小児薬物療法認定薬剤師になるには?要件と取得までの期間・費用を解説
子どもの処方箋を受けるたびに、「用量や飲ませ方をもっと自信を持って説明したい」と感じたことはありませんか?
小児薬物療法認定薬剤師になるには、実務経験3年以上で研修会を受講し、試験とレポートに合格する必要があります。
この記事では、日本薬剤師研修センターの公式情報をもとに、認定要件と手続きの流れ、最短で取得できる期間と費用の合計、取得後に認定を維持できるかの判断ポイントを紹介します。
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小児薬物療法認定薬剤師とは?

小児薬物療法認定薬剤師は、子どもの薬物療法について一定以上の知識と適性があると認められた薬剤師です。 病院だけでなく保険薬局の薬剤師も取得でき、3年ごとの更新で認定を維持していく仕組みになっています。
日本薬剤師研修センターが認定する資格
小児薬物療法認定薬剤師制度は、日本小児臨床薬理学会と日本薬剤師研修センターが平成24年度に創設した制度です。 認定証も、両団体の連名で発行されます。
認定を受けた薬剤師には、次の2つの役割が期待されています。
- 医薬品の専門家として、医療チームの一員で小児科領域の薬物治療に参画する
- 患児とその保護者、学童に対して、医薬品に関する指導・助言・教育をする
有効な認定者は全国で1,127名(2026年9月30日時点)で、薬剤師全体から見るとまだ少数です。 認定薬剤師と専門薬剤師の違いなど、制度の分類は以下の記事で紹介しています。
認定の有効期間と更新の必要性
小児薬物療法認定薬剤師は3年ごとの更新制で、更新しなかった場合は認定を失います。 特に最初の更新では、小児への薬学的ケアの実績報告が毎年求められるため、取得後も小児医療に関わり続けられるかが大切です。
取って終わりじゃなく、3年ごとの更新まで考えておく資格なんだね
参考:日本薬剤師研修センター「小児薬物療法認定薬剤師制度とは」 / 日本薬剤師研修センター「小児薬物療法認定薬剤師の認定者名簿」
小児薬物療法認定薬剤師になるための要件

認定の要件は、「小児薬物療法研修会を修了して試験に合格すること」と「日本小児臨床薬理学会の学術集会に参加してレポートに合格すること」の2つです。 研修会を受講するには、実務経験などの受講資格も満たしている必要があります。
実務経験3年以上という受講資格
研修会に申し込めるのは、申込み時点で保険薬局または病院・診療所での実務経験が3年以上あり、現にそこで勤務している薬剤師です。 実務経験は薬剤師名簿の登録日以降で数えるため、新卒の場合は早くても入職4年目の申込みになります。
パートや非常勤でも受講資格は満たせます。 勤務時間の数え方は次のとおりです。
| 実務経験3年以上 | 1日8時間・週5日(週40時間)勤務の3年分に相当する時間を満たせばよい |
|---|---|
| 現に勤務している | 週3日以上かつ週20時間以上に相当する時間で勤務 |
| 経験に含まれないもの | 大学・大学院在学中の実習やアルバイト |
あわせて、2026年度の募集では「認定取得後、最低3年以上は病院・保険薬局等で小児医療に関わる薬剤師実務に従事する見込みがあること」も応募要件に入っています。
パート勤務でも時間を満たせば受講できるのは心強いね
小児薬物療法研修会の修了
研修会はe-ラーニング(オンデマンド配信)のみで、集合研修やDVDでの受講はありません。 講義動画の中に表示されるキーワードを報告して受講を確認し、キーワードの正答率が100%であることが試験の受験資格になります。
なお、この研修会では研修認定薬剤師制度の単位は付与されません。 研修認定薬剤師の更新を控えている場合は、別に単位を確保しておきましょう。
認定試験の合格
試験は筆記試験で、年1回、通例は東京の会場に集まって受験します。 受講した年度の試験を受けなかった場合や不合格だった場合は、翌年の試験に限り有料で再受験できます。
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日本小児臨床薬理学会学術集会への参加とレポート提出
研修会の開始以降、認定試験に合格した年の12月31日までに日本小児臨床薬理学会の学術集会に1回参加し、参加したいずれか1つのセッションについてレポートを提出します。 レポートは評価を受け、合格する必要があります。
以前は、登録病院での1日の小児関連実務研修が認定要件でした。 2022年4月の実施要領改正で、この実務研修は学術集会参加によるレポートに置き換わっています。 古い情報を見て病院実習先を探す必要はありません。
参考:日本薬剤師研修センター「小児薬物療法認定薬剤師になるには」 / 日本薬剤師研修センター「小児薬物療法認定薬剤師制度に関するQ&A」
研修会の受講から認定までの流れ

研修会の申込みから認定申請まで、手続きはすべて「薬剤師研修・認定電子システム(PECS)」で行います。 日程や金額は年度ごとに変わるため、以下は2026年度の研修会の内容です。
e-ラーニングの形式と時間数
2026年度の講義は36コマで、制度の案内では全40時間程度(原則1コマ60分)とされています。
講義は病態と治療だけでなく、小児特有の調剤や服薬指導、小児用市販薬の選び方まで幅広く扱います。 スマートフォンやタブレットでの再生は保証されていないため、通信環境の整ったパソコンで受講するのが無難です。
受講料と申込みの時期
受講料は55,000円(税込、受講年度の受験料を含む)です。 研修センター側の事情で中止になった場合を除き、支払い後の返金はありません。
定員は300名で、申込みは先着順です。 2026年度は5月1日〜31日の受付予定でしたが、定員に達したため5月15日で締め切られました。
キャンセル待ちや追加募集はありません。次年度の詳細は研修会のページで案内されるため、春先から確認しておきましょう。
先着順で半月で埋まるなら、申込開始日を逃せないね
認定試験の時期と形式
2026年度の受講者が受ける試験は、2027年5月頃に東京都内で実施される予定です。 合否はメールで通知され、このメールが「認定試験結果通知書」になります。 合格通知の有効期間は送信日から1年なので、消さずに保存しておきましょう。
再受験する場合の受験料は11,000円です。 再受験できるのは翌年の試験だけなので、2年続けて受験できないと研修会の受講からやり直しになります。
薬剤師の求人を探す新規認定の申請手続き
試験に合格し、学術集会のレポートで合格評価を受けたら、PECSから新規認定を申請します。
- 学術集会に参加し、セッションのレポートを作成する
- 合格した年の12月31日までにPECSでレポートを提出する
- 評価結果(数か月かかる場合あり)を確認する
- 合格通知の送信日から1年以内にPECSで認定を申請し、審査料を納める
レポートの提出期限は延長されず、評価が不合格の場合は期間内であれば別のテーマで出し直せます。 認定申請の審査料は受講料とは別に22,000円かかり、申請の猶予はありません。
参考:日本薬剤師研修センター「小児薬物療法研修会」 / 日本薬剤師研修センター「小児薬物療法認定薬剤師制度 実施要領」
取得までにかかる期間と費用

試験と学術集会がどちらも年1回のため、要件を満たす順番によって取得時期が変わります。 2026年度の日程と料金で計算すると、最短の期間と最低限の費用は次のとおりです。
最短で取得できる期間
研修会の申込みは5月、試験は翌年5月頃なので、申込みから試験までが約1年です。 その後、レポートの評価と認定申請を経るため、認定されるのはさらに数か月以上先になります。
受講1年目の11月の学術集会に参加しないと、残るのは試験に合格した年の11月の学術集会だけです。 この場合、学術集会からレポートの提出期限(12月31日)まで2か月もありません。
試験に1回で合格できなかった場合は、全体がさらに1年後ろにずれます。
費用の合計
最低限かかる費用は、受講料・学術集会の参加費・認定審査料の3つです。
| 研修会の受講料受講年度の受験料を含む | 55,000円 |
|---|---|
| 学術集会の参加費第53回・非会員(時期と抄録集の有無で変動) | 14,000〜20,000円 |
| 認定審査料(新規) | 22,000円 |
| 合計 | 91,000〜97,000円 |
2026年の第53回学術集会は鎌倉芸術館での現地開催のみで、ライブ配信やオンデマンド配信はありません。 遠方から参加する場合は、交通費や宿泊費も予算に入れておきましょう。
研修費の補助がある職場なら負担を抑えられますが、求人票で補助を明記している職場は多くありません。
- 掲載中の薬剤師求人は1,450件
- 「研修補助あり」の求人は31件(約2%)
- 調剤薬局の求人が約8割(1,124件)
並行して進められる手続き
e-ラーニングの受講期間中にも、次のことを進めておくと試験後に慌てずに済みます。
- 受講1年目の11月に学術集会へ参加し、レポートの下書きを作っておく
- 学術集会の参加登録は早期の受付期間内に済ませる(参加費が安い)
- 小児の服薬指導で工夫した点を、日頃から薬歴に具体的に残しておく
- 学術集会の時期に合わせて、勤務のシフトや休みを早めに相談する
認定前に参加した学術集会で単位を取っても、認定後の更新で必要な学術集会の単位には算入できません。 更新用の学術集会参加は、認定後にあらためて必要です。
1年目の11月に学会へ行っておくと、ぐっと楽になるね!
参考:日本薬剤師研修センター「各種申請の手数料等について」 / 第53回日本小児臨床薬理学会学術集会「参加登録」
認定の更新に必要な単位

更新の条件は、最初の更新と2回目以降で大きく異なります。 最初の3年間は、単位の合計に加えて小児への薬学的ケアの実績報告が必須です。
| 条件 | 初回更新 | 2回目以降 |
|---|---|---|
| 3年間の合計 | 30単位以上 | 20単位以上 |
| 各年の最低単位 | 5単位以上 | 3単位以上 |
| 学術集会 | 認定期間中に1回以上参加し、3単位以上 | |
| 必須業務実績報告 | 各年3単位以上が必須 | 任意(6例・6単位まで) |
3年間で30単位以上
初回更新では、3年間で30単位以上が必要です(2回目以降は20単位以上)。 このうち、認定期間中に学術集会へ1回以上参加して3単位以上を取ることが必須です。
単位の対象になるのは、出生後の子ども本人の薬物療法に関する研修や業務です。 妊産婦・授乳婦に関する研修や、成人を含む幅広い年齢層を扱う研修は対象外なので注意しましょう。
レポートなどで個別に単位を請求する場合は、1報告ごとに審査料(1,100円)がかかります。 単位の更新方法や不足したときの対処は、以下の記事も参考になります。
各年5単位以上
初回更新では、合計とは別に各年5単位以上の取得も条件です(2回目以降は各年3単位以上)。 ここでいう「各年」は暦年や年度ではなく、認定開始日から数えた1年目・2年目・3年目を指します。
3年目にまとめて取る方法は使えないため、毎年の学会・研修の予定を認定開始時に組んでおくと安心です。
「各年」は自分の認定開始日から数えるんだね!
必須業務実績の報告
必須業務実績報告は、認定期間中に実践した小児薬物療法の薬学的ケアを症例ごとにまとめる報告です。
初回認定期間のみ必須で、外部の評価者による評価を受け、認められると1報につき1単位が付与されます。
-
必要な単位認定各年3単位以上(異なる種類の薬学的ケアの報告)
-
数え方提出日ではなく、介入終了年月日のある認定年の単位になる
-
提出期限各認定年の期限から2か月後まで
-
提出の上限各年5例まで(更新に算入できるのは各年5単位まで)
評価には数か月以上かかることがあり、3例だけ出して1例でも認められないと、その年の必須単位が足りなくなるおそれがあります。
研修センターも、報告できる症例があれば3例より多く提出しておくことをすすめています。
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参考:日本薬剤師研修センター「更新のための単位取得|小児薬物療法認定薬剤師制度」 / 日本薬剤師研修センター「小児薬物療法認定薬剤師制度 実施要領」
取得前に確認しておきたいこと

研修センターは、申し込む前に「認定後の更新要件、特に必須業務実績報告を出せそうか」を吟味するよう呼びかけています。 研修の受講やレポート提出には、理由を問わず猶予の措置がありません。
取得後の異動や育児で更新が難しくなった場合の扱いも、事前に知っておきましょう。
小児医療に関わらない施設へ異動した場合
初回認定期間中に、小児医療に関わらない施設へ異動した場合は、必須業務実績報告の代わりにレポートを提出できる措置があります。 レポート1報が必須業務実績報告1単位分にあたり、実績報告と合わせて各年3単位が上限です。
- 行政機関・法人本部など
- 15歳未満の入院処方箋・院内処方箋が合計で年間150枚以下の病院・診療所
- 15歳未満の処方箋が年間150枚以下の保険薬局など
対象になるのは、ある認定年の中で連続4か月以上異動した場合です。 小児医療の現場に戻ったら、速やかに所定の申請書で研修センターに申請します。
育児などで研修を受けられなかった場合
認定取得後に育児休業や病気療養などで単位が取りにくくなった場合は、「特別な事由」として各年の最低単位の条件を外す措置があります。 対象は、産前産後休業、育児休業、病気療養、介護休業、海外赴任、休業を伴わない家族の介護、退職による無職、大きな災害で、期間が3か月以上(最長1年)の場合です。
| 項目 | 異動小児医療に関わらない施設へ | 特別な事由育児休業・病気療養など |
|---|---|---|
| 対象になる期間 | ある認定年の中で連続4か月以上 | 3か月以上・最長1年 |
| 主な措置 | 必須業務実績報告をレポートで代替 | 各年の最低単位の条件を除外(合計単位は必要) |
| 学術集会に行けない | 措置なし | 期間中に一度も参加できなければ学会誌の論文レポートで代替(最高6単位) |
| 認定期間の延長 | なし | 3年目に発生した場合のみ1年延長 |
| 適用される更新 | 初回更新まで | 初回・2回目以降とも |
この申請は任意で、3年目の認定期限後おおむね1か月以内に、期間中のすべての事由をまとめて申請します。 休業の証明書が必要になるため、勤務先に早めに相談しておきましょう。
薬剤師の求人を探す調剤薬局勤務でも取得できるか
受講資格は「保険薬局または病院・診療所」での実務経験なので、調剤薬局勤務でも取得できます。 2026年度の研修会でも、ステロイド吸入薬やステロイド外用薬の指導法などの講義を薬局に所属する講師が担当しています。
ただし、初回更新までは小児の症例報告が毎年必要です。 異動時の措置では「小児の処方箋が年間150枚以下の薬局」を小児医療に関わらない施設として扱っているため、勤務先の小児処方箋の量を一つの目安にできます。
申し込む前のチェック
- 小児科の処方箋を日常的に受けている
- 年3例以上、異なる種類の薬学的ケアを報告できる
- 例年11月の学術集会に参加できる
- 認定後3年は小児医療に関わる見込みがある
今の職場で続けられるか、先に確かめておけば安心だよ
参考:日本薬剤師研修センター「小児薬物療法認定薬剤師の更新認定手続き」 / 日本薬剤師研修センター「特別な事由により単位取得が困難になった場合」
取得後に広がる業務

小児薬物療法認定薬剤師は業務独占の資格ではなく、認定がないとできない業務が増えるわけではありません。
研修で学んだ内容を、日々の業務の質に直接活かせるのが強みです。
小児の服薬指導と剤形の工夫
研修会では、小児特有の服薬指導(内服薬と服薬補助食品、外用薬など)や、子どもの心理・行動特性を活かしたコミュニケーションを学びます。 薬を嫌がる子どもへの飲ませ方や、混ぜる飲食物との相性など、保護者の悩みに根拠を持って答えられるようになります。
服薬指導に関わる調剤報酬の加算と、認定との関係は次のとおりです。
| 加算 | 対象の患者さん | 点数 | 認定の要否 |
|---|---|---|---|
| 乳幼児服薬指導加算 | 6歳未満の乳幼児 | 12点 | 要件ではない |
| 小児特定加算 | 児童福祉法に規定する障害児(18歳未満) | 350点 | 要件ではない |
体重・年齢に応じた用量の確認
小児の用量は体重や年齢で変わるため、処方監査では体重の確認が欠かせません。 研修会では、小児の薬物動態や臨床検査値の考え方、抗菌薬などのTDM(血中濃度モニタリング)も扱います。
成長の段階で薬の効き方や代謝が変わることを理解しておくと、用量の疑問点に早く気づけます。 他の認定薬剤師の資格も比べながらキャリアを考えたい場合は、以下の記事が参考になります。
小児科医への処方提案
飲みにくい剤形の変更や、用量に関する疑義照会など、小児科医への提案の場面が増えます。 研修会で扱う未承認薬・適応外薬の情報検索と評価の知識は、根拠を示した提案に役立ちます。
こうした介入をまとめたものが、初回更新で必要な必須業務実績報告の材料になります。
院内・薬局内での勉強会の実施
認定薬剤師として、同僚に小児の調剤や服薬指導のポイントを共有する役割も期待されます。 研修会や講習会などで小児薬物療法に関する講義を30分以上行った場合は、レポートの評価を経て更新用の1単位を請求できます。
学んだことを周りに伝えると、単位にもつながるんだね
参考:厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」 / 厚生労働省「別添3 調剤報酬点数表に関する事項」
まとめ
小児薬物療法認定薬剤師になるには、実務経験3年以上で研修会を受講し、試験とレポートに合格する必要があります。 試験も学術集会も年1回なので、申込みから認定までは1年以上かかります。
この記事のポイント
- 受講資格は保険薬局・病院・診療所での実務3年以上
- 研修会は先着300名で、2026年度は半月で締切
- 最低費用は9万円台(受講料・学会参加費・審査料)
- 受講1年目の11月の学術集会参加が近道
- 初回更新は症例報告が毎年3単位以上必要
まずは今の職場で小児の処方箋をどのくらい受けているかを確かめ、次年度の募集開始に備えましょう。
小児科の処方箋が多い薬局や小児医療に強い病院で経験を積みたい場合は、転職エージェントに相談すると、求人票だけでは分からない処方箋の内訳まで確認してもらえます。


