訪問リハビリの将来性は?需要データと介護報酬改定から見るリスクと生き残る条件
「訪問リハビリは需要があるって聞くけど、この先も給料や雇用は大丈夫?」と気になったことはないですか?
訪問リハビリの将来性は、利用者数の伸びだけでなく、介護報酬改定でどこにお金がつき、どこが減算されるかで大きく変わります。
この記事では、公的データで見る需要の見通し、2024年度・2026年度の介護報酬改定と2027年度改定の検討状況、訪問看護ステーション所属と訪問リハビリ事業所所属で異なるリスク、これから求められるセラピストの条件を紹介します。
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データで見る訪問リハビリの需要と今後の見通し

訪問リハビリの需要は、事業所数・利用者数ともに右肩上がりです。 ただし「訪問リハビリ」として働く場所には、病院・診療所や介護老人保健施設が運営する訪問リハビリテーション事業所と、訪問看護ステーションの2種類があり、統計も別々に集計されています。
訪問リハビリ事業所数と利用者数の推移
訪問リハビリテーション事業所は、病院・診療所、介護老人保健施設、介護医療院しか開設できません。 そのため、厚生労働省の「介護サービス施設・事業所調査」には訪問リハビリテーション事業所の数が載っていません。
事業所数は5年で約900か所増え、受給者数は約1.28倍になりました。 事業所の内訳は、病院・診療所が4,198か所、介護老人保健施設が1,452か所で、病院・診療所が全体の7割以上を占めます。
理学療法士の求人を探す訪問看護ステーションのリハビリ職員数の推移
訪問看護ステーションは2024年10月時点で18,042か所あり、2020年の12,393か所から約1.46倍に増えました。 事業所が増えるのに合わせて、ステーションで働くリハビリ職も増え続けています。
| 職種 | 2020年 | 2024年 | 増え方 |
|---|---|---|---|
| 理学療法士 | 21,093人 | 28,666人 | 1.36倍 |
| 作業療法士 | 9,043人 | 12,308人 | 1.36倍 |
| 言語聴覚士 | 2,678人 | 3,527人 | 1.32倍 |
| 看護師 | 81,632人 | 128,935人 | 1.58倍 |
2024年には3職種あわせて4万人以上が訪問看護ステーションで働いており、4年でいずれも3割以上増えました。 ただし、看護師の増え方はリハビリ職を上回っています。
ステーションのなかでリハビリ職の比重が下がる方向に動いている点は、後の章で紹介する介護報酬の動きともつながっています。
- 訪問リハビリはPT求人の約3割(1,983件)
- OT・STも訪問リハビリが最多(1,727件・939件)
- 月給中央値は3職種とも30万円(病院は25万円台)
2040年に向けた在宅医療ニーズの見通し
2040年ごろには高齢者数がピークを迎え、医療と介護の両方を必要とする85歳以上の高齢者が増えると見込まれています。
厚生労働省の推計では、2020年から2040年にかけて、訪問診療の需要は高齢になるほど大きく伸びる見込みです。
自宅で療養する人が増えれば、訪問リハビリの対象となる人も増えると考えられます。 「需要がなくなる」という意味での将来性の心配は、少なくとも2040年ごろまでは小さいといえます。
需要があるのは分かったけど、給料や働き方はどうなるの?
需要があっても、報酬の仕組みしだいで事業所の収益やセラピストの給与は変わります。 理学療法士全体の需給や将来性については、以下の記事で紹介しています。
参考:厚生労働省「令和6(2024)年 介護サービス施設・事業所調査の概況」 / 厚生労働省 社会保障審議会介護給付費分科会(第259回)資料4「訪問リハビリテーション」
将来性を左右する介護報酬改定の動向

訪問リハビリの収益は、介護報酬の単位数と加算で決まります。 直近では、2024年度改定で訪問看護ステーションのリハビリに減算が入り、2026年度の期中改定で訪問看護・訪問リハビリの両方に処遇改善加算が新設されました。
理学療法士等の訪問回数超過による減算
2024年度(令和6年度)の介護報酬改定で、訪問看護ステーションの理学療法士・作業療法士・言語聴覚士による訪問に新しい減算ができました。 次のどちらかに当てはまる事業所は、リハビリ職の訪問1回につき8単位が減算されます。
| 前年度の訪問回数 | 3つの加算のいずれかを算定 | 3つの加算をどれも算定なし |
|---|---|---|
| 看護職員 ≧ リハビリ職 | 減算なし | 8単位減算 |
| 看護職員 < リハビリ職 | 8単位減算 | 8単位減算 |
要介護の利用者さんへの訪問(20分)は1回294単位なので、8単位は3%弱にあたります。 介護予防訪問看護では、この減算に当てはまる事業所が利用開始から12か月を超えた利用者さんを訪問すると、さらに1回15単位が減算されます。
減算の背景には、訪問看護ステーションの訪問のうちリハビリ職の訪問が占める割合の高さがあります。 訪問看護ステーションの訪問単位数(要介護)のうち、理学療法士等の訪問が占める割合は2015年度の29.8%から2024年度は34.1%に上がり、要支援では46.2%です。
訪問看護・訪問リハビリへの処遇改善加算の新設
2026年度(令和8年度)は、3年に1度の定期改定を待たずに期中改定が行われ、2026年6月1日から新しい単位数が適用されています。
このとき、それまで処遇改善加算の対象外だった訪問看護と訪問リハビリテーションにも、介護職員等処遇改善加算が新設されました。
- 適用開始
- 2026年6月1日
- 算定の要件
- キャリアパス要件Ⅰ・Ⅱと職場環境等要件、または令和8年度の特例要件
- 参考
- 通所リハビリの加算率は7.0〜11.1%
あわせて、加算の対象が「介護職員」から「介護従事者」に広がりました。 ただし、新設分の加算率は、もともと対象だったサービスより低めに設定されています。
加算は事業所に入り、誰にどう配分するかは事業所が決めるため、給与にどれだけ反映されるかは職場ごとに違います。
処遇改善加算を算定するには、事業所が届出をし、キャリアパス要件などか令和8年度の特例要件のどちらかを満たす必要があります。転職先を比べるときは、加算を取得しているか、リハビリ職にも配分しているかを面接で確認しておくと安心です。
訪問リハビリで働くセラピストの年収の目安は、以下の記事で紹介しています。
2027年度改定で検討される評価の見直し
次の定期改定は2027年度(令和9年度)です。 2026年6月の社会保障審議会介護給付費分科会では、訪問看護と訪問リハビリそれぞれの「現状と課題」と「論点」が示され、議論が始まっています。
- 2024年6月訪問看護ステーションのリハビリ職の訪問に8単位減算を新設決定
- 2026年6月期中改定で訪問看護・訪問リハビリに処遇改善加算を新設決定
- 2026年6月29日介護給付費分科会で訪問看護・訪問リハビリの論点を提示議論開始
- 2027年度令和9年度介護報酬改定(単位数・要件は未定)検討中
訪問看護の資料では、「リハビリテーションの提供が主体の事業所も一定数あると推察される」と書かれ、緊急時の対応や関係機関との連携を担う事業所をどう評価するかが論点になっています。
訪問リハビリの資料では、サービスの提供内容と、算定率の低い加算・高い加算の扱い(報酬体系の簡素化)が論点として挙がっています。 いずれも2026年10月時点では検討中の段階で、単位数や要件はまだ決まっていません。
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参考:厚生労働省「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の一部を改正する告示(令和8年厚生労働省告示第87号)」 / 厚生労働省 社会保障審議会介護給付費分科会(第259回)資料3「訪問看護」
訪問看護ステーションと訪問リハビリ事業所で異なる将来性

同じ「訪問リハビリ」の仕事でも、所属が訪問看護ステーションか訪問リハビリテーション事業所かで、受ける制度上のリスクは違います。
2026年度の改定で処遇改善加算は両方に新設されましたが、減算と2027年度改定の論点は訪問看護ステーション側に集中しています。
| 項目 | 訪問看護ステーション | 訪問リハビリ事業所 |
|---|---|---|
| 開設できる主体 | 看護職員を常勤換算2.5人以上配置した事業所 | 病院・診療所・介護老人保健施設・介護医療院のみ |
| 2024年度の減算 | あり(条件に当てはまると1回8単位) | なし |
| 2026年6月の処遇改善加算 | 新設 | 新設 |
| 2027年度改定の主な論点 | リハビリ主体の事業所と緊急時対応を担う事業所の評価 | 提供内容の見直しと加算の簡素化 |
| 将来性を左右する要素 | 事業所の看護体制と加算の算定状況 | 母体の経営と訪問部門の人員体制 |
減算の影響を受ける訪問看護ステーション所属
訪問看護ステーションのリハビリ職にとって、将来性を左右するのは事業所の看護体制です。 看護職員の訪問回数がリハビリ職以上で、緊急時訪問看護加算・特別管理加算・看護体制強化加算のいずれかを算定しているステーションなら、2024年度の減算はかかりません。
一方、リハビリ職の訪問が中心のステーションは、減算で1回あたりの報酬が下がっています。 2027年度改定に向けた資料でも「リハビリの提供が主体の事業所」が現状と課題に挙がっており、看護体制の弱い事業所ほど評価の見直しの影響を受けやすい状況です。
- 看護職員とリハビリ職の訪問回数のバランス
- 緊急時訪問看護加算・特別管理加算・看護体制強化加算の算定状況
- 処遇改善加算の取得とリハビリ職への配分方針
訪問看護ステーションへの転職を考えるなら、求人票の給与だけでなく、上の3点を面接で確認しておくのがおすすめです。
所属によって気にするポイントが全然違うんだね
減算がなく処遇改善加算も新設された訪問リハビリ事業所所属
訪問リハビリテーション事業所は、2024年度の減算の対象外です。 2026年6月からは処遇改善加算も算定できるようになり、制度面では追い風の要素が多い所属です。
ただし、運営母体は病院・診療所や介護老人保健施設なので、給与体系は母体の病院や施設の規程に合わせることが多くなります。
処遇改善加算の配分も事業所の判断で、すでに加算の対象だったサービスの調査では、加算を配分した職員の範囲にPT・OT・ST又は機能訓練指導員を含む事業所は34.3%でした(看護職員は51.9%)。
訪問リハビリ事業所は、医師がリハビリ計画の作成にかかわる仕組みのため、母体の病院と連携しやすいのが強みです。転職先を比べるときは、母体の経営状況と、訪問部門の人員体制もあわせて確認しておくと判断しやすくなります。
参考:厚生労働省「令和6年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要」
訪問リハビリの将来性に対する不安要素

需要の伸びと報酬改定の追い風がある一方で、訪問リハビリには事業所の経営や地域差など、個人ではコントロールしにくい不安要素もあります。
事業所間の競争激化と経営の不安定さ
訪問リハビリテーション事業所1か所が1か月に担当する要介護の利用者さんは、2012年以降、20〜22人前後でほぼ横ばいです。 利用者さんが増えた分を、新しく増えた事業所で分け合っている形で、1事業所あたりのパイは大きくなっていません。
訪問リハビリの収支差率は、直近では全サービスの平均を上回っています。 ただ、2021年度は赤字で、年度による振れ幅が大きいのが特徴です。
訪問看護ステーションでも、事業所数が増える一方で、従業員の確保難や管理者の退職などを理由とした廃止・休止が増えています。
地域による需要の偏り
訪問リハビリの事業所数は、地域によって大きな差があります。 2025年4月審査分で高齢者人口10万人あたりの事業所数を見ると、多い県と少ない県で4倍前後の開きがあります。
訪問診療の需要も、2040年に向けて多くの市区町村で増える見込みですが、人口5万人未満の一部の市区町村などはその例外とされています。
需要が伸びない地域に事業所が集まると、利用者さんの確保が難しくなる可能性があります。 転職先を選ぶときは、事業所の訪問エリアの人口の動きと、近くに競合の事業所がどれくらいあるかも判断材料になります。
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AIによる記録・報告業務の自動化
音声入力やAIによる記録の下書き作成、ケアプランデータ連携システムでの情報共有など、記録・報告業務のデジタル化は進んでいます。 2026年度の処遇改善加算でも、訪問サービスの特例要件にケアプランデータ連携システムへの加入が入りました。
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置き換わりやすい業務記録の清書、計画書・報告書の定型部分、事業所間の書類のやり取り
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置き換わりにくい業務自宅での動作評価、環境調整の提案、家族への介助指導、リスクの判断
訪問リハビリの中心は、利用者さんの自宅で状態を見極め、その場で判断する仕事です。 AIで減るのは移動の合間の事務作業で、訪問の仕事そのものがなくなる可能性は低いと考えられます。
むしろ記録の時間が減れば、1日の訪問件数を増やしたり、利用者さんとかかわる時間を確保したりしやすくなります。
経営や地域のことって、自分だけじゃどうにもできないよね
訪問リハビリで実際に働くセラピストがつらいと感じやすい場面は、以下の記事で紹介しています。
参考:厚生労働省「新たな地域医療構想を通じて目指すべき医療について」
これから訪問リハビリで生き残るセラピストの条件

報酬改定と需要の動きから見ると、これからの訪問リハビリで評価されやすいのは「医療ニーズに対応でき、看護師と組んで動け、成果を数字で示せる」セラピストです。
医療依存度の高い利用者への対応力
訪問看護では、褥瘡の予防、緊急時の対応、褥瘡以外の創傷処置などの医療処置が増えており、ターミナルケア加算や緊急時訪問看護加算の届出も増えています。 在宅で医療ニーズの高い利用者さんが増えるなか、リハビリ職にもリスク管理をしながら介入できる力が求められます。
- バイタルサインの変化から中止・継続を判断する力
- 酸素療法や人工呼吸器を使う利用者さんへの対応
- 褥瘡予防のポジショニングや福祉用具の調整
- 終末期の利用者さんの苦痛を和らげる動作支援
病院の急性期や回復期で積んだリスク管理の経験は、こうした場面でそのまま生かせます。
病院での経験は、訪問でもちゃんと武器になるよ!
看護師との協業を前提とした動き方
前述のとおり、訪問看護ステーションでは看護師の増え方がリハビリ職を上回り、2024年度改定でも看護職員の訪問とのバランスが減算の条件になりました。
訪問看護ステーションで働く場合、リハビリ職だけで完結する働き方より、看護師と情報を共有しながら一緒に利用者さんを支える働き方が求められます。
- 訪問で気づいた皮膚・呼吸・食事量の変化を看護師にすぐ伝える
- 看護師の訪問計画とリハビリの目標をすり合わせる
- 緊急時の連絡ルートと自分の役割を事前に確認しておく
訪問リハビリ事業所で働く場合も、訪問看護を併用している利用者さんでは、外部の訪問看護師との連携が欠かせません。
リハビリの成果を示す記録と報告
2027年度改定の議論では、訪問リハビリの「提供内容」そのものが論点になっています。 分科会の資料では、リハビリ会議での達成度の確認や、計画書の目標の立て方に課題があることが示されました。
漫然と続くリハビリではなく、ADLやIADLの目標を立て、達成度を数字で示して卒業や次のサービスにつなげるセラピストは、どの所属でも評価されやすくなります。
評価尺度を使った記録や、ケアマネジャー・家族への分かりやすい報告は、今から意識して身につけておくと強みになります。
まとめ
訪問リハビリは、2040年ごろまで在宅医療の需要が増え続ける見込みで、需要の面では将来性があります。 一方で、収益や働き方は介護報酬改定の影響を強く受け、所属によって受けるリスクが異なります。
この記事のポイント
- 事業所数・利用者数とも増加、2040年ごろまで需要増の見込み
- 訪看ステーションのリハ訪問は2024年度から減算あり
- 2026年6月から訪看・訪リハとも処遇改善加算を新設
- 2027年度改定は訪看のリハ主体事業所などが検討中の論点
- 医療対応力・看護師との協業・成果の記録が強みになる
訪問リハビリへの転職を考えるときは、求人票の給与だけでなく、所属の種類、看護体制、処遇改善加算の配分方針まで確認しておきましょう。
自分だけで調べにくい事業所の内情は、転職エージェントに相談すると、求人票に載っていない体制や加算の取得状況まで確認してもらえます。


