再評価の実施
患者さんの状態は刻々と変化する可能性があるため、定期的な再評価が不可欠です。
特に以下の反応や変化が見られた場合は要注意です。
トリアージタッグ使用時の注意点

誤診
トリアージタグの使用において、誤診は患者さんの生命に関わる重大な問題となり得ます。
誤診を防ぐためには、定められた手順を確実に実施することが重要です。
特に緊急時は、焦りから手順を省略してしまいがちですが、基本に忠実な評価を心がける必要があります。
また、複数の目で確認することで、誤診のリスクを大幅に減らすことができます。
倫理的側面への配慮
トリアージは、限られた医療資源を最大限に活用するためのシステムですが、その過程では様々な倫理的な判断が求められます。
全ての患者さんに対して、年齢、性別、社会的地位などに関係なく、公平な評価と治療機会を提供することが重要です。
また、緊急時であっても患者さんの人権と尊厳を守ることは極めて重要です。
まとめ
トリアージタッグは、緊急事態における患者さんの重症度を迅速に判断し、適切な治療を行うための重要なツールです。
治療の優先順位の明確化、医療リソースの効率的な配分、チーム間の円滑なコミュニケーション、救命率の向上などトリアージタグが果たす役割は非常に重要です。
誤診を防ぐための方法や患者のプライバシー保護、倫理的側面についても考慮する必要があるため、看護師は常日頃からいざという状況に対応できるよう、知識の復習や訓練をしておくと良いでしょう。