看護師のベースアップ手当はいつまで?対象職種と金額・支給されない場合
給与明細に「ベースアップ手当」が付くようになったけれど、これはいつまでもらえるのだろう?と気になっている看護師は多いはずです。
看護師のベースアップ手当の財源は、診療報酬の「ベースアップ評価料」や「看護職員処遇改善評価料」です。
2026年6月の診療報酬改定で中身が大きく見直され、対象職種や金額の目安も変わりました。
この記事では、2026年9月時点の厚生労働省の資料をもとに、ベースアップ手当がいつまで続くのか、誰が対象でいくらもらえるのか、支給されないときにどこを確認すればよいかをまとめます。
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看護師のベースアップ手当とは?

「ベースアップ手当」は法律や制度の正式名称ではなく、医療機関が職員の賃上げのために受け取る診療報酬を、給与に反映したものを指す呼び方です。 財源になっている制度の正式名称は「ベースアップ評価料」で、救急医療を担う一部の病院では「看護職員処遇改善評価料」が加わることもあります。
診療報酬から支払われる仕組み
ベースアップ評価料は、医療機関が患者さんを診療したときに、初診料や入院料などと一緒に算定する点数です。 医療機関は評価料を算定するために地方厚生局へ届出をして、受け取った分を職員の賃上げに充てる決まりになっています。
評価料による収入は、基本給か、毎月決まって支払われる手当の引き上げ(ベア等)に使うのが原則です。 経営者が自由に使えるお金ではなく、使い道を毎年8月に国へ報告しなければなりません。
看護職員処遇改善評価料との違い
看護職員処遇改善評価料は、2022年10月に始まった看護職員向けの制度です。 看護職員の収入を3%程度(月額平均12,000円相当)引き上げる目的で作られ、救急搬送が年200件以上などの条件を満たす病院だけが算定できます。
一方、ベースアップ評価料は2024年度の診療報酬改定で新設され、クリニックや訪問看護ステーションも含めて幅広い医療機関が対象です。 2026年度改定の後も2つの評価料は別々に残っていて、条件を満たす病院では両方を算定できます。
| 看護職員処遇改善評価料 | ベースアップ評価料 | |
|---|---|---|
| 始まった時期 | 2022年10月 | 2024年度改定(2024年6月) |
| 算定できる施設 | 救急搬送が年200件以上、または救命救急センターなどがある病院 | 病院・クリニック・訪問看護ステーション(2026年6月から保険薬局も) |
| 主な対象 | 看護職員(病院の判断で看護補助者やリハビリ職も) | 勤務する職員(40歳以上の医師などを除く) |
| 使い道のルール | 賃金改善額の3分の2以上を基本給等の引き上げに | 基本給等の引き上げと、それに伴う賞与・残業代などの増加分に |
手当の名前は1つでも、中身は2つの制度から来ていることがあるんだね
給与明細での表示のされ方
ベースアップ評価料による賃上げを給与明細にどう表示するかは、国が決めているわけではなく、勤務先ごとに異なります。
「ベースアップ手当」「処遇改善手当」のような独立した手当で表示する職場もあれば、基本給に組み込んで明細上は区別がつかない職場もあります。
基本給に組み込まれている場合は、明細を見ても金額が分かりません。 いくら上がったのかを知りたい場合は、昇給通知や賃金表の改定内容を確認しましょう。
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参考:厚生労働省「令和8年度診療報酬改定におけるベースアップ評価料等について」 / 厚生労働省「看護職員処遇改善評価料の実績報告について(令和5年10月 中医協資料)」
ベースアップ手当はいつまで支給される?

2026年9月時点で、ベースアップ評価料と看護職員処遇改善評価料に終了時期は定められていません。 ただし、点数や対象は診療報酬改定のたびに見直されるため、今の金額がこの先もずっと続くとは限りません。
制度に終了時期は定められていない
ベースアップ評価料は、期間限定の補助金ではなく、診療報酬の点数表に載っている項目です。 2026年度改定の告示でも、評価料は2027年6月以降の点数まで定められており、「〇年〇月で廃止」という規定はありません。
これまでの流れを見ると、看護職員の賃上げは補助金から診療報酬へと移り、改定のたびに対象と金額が広がってきました。
2025年12月から2026年5月までは、国の補助金(医療機関等における賃上げ・物価上昇に対する支援事業)で賃上げ分がつながれました。
この時期に「一時金」や「特別手当」を受け取った人もいますが、補助金による支給は2026年5月までの措置です。
診療報酬改定ごとに点数が見直される
診療報酬は原則2年ごとに改定され、そのたびにベースアップ評価料の点数や対象が見直されます。 2026年度改定では、2026年6月から2027年5月と、2027年6月以降の2段階で点数が設定され、2027年6月からは評価料で得られる額が倍になるよう設計されています。
ただし、国は経済・物価の動きが見通しから大きく変わった場合、2027年度の予算編成で加算・減算を含めて調整するとしています。 2028年度以降の扱いは、2026年9月時点では未定です。
「ずっと続くのかな?」って不安になるよね
勤務先が届出をやめると支給も止まる
ベースアップ評価料は、医療機関が届出をして初めて算定できます。 勤務先が届出を取り下げれば、評価料による新たな賃上げの財源はなくなります。
ただし、評価料を財源にして引き上げた基本給等を、勤務先が一方的に下げるのは簡単ではありません。 評価料の施設基準では、経営上の理由で賃金水準を引き下げる場合、医療機関は「特別事情届出書」を地方厚生局に届け出る必要があります。
| ケース | これからの賃上げ | すでに上がった基本給等 |
|---|---|---|
| 勤務先が届出を続ける | ○改定ごとに見直し | ○維持される |
| 勤務先が届出をやめる | ×評価料の財源なし | △引き下げには届出書が必要 |
| 評価料のない職場へ転職 | ×対象外 | −新しい職場の給与体系 |
転職・異動で支給の有無が変わる
ベースアップ手当は「看護師だから必ずもらえる」ものではなく、勤務先が評価料を算定しているかどうかで決まります。 同じ看護師でも、評価料を算定している病院から算定していない施設に移ると、手当がなくなることがあります。
ベースアップ評価料を算定できるのは、保険医療機関・保険薬局・訪問看護ステーションです。 介護施設や企業、保育園など医療保険の対象外の職場に移る場合は、この評価料による賃上げの対象になりません。
手当だけにとらわれず、給料全体を上げる方法は次の記事で紹介しています。
参考:厚生労働省「診療報酬の算定方法の一部を改正する件(令和8年厚生労働省告示第69号)医科点数表(抜粋)」 / 厚生労働省「令和7年度 医療機関等における賃上げ・物価上昇に対する支援事業の実施について」
ベースアップ手当の対象になる職種

ベースアップ評価料の対象職員は、2026年度改定で大きく広がりました。 看護師を含む医療職はもともと対象で、2026年6月からは事務職員なども加わっています。
看護師・准看護師・助産師・保健師
看護師・准看護師・助産師・保健師は、ベースアップ評価料と看護職員処遇改善評価料のどちらでも対象です。 看護職員処遇改善評価料は非常勤職員も含めた看護職員等への賃金改善が義務づけられていて、パートの看護師も対象になります。
看護補助者・リハビリ職などの医療従事者
看護補助者や理学療法士・作業療法士・言語聴覚士など、医師・歯科医師以外の医療職は、2024年度改定の時点からベースアップ評価料の対象です。 看護職員処遇改善評価料でも、病院の判断で看護補助者やリハビリ職を賃金改善の対象に加えることができます。
2026年度改定で対象に加わった職種
2024年度改定では「主として医療に従事する職員」が対象で、医師・歯科医師や事務職員は外れていました。 2026年度改定からは、「その医療機関に勤務する職員」へと範囲が広がっています。
新たに加わったのは、事務職員と、40歳未満の医師・歯科医師・薬局の薬剤師です。薬局向けには調剤ベースアップ評価料も新設されました。
| 職種 | 2024年度改定 | 2026年度改定 |
|---|---|---|
| 看護師・准看護師・助産師・保健師 | ○ | ○ |
| 看護補助者・リハビリ職などの医療職 | ○ | ○ |
| 事務職員 | × | ○新 |
| 40歳未満の医師・歯科医師・薬局の薬剤師 | × | ○新 |
| 40歳以上の医師・歯科医師・薬局の薬剤師 | × | × |
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対象外となる働き方
同じ職場で働いていても、次のような人はベースアップ評価料の対象外です。
- 40歳以上の医師・歯科医師(薬局では40歳以上の薬剤師)
- 業務委託(請負)として働いている人
- 経営者や法人の役員
派遣の看護師は、派遣元と相談したうえで同程度以上の賃金改善を行う場合に限り、派遣先の医療機関が対象に含めることができます。 対象にするかどうかは派遣先の判断なので、派遣で働いている場合は派遣元に確認しましょう。
派遣だと、職場によって扱いが変わるんだね
参考:厚生労働省「特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて(令和8年3月5日保医発0305第8号)(抜粋)」 / 厚生労働省「疑義解釈資料の送付について(その2)(令和8年4月1日事務連絡)(抜粋)」
ベースアップ手当はいくらもらえる?

ベースアップ手当の金額は国が1人ずつ決めているわけではなく、勤務先の算定区分と給与の設計で変わります。 目安になるのは、国が示している賃上げ率の目標です。
国が示している賃上げ率の目標
2026年度改定では、対象職員のベースアップとして2026年度に3.2%、2027年度にさらに3.2%を目指すとされています。 看護補助者と事務職員は、それぞれ5.7%が目標です。
目標は医療機関全体の賃金総額に対する率で、1人ひとりに3.2%の賃上げを保証するものではありません。 3.2%を基本給等の額に当てはめると、目安は次のとおりです。
| 基本給等(月額) | 2026年度(3.2%) | 2027年度まで(累計) |
|---|---|---|
| 25万円 | +8,000円 | +16,256円 |
| 30万円 | +9,600円 | +19,507円 |
| 35万円 | +11,200円 | +22,758円 |
基本給に上乗せされる場合
評価料による収入は、基本給か、毎月決まって支払われる手当の引き上げに使うのが原則です。 基本給が上がると、基本給をもとに計算する賞与や残業代も連動して増えるため、手当より基本給に反映されるほうが年収への影響は大きくなります。
なお、勤続年数に応じて毎年上がる定期昇給は、ベースアップには含まれません。 「毎年の昇給と同じくらいしか上がっていない」と感じる場合は、昇給の内訳を確認してみましょう。
看護師の求人を探す手当として支給される場合
毎月決まって支払われる手当として支給する方法も認められていて、給与明細に「ベースアップ手当」などの名前で載るのはこのケースです。 2026年度改定からは、夜勤のある交替制勤務の職場では、夜勤手当の引き上げに充てることも可能になりました。
賞与や一時金での支給は、ベア等を行ったうえで評価料の収入が余った場合などに限られます。 看護職員処遇改善評価料も、賃金改善額の3分の2以上をベア等に充てる決まりで、退職金の改善には使えません。
夜勤手当の相場や仕組みは、次の記事で詳しく紹介しています。
勤務先の規模と算定区分による差
ベースアップ評価料には、外来・在宅、入院、訪問看護などの種類があり、医療機関の規模や患者さんの数によって算定できる区分が変わります。 無床のクリニックは主に外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)を算定し、病院は入院ベースアップ評価料を組み合わせます。
2026年度改定では、2025年度以前から継続して賃上げをしてきた医療機関は点数が高く設定されました。
| 算定する場面 | 2026年6月〜2027年5月 | 2027年6月〜 | ||
|---|---|---|---|---|
| 新たに賃上げ | 継続して賃上げ | 新たに賃上げ | 継続して賃上げ | |
| 初診時 | 17点 | 23点 | 34点 | 40点 |
| 再診時 | 4点 | 6点 | 8点 | 10点 |
| 訪問診療時(同一建物居住者等以外) | 79点 | 107点 | 158点 | 186点 |
逆に、2026年3月末時点で入院ベースアップ評価料を届け出ておらず、2024年3月と比べた継続的な賃上げもしていない病院は、入院料が減算される仕組みができました。 賃上げに取り組んできたかどうかで、病院の収入にも差がつくようになっています。
金額は職場しだい。目標の率を目安にしておくといいよ!
参考:厚生労働省「令和8年度診療報酬改定の概要 1.賃上げ・物価対応(賃上げ)」
ベースアップ手当が支給されないときに確認すること

同僚には付いているのに自分には付いていない、思っていたより少ない、という場合は、次の3つを順に確認しましょう。
勤務先が評価料を算定しているか
ベースアップ手当がそもそも付いていない場合、まず勤務先が評価料を届け出ているかを確認します。 各地方厚生局のWebサイトでは、医療機関ごとの施設基準の届出受理状況が公開されていて、誰でも閲覧できます。
届出をしていない医療機関には、ベースアップ評価料による賃上げの義務はありません。 その場合、賃上げがあるかどうかは勤務先独自の判断になります。
届出状況は自分で調べられるから、まずはチェックしてみよう!
自分が賃金改善の対象に含まれているか
勤務先が評価料を算定していても、雇用形態によっては対象外のことがあります。 業務委託で働いている場合や、派遣で派遣先が対象に含めていない場合は、評価料による賃上げを受けられません。
看護職員処遇改善評価料を算定している病院では、看護職員は必ず賃金改善の対象です。 正職員かパートかにかかわらず対象なので、付いていない場合は人事・総務に確認してみましょう。
基本給と手当のどちらに反映されているか
「ベースアップ手当」の欄がなくても、基本給に組み込まれて支給されていることがあります。 前年の給与明細と比べて、基本給や夜勤手当が定期昇給以上に上がっていないかを確認しましょう。
基本給に組み込まれた場合、明細に「ベースアップ」の文字は出ません。「手当がない=もらっていない」とは限らないので、賃金表や昇給通知もあわせて確認しましょう。
- 転職時は評価料の算定状況を面接で確認
- 手当か基本給か、給与の内訳まで聞いておく
- 昇給額は定期昇給とベア分に分けて確認
賃金改善の実績報告を確認する方法
医療機関は毎年8月に、その年度の「賃金改善中間報告書」と前年度の「賃金改善実績報告書」を地方厚生局に提出しています。 報告書は地方厚生局に提出する書類ですが、医療機関には、賃金改善の方法を職員に周知する義務があります。
さらに、職員から賃金改善について問い合わせがあった場合、医療機関は書面を使うなどして分かりやすく回答することになっています。 自分の賃金がどれだけ改善されたかは、人事・総務に問い合わせて書面で説明を受けることができます。
参考:関東信越厚生局「保険医療機関・保険薬局の施設基準の届出受理状況及び保険外併用療養費医療機関一覧」
まとめ
看護師のベースアップ手当は、診療報酬のベースアップ評価料や看護職員処遇改善評価料を財源にした賃上げです。 2026年9月時点で制度に終了時期はありませんが、点数や対象は改定ごとに見直され、2028年度以降の扱いは決まっていません。
この記事のポイント
- 評価料に終了時期はなく、改定ごとに見直される
- 2027年6月からは評価料の点数が倍になる設計
- 2026年6月から事務職員なども対象に拡大
- 目標は年3.2%(看護補助者・事務職員は5.7%)
- 付かないときは届出・対象・反映先の順に確認
ベースアップ手当は勤務先が評価料を算定しているかどうかで決まるため、転職すると付かなくなることもあります。 転職を考えるときは、基本給や手当の内訳まで含めて比べてみましょう。 求人票だけでは分からない賃上げの状況は、転職エージェントに確認してもらうのも一つの方法です。


